「はい、皆さん集合!」
「にー、何言ってるですか。もう集まりきった後なのです」
「オレンジ、今更彼女に何を言っても無駄でしょう。何せ彼女は、メリーなのですから」
「てか、メリーが来るのいちばん遅かったよねー。えっと、30分?」
「ちょっと、会うなり何言ってるのよ! 久しぶりの再会なのよ!」
「何を言っている? はぁ、どうやら年のせいで耳が聞こえなくなっているようですね」
「ボクらは普通より聞こえやすいので、レモンの声も聞こえやすいのです」
「いやいやいやいや! 聞こえなかったじゃないから! 何で会うなりこんな扱いされてるの!?」
「みんな、メリーのことが好きなんだね!」
「審議中」
「審議中を口に出すな、ブラウン! ……んー、ごほん。今回はみなさんに集まっていただき感謝」
「従者!」
「メリーさん!」
「あーもー、うるさいーっ!! 話を聞きなさーいっ!!」
「……にー」
「んっ。この度、あなたたちに重要な任務を課そうと思います」
「はい! 今度は何をひっ倒せばいいんですか!」
「レモン、話を最後まで聞いてから質問してね」
「にー、おやつはバナナに入るのですか?」
「……もしかして、プランナーのことですかね? あなたが重要と称することは、たいてい彼女が関わってますからね」
「ええ、オレンジの質問はほっときましょう。今回、あのサンジェルマンの計画に、重大な綻びを発見しました。それをどうにかしないといけません」
「……都築が、ですか? また変なことに関わりあうのは勘弁なのです」
「プランナーとメリーのいざこざは今に始まったことじゃありませんが……ずいぶん久しぶりですね。7年ぶりでしょうかね?」
「プランター? 都築? 誰だっけ?」
「プランターじゃないですよ、レモン。紙に印刷する機械なのです」
「オレンジ、それを言うならプリンターだ。メリーが言いたいのは重圧を感じているときのこと」
「それはプレッシャー。てか離れてる! 離れてる!! 私の言うことを最後まで聞きなさい!」
「にー。何か集合時間に遅れた重罪人がごちゃごちゃ言ってるです。どう思いますか、レモン」
「わたしは40分前に集まった! 遅刻しちゃだめって前メリーに言われたからね!」
「ふむ、そういうことができるのはいい女になるための必須ですからね、レモン」
「えへへ、ブラウンに褒められた」
「で、教えた人(笑)の言い分は何かありますか? まあ、無いでしょうけど」
「う、ぐぐ、それは、その」
「にー、新品の素敵なステッキです。いったいどこで買ったのですか?」
「この素敵なステッキは、本場イギリスで買ってきました。お値段もそうそう、材質もそうそう。しかしこの手馴染み感はすばらしいッ!」
「その割には、ステッキの下の方、汚れが付いてるです。大方散歩してきたら遅れたってことですか」
「……話をしましょう。あれは今から36万……いや、1万4千年前の……」
「あ、逃げた」
「つまり、その人形を奪い取って来いと」
「ええ、そう。あの人形は今のまま放置していては世界が危険で危ないわ」
「……まだ都築のせいにしているですか?」
「いいえ、サンジェルマンはもう悪くはありません。というか、もはや悪しきものはいないでしょう。……とはいえ、責任という物は消えないからね」
「??? 人形とプリンとメリーに何かあったの?」
「プランナー。そういえば、レモンは知らないんでしたね。……まぁ、知らないほうがいいでしょう。大人には色々あるってことですよ」
「うー、ブラウンそうやってすぐ人を子供扱いする!」
「私たちはまだまだ幼いのですよ。あの二人と比べればね」
「ブラウンの言うとおりよ。それに、知らないほうがいいことだってあるわ。……そう、知らないほうがいいことが、ね」
「……にー、それはレモンがメリーのティーバックをびりびりに引き裂いたのを埋めて隠したとかですか?」
「おいカメラ止めろ」
「えへへ、ごめんねメリー。いい匂いだったからおいしいかと思って」
「反省しろこのド低能がアァーーーッ!!!」
「……話が進みませんな……」
「にー。普段むちゃくちゃだけど、ツッコミに回すと至極まともなのです」
「というわけで、こいつらを張って、隙あらば人形を奪い返しなさい。手段は問わず、殺しはせず、よ」
「うゆ、この人たちも首の骨折っても死なない人たちだよね?」
「死なないけど、やりすぎちゃダメよ。死なないけど恐怖は残る。恐怖が残れば人は死に生きる」
「まあ、僕はやりたいようにやるです。レモンもやりたいようにやるですよ」
「その通り。もし何かあれば、私に連絡しなさい。ちゃんと、カバンは持っておくんですよ」
「大丈夫! この中に人形の写真もあるし!」ポンポン
「しばらく、レモンのほわほわふかふかに包まれるのもお別れなのです」
「大丈夫よ、街の外には離れないと思うわ。感情を引きよせるように、私たちも引き寄せられる。サンジェルマンが太陽ならわたしは月と同じ様。重力の関係よ」
「さっきから聞いた覚えのあるセリフ多いです、メリー。幽波紋でも学んできたですか?」
「どちらかというと食い物にしてきたわね。さあ、行きなさいみんな!」
「はーい!」
「にー」
「了解です」
「……これでいいのよ、これで。私には、その義務がある」
「……とはいえ、一人で抱える必要はありません。故の彼女だったのですから」
「ブラウン、あんたまだ行ってなかったのね」
「足が遅いモノで。それに、二本足で立っているのが私には楽しくてしょうがない」
「サンジェルマンが生み出したものはその手を離れ、そしてどこに向かうのか……ああ、彼女の考えていることに近づけない、近づかせない。同じ気持ち、わかるでしょう?」
「わかりますとも、痛いほどに。だからあなたは私を手に入れた。プランナーが同じことをしたように」
「……遠い昔のこと。清算が今になっただけのこと」
蓬莱。輪廻。回り巡って二人の元に辿られないようにしなければ。
最終更新:2010年12月16日 22:57