とぷっん
旧校舎から校庭へと身を躍らせた少女は、その身を地へと沈ませる。
目当てのものは先にある。
やがて少女は眼下に望んだものに手をかけると水面へとその身をひるがえす。
浮上。そして跳ね上がる三角帽子を直しながら、魔女は嗤う。
「”謎の回答”入りの缶、約束通り、過去に”埋めて”おいてくれたようだね。
流石、同志 熱月雉鵠(てるみどーる・じかん)良い仕事だよ。」
この物語、万事屋魔女・三国屋 碧沙が封を切る。
=====act01:それはとても月の綺麗な夜だった。=========================
私が初めてあのひとと出会ったのは月の綺麗な晩だった。
「記録」が正しければ、公園のベンチに座っている彼を見かけてこちらから声をかけたのだと思う。
自分と似た存在がいて喜んだのかもしれない。
「ごきげんよう”想念体(Angelos)”さん、今日はとても月がきれいですね 」
『想念体』というのは通常の人間には感知できない不可視のエネルギー体の通称のことで、
主に観測目的や預言のメッセンジャーとして現れることから〈使者〉を意味するギリシア語"angelos"という
通称で呼ばれている。
未来や過去いたる場所に現れるが、時間軸あるいは次元が異なるため、幽霊や怨霊といったものと違い
現世に直接干渉してくることはない。本来、見えもせず聞こえもしない存在ゆえに害はない。
似た者同士だと喜んだのかもしれない。それは後で違うと分かったけれど…
彼は少し笑って
「ごきげんよう、お嬢さん。ただ老婆心から一言いえば、その言葉、初対面の相手に使うモノではないよ」
そんな旨の返答を返してきた記憶がある。
=========================================Ⅰ======
「今回の事件、その謎を解くにあたって驚くべき事実と出来事の連続であった。その経緯を事細かに描くと
紙片に限りある故に、書ききれない。掻い摘んで話をしていく。まず始まり、
ことの発端はおよそ12000年前、場所はオリエンタルでなくイスカンダル中央部の巨大建造物の建築作成
計画とその捻挫まで話しは遡る…」
碧沙は地中深く埋められていた探偵の調査報告書を校舎の木陰で読み始める。
缶にみっちり詰められた調査結果をとんとんと底をたたいて抜き取ったまではよかったが、
なかなかのボリュームだった。
過去にさかのぼって事件を調べ、記録として先にこの地に埋めておけと指示を出しておいたのは自分だが
しかしまた随分と、遡って調査してきたものである、現存する国でもっとも歴史の古いこの国の建国より
さらに前じゃねぇか、そして、そこから一抹の疑念を感じ、滴る汗。
…依頼料まさか日割りじゃないよね、と。
=====act02:ペルルはフランス語で真珠という意味デス。====================
私は赤面していた。
「先日はどうも失礼しました。」
あれから、部の友人に昨日自分が言った言葉が日本語では”ILOVEYOU”という意味であると
教えてもらったのだ。確かに初対面の人間にいう言葉ではない。
「日本語とてもムツカシイですね」
そんな彼は笑って色々と”この国の言葉”を教えてくれた
日本には言霊信仰というものがあり、相手の言葉をオウム返しにして返事するのもその思想からだそうだ。
魂のない虚ろな存在は、挨拶で同じ句を返したりできないそうなのだ。電話でもしもしと聞くのもその流れで
魂があるかどうか、虚ろい逝くモノかをそれで確認しているのだという。
「ごきげんよう。」
私がちょっと茶目っ気を出しそう言うと、目を丸くして、きちんとごきげんようと返してくれた。
安心した。私たちには魂があるようだ。
============================================Ⅱ=====
かくて人類の夢「バベルの塔」は崩壊した。
