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◎文化・出版 - (2011/12/11 (日) 16:54:25) のソース

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*111125 悲運の闘将 元プロ野球監督、西本幸雄さん死去 91歳 [朝日]
 プロ野球の大毎(現ロッテ)、阪急、近鉄(ともに現オリックス)で20シーズンにわたって監督を務め、8度のパ・リーグ優勝を飾りながら日本シリーズで全敗し、「悲運の闘将」といわれた西本幸雄(にしもと・ゆきお)さんが25日午後8時40分、兵庫県宝塚市内の自宅で心不全のため死去した。91歳だった。通夜は28日午後6時、葬儀は29日午前11時から兵庫県西宮市高畑町2の25のエテルノ西宮で。喪主は長女大家由実さん。

 旧制和歌山中、立教大から社会人の星野組を経て50年、毎日オリオンズの結成に参加した。6年間一塁手としてプレーして引退。その後、60年に大毎と名称が変わった同球団の監督に就任した。その年に優勝したが、1年限りで退団した。

 63年、阪急の監督になり、67年に球団創設32年目の初優勝を果たし、一気に3連覇を達成した。さらに2度の優勝を重ねて73年に退団。翌年からは近鉄の監督に就任。ここでも79、80年と2度優勝。79年の広島との日本シリーズ第7戦は、ノンフィクションライターだった故・山際淳司氏の作品「江夏の21球」で知られる。パ・リーグの弱小球団を引き受けては強く育て、81年を最後に監督生活を終えた。監督としてはプロ野球歴代6位の1384勝を記録。88年に野球殿堂入りした。

*111001 大野晋さん最後の辞典完成 82年着手、教え子遺志継 [朝日]
 日本語の起源を追究した国語学者・大野晋(すすむ)さん(1919~2008)の最後の辞典「古典基礎語辞典」(角川学芸出版)が、今月20日に出る。病床で原稿を直しつづけたが、生前の刊行はかなわず、学習院大などの教え子13人が師の遺志を継いで完成させた。

 大野さんは上代語研究で知られ、「岩波古語辞典」など多くの辞典を作り、ベストセラー「日本語練習帳」もある。作家の丸谷才一さんは「本居宣長よりも偉い最高の日本語学者」と呼んだ。

 日本語とは何かという生涯の問いに答えるため、82年からこの辞典作りに取りかかった。字数に制限を設けず自由に必要なだけ書くという、辞典作りの常識では考えられない編集方針をとり、出版社内の通称「大野部屋」で教え子らと原稿をまとめた。

*110512 ウォーホルの自画像、31億円で落札 過去最高値 [朝日]
 米国の現代ポップアートを代表するアンディ・ウォーホル(1987年死去)の最初の自画像が11日、ニューヨークのオークション大手クリスティーズで3840万ドル(約31億円)で落札された。作者の自画像としては、昨年5月の3260万ドルを上回り、過去最高値となった。

 作品は、1963年から64年にかけて制作された。縦約100センチ、横約80センチでレインコート、サングラス姿の作者の証明写真を4枚組み合わせたもの。(ニューヨーク=田中光)

*110406 大宅賞に角幡唯介氏・国分拓氏 [朝日]
 第42回大宅壮一ノンフィクション賞(日本文学振興会主催)の選考会が6日、東京都内で開かれ、角幡唯介氏の「空白の五マイル――チベット、世界最大のツアンポー峡谷に挑む」(集英社)と、国分拓氏の「ヤノマミ」(NHK出版)に決まった。正賞100万円。贈呈式は6月17日、東京の帝国ホテルで。

*110127 本の販売、6年連続減 週刊誌離れや書籍の新刊減が顕著 [朝日]
 出版科学研究所は25日、取次ルートにおける2010年の書籍・雑誌の推定販売金額が1兆8748億円だったと発表した。前年比で3.1%、608億円の減少で前年を下回るのは6年連続だ。雑誌は13年連続、書籍は4年連続の減少だった。同研究所は「低落に歯止めがかかる気配はない」といい、書籍の新刊点数が減ったのが大きな特徴だった。

