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前編

The Last Song -I disappear lonelily- 前編

所詮、私はヒトの真似事…。存在していいのだろうか…。

わからない。だけど、私はこの地球で歌うよ?

イツまで歌えるかわからないけど…私、歌う。



「慈雨、今日のライブ頑張れよ」

雨月たんが私に声をかけてくれる。


「うん。私、頑張るよ…だから、ポッキー買っておいてね!」

「あぁ」

私はそう言い、雨月たんに笑顔を見せてから仲間の下へ行く。


「慈雨、調子はどう?具合は大丈夫?」

ドラム担当のヴァル(通称ヴァルたん)が私に声をかけてくれる。

「うん!ありがとう、ヴァルたん」

今日は高校での初ライブ。私はヴォーカルしか出来ないけど、皆が応援してくれる。

中学では何度もライブをして、好評だったけど、やっぱり緊張する。


「あ、慈雨さん。緊張してる?」

先輩のはとるさんが私に声をかけてくれる。ちなみに、担当はキーボードだ。


「はい…。結構、緊張してます…でも、私が頑張らないと、皆に迷惑かけちゃうし…」


「あんまり、自分にプレッシャーをかけないで。落ち着いて歌えばいいから」

はとるさんは優しく微笑み、キーボードを調整しに行った。

そして、ギター担当の蒼夢憐霞(通称、れん)。ベース担当のロゼルス(通称、ロゼたん)の2人が部室に入ってくる。


「そろそろ、楽器運び出しだって。慈雨は緊張ほぐしてていいよ」

れんがそう言ってくれる。れんは、私の幼馴染で、とても優しい。それにかっこいい。


「じゃあ、僕たちは行くから。じうっぺは落ち着いたらでいいからね」

ロゼたんもそう言って、皆は楽器を持って体育館に向かう。


私は窓から外の景色を見た。もう空は暗く、街は闇に染まっていた。

「ふー」と一息つく。軽く発声練習をして、私も体育館に向かう。


「お、来たか。慈雨」

れんが今までよりも真剣に声をかけてくる。


「…うん。もう大丈夫。大丈夫だから」

そこで、私はもう一度「ふー」と一息ついた。


「本番まで後、10分」

ロゼたんが呟く


そして、10分後


「…皆。絶対成功させようね」

はとるさんの一言で皆が一致団結し、舞台へ出た。


歓声がとてつもなかった。雨月たんも見ててくれてる。

この歌は…雨月たんの為に、貴方だけのために…歌う。


「曲名はメルトです。聞いてください…」

朝 目がさめて
真っ先に思い浮かぶ 君のこと
思い切って 前髪を切った
「どうしたの?」って 聞かれたくて

ピンクのスカート お花の髪飾りさして出かけるの
今日の私は かわいいのよ!

メルト 溶けてしまいそう
好きだなんて絶対にいえない… だけど

メルト 目も合わせられない
恋に恋なんてしないわ わたし
だって 君のことが …好きなの

天気予報が ウソをついた
土砂降りの雨が降る
カバンに入れたままの オリタタミ傘 うれしくない
ためいきをついた そんなとき

「しょうがないから入ってやる」 なんて
隣にいる きみが笑う
恋に落ちる音がした

メルト 息がつまりそう
君に触れてる右手が 震える
高鳴る胸 はんぶんこの傘
手を伸ばせば届く距離 どうしよう…!
想いよ 届け 君に

お願い時間を止めて 泣きそうなの
でも嬉しくて 死んでしまうわ!

メルト 駅に着いてしまう…
もう会えない 近くて 遠いよ だから
メルト 手をつないで歩きたい!
もうバイバイしなくちゃいけないの?
今すぐ わたしを抱きしめて! …なんてね