人類初の試み「バベルの塔」建設による高次元到達の『夢』は雷と共に打ち砕かれ、烏合の衆はちりじりと化した。
彼らは廃墟と化した塔の元、愚かな対立と自滅を繰り返す、おそらくこれらは有史初のハルマゲドンである。
黙示録への経緯と理由はかつて彼らの間に存在していた共通言語を失ったためというのが定説ではあったが
実地での聞き取りと調査にあたり、別の可能性が浮上した。
彼らが失ったのは言葉だけでなく共通の「あるべき認識」「あるべき何か」を失ったようなのだ。
彼らは愚かな内ゲバを繰り返しながら、歴史を刻み、やがてその中から分派した一派が極東のこの地にたどり着く。
そのとき彼らは「失われた何かを抱え」込んでいた。そう失ったのは表面的な認識だけを言葉とともに
禁止されていただけで、彼らはソノモノ自体を喪失したわけではなかった。
いや失おうとしても不可能だったのかもしれない。”彼”は便宜上それを指し「禁止句域」と呼んでいた。
ここまで読み、辟易とする。
雉鵠の文章には何故か”彼”という三人称を指す言葉が随所にでてくるのだ。
報告書に創作を入れるのはどうだろう。それとも流石の彼女にしても千年単位のボッチはきつかったか、
ならばイマジナリフレンドの一人や二人許容すべきだろうか、いやいや見方を変えよう。歴史とは浪漫である。
この場合は読みやすくなって大いに結構と解釈しよう。
ただ法外の値段の調査費請求されたときは値切るネタにはしようとも思うが。碧沙はページをめくる。
======act03 ヒメゾノの花園===================================
彼の名前の由来を聞いた。日本語の奥深さに感心する。あと家族の話も少し、いや私は自分で調べたのだ
彼の娘さんのことを、そして興味本位で調べたことを後悔した。
「――――
―――――――全てから存在を忘れ去られる、寧ろ望んで忘れられる。それってどんな気持ちなんでしょう、
私は、私は」
ぎゅっと膝に置いた手を握り締める
私はそのことが怖い、誰からの思い出にもいられないなんて忘れ去られるなんてどんなに辛い苦しいことなのだろう。
なんど惨い顛末なのだろう。
「ゴメンナサイ。」
あまりに無思慮だった。そんな絞り出した声に対する。あの人の答えは苦笑だった。
アイツは自分自身ですべき道を選び、決意して進んだ。ならば己を恥じることはないだろう、誇りに思うと。
そこからはまた他愛のない話。
最近会った少女も娘さん同様、人の話を聞かないで手を焼いて困っているという。
私は指で滴を拭った。苦手なこともあるんだ。できることなら何でも協力しようと思う。
==========================================Ⅲ=====
碧沙は再びページをめくる。そして次のページに目を通しにかかった次の瞬間、迷いなく報告書を放り出した
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。
その封ぜられしモノの名は■■■■■。■■■■■と■■■■■の■■■■■である。
通常の■■■■■は、■■■■■=■■■■■の影がこの次元へと落ちることで、偶発的に生まれる悪夢である。
だが、虚本来無の場合、例外的に■■■■■が■■■■■の姿のままで投影されていると思われている。
ゆえに姿形を維持できず十数年にわたり眠りが継続した。数ある眷属の中、最悪の存在ではあるがそれが最良の
結果を生み出した。その大きさに対し育むべき圧倒的な“夢”の圧と量が足りなかったのだ。
■■■■■はヒトノ夢を喰らう。■■■■■に咀嚼された夢は一度、■■■■■に転送され反芻される。
それに付随する一連の動作は宛ら牛の消化動作のようなもので我々はその経緯を認識することができない。
魂をこしとられ、単なる物体■■■■■■■■■■はより■■■■■を求む。対する■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■。