 販売金額は、ピークだった1996年の2兆6563億円と比べ、3割ほども減っている。売り上げの6割ほどを占める雑誌は、前年比3.0%減の1兆535億円。月刊誌が2.4%減だったのに対して、週刊誌が5.2%減で「週刊誌離れ」が加速している。創刊点数は110点で、ここ40年間で最少だった。休刊は前年より27点増え、216点だった。

 書籍は、前年比3.3%減の8213億円。100万部以上のミリオンセラーは「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」「1Q84 BOOK3」「KAGEROU」「バンド1本でやせる! 巻くだけダイエット」「体脂肪計タニタの社員食堂」の5点だった。「売れる本は突出して売れるが、それ以外の本は低調という二極化が顕著」という。

 書籍の新刊点数は7万4714点で、前年より4.9%減った。今の基準で統計を取り始めた95年以降、最大の減り幅。出版社の体力が落ちているのと、本の問屋にあたる取次会社がコスト減のために配本部数を抑制したのが理由だ。同研究所は「これまでにない動き。新刊点数は増え続けてきたが、天井を打った。今後は市場規模に見合った供給になっていくとみられる」と分析している。

 返品率は書籍が39.0%、雑誌が35.5%で、いずれも前年より改善した。(西秀治)

*110118 芥川・直木 7年ぶり両賞W受賞 多様な4人 文学の豊かさ [朝日]
 第144回芥川賞・直木賞は7年ぶりの両賞ダブル受賞となった。芥川賞は朝吹真理子(あさぶき・まりこ)さん(26)の「きことわ」(新潮9月号)と西村賢太(にしむら・けんた)さん(43)の「苦役列車」(新潮12月号)と対照的な作品が選ばれ、直木賞は時代小説の木内昇(きうち・のぼり)さん(43)の「漂砂(ひょうさ)のうたう」(集英社)と現代ものの道尾秀介(みちお・しゅうすけ)さん(35)の「月と蟹(かに)」(文芸春秋)と両賞の幅を示した。

■題材も文体も対照的 芥川賞

 芥川賞は朝吹さんの「きことわ」の評価が一歩抜けていた。選考委員の島田雅彦さんは「小説には時間を自在に操る特権があり、『きことわ』は複雑な時間の処理に卓越した技術を持っていた。ずば抜けたポテンシャルを持っている」と評した。

 流麗な「きことわ」と題材も文体も対照的だった西村さんの「苦役列車」は、「社会や政治のせいにさえもできず、まわりの人に悪態をつくろくでなしの最低人の典型」を描くことに賛否両論あった。ただ「独特のユーモアに裏打ちされた完成度の高い芸風」を評価する委員も多く、最終的に過半数の票を得た。

 同じ私小説という形式では、小谷野敦さんの「母子寮前」(文学界9月号)が「苦役列車」と比べられ、自己批評という点で欠落があると指摘された。父との不和というテーマは自分への違和につながるはずなのに、重なっていく展開がなかったという。

 田中慎弥さんの「第三紀層の魚」(すばる12月号)は、ウェルメードで読みやすいという評価もあり、3番手の評価だった。

 前回に続き候補入りした穂田川洋山さんの「あぶらびれ」(文学界11月号)は川魚の交雑の問題を扱い、エンターテインメントとしてはよくできていると評されたが、及ばなかった。(加藤修)

■確かな実力と将来性 直木賞

 直木賞は最初の投票で、犬飼六岐さん「蛻(もぬけ)」(講談社)、荻原浩さん「砂の王国」(同)、貴志祐介さん「悪の教典」(文芸春秋)の3作が漏れた。選考委員の宮部みゆきさんは「相対的に点が低く、見送られた」と言う。

 残った2作は最後の投票で、双方を支持した人も含めて過半数を超える点を集め、同時受賞が決まった。

 木内さんは「資料に振り回されず、ハードルの高い明治10年代を描いた」と評価された。“バツ”を付けた選考委員はいなかったという。宮部さんは「文体も含め、今後確実に伸びる作家」と話した。

 道尾さんは子どもの視点に限定して描ききった点に評価が集まった。「独特の文体がある」と文学性も評価された。ただ大人の描き方の過不足など、議論になったという。5期連続で候補になった「実績」には、「それを評価するかも含め、委員がそれぞれ判断して投票することにした」と宮部さんは話した。

