「……ねぇ、マシュ……本当にハワイだよね、ここ……」
『……はい、間違いなくハワイですね……』
現在のハワイ島でいうプナ地区にあたる地域。
そこで藤丸達が見たのは……
⇒「まるで温泉街……」
「まるでハワイアンズリゾート……」
その当時のハワイでは絶対に感じられない光景であった。
整備され整った様相はまさに温泉街。
マシュに何度も確認を取った。
その度にマシュも戸惑ったような様子を見せた。
しかし、何度確認を取ったところで答えは変わらなかった。
「……にしちゃ、人の気配がねぇな。
京の街だったら行商人とかガキの一人や二人は歩いているはずだぜ」
「そうですね。あっ、とりあえず、そこの饅頭屋に行きましょう」
『名物 布哇饅頭』と幟に思い切り書かれていた。
「布哇饅頭……?」
⇒「……明らかに怪しくないか?」
『確かにそうですね、この時代に饅頭屋……』
「カメ公、なんか知ってるか?」
「いえ、アタシもここに来たのは初めてですから」
「Xさん、ストッ……」
その藤丸の言葉を華麗にスルーしてヒロインXは饅頭屋に突っ込む。
そして、勢いよく店の戸を開けた。
「イラッシャイマセー」
「うわあああああああ、新宿のヤクザAだあああああああああ」
「ヤクザ? チガウチガウ、テンチョーデース」
ぱっと見の見た目からして、その手の人に見えた。
だが、人を見た目で判断してはいけない。
それはサーヴァントも同様だ。
「あっ、そうですか、ならこの布哇饅頭を100個ほどください」
「スミマセン、『布哇饅頭』はウリキレネ……ゴメンナサイネー」
「そうですか……」
心底残念そうなヒロインX。
しかし、藤丸は気を取り直してその自称店長に話を聞く。
「すみません、私たち、最近ここに来たばかりなんですが……?」
「……最近、ここに来ただとォ~~? テメェらどこから来たァ!」
自称店長の雰囲気が明らかに変わった。
ここは……正直に話すことにした。
だが……
「ん、明らかに怪しい槍を持った女ァ!!
連合軍の奴らから聞いた通りの見た目だなァ、おい!」
「ッ!? ここは連合軍の手に堕ちていたのか!?」
「あァッ!? 堕ちたも何もここは最初から『連合軍の支配下』だってーの!」
「なにィ!?」
藤丸が正直に話そうとしたら、先手を取られた。
おかしい特異点だと思ったが、街人まで様子がおかしかった。
これは情報収集するどころではない。
「とりあえず、捕まえる……行け!」
どうせ、出てくるのはヤクザ達だろうと思った。
なんせ、自称店長の見た目が完全に新宿四丁目に出てきたヤクザ。
だが、新宿のヤクザは全員キャスターである。
こちらには防御が若干薄い金時とヒロインX。
宝具が使えないというカメハメハ。
手厳しい戦いになであろう……。
――――だが、その考えは刹那で打ち砕かれた。
「キメラ!? なんでここに!?」
「俺のペッド達だ! 可愛いだろォ?」
「ふざけんな!!!!」
ようこそ、キメラパークへ。
右からもキメラ。
左からもキメラ。
前からもキメラ。
後方にはギリギリで退路。
「よし、ここは逃げる!!!」
「オーケイ!」
「相手がセイバーでない以上、仕方ないですね」
「え? 戦わないの?」
三十六計逃げるに如かず。
うだうだ言うカメハメハを藤丸はひょいと抱え上げて、店から退散する。
ちなみにカメハメハが持っていた槍は金時が持っていく。
全速力で街から出ていく。
こんなときにゴールデンベアー号があったらなと思ったがないものをねだっていても仕方ない。
「くっ、一体何が……どうなっているんだ!」
「それはアタシも聞きたいです……」
街では大した情報も得られなかった。
だが、とにかくこのハワイはもはやハワイではないということはわかった。
『んーだったら【特異点 布哇】といったところだね』
「ダ・ヴィンチちゃん、何かわかったの……?」
『とにかく、その特異点が特殊で異質な場所ってのはわかったよ』
それは現地にいる藤丸の方がよく分かっている。
どこに行くべきか……行ったらいいのか……
まるで詰むまであと二、三歩というとこに立たされているようであった。
最終更新:2017年05月21日 02:47