「宮野ちゃんの、3分クッキング~」
「……いいから始めなさいよ」
「何言ってんですか支部長! 料理もできない、掃除もできない、お皿洗いもできない支部長がめずらしく料理を教えて、って言ってんですよ! こりゃあテンションあげて行かないと何が起きるかわからないじゃないですかぁ!」
「……何この散々な言われよう。しかも反論できないし。そりゃたしかに包丁も握ったことなかったけど……」
「ちょっと形状と使い方を聞けば包丁の使い方くらいわかると思ってましたよ。でもお肉切れなくて両手でうんうんと無理やり押しきろうとしてた人が、それ以降何年も調理場に立ってない人が料理を教えてって言ったんですよ!」
「もういい、わかったから……これ以上言われると泣くわよ」
「ごめんなさい。右足ぐりぐりしながらそんなこと言わないで~」
「というわけで、バレンタインのチョコレートを手作りで。支部長、チョコはあるんですよね?」
「もちろん、ハイこれ」
「……あれ? 小分けチョコ? これ、市販のチョコじゃないんですか?」
「もらいもの。一つ食べたけど苦くって。これ使って作れば経費も浮くし、まあ挑戦にはいいかなぁと」
「ほへー。まあ手作りチョコレートとかはこの後味の調節するんであんまり変わらなかったりしますけど(もぐもぐ)うん、確かに苦い。けどおいし~」
「……何食べてるのよ。早く教えてちょうだい」
「急いては事を損じます。まずは心を落ち着かせてからです。これはチョコと自分を深めあってるわけであっておいしそうだから食べているのとは無関係もぐもぐ」
「心を落ち着かせるお勧めの方法があるのだけれど」
「痛いッ! 痛い痛い!! ごめんさい、すぐに最初のステップに入りましょう!」
「まずはチョコレートを細かく刻んで」
「えっ……と、こう?」
「あー、もっともっと細かくしてくださいよ。これじゃ大きすぎます。私の小指くらいあるじゃないですか」
「やっ、やっ、んっ」
「というか小分けサイズで小さいからやりづらいんですよ。板チョコとかもっと普通のなかったんですか?」
「あったけどさ、細かくするのは知ってたから。最初から小さければやりやすいと思って」
「まーそうですけど。あー、削るようにチョコの斜めからやるとやりやすいですよー」
「次は湯煎で溶かして、後は好みに調整して固めたりすれば完成です。簡単でしょ?」
「これなら私でも次から一人でできそうね。ボウルにお湯入れて」
「卵片手割りできないとダメで、ちょま、熱湯のままつけちゃダメ!!」
「え? 溶かすんでしょ?」
「そうですけど、あっためすぎると風味が飛んでっちゃってただのカカオペーストになっちゃいますよ!」
「でもそのあと味つけるんじゃない。一緒よ一緒」
「がー! 素人考え!! そうやって適当に作る女が多いから飯マズスレが今も後を絶たないんです!!」
「……その姿勢、仕事にも活かせないの? 宮野」
「活かしてますよ仕事してますよッ!? 昨日だって何人病院行けない人たち治療してたと思ってるんですか!?」
「いや、そうだけどね。だったら普段の事務仕事もしなさいよ。あんたにまかせると確実に能率落ちるの。わかる?」
「い、今は料理をしましょう! ほら、チョコレートにちょうどいい温度になってますよ!」
「……」
「で、後は溶かしながらまぜまぜして、生クリーム入れたりミルク入れたり。元がカカオ分濃かったんで多めに入れるといいかもしれませんね」
「これくらいでいいかしら」
「うんうん、それくらいです。何て言うか、入れる前からいい匂いでしたね。これ、どこのチョコです?」
「ああ、確か箱に書いてあったわね……えーっと、のか?」
「のか?」
「のか。ほら、これ」
「ほああーーっ!? NoKAじゃないですかーッ!! これ一箱5桁する奴ですよーーッ!!」
「あ、そうなの? 坂江田さんからの贈り物、この時期は毎年これだったからどうとも思ってなかったわ」
「組長さんカワイソス……ああ、そのままでも本命になりうるチョコが……今私の目の前でドロドロに溶けて生クリームぶちまけられている」
「ねえ、次教えてくれないと進めないんだけど」
「教える気が……はい、次はですね……」
最終更新:2011年02月15日 02:14