 現代を舞台にした候補3作は、登場人物が現実に新たな世界観を作り上げる作品だった。宮部さんは「悪の教典」に触れ「ゲーム的と厳しい評価があった」と言う。ただ「何がリアルで何がバーチャルかは、いま小説で最も議論されている。ゲーム的だから駄目なのではないと思う」と擁護した。(高津祐典)

*110105 99歳詩人の初詩集「くじけないで」が100万部に [朝日]
 92歳で詩作を始め、書きためた作品を自費出版した宇都宮市の柴田トヨさん(99)の初詩集「くじけないで」が、発行部数100万部に達することになった。版元の飛鳥新社が5日、21回目となる増刷を決め、全国発売から約10カ月となる今月14日に100万部を突破する。

 同作は2009年10月に自費出版。それが4カ月間で1万部まで増刷されるなど話題を呼び、昨年3月、同社から全国発売された。読者層は14歳から100歳までと幅広く、「自殺を思いとどまった」「これからの老後の指針になった」といった感想を書いた読者カードが1万通も届いているという。

 腰を痛め、趣味の日本舞踊をあきらめた柴田さんに詩作をすすめたのは一人息子。以来、詩作は柴田さんの生きがいになっているという。「励まされた」という読者の声から「私も励まされている」という柴田さんは、第2弾出版の意欲をみせている。


TITLE:asahi.com(朝日新聞社):99歳詩人の初詩集「くじけないで」が100万部に - 文化 - Google Chrome
DATE:11/01/06
URL:http://www.asahi.com/culture/update/0105/TKY201101050332.html

*101221 文化庁芸術祭賞、8件が大賞に [朝日]
 文化庁は21日、今年度の芸術祭賞を発表した。テレビなど109作品と、関東、関西での演劇など157公演が参加し、8部門の大賞が決まった。贈呈式は関西公演分は来年1月20日、大阪市中央区のホテルニューオータニ大阪、そのほかは1月25日、東京都千代田区の如水会館で開かれる。各部門の大賞は次の通り。(敬称略)

 【演劇】シアタープロジェクト・東京=「おそるべき親たち」【音楽】クヮトロ・ピアチェーリ=「第9回定期演奏会~ショスタコーヴィチ・プロジェクト9~」【舞踊】谷桃子バレエ団研究所=創立60周年記念公演「レ・ミゼラブル」【大衆芸能】東京太・ゆめ子「漫才大行進」における話芸【テレビ・ドラマ】WOWOW=ドラマWスペシャル「なぜ君は絶望と闘えたのか」(後編)【テレビ・ドキュメンタリー】NHK=NHKスペシャル「密使 若泉敬 沖縄返還の代償」【ラジオ】青森放送=高橋竹山生誕100年記念番組 ラジオドキュメンタリー 故郷の空に【レコード】日本コロムビア=二世豊竹古靱太夫(山城少掾)義太夫名演集

*101221 大佛次郎賞に渡辺京二氏 [朝日]
 ジャンルを問わず優れた散文作品を対象とする第37回大佛(おさらぎ)次郎賞は、渡辺京二氏の評論『黒船前夜――ロシア・アイヌ・日本の三国志』(洋泉社、3045円)に決まった。

 幕末の「黒船来航」の100年も前から、現在の北海道、千島、樺太などをはさんで、東方に進出してきたロシア人と日本人の接触があった。そこはまた、アイヌ民族の天地でもある。従来論じられることの少なかった北方の異文化接触の有りようを、文献資料を元に事件や人物のエピソードを織り込みながら「三国志」として生き生きと描きだした作品。

 贈呈式は来年1月27日午後4時から東京・日比谷の帝国ホテルで、朝日賞、大佛次郎論壇賞などとともに行われる。

*101220 槙文彦さんに金メダル 米建築家協会 日本人3人目 [朝日]
 米建築家協会(AIA)はこのほど、建築界に大きな影響を与えたとして、建築家の槙文彦さん(82)に2011年の金メダルを贈ると発表した。建築界で最も権威がある賞の一つで、日本の建築家の受賞は丹下健三さん、安藤忠雄さんに続き3人目。槙さんは、代官山ヒルサイドテラスやスパイラル、東京体育館(いずれも東京)を設計。日本建築学会賞や朝日賞、プリツカー賞などを受けている。