”アイツ”が元凶か。
碧沙は書を放り投げると同時に魔導書を取り出し素早く結界で報告書を囲い込む。そして周囲に警戒の目を走らせる。
書簡が封じられた缶には異常はなかった。さて、どこから異常がきた。
魔導書が反応し文字を綴る。
”馬鹿め、人形すずは死んだわ。ここにいる全員は生贄の仔牛、きっと誰も助からない。
最後にお母さんのスターゲイザーパイがもう一度食べたかった…。”
「!?」
影響を受けているのは私。内部から。しかし自分は何物も接触を許していない、少なくとも目に見える範囲ではだ。
身体異常は?喉が少しいがらっぽい―――目に見える範囲、まさか…碧沙の顔が僅か引きつり、一つの仮定が導き出される。
Crrrping Air
■■■■■の正体が仮に寄生系のアレだとすれば少量の吸引でもパラサイト系の麻薬の効果がある。
極小の固体化した気化した■の刃を風上からばらまけば、吸引でダメージが与えれるか
蠱毒、共喰い――――複合――召喚した魔人、脱落者の能力を次々、喰らっている、ならばならば次の一手は当然…
どこかでナニカが嗤う。
次の一手、「■アレルギー」によるアナフィラキシーショックが魔女を襲った。
=====act04 流血怪談~電話をかけてはいけない編デス~==========================
旧校舎は築数十年の歴史ある建物だ、当然備品もそれに付随する。職員室にある電話は懐かしく馴染みのある
黒電話だった。ひょっとしたら部室のものと同じものかもしれない。
とまれ、震える手でダイヤルを回す。
「よかった、つながった。もしもし!」
電話口に出た声はリュドミラだった。
シャチへの手紙は?と確認とった後に、そちらに向かう。安心しろと言葉を続ける。
「non! 違うの、もしもし」
不意に相手が押し黙る。不自然に会話が途切れる。おかしいリュドミラの呼吸が読めない。長年共演じていた
アクターが阿吽の呼吸をとれるように私たちはつながっている。それがなくなったかのような違和感、
不安になって電話口にもう一度問をぶつける
「『もしもし』――本物なら”答えて”」
そのまま、ぷちっと電話がきれた。口から溢れそうになる悲鳴と不安を手で覆い無理やりねじ込む。
今のは魂のない偽物だ。
そして向こうには多分私の偽物が連絡をしている。このままではリュドミラが来てしまう。ここは危険なのに。
―――――――――――ッドン。
持っていた黒電話が吹き飛んだ。
本日、何度目かの砲撃、生身でない電影の身である私には今まで何度食らおうが露ほどの効果がなかった。
だが、今回は違った。
お腹にすごい強烈な衝撃を感じ、私は吹き飛び、壁に叩き付けられた。
砕ける黒電話。
全身にノイズが走り、激しくせき込む。つけねらう襲撃者は常に同じ。
配慮も何もない足音が踏み抜かんばかりに乱暴に床をたたく。
「勝ったほうが正史で負けた側がIFっていうのは
すげーよくわかる。
すげーよくわかる。
どっちか設定採用しないと矛盾が出ちまいますもんね・・・・」
底抜けに陽気な女子大生魔人。
「でもっすよ。
折角、勝ち抜いたのに後半戦出れないとかどういうことっすよ、オイ!
不条理すぎるっすー納得いかない オラオラオラオラオラオラ
なんだかすっごいイラつくっすよ。」
オラオラオラオラオラオラ
彼女は傷んだ床に八つ当たりを繰り返し、砕けた木片を蹴り飛ばす。
完全に会話が成立しないタイプだった。最初遭遇した時からだったが、さらに支離滅裂度が
上がってきている。
「今回は■■■■■一発マジらせてみました、効果あり。え?実体のない■■■■は弾
として打ち込めないだろって?そんなご心配は解決無用。
物理制限は私の魔人能力「おうるうぇいず・モットがんばれるゾイ!」の前では解説無用。
だって、この世界は吸う息にすらみんな因子が潜んでいるから!
素晴らしきノードラックノーライフ!
