流血少女解決編SSその4


 二〇一四年八月十七日――夏。
 ざっと九十年ばかり後先にタイムジャンプしてみたら砂に埋もれた。
 太陽がまぶしい。

 服と肌の間に砂が入り込んできもちわるい。
 海岸線から引きては寄せる波が私にほんのり染みて、唇をしょっぱく濡らした。
 埋もれる彼女は熱月雉鵠(テルミドール・じかん)。探偵だ。

 さぁ、謎を解こうか。
 と、思って埋もれ込んだ砂の塊から体を引き抜こうとした矢先だった。

 砂のお城を虚空から現れた闖入者に壊されて、目をぱちくりさせているのは鮫氷(さめすが)しゃちだった。
 鮫氷しゃち。雨月先輩が目の敵にしている変な人である。
 色白で透き通った肌、適当に伸ばし切ったようでいて手入れの行き届いた黒髪、美少女という文字を世界に落とし込んだような容姿、海水浴場らしくスク水であった。

 しゃちは海の生き物の中でも最強、天敵がいないことで知られるようにその名前を持つ鮫氷さんももちろん強い。
 雨月先輩も本調子ではなかったとはいえ。二度戦って一度目は左足、二度目は左腕を折られ敗北を喫している。ウルメアと並んで雪辱を晴らす相手だといっていた。
 そして、油断ならぬ相手だとも。

 「はろー……、Kitty(キッちぃーーーーー)! わ・た・しが一時間かけて作って五秒でぶっ壊すつもりだったお城を那由多の果てに吹っ飛ばしやがったなー」
 大笑いしながら私を引き抜いたのは鮫氷しゃちだった。敵意は見られない、けれど。
 バリツの構えを取る。臨戦態勢だ。
 思考を巡らせる。

 【本日の課題】
 1.カランドリエの謎を解き明かせ→×
 理由:解き明かすとするなら部長関連だけど、雇われている以上不義理は働けない。
 2.生前の蓮柄円の人となりを知ろう→×
 理由:蓮柄円はハルマゲドンに付きっ切り。生徒会、番長Gともに疲弊が大きく今は突っつけない。
 3.前回のハルマゲドンについて振り返ろう→×
 理由:同上。
 4.転校生の実態とは?→×
 理由:そもそも私が転校生だ。
 5.自由→〇

 【自由題】
 6.鮫氷しゃちと友達になろう→×
 理由:待って……、何か間違っているような……?

 今日、たった今ここに来た理由を刹那の内に追いかけて。
 私は、その手を下ろしていることに気が付いた。軟らかい手だ。鮫氷しゃちの手は鮫肌ということは当然なくて、すべすべしていた。
 なぜ、わかるかというと手が握りしめられているからだ。

 「鮫氷さん……手を放してくれない?」
 「もう! 山禅寺雉鵠ちゃんったら、ノリがわーるーいーよー。さん付けはいいって、今言ったじゃない!」
 一応抗議するも、為す術がない。なんで私の名前(みょうじ)を知っているの?

 「山禅寺さん、そんなに殺気立ってはいけませんよ? ここはみんなで楽しむためのバカンス会場なんですから」
 私の肩を抱く者がいる。その人もまた、スク水を着ていた。
 いつもの巫女服姿とはかけ離れているから一瞬わからなかった。こちらを咎めたてるように、悲しく眉をひそめる仕草は風紀委員会に現れた謎の魔人・厳島出雲さんのものだった。

 7.厳島出雲と友達になろう→△
 理由:だって……、私たち敵同士じゃないですか?

 当然の答えを返そうとして、当然……?
 これって当然の答えなの? 違うでしょ、だって私は。
 「そーだよ! 敵も味方もないんだよ。もう何も怖くない。海で遊べば仲良くなれるんだから!」
 しゃちさんに言われてみるとそんな気がした。

 みんな友達なら恐れることもない。

 「もう服なんていらない!」
 解放的になった久利先輩がいた。もう、全身が恥部だと視線に怯えることはない。
 だって、全員“トモダチ”なんだから。

 8.久利エイチヴと友達になろう→〇
 理由:ひとりぼっちで寂しかった彼女を放っておく理由はない。

 「あー、あっつ……。ねむ……」
 太陽を嫌って地下で寝ていた七八十さん。開放的な水着姿だけど、日焼け止めを塗ってもらって気持ちよさそう。うん、混ぜてもらおうかな?

