ハイキングウォーキング(1)

「……で、これからどうするよ?」

 金時がこの微妙に重い空気のなかで口を開く。
 街はいきなり出禁を喰らったような状況。
 人が集まりそうなところを探そうにもその宛てがない。

「前に進むしかないですね」

⇒「あの山?」
「あのう……前には山しかないんですが?」

「なるほど、あえて人が寄り付かないところに本拠地をしている。
 ……アサシンらしいですね、一理あります。
 そうですよね、藤丸君」

 藤丸はあえて突っ込まない。
 金時も勿論突っ込まない。
 カメハメハはまだ気づいていないので突っ込めない。

「あの山って活火山じゃない……?」
『先輩、そうですね、この時代のハワイは大体が活火山ですね』

 この時代のハワイは火山がかなり頻度で噴火を起こしている。
 カメハメハ大王でもハワイ統一に何年もかかったのは大体この影響である。
 『人』は『地』に弱いのだ。

「危険な道だね」
「そのためのオレっちだろ?」

⇒「頼りにしてるよ!」
「ゴールデンも人の英霊じゃん?」

「おう、任せな!」
「おっと、私も居るのをお忘れなく」

 頼りになる金時。
 まあ言動がアレではあるが頼りになるヒロインX。
 そんな中、一人カメハメハは少し暗い顔をする。

「どした、カメ公?」
「いえ、お二人に比べたらアタシなんか……」
「カメちゃん、卑屈は良くないですね。
 どんな形であれ、英霊として召喚されたならば堂々と立ち振る舞うべきです。
 例え生前とかに苦戦していたとしても、『一歩も引けを取らなかった』と言っておけば……」

⇒「Xさん、ストップ!」
「やめよう、悲しみしか生まない!」

 ……成り行きとはいえここに連れてこざるを得なかったので仕方なかったが……。
 こう二行目くらいで真面目に話が進まなくなると藤丸としては頭が痛くなる。

「まあ、カメハメハもXさんほどではないけど、少しは自信を持った方がいいんじゃない?」
「………そうですね、はい、そうしてみます!」

 槍を力強く握り、担ぎ上げる。
 藤丸の言葉で少しは立ち直ったようだ。

「そういえば、そのカメちゃんを倒したセイバーっていうのは?」
「まるでバーサーカーみたいな戦い方をするセイバーでしたね。
 ……剣を使わずに殴ったり、蹴ったりしてきました……」
「それはセイバーらしくない戦い方ですね……セイバーたるもの使うのは己の剣一本!
 セイバーなら他の武器や己の拳や足を使うなんて邪道です!!」

 自分の息子に同じ事を言ったら即斬り合いが始まりそうだった。
 いや、ちゃんと息子扱いしている分あっちよりも嬉しそうに始めるのでは?
 そう、少しだけ藤丸は考えた。
 だが、今はそんなことを考えてるわけにいかない。

「いえ、そのセイバーは自らを『外道』って言ってました。
 勝つためなら手段を選ばないという感じでしたね」
「それは理性があるバーサーカーですね」
「それと『鬼』というものを相当憎んでいるようでした……」

⇒「鬼?」

「はい……まるで『鬼』を見つけたら絶対殺すという眼をしていましたね」
「なるほど、私が他のセイバーを見つけたら絶対倒すのと同じ原理ですね!」

「それは違うよ!」
⇒「……鬼は全てを奪うからね」

「大将、よく分かってんじゃん?」
「まあね、これはゴールデンの影響じゃないかな……」
「キントキさん……貴方も鬼が嫌いなんですか?」
「まあな、つーか、カメ公! オレっちのことはゴールデンって呼びな!」
「あっ、はい……じゃあ、ゴールデンさん!」
「おう、それでいい!」

「他に特徴は?」
⇒「他の連合軍のサーヴァントは?」

「アタシが見たのは……軍服を着たキャスターでしたね。
 戦闘はしなかったんですが……何か魔術師という雰囲気は全くなかったですね。
 あとはどれだけのサーヴァントがいるのか分かっていない状況ですね」
「そっか……」
「他にセイバーはいませんよね?」

 そのような会話をしつつ、道中に出てくるワイバーンやら、ウェアウルフやら
 ゴーストやら、ゴーレムやら、キリングドールやらをしばき倒しながら進んでいった。

『先輩……先程から出てくる敵がごちゃごちゃすぎません?』
「わからない……私は雰囲気で前に進んでいる」

 目指す山―――マウナ・ロア山まではまだかかりそうだ。


BACK TOP NEXT
薄氷を履み続けるが如し 自由大国異伝"布哇" ハイキングウォーキング(2)

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2017年06月05日 01:43