そして知識さえあればあらゆる火器が土塊から製造できるという、ガチャ引き放題のチート構造。
だから(仮)で選ばれたっス。―――暗殺対象、もう、よく覚えてないっすけど、ああ、そう」
左右両手に一丁づつAK47を抱え、背中にガトリングガンらしきものを背負った暗殺女子大生は
急に真顔になって無表情に呟いた。
「そう覚えてないけど、とりあえずお嬢ちゃんは、金髪ぽいっすよね」
再び銃口がこちらを向く、また視えざる何かを発射する気だろう。
(ああ、ナムサン-デス。)
その銃口に手裏剣がどこからもなく飛来し突き刺さる。爆発四散するAK47。
「ワザマエ!ナニモノ」
手持ち武器を持ち替えつつ感嘆の声を上げる暗殺女子大生。
その銃口に手裏剣がどこからもなく飛来し突き刺さる。爆発四散するRPK。
そして、電姿の前にはいつの間にか
白い布をマフラーのようにたなびかせ一人の少女が立っていた。
「ドーモ、アンサツシャ=サン。伊 六九デス。」
ニンジャアクション、アクト・スタート。
●終末を背負う者
たちまち両者の間で銃撃と手裏剣が行きあい、激しいつばぜり合いが始まる。
だが、明らかに伊六九と名乗る少女のほうが押されていた。
原因は2つ。
一つは暗殺女子大生が放つ「見えざる弾丸」への警戒、予備動作(というか雄たけび)があるため、
回避に成功しているが厄介なことこの上ない。
もう一つは壁に叩き付けられた風月ペルルへ流れ弾がいかないよう少女は相手を誘導しているため、
動きにかなり制限を受けているのだ。
ペルルは一撃を受けた腹部に手を当てながら考える。
この子は守っている。何も考えず何も迷わずに、私という傷ついた者を、
―彼女はそんな存在だったろうか
―RMX-114はそんな存在だったろうか
―ああ、この子がそうなのか
―彼女は迷いなく見つけているのだ。既に己の道を、生きる意味を。なら私のすることは…
◇ ◇ アクトレス”モワ・エンディング・ストーリー” ◇ ◇
伊六九と女子大生の間の空間に不可侵の銀幕が下りた。
そしてペルルは拒絶する。自分の”Film”に不必要な都合の悪いものを
そしてペルルは許可する。不必要なものが外に出るの退出の許可を
敵対者の放った凶弾は境界線を境に全て弾かれ、伊六九の魚雷手裏剣は境をそのまま
突き進む。暗殺女子大生にそのうちの一本が突き刺さり爆散した。
―最高のやせ我慢と演技をすることだ。
「イーロックさん。綾鷹って言葉の意味知ってるかしら?」
◆◆◆◆
「またなんか理不尽な能力がでてきたっす。一時撤退っす」
職員室に乗り込んできた謎の女子大生暗殺者だったが、状況の不利を悟ったが
戦略的撤退を行う。そこはプロ、ラりっていても状況判断は正確だった。
「イーロックさん。綾鷹って言葉の意味知ってるかしら、
『高貴な物を織り込む』って意味だそうよ。そして、それは今のあなたを示している。」
伊六九はその撤退を油断なく見届けると振り返り、地に付しているだろうペルルの
状態を確認に入る。そして面食らった。
あたりに溢れる薔薇の香り。庭園。白いテーブル。その上には紅茶セット。
さっきまで旧校舎職員室にいたはずなのに。溢れ出るお茶会オーラ
次の瞬間には座らされていた。
自分は今お茶をしている。
目の前に女性が座っている。素敵な人だと思う。とても優し気で面談とも思えない。面談?