 9.一七八十と友達になろう→〇
 理由:弱点を押して駆けつけてくれた先輩を一人に出来ませんよね。

 「まいかちゃん、まいかちゃん、これが世界一大きくなるっていうウーパールーパー、アスハルサンショウウオだよ」
 「俺! 支配! 貴様! 下僕!」
 「えー、めいかちゃん。私はこっちのカラッパの方がいいなあ」
 「カラッパ……、わたし、そんなにまるくないもん……」

 和気あいあい、カメノテ少女と隻腕少女の仲良し双子姉妹が両生類と甲殻類――失礼、キングオブ両生類と人類を囲んでわいわいきゃいきゃい楽しそう。
 揃いの色をしたキャミソールは、腕周りを工夫したものでとってもおいしそうです。
 これが海辺の楽しみ方。

 一方、でっかい手甲を付けたメガネの少女は砂を掘って埋まっていました。

 10.港河真為香&港河廻衣香と友達になろう→〇
 理由:たまたま新幹線ヤッター! する気分ではなかったから。

 11.唐橋哉子と友達になろう→×
 理由:いや、だって……ねえ。

 12.宍月左道と友達になろう→×
 理由:そんな熱々なところ見せつけられたら。

 「困る」
 フィットネス水着を着ていてなお傷が目立つ宍月先輩と熱い抱擁を交わしていました。ちなみに唐橋先輩は手甲をパージし、お腹回りが目立たないタンキニに印象を切り替えています。
 いくら女子高で同性同士だからって普通ベロチューはしません。この二人、確実にデキてます。探偵でなくてもわかる謎です。

 「「「砲・撃(げぇき)!!! 暗・殺!!!」」」
 680mmカノン砲を背負った女性が元気よくシャウトを飛ばします。
 こどもっぽい水着にほどよく貧乳……とはいっても女子高生以下ではなさそうですが、射線の先ではどこかジャパンを勘違いした金髪豊満ガールが腰を抜かしています。
 「アイエエエエエ!」
 ここは砂浜、転んで着崩れた着物の合間からPVCビキニのサービスカットです。
 やっぱオイランはこうでなくっちゃね!

 と、ここで厳島出雲がカットに入ります。
 今日はちょうどよく日曜日。厳島出雲というほぼ万能の存在が、さらなる概念的超存在、みんなが守るべき存在「日曜日ちゃん」の力を借りて、皆に強制的に休暇を与えている以上は――。
 「おろかな存在はやすんでいてください」
 過程は無視された。厳島出雲の勝利である。
 680mmカノン砲は没収され、女性とオイランは連行されていった。

 13.銃々ゐくよ・ハーン→×
 14.ありあ・ハーン!→×
 理由:失敗! 共に未達成!

 二人が刑に処せられている横でぺったんぺったんウサギがモチをついている。
 ハンマーモチツキウサギだ!
 畜生の類なので水着は身に着けていない。隣で海パン一丁のジョージ・ワシントンの悪霊が手ぐすね引いて待っていたので雉鵠は積極的に無視することにした。

 15.ハンマーモチツキウサギ→×
 理由:積極的に仲良くする理由がない。

 友達巡りを中断して。
 なにかが、おかしい。そう思った瞬間だった。
 アイスキャンディーを咥えながら、“彼女”が楽しそうな……? みんなを見送る私を一人にすまいと駆け寄って。氷菓を口の端に、器用にも喋りかける。まくしたてる。

 「どったのー? 友達ゲージが貯まってないじゃん!
 そんなことじゃー、本戦で活躍でーきーなーいー・ヨッ!?」

 みんなを魅了するスマイルを振りまきながら鮫氷しゃちが私の心を揺らす。ありがちな表現が許されるなら、今だけ、私たちを除いたすべてが止まった気がした。
 いいや、みなが動いているのに、私としゃち……さん、だけが同じモノトーンの世界で固まっている。時よ、動け! 時よ、止まらないで。どうか、私達を二人きりにしないで――。

 「いえす! じーざす! くらいすとーん! とりっくすたー! さ、みんな、わたしのところに入って……」
 友達、フレンド、友人、ユメ、ユウジョウ……ってなあに?

