「ところでさー、お前って何でUGNやってんだ?ムグムグ」
「何よ、いきなり」
 じゅううう、という音とともにいい匂いで肉が焼けていく。
「そっすよねー、とてもじゃないけど善良とはいえないっすよね、水橋さん」
「だよなー。何て言うか、というか何も言わなくてもどう見たって私達側だろおまえわー」
「……あんたら、私のことを何だと思ってるのよ」
 グラスの中の液体が口に流れ、こくり、と喉を通る。
「逆らうと怖い人」
「抗えない人」
「そうか、わかった正座しろ」
「ほらみろ! そういうところがどう見たってUGNじゃない! さっきまでの穏やかなふいんきが一気に戦場の空気になった!」
「……あんたらが喧嘩売ってきてるんでしょうが」
 ガタガタと音を立て、騒ぎ始める春日と水橋。
「……うるさい奴らだ。静かに食うこともできないのか」
 その中、一人黙々と肉を食べ続ける男性。
「そういうお前もお前だ! 何でよりにもよってお前みたいなやつがこの支部来てるんだよー!」
「もう二人のせいで全然正義のUGN(笑)っすよねー。あ、茅原さんこれも焼いといてくれます?」
「え、あ、はい。……あれ、もう焼いたの食べ終わっちゃったんですか?」
「ええ、いつの間にかモグモグされちゃったんですよ」
「……」
 モグモグ。
「ホントUGNは変な奴ばっかだなー。そんなに肉ばっか酒ばっか飲んでてよく飽きないな。だからそんな外見してるのか? そうなのか?」
「私より肉体的にも精神的にも幼いガキに言われたくはないわ、ガキに」
「私は成長途中のレディーだぞー!!」
「ダメっすよ水橋さん! リーダーこれでも気にするんすから、いっちょ前に」
「……」
「あの、鳴神さん……私も食べてもいいですか?」
「私に許可を取る必要はないだろう。好きにしろ」
「……はいっ」


「UGNに入った理由か。……あのころが、懐かしいな」
「めずらしいな、お前が回想に耽るのも。さっきのバカどもに感化されたのか?」
「そうかもね。私はあなたみたいに心のできた人間ではないわ。お気に入りを導くような、ね」

「UGNの考えに共感した、っていうのも間違いではない。レネゲイドの力が日常を壊そうとしていることに危惧しているのも間違いではない。……けど、既に日常が汚されている者がそれを得た時、そこに光を見出したらどうなるでしょうね」
「……興味ないな」
「言ってなさい。欲望にまみれた、美しき忠犬が」
「酔うのはそれまでにしておけ。欲の隠しきれぬ卑しき駄犬が」
 液体が喉を通る音。肉を食む音。静かながらも、感じる気配。


「……良いなぁ、支部長。鳴神さんの笑顔を自然と引き出せて」
「おっまえあれ見てどこに笑顔要素があるんだよ!! あれ見て笑顔って言えるのなら私たちのセルの笑顔は何なんだ!」
「とりあえず、俺たち肉やいて酒持ってきましょ。どちらか切らせたら殺される、マジで」

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2011年07月14日 23:28