でも、なんだか昔こんなことがあった気がする。伊六九は完全に場のアクトに飲まれていた。
「包帯は過去と未来において貴方が請け負いた罪と咎の印。そして量。
貴方があなた自身を縛り、戒め、拘束せんとする象徴である。貴方は何をしたい」
警戒も偽りも戯言もここでは無意味
この空間、Afterteaシールドの中では、つらっと正直な言葉がわきでる。
「私は―――救いたい。」
「何を救いたいの?」
聞かれ、一六九はじっとカップに注がれた紅茶を見つめる。
滑らかな琥珀色に本当の自分の顔が映っている。自分の顔を正面から見るのは初めてかもしれない
白い包帯が解かれていく。ボッ、左目に光が宿る。その瞳に映る聖文字は”Aのルーン”
「今ある包帯は貴方の救いたいという意思の表れ
また真実を覆い隠す偽装も意味する、貴方が疑わなかったから誰もそれが包帯であると疑わなかった。
、、、、、、、、、、、、、、
包帯という認識が優先された」
それは認識の衝突においての優位性も同時に示す。衝突時の判定を神がダイスで判定するというのなら
話しは簡単だ。あらかじめ用意しておいたダイスに細工しておけばいい。
「さあ、もう一度見て、貴方がこの戦いに持ち込んだ、それは本当に包帯?
それともスリケンを無尽蔵に生み出すポケット?
否、罪人を繋ぎ止める白銀の鎖(ジャッジメントチェイン)?
十束学園のテクノロジーが生んだナノミクロン?」
舞台のカメラアイは視点を変え、イマジナリラインを超え、彼女の本当の姿を映し込む。
答えはもっとシンプルなものだった。
『高貴な物を織り込む』
そうだ、私がここにいる理由は
六九の気づきと共に折り畳まれていたソレは白き布は輝きを増し、息を吹きかけられ、大きく広がった。
―それは浄化をもたらす天使の羽根―
そう私がここに□□□□により送られてきた理由。
□□□□はこういったのだ。救え、かつて贖いし者、全てを救えと
◇ ◇ アクトレス”モワ・エンディング・ストーリー” ◇ ◇ 了 ◇
少女は目標を見定めると振り向きもせずすっ飛んで行ってしまった。
ペルルはやれやれと脱力する。
覚醒したとたん、ひゅどーんである。流石あの人が「人の話を全く聞かない」というだけのことはある。
ただ去り際、二人の少女のうちひとりがこちらを振り返った。
私ではなく私の後ろを睨むように苦々しげに見ていたから、どうやら彼女には
見えているようだった。私の背後の彼も、お腹に空いた大穴も、私の残り少ない寿命も、全部。
さて何者だろう。
でも心配しないで、こちらは大丈夫だから、貴方はその子のそばについていてあげて。
=====act05 貴方と私のモワエンディングストーリー=====================
ベンチにはいつもの二人が座っている
「私の演技はどうでした。え、オスカー助演女優賞並み。それはモリスギデース
でも主演より助演のほうが賞として本当は価値が高いといいますし、大変善しとしましょう。」
そういって私は彼のほうをちらっと見、ドキマキしながら呟く
「今日は月がきれいですね。」
そして、その反応のなさに天を仰ぐ。ガク。どこのイマジーなんとかさんですか。
見上げる空はどこまでも突き抜けそうな蒼い空が広がっていた。
人は一人ではない、いつだって神様は私たちを見ていていらっしゃる。
こんなシンプルな答えもいいかもしれない。そのことを信じてもいかもしれない。
なら私たちはまたいつかきっと巡り会える。いつかきっと、今なら信じれる。だから、
「ваша」
ならば最後は自分の最高の笑顔でお別れの挨拶をしよう。
やがて
待合のベンチの前に止まった電車が動き出し、男のみが一人残った。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
その日、リュドミラは部活の一室に引きこもり
ただ繰り返し、ただ繰り返し一つの映画のワンシーンを見つめていた。
”今日の日はさようなら です。
またあう日まで。
またあう日まで。”
●そして・・・
旧校舎に閃光が鳴った。
稲妻のような鋭さをもって飛び出た片翼の天使は、一路ひた奔る
全ての元凶へと向かって
これより先、Angelos。生命の保証なし。