 「わたしのことだよ! さっささらんさー、こーなーゆきー! ねえー♪」
 ちがう、そうじゃない。だけど……。
 「ららららららーん♪ トモダチ、ゲットだぜ!」

 うろ覚えなのか、ところどころハミングで、一昔前のアニメソングをでたらめに熱唱しながら、祭の喧騒から抜け出したヒロインを連れ出すヒーローのように、“彼女”は彼女を連れ出す。

 その横顔は、本当にうれしそうで――。
 この世の不幸、すべてと縁遠い天使のようで――。
 誰もが、笑顔を見たいと思ってしまうのだ、私のように。

 16.鮫氷しゃちと友達になりたい→△
 理由:だけど、そんなの私には無理かもしれない……。

 17.クロちゃん→〇
 理由?:鮫氷しゃちは下等生物なんかじゃないよ?
 18.ヴィヴ・ラ・ヴィータ→〇
 理由!:それを聞くの? ばーーーーーーか(笑)

 下等生物と一山いくらでその辺に転がっているおばけをトモダチに変える。
 わたしの不安を消し飛ばす。そんなことないさと、お手本のようだった。

 海岸線はいつの間にか、探偵部と風紀委員会が共に遊ぶレクリエーションの場となっていて、厳島出雲が望んだとおり争いなどない理想的な臨海学校に――。

 19.高橋九裏→〇
 理由:フツーとトクベツ、ありがちな葛藤だよね!
 20.九野一花→〇
 りゆー:ニコポナデポ余裕でした(^▽^)/ポ
 21.命乞い縋
 リユース:捨て駒万歳!
 22.北内花火→★
 「へっ……、きたない花火だ」

 厳島出雲が望んだ通り、争いがなくなって汚い先輩も自己犠牲の精神から自ら進んで打ち上げ花火になる世界、理想郷はここにあった。
 真昼の花火は、肉色であることもあって凄く汚かったけど、みんなの思い出にはなったみたいだった。しゃちが嬉しそうに笑ってる。私も嬉しいから笑うんだ。

 「どーれみふぁそらしどー♪ じゃー次行ってみよーか!」
 23.篠ざ……→「考える・な」

 理想的なソプラノボイスの中で朗々と響くテノール。
 少女たちのアンサンブルに自然と溶け込む男性の独奏(ソロ)。
 不協和音として排するには、勿体なくて、だから鮫氷しゃちは「見逃さ・ない」

 24.局長→「入る・な」
 25.土野してん乃→「勝つ・な」
 26.湯ノ花香里ッ→「流す・な」
 27.堅倉――碇!→「叩く・な」

 課題が提示される。
 誰それと仲良くなりたい。オトモダチになりたい。争いなんてない平和な世界を見たい。
 厳島出雲の願いだ。
 鮫氷しゃちの願いでもある。
 二人の願いは今は等しく同じ。だから鮫氷しゃちのお願いを厳島出雲は聞くしかない。だから、鮫氷しゃちの願い通りに物語は動く。

 すべての過程を無視して厳島出雲は勝つことが出来る。
 鮫氷しゃちにとっての勝利とは他者というモノをトモダチにすることだ。
 だから、鮫氷しゃち=熱月雉鵠が音に出しただけで、すべての前提をすっ飛ばしてその名前のモノはトモダチというモノでしかなくなる。

 トモダチがしゃちの言うことを聞くしかないのなら、そのトモダチはしゃちの言うがままに動く人形、もっと言うなら音声入力の義手義足程度に過ぎない。
 音に出して言う、それだけで鮫氷しゃちの手足はいっぱいできる。「手足は合わせて四本しかないから惜しいの。百本も二百本も生えてたら気持ち悪いじゃん。ねぇ、厳島センパイ、舐めて……」