*101215 水嶋ヒロさんの小説、発行43万部 「1Q84」超える [朝日]
 俳優の水嶋ヒロさん(26)が本名の斎藤智裕(ともひろ)名義で書いた小説「KAGEROU」が15日、発売される。ポプラ社小説大賞を受賞して話題になり、書店の予約注文は40万部を突破。発売前に増刷になり、部数はすでに4刷43万部となった。発売時としては、村上春樹さんの「1Q84」BOOK1の25万部を上回る異例の数字だ。

 作品は、自殺をしようとした40代の男が主人公。闇組織に臓器売買を持ちかけられ、「命」の換金を決断する。だが男は病気の少女と出会い、命の重さを考えていく。現実にはあり得ない設定を用いたファンタジーになっている。

 水嶋さんは慶大在学中にモデルを始め、2006年にテレビドラマ「仮面ライダーカブト」に主演。ドラマや映画に相次いで出演し、人気を集めた。

 歌手の絢香さんとの結婚や、所属していた芸能事務所の退社が話題になった。その後、小説が公募の賞を受賞。賞金2千万円の辞退などで関心が高まった。出版元のポプラ社によると、今作は通常の委託販売制ではなく責任販売制を採用した。書店にとって売れれば通常よりもうかり、売れ残ると負担が生じる仕組みだが、書店からは注文が殺到したという。

 出版ニュース社の清田義昭代表は、作品の内容が事前に伝わらず読者の期待感を高めた点で「1Q84」と同じ構図になっていると指摘する。

 「ただ、評価が固まっている村上春樹さんとは違う。新人のデビュー作であり、今後43万部より売れるかどうかは内容の良しあしによる」と話している。(高津祐典)

*101212 大佛論壇賞に竹中治堅氏「参議院とは何か」 影響力分析 [朝日]
 第10回大佛次郎論壇賞(朝日新聞社主催)は、竹中治堅・政策研究大学院大学教授(39)の『参議院とは何か 1947~2010』(中公叢書、税抜き2200円)に決まった。

 「ねじれ国会」で参議院が存在感を増すなか、「強い参議院」「衆議院のカーボンコピー」と評価が分かれてきた参議院の影響力を、戦後の設立から現在まで、内閣の法案準備や組閣なども対象に入れて分析。広範な文献資料や元議員らのインタビューなどに基づく手堅い研究手法が、選考委員の間で評価された。

*101103 毎日出版文化賞に浅田次郎「終わらざる夏」など [朝日]
 第64回毎日出版文化賞(毎日新聞社主催)の受賞図書が決まった。本賞の賞金は著編者に各100万円。表彰式は24日午後3時半から、東京・紀尾井町のグランドプリンスホテル赤坂で。受賞作は次の通り。(敬称略)

 文学・芸術部門=浅田次郎「終わらざる夏」(上下、集英社)▽人文・社会部門=曽根英二「限界集落 吾の村なれば」(日本経済新聞出版社)▽自然科学部門=木村敏「精神医学から臨床哲学へ」(ミネルヴァ書房)▽企画部門=池澤夏樹編「池澤夏樹=個人編集 世界文学全集」(1、2 河出書房新社)▽特別賞=五木寛之「親鸞」(上下、講談社)

*101101 「ワンピース」2億部 最新巻初版は最多340万部発行 [朝日]
 海賊が活躍する尾田栄一郎さんの人気漫画「ONE PIECE(ワンピース)」が、4日発売の最新第60巻で累計2億部に到達すると集英社が31日発表した。同社には「ドラゴンボール」などの人気作があるが、1作品で2億部を突破したのは初めて。また、第60巻の初版発行部数340万部は、過去国内最多だった第59巻の自己記録(320万部)を更新する。

 同作は1997年から「週刊少年ジャンプ」で連載開始。海賊ルフィが主人公で、伝説の宝「ひとつなぎの大秘宝(ワンピース)」を目指して冒険するストーリー。同社によると、物語が中盤の山場を迎え、部数が増えているという。

