前半戦第二試合SSその1

久利 エイチヴは壁の中で熟考していた。
眼前の浮遊している折り鶴の群れはただの物質にすぎないのだろうか?
音を鳴らすと反応があったので何かしらのオートロボットの類の可能性もある。
だが一番可能性が高いのはパッシブ発動している魔人能力の類・・・ファンネル的なものだろうか・・・
考えていても仕方ないので意を決して折り鶴に向けて話かけたのだった。

「私の言葉がわかる?もしも分かるなら壁に先っぽを当てて、できないようなら問答無用で排除するわ」
もしも、動かなかったらどうしよう・・・誰か助けを呼びに行かないと・・・でも・・・でも・・・
などと考えていると折り鶴の一体がゆっくりと壁にそのクチバシ部分を押し当てる。
エイチブ渾身のはったりであったがどうやら成功したようである。

「そう、言語が認識できるのね・・・では、今すぐこの場を離れなさい」
しかし、折り鶴は特に反応することなく宙を漂うばかりである。

「もう、なんなの!動けない理由でもあるの?YESなら壁に1回、NOなら壁に2回先っぽを当てて、今度は反応しなければ排除するわ!」
折り鶴はゆっくりとYESの意志を示した。

困った、兎に角こちらを危険視しているようだが何らかの理由で移動ができないようだ・・・
術者本体に何か異変があって能力を上手く扱えない状況なのか、それとも他の要因によるものか・・・
しかし、こちらにはもう時間の猶予がなかった。

「そう、あなたがこちらに敵意がないのはわかったわ。でもここに留まらせておくことはできないわ。」
なんとエイチヴは死を覚悟していた。壁から出るという固い決心をしたからである。
もしも折り鶴が能力によるファンネル的なもので、術者が恥部を認識したと思えばエイチブは恥ずか死ぬ。
しかし、彼女は賭けたのだ。折り鶴自体が本体であるという事に。
その繊細な挙動から折り鶴自体が怯えているようにしか見えない。
それならば彼女の能力で折り鶴は消滅するだろう。

「私は今から壁から出るわ、あなたが死ぬか私が死ぬかよ」
しかし、エイチブの切羽つまった言葉を聞いた折り鶴は急に紙飛行機へと姿をかえ、ものすごい勢いで逃げていったのだった。

「よ、よかった」
エイチブは安心して音姫ボタンを押すと洗浄音だけがあたりに響き渡ったのであった。

WINNER=久利 エイチヴ ~たまたま居合わせた公園トイレでの遭遇戦~

これが折り鶴1000と久利 エイチヴの初めての接触となった話である。

ただ単に用を足そうとしていた折り鶴1000はノックに丁寧に対応した。
しかし突然、後ろの壁から声が聞こえてきて死ぬだのどうのとの喚く久利 エイチヴに恐れをなして逃げ出したのであった。
以降、折り鶴1000は壁の中から聞こえてくる声には絶対服従するようになる。
そして久利 エイチヴの命令でこのハルマゲドンに参戦することとなったのである。

最終更新:2016年07月25日 22:39