 まるで、こどものママゴトだ。脈絡が無さすぎる。
 鮫氷しゃちの認識では名前を書いたおもちゃは自分のモノになる程度なのだろうか? それを実証するように、鮫氷しゃちは一切の笑顔をやめた。

 何者からか攻撃を受けているとわかって、興がそがれたのか。
 鮫氷しゃちの足元に投げ出されたアイスバー、身を投げ打った厳島出雲を踏みつけにしながら「きもちわるい」「きもちわるい」と何度も何度も何度も繰り返し言っていた。
 「はずれ」と書かれたアイスの棒が目に入り、しゃちはさらに苛立つ羽目になる。

 28.九ノ宮紗々き……→「立つ・な」
 29.渡良瀬ヨ、よ、よ→「歌う・な」
 30.→「喋る・な」

 白紙の紙に書かれた名前と顔写真。
 脈絡のない関係性では、虚空に投げ出されたキャラクターは存在できない。
 普通の存在ではいけない、特別な存在になりたい――! ならなければ死んでしまう……なりたい、ならなきゃ、私を、僕を、あたしを、どうか――!

 ありがちな思春期、ありがちな少女、ありがちなモノ。
 それが鮫氷しゃちの遊び相手、遊ぶ相手、遊ばれるモノ。すべてと友達になってあげようと虚数空間から鮫氷しゃちという“世界観”が声をかける。
 それは神や魔人がいなかったり、剣と魔法のファンタジーだったり、ニュートンのリンゴが落ちなかったりするのと同じくらい、現実とはかけ離れた物理ならぬ心理の法則である。

 つまり、すべての思惑を消し去ってハルマゲドンは鮫氷しゃちの遊ぶウォーゲームになり果てる。そこに争いなどあり得ない。単なる一人じゃんけんのようなものである。

 だけど、それはもう叶わない。
 禁止句域が引かれ、少女たちの楽園は所詮エデンの園であったことを知る。
 それが、限りの無いものであるならどれほど幸せなものだっただろう?

 けれど、それだけはしてはいけない。
 「する・な」という言葉/伏線が与えられた時から楽園追放(=エンディング&プロローグ)は迫っていた。

 「踊る・な」「歌う・な」「喋る・な」「書く・な」「叱る・な」「褒める・な」「座る・な」「眠る・な」「起きる・な」「考える・な」「裁く・な」「討つ・な」「殺す・な」「言う・な」「終わる・な」「始める・な」「来る・な」「着く・な」「走る・な」「歩く・な」「蹴る・な」「飛ばす・な」「見る・な」「聞く・な」……。

 無数の赤ペン先生――禁止句域がモノクロの海に引かれる。
 いつしか、魅惑の海岸線はすべての色を失っていた。それは、鮫氷しゃちがすべての興味を失ったことを意味する。蹴飛ばす音がした。



 舞台は移り変わって、ここは古煤けた木造校舎――。
 夢か現か幻か、鮫氷しゃちが積み上げた森の中の小さなおうち。つまりはシルバニアファミリー。
 その中には数多くの人が、魔人が、転校生も、囚われている。
 黒板に降り積もった埃、天板の抜け落ちた教室、足跡だけが真新しい。

 「ここは――!?」
 夢を見ていたのか、探偵としての姿を取り戻した熱月雉鵠は巫女服姿に戻った厳島出雲と同じく、自分が赤いテープのようなものでぐるぐる巻きにされていることに気づく。
 隣にいる同類も同じようにもがいていたが、これではどこかに身を飛ばそうにも身動きひとつ出来ぬ。足元に転がされ、上方より声が降り注ぐ。

 「おっと忘れていたね、すまないがお嬢さん方。そのままでいてくれたまえ。『飛ばす・な』」
 彼女たちにその姿を知る術はないが、絵に描いたナイスミドル、彼の名は自称通りすがりのサラリーマンこと安全院綾鷹である。真っ白いパナマ帽が実に堂に入っている、けれど今時流行りのクールビズなどどこ吹く風、夏の熱風も気にかけぬきっちり具合に惚れるお嬢様も多かろう。