*100716 芥川賞は赤染晶子さん、直木賞は中島京子さん [朝日]
 第143回芥川賞・直木賞(日本文学振興会主催)の選考会が15日、東京・築地の料亭「新喜楽」で開かれ、芥川賞に赤染晶子(あかぞめ・あきこ)さん(35)の「乙女の密告」(新潮6月号)、直木賞に中島京子(なかじま・きょうこ)さん(46)の「小さいおうち」(文芸春秋)が選ばれた。どちらも初めての候補入りで決まった。副賞は各100万円。授賞式は8月20日午後6時から東京・丸の内の東京会館で。  

 赤染さんは京都外国語大学卒、北海道大学大学院博士課程(ドイツ文学)中退。2004年「初子さん」で文学界新人賞を受けデビューした。著書に「うつつ・うつら」がある。京都府宇治市在住。 

 受賞作は、京都の外国語大学でドイツ語を学ぶ女子学生が、課題とされた「アンネの日記」のドイツ語での暗唱に励む物語。指導にあたるバッハマン教授は人形を抱えて通勤する奇人で、「アンネの日記」をロマンチックに読むことを認めない。主人公は「すみれ組」と「黒ばら組」という派閥争いや密告などを体験することで、アンネの日記の本質を理解していく。 

 赤染さんは「私自身が生まれ育った京都の街をユーモラスに人に伝えたかったのが、小説を書くきっかけです。シリアスな『アンネの日記』と乙女のユーモラスな世界を対比させることで、日本でのロマンチックなアンネ像を疑おうと思いました」と話した。 

 選考委員の小川洋子さんは「アンネ・フランクを密告したのは誰かという問題を小説の中にとりこみ、個人のアイデンティティーの中にその答えを見いだそうとした巧妙な小説」と話した。 

 中島さんは東京女子大を卒業。ギャル系雑誌「Cawaii!」の編集などをしたあと1996年に渡米し、帰国後、フリーライターをしながら小説を執筆した。2003年、田山花袋「蒲団(ふとん)」を下敷きにした「FUTON」でデビュー。他に「ツアー1989」(06年)、「女中譚(たん)」(09年)などがある。両親とも仏文学者。 

 受賞作は、戦時中をおもちゃ会社の重役宅の「女中」として過ごしたタキが主人公。「奥様」の恋愛事件とともに、戦争下の暮らしが語られていく。タキが語る当時の様子と、後の世代の認識とのズレも浮き彫りにされる。 

 中島さんは、戦争をテーマにしたことについて「今書かないと実際に体験した人たちに読んでもらえない」と話した。受賞について「友人から『自由に書けるようになりますね』というメールを受けました。作家にとって受賞は大きいこと。一つハードルを越えたところで自由度を獲得できるのならすごくうれしい」と笑顔を見せた。 

 直木賞選考委員の林真理子さんは「戦前の暮らしというと悲惨なイメージがあるが、軽やかにモダンに豊かな文化を享有している中産階級の暮らしを、生き生きとリアルに描き出している」と評価した。 

*100720 講談社ノンフィクション賞に中田整一さん、堀川恵子さん [朝日]
 第32回講談社ノンフィクション賞が17日、中田整一さんの「トレイシー 日本兵捕虜秘密尋問所」(講談社)と堀川恵子さんの「死刑の基準――『永山裁判』が遺したもの」(日本評論社)に決まった。第26回講談社エッセイ賞には、長島有里枝さんの「背中の記憶」(講談社)と山川静夫さんの「大向うの人々 歌舞伎座三階人情ばなし」(同)が、同科学出版賞には柴田一成さんの「太陽の科学 磁場から宇宙の謎に迫る」(NHK出版)が選ばれた。賞金は各100万円。 

*100712 劇作家のつかこうへいさん死去 62歳 [朝日]
 劇作家のつかこうへいさんが死去したことがわかった。62歳だった。今年1月に肺がんを公表し、闘病生活を送っていた。 

 在日韓国人2世として福岡県に生まれた。慶大文学部中退。在学中から学生劇団で活躍し、戯曲「戦争で死ねなかったお父さんのために」(1971年)などを発表。劇団「暫(しばらく)」に加わり、「初級革命講座飛龍伝」(73年)などを上演した。73年に文学座で初演された「熱海殺人事件」で岸田戯曲賞を最年少(当時)で受賞。74年に劇団「つかこうへい事務所」を設立し、「ストリッパー物語」(75年)、「蒲田行進曲」(80年)などを演出し、「つかブーム」をまきおこした。 