「二曲目は―



終わった。私たちの舞台は静かに幕を閉じた…。


歌った曲は全部で5曲。私は1曲目のメルトを必死で練習した。

雨月たんの喜ぶ顔が見たくて。今までのお礼をこめて。


「お疲れ様。慈雨さん、良かったよ」


はとるさんが真っ先に声をかけてくる。


「ありがとうございます…。じゃあ、私、人待たせてるんで」


私は、4人に御礼をして、外に出た。



「慈雨」

校門を出て、探していると、後ろから声をかけられた。


「雨月たん」

私は直ぐに、雨月たんの肩に顔を乗せた。


「…ポッキー、売ってなかった」

「いいよ。今は、こうしてほしい…」


雨月たんはそっと私の腰に手を回してくれた。




「貴方が、雨宮さん?」


次の日、私はもう有名人になっていた。


「は、はい」


「まだまだね。私のほうが、貴方より歌は上手いわ。それに、ギターも引けるから」


「…はい…まだ、私は未熟者ですから…でも、それでも頑張ってます」

私はそれだけ言って、その場を去ろうとした。


「私の名前は、綾瀬紗奈。覚えておくことね」

紗奈さんは、そう言って私より先に去ってしまった。


「どーしたんだ?慈雨」

不意に後ろから声をかけられて、ビクッとしてしまった。


「れん」

「ん?テンション低いな」

「…やっぱ、私って歌下手だよね」

私は今までより低い声で呟き、教室に向かった。


「…何か、あったのか?」



「おい、慈雨。昨日のバンドよかったよ!」

「柳泉。うるさい…今話しかけないで…」

「つ、冷たいなぁ…」


柳泉居士。通称ヒキ。中学校のころ引きこもりだったことからヒキってあだ名がついたんだって。


「また、振られたのか?ヒキ」

邪神がヒキを励ます。


「俺の恋はイツになったら実るんだろう…」

「まぁ、頑張れ!諦めんな!」

「俺の気持ちを分かってくれるのは邪神だけだよ…」



授業も終わり、私は部室に行く。


「あれ?ヴァルたんだけ?」


「あぁ。それより、これ出るか?」


「…バンド…コンテスト?」

私は、チラシを受け取り、よく見る。


「三組の綾瀬って女が持ってきたんだ。出ないかって」


「綾瀬…。紗奈さんか…」


私は朝の出来事を思い出してしまった。


「ん?知り合い?」


「え?あ、うん。ちょっとね」


「俺、一組だから三組の奴のことあんまわかんないんだよね」

ヴァルたんは軽く笑って、ドラムの練習を始めた。

私も発声練習を始めた。


「あれ?二人?」

次にれんが入ってきた。


「うん」


「あぁ、後、今日ロゼ早退した」


れんはそう言って、ギターの練習を始める。





「――殺す」


「ぼ、僕は…君には力を貸せない」

ロゼは怯えながらも否定する。


「じゃあ、意味ないじゃん。死んで」


次の瞬間、暗い倉庫からグロテスクな音と血が飛び散る。


「…うぐっ…」

「へぇ。まだ生きてるんだ…」


女はロゼを踏み潰す。


「ふふ…。気持ち悪いわね」


女はそう言い、倉庫を出る。




結局、その日は私とヴァルたんとれん以外は誰も来なかった。

はとるさんは、用事があったらしい。


「もう、6時回ったな」


「慈雨はそろそろ帰ったほうがいいんじゃない?危ないし」


「うん。もう少し練習したら帰るよ。後、ロゼたんの家にお見舞いに」

私がそう言うと、れんが否定した。


「見舞いは俺が行っとくから、慈雨は帰りな」


「むー…仕方ないなぁ…」

私はしぶしぶ片づけをして、部室を出た。


下駄箱のところで、雨月たんが待っていた。


「あ、待っててくれたんだ…」


「当たり前だろ。ほら」

雨月たんが手を差し出してくる。


「ポッキー…は」


「…売ってなかった」


「そっか。じゃあ…」

私は雨月たんと手を繋いで帰った。





「…まだ帰ってない?」


「そうなのよ、ロゼったらどこをほっつき歩いてんだか…」


早退したはずのロゼは何故かまだ家に帰ってなかった。


「れん。おかしくないか…何か、嫌な予感が…」


「当たらないでほしいな…」


俺たちは不安を隠せないまま、家へと帰った。




次の日だった。私が学校につくと、学校中が大騒ぎになっていた。


「どうしたの?秋菜」

瞳舞秋菜。通称秋菜。私の唯一の女友達。


「殺人事件…だって…」


「え…?」


「亡くなったのは…ほら、慈雨と一緒にバンドやってた…人」


「ろ……ぜ…たん…?」



「えー。我が校でとても残酷で悲しい出来事が起こりました。皆さんはもう分かっていると思いますが、殺人事件です…。
既に警察にも通報し、犯人を捜しています。本当なら、こんな事はしたくありません。しかし、これは犯罪です…。
見過ごすわけにも行きません」


「雨月たん……」


「大丈夫だって、慈雨がもし殺されそうになったとしても、俺が守ってやるから」


「…ありがとう」



今日の部室は重い空気だった。


「ロゼさんが亡くなった事は非常に残念だし、意味も分からない…だけど、メンバーが1人足りなくなったからには、誰かを呼ばなくてはならない…」


「私たちは5人で1つ…やっぱり、他の誰かじゃ…」


「…でも、ここで僕たちの音楽活動は止められない…。昨日、バンドコンクールに出る?って誘われたんでしょ?」


「確かにそうだけど、慈雨の気持ちも考えてあげてくださいよ」


「……じゃあ、止めるのか」


はとるさんは今まで以上に険しい表情だった。


私が重苦しい空気の中、口を開こうとした瞬間、部室の扉が開いた。


「あの…」


「まっきくん…?」

入ってきたのは、私と同じ組のまっきくんだった。


「知り合い?」

れんに聞かれ、私は「同じ組」と答えた。


「俺、この前のコンサートに感動して…このバンドに入りたくて…」


「でも…」


「亡くなってしまったのはベース担当の人…。俺はベースできるんだ」

まっきくんは自信満々に言った。


「じゃあ、一回五人で演奏してみようか」



結果は意外。まっきくんの演奏は見事に私たちの演奏に溶け込んだ。


その日は、何度も皆で演奏をして練習をした。




「じゃあ、私はそろそろ帰るね」


「気をつけろよ…」


「そう思うなら一緒に帰ってやれよ」


「いいよ。私は大丈夫」

私はそう言って、逃げるように部室を出た。



「慈雨」

昨日と同じで下駄箱のところで雨月たんが待っていてくれた。


「ポッキー…」


「…ほら」

雨月たんは、少し湿ってるポッキーの箱を私に渡した。


「ありがとう……濡れてるのは…雨…?」


「あぁ、少しな」


私は、外を見て、少ししてから


「傘…無い」


「入れてやるよ」


無言で私を抱き寄せて、傘を指した雨月たんはいつもよりもかっこよく見えた…。


「ねぇ、もし私が居なくなったらどうする?」


「どうもしない。そんな事無いから」


「もしだよ、もし!」

電車の中で私が少し大きな声を出す。


「………わかんねぇよ。その時になんないと…でも、居なくなんないでくれよ…」

雨月たんは少し顔を紅くしていた。そんな雨月たんがちょっと可愛く見えた。


雨月たんは私を家まで送ってくれた。


「ありがとう」


「…あぁ」


雨月たんは無言で私を抱きしめて、私の唇に自分の唇を当てた。


ずっと…時が止まった感じがした。

中編

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最終更新:2010年02月01日 16:18
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