百合人狼編SSその2

「ふあぁぁぁ、もう、いつも私が夜回りなんて・・・寝不足であくびが止まらないよ~」
久利 エイチヴほど夜這いの取り締まりに適した者はいなかった。
恋人たちはどこにいても壁や床の中の久利 エイチヴの監視の目を気にしなくてはいけなったが、どこにいるか分からない彼女を回避しようがなかった。
運よく久利 エイチヴに見つからないように出来るだけ遠くまで外出して事に及ぶ以外に方法はなく、
外出禁止令によって至る所に警報装置が設置されてからというもの実質禁欲生活を余儀なくされていた。

しかし、この状況に興奮している者が一人いた。宍月 左道である。
「なんて素晴らしい状況かしら。まるでロミオとジュリエットだわ」
宍月 左道はこの状況で百合をすればさぞ素晴らしい思い出を作れるだろう事にワクワクしていた。
しかし、問題があった。相手がいないのだ。
百合気質が土壌としてある妃芽薗では難易度の高い「親友」を作る事を優先して挑戦していたためである。
熟考の末、たどり着いた答えは風月 すず。
彼女にアタックをかけるのが一番よい思い出になるだろう、そう判断したのだ。
さっそく近くにあった紙に恋文を書き、可愛らしくハートの形に折って、風月 すずの下駄箱に忍ばせる。
『~とっても素晴らしい恋の文章(略)~、今夜、時計台の針が頂上で重なる時、私たちも重なり合いたいです』

しばらくすると、ハートの手紙はひとりでに解けて、フラフラと下駄箱から靴を履き替えている少女の頭に落ちた。三国屋 碧沙である。
「む、深遠なる水妖からの伝令か。学校では大人しくしておけおけとあれほど注意しておいたのにな。全く、これだから宵闇の間者は使えないのだ・・・(云々)」
と何やら文字が書かれている紙を広げて手紙の内容を読む。っく、おかしい。何かの暗号か?さっぱり意味が分からない。
「これはこの宛名の風月 すずに暗号の解き方を聞けということか・・・間違って人の手紙を開けた訳ではないしな・・・うん。よし届けてあげよう。」

「深遠なる水妖からの伝令だ。宵闇の間者が使えないものでな。私が代行してやったぞ」
「???、あ、ありがとう」
風月 すずは背中むけて手を振っている三国屋 碧沙に困惑の表情を浮かべて言った。
すると手紙がピクピクと動いている。
「深遠なる水妖?ま、まさか?・・・」

暗闇にボーンと時計台の音が鳴り響く。
と、どこからともなく無数の虫、否、折り紙の鶴がひっそりと浮遊しながら一人の少女の元へ向かっていく。
折り鶴1000もとい怒れる折り鶴999。
宍月 左道による仲間への凌辱を許しはしない。
時計台の元にいる少女へと鋭くとがった999の先っぽが突き刺さる。
少女はバタリと倒れてピクリとも動かなくなった。
しかしそれは宍月 左道ではなく、風月 すずだった肉塊である。
仇敵を見誤るとは不覚!折り鶴999は少しづつ1羽1羽の間隔を広げ辺りを警戒しはじめる。
するとわたり廊下の方から微かな音がする。
反応した折り鶴は999機の紙飛行に変化してものすごい勢いで音のする方へ飛んでいく。
そのすぐ後には、ズズズ、ズズズと風月 すずの再生が始まっていた。

その頃、宍月 左道は物思いにふけっていた・・・生徒指導室で。
これも良い思い出になったな。イベントの一つをこなしたなと。
説教めいた言葉が彼女の頭上を通り抜けて行く。
自室を出た直後に壁の中にいた久利 エイチヴに見つかってしまったのだ。
学生時代に夜中に外出しようとして怒られる。これも後には良い思い出となるんだろうな・・・等と自身の運の悪さを肯定的に考えていた。
一方、手紙がイタズラだったと憤慨した風月 すずはこれからある事件を起こすのであるが、それはまた別のお話し。
~LOSE~宍月 左道・風月 すず

「ふぁぁぁ」
宍月 左道の外出を阻止した久利 エイチヴが渡り廊下を大きなあくびをしながら見回りをしていると紙飛行機999がものすごい勢いで飛んできた。
「ちょっと、あなた!警報がなっちゃうじゃないの!また誤作動云々で面倒な事になるんだから、さっさと道具箱に戻りなさい!」
宍月 左道のものだと思われた音は久利 エイチヴが壁の中でした大あくびの声だったのだ。
哀れ、久利 エイチヴの下僕と化している折り鶴たちは無念を晴らすことなく、渋々ではあったが恋文の書かれた手紙が残された道具箱へと戻るほか無かったのである。(※公式戦により下僕化している)
~LOSE~折り鶴1000

さて三国屋 碧沙はというと、自身の活躍によってDPをゲット!!!・・・する夢を見ていた。
そして朝目覚めると、なぜか彼女の懐には応援ボーナスと書かれた置手紙が残されていた。
「ふぇ!!?ホントに機関からの連絡が?pieraより??誰だこいつは・・・??これは・・・恐ろしい中二力を持った使い手に違いない!!」
一体なぜ?ブツブツと宍月 左道の情報を中二っぽく呟いていたのだが・・・壁の中には・・・言わすもがな。
自覚的でないにしろ情報提供を行っていた為に目的達成とGKに判断されたらしい。
~WIN~久利 エイチヴ・三国屋 碧沙

クレジット
①.プレイガール:風月 すず
②.風紀:久利 エイチヴ
③.探偵:三国屋 碧沙
④.恋する乙女:宍月 左道
⑤.サイコパス:折り鶴1000



最終更新:2016年07月25日 23:29