 唐十郎、鈴木忠志など小劇場演劇の創始者世代に続く第2世代の代表格で、三浦洋一、平田満、風間杜夫、加藤健一ら実力派の俳優を育てた。82年に小説「蒲田行進曲」で直木賞を受け、以後小説に専念したが、89年に演劇活動を再開。最近は「飛龍伝」「幕末純情伝」などのシリーズ作に取り組んでいた。 

 映画化された「蒲田行進曲」(82年)で日本アカデミー賞の脚本賞を受賞。07年には紫綬褒章を受章した。 

 昨年9月にがんとわかり、抗がん剤治療を受けていた。入院先の病院にけいこのビデオを持ち込んで演技を指示するなど、最後まで舞台に意欲を燃やしていた。 

*100706 民族学者で文化勲章受章者の梅棹忠夫さん死去、90歳 [朝日]
 「文明の生態史観」をはじめ独創的な文明・文化論を展開した民族学者で初代国立民族学博物館長、文化勲章受章者の梅棹忠夫(うめさお・ただお)さんが、3日午前11時7分、老衰のため死去した。90歳だった。葬儀は近親者で行った。喪主は妻淳子さん。後日、「お別れの会」を開く。連絡先は大阪府吹田市千里万博公園10の1の国立民族学博物館。 

 1920年、京都市生まれ。昆虫採集の好きな少年で、旧制京都一中では山岳部に入り、それが人生を決めた。旧制三高時代に、中学の先輩で当時京都大にいた人類学者今西錦司さんらと登山や探検に熱中。進学した京大では動物生態学を専攻し、北部大興安嶺(現在の中国東北部)や内モンゴルなどを探検。野外調査を中心とする後の「梅棹学」の基礎を作った。 

 戦後は、大阪市立大助教授時代の55年、京大カラコラム・ヒンズークシ学術探検隊に参加。海外での調査を再開し、研究対象を人類学へと変え、学際的な研究で独自の視点を示してきた「京都学派」の推進役にもなった。 

 57年に「文明の生態史観序説」を発表。文明の盛衰を気候や地理学的な条件により生態学的に把握したユニークな学説だった。欧州中心の歴史観と一線を画し、日本とヨーロッパの文明を、それぞれ人類文化発生の地の縁に生まれるべくして生まれたと位置づけた。戦後の復興期を経て、日本が自信を取り戻し始めた時期に、新たな「日本論」としても注目された。 

 発想の才に恵まれ、いち早く「情報産業」という概念を提唱したほか、「知的生産の技術」(69年)などのベストセラーで時代を先取りした。 

 大阪万博をきっかけに政界や財界に働きかけ、国立民族学博物館を設立した。74年6月に初代館長に就任。その功績で87年度の朝日賞を受賞した。 

 同館長は93年春まで務めたが86年、突然失明。それでも執筆の意欲は衰えず、「梅棹忠夫著作集」全23巻が94年に完結した。 

 04年に肺がんなどで手術したが、この春まで毎週、顧問を務める同博物館に顔を出すなど元気だったという。 

*0411 作家・劇作家の井上ひさしさん死去 「吉里吉里人」など [朝日]
 軽妙なユーモアをたたえた優れた日本語で「吉里吉里人」「國語元年」など多くの小説や戯曲、エッセーを書き、平和運動にも熱心に取り組んだ作家・劇作家で文化功労者の井上ひさしさん(本名・井上廈〈いのうえ・ひさし〉)が死去したことが11日、わかった。75歳だった。 

 山形県小松町(現川西町)生まれ。5歳で父と死別し、経済的な事情から一時、児童養護施設で育った。仙台一高から上智大フランス語学科に進み、在学中から浅草・フランス座で喜劇台本を執筆。卒業後、放送作家となり、1964年にNHKの人形劇「ひょっこりひょうたん島」の台本を山元護久氏と共作し、鋭い風刺と笑いのセンスで注目された。 

 69年には劇団テアトル・エコーに「日本人のへそ」を書き下ろして本格的に劇作家デビュー。72年、江戸の戯作者(げさくしゃ)を描いた小説「手鎖心中」で直木賞、戯曲「道元の冒険」で岸田国士戯曲賞を受賞した。 