 「むー、私のトモダチ光線がなんで効かないのかなー?」
 そんな技は無い! かわいコぶっても今更おそい! ふたりの咎め立てする視線が突き刺さるようだったが、意にも返さない。
 「『睨む・な』、『睨む・な』。おっと、これは私に言っておこうか。『感じる・な』。そのテープは高二力で編み上げた安全院印の特製だからね『解ける・な』」

 「「「こここ、こんなのおおおおお!!! こんな謎は私がああああああ!!!」」」
 「だから『喋る・な』、『解ける・な』。随分遅かったじゃないか、探偵のお嬢さん。申し訳ないが、娘が人質に取られているんでね。一切合切、同情も情報の共有もなし、だ。先乗りさせてもらうよ。鮫氷嬢、とある貴人/奇人がお待ちだ。
 私の名前は安全院綾鷹。その方に案内役を仰せつかった者だ。申し訳ないが、エスコートさせてはいただけないかね?」

 かく言う鮫氷しゃちもスク水姿からいつもの白と黒を基調としたセーラー服とセーラーキャップ姿に戻っていた。
 一瞬、表情を消し去る。その一瞬は文字通り蝶が羽ばたくほどの僅かな時間であったが、不思議と印象に残る瞬間であった。
 そのまま蠱惑的な笑顔を全方向に、でなく。綾鷹氏、正確にはその先、向こう側へと一直線に、伸ばすように、向けた。

 「いいよ!」
 もし、恋という関係性を一目惚れという衝撃性を、トモダチという言葉に込めることが出来れば誰もがそうなりたいと思っただろう。
 鮫氷しゃちは歩き出す。足元に何ら注意を払うことなく、ちょっと柔らかい床板だなという意識でしかなく、厳島出雲を踏み台にして、安全院綾鷹と同じ目線に立つ。蛙の潰れるような音がした。

 淑女に向ける礼に答え得る、仰々しいほどに恐れ入ったという風情の返礼、その実鮫氷しゃちは何とも思っていないのだけど。
 その方が楽しいからそうする、それだけだった。
 享楽主義、刹那的、油断はしたいからするし、生死に頓着はしない。そもそも、鮫氷しゃちに死という概念はない。

 だから、積極的に見落とすし、聞き落とす、たった今のように、フォロワーに実は一瞬ブロックされていることにも気づかない。 

 「『聞こえる・な』」
 続いて、ぽつりと足元に落とした声(ツイート)は鮫氷しゃちの可聴範囲からブロックされる。
 (アビメルムに続き、鮫氷しゃちか……。あの姫様は何を考えている?
 『トヨタマヒメ』など、正気の沙汰ではないな……。)

 このつぶやき(ツイート)が、遅れてやって来た探偵へただひとつのはなむけだと言うように、謎の男「安全院綾鷹」は初めて踵を返す。
 一切振り返ることなく。娘の世話なら手馴れているのだろう、理想的な仕草で鮫氷しゃちを先導する。

 後には、もがき、苦しみ、怒りと屈辱に震える探偵たちが残された。姫様の正体はわかっている、だからこそ情けなかった。
 わかりきった事実、それは謎ですらない。
 「私の……三千点」
 鮫氷しゃちを捕まえること、それはつまり、ふたりの会談を阻止して陰謀を未然に防ぐことを意味する。
 探偵として謎を解いて、将来起こるだろう大事件を未然に防ぐという任務は失敗した。つまり、応援ポイントは雇い主からもらえない。 
 だから。

 【新たな課題が設定されました】
 3000.鮫氷しゃちと姫様の間で行われるだろう陰謀の謎を解き明かせ
 なお、失敗するとどこかの世界がしゃちのせいで滅びます。

 謎、というか課題というか最初からミッションだったが、熱月雉鵠に受けない理由は存在しなかった。
 残念なことに、解決編はまたもや持ち越しとなるが、そこはシリーズものの宿命として読者諸姉にはご理解いただきたい。
 では……、詳細については次のダンゲロスSSシリーズに乞うご期待ください! 

 To be continued……?



最終更新:2016年08月16日 20:46