 東北の一寒村が独立してユートピアをめざす小説「吉里吉里人」(81年)をはじめ、「不忠臣蔵」(85年)、「東京セブンローズ」(99年)、戯曲「天保十二年のシェイクスピア」(74年)、「化粧」(82年)など、壮大な想像力と平明で柔らかな日本語を駆使し、大衆的な笑いと深い人間洞察を両立させた秀作を多数執筆。エッセーや日本語論でも活躍した。 

 83年には自作戯曲を上演する「こまつ座」を旗揚げ。「頭痛肩こり樋口一葉」(84年)、太宰治を描いた「人間合格」(89年)、林芙美子が主人公の「太鼓たたいて笛ふいて」(02年)などの優れた評伝劇や喜劇を次々と上演。97年には新国立劇場の開場公演「紙屋町さくらホテル」を手がけた。同劇場には庶民の戦争責任を問う東京裁判3部作「夢の裂け目」(01年)、「夢の泪」(03年)、「夢の痂(かさぶた)」(06年)も書き下ろし、10年4月から3部作連続上演が始まった。09年に初演した「ムサシ」が10年にニューヨークとロンドンで上演される。 

 04年には「九条の会」の呼びかけ人の1人となるなど護憲・平和運動にも積極的で、日本の右傾化に警鐘を鳴らし続けた。原爆で生き残った娘と亡父の交流を描いた戯曲「父と暮(くら)せば」(94年)は映画化もされた。 

 膨大な資料を渉猟後、ユニークな発想で創作するために筆が遅く、「遅筆堂」を自認。戯曲が完成せず公演の開幕が遅れることもたびたびあった。87年、故郷の川西町に蔵書を寄贈して「遅筆堂文庫」が設立された。 

 日本ペンクラブ会長、日本劇作家協会長などを歴任。直木賞、岸田戯曲賞、大佛次郎賞などの選考委員を長年つとめた。99年の菊池寛賞、00年度の朝日賞など受賞多数。04年に文化功労者、09年には芸術院会員に選ばれた。 

 09年10月から体調不良のため静養していた。 

*100626 小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞決まる [朝日]
 第9回小林秀雄賞と新潮ドキュメント賞(新潮文芸振興会主催)の選考会が26日にあり、小林秀雄賞は加藤陽子氏の「それでも、日本人は『戦争』を選んだ」(朝日出版社)に、新潮ドキュメント賞は熊谷晋一郎氏の「リハビリの夜」(医学書院)
リハビリの夜 (シリーズケアをひらく) [単行本]
by 熊谷 晋一郎 (著) 
脳性麻痺の医師が身をもって示す身体論

に決まった。授賞式は10月1日、東京・虎ノ門のホテルオークラで。

*0107 米大手誌の日本離れ加速 「タイム」東京支局を閉鎖 [朝日]
2010年1月7日7時47分
 広告収入の低迷で、米国大手誌の「日本離れ」が進んでいる。米大手総合誌の「タイム」は米国内外で進めている拠点整理の一環として、8日に東京支局を閉鎖する。世界的にネットを利用したメディアが台頭していることが背景だが、日本からの「発信」を心配する声も出ている。 

 関係者によると、東京支局は終戦直後の1945年に開設された。現在は東京・六本木ヒルズにある。東京支局の編集部門を閉鎖し、常駐の特派員1人と編集スタッフ1人は解雇するという。同誌の広報担当者は「非常勤記者や日本の専門家を雇い、日本の取材は通常通り続ける」と説明しており、日本での販売や広告部門などは存続する。 

 昨年春には、米大手誌「ニューズウィーク」も東京支局を閉鎖。同12月には、経済誌「ビジネスウイーク」が米金融情報大手ブルームバーグに買収されたのを機に、東京支局の編集部門を同社に統合している。 

 相次ぐ米誌の撤退について、米紙ワシントン・ポストの記者経験がある石澤靖治・学習院女子大学教授(メディア関係論)は「米国の活字メディアの業績低迷、日本のニュース価値の低下、中国の台頭という三つの背景がある。日本に深い理解を持つ在日経験のある記者が減ることは、日本にとっての損失だ」と話している。(五十嵐大介) 
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