「派手に行くぜ……!」
鉞から放たれる雷。
「吹き飛べ……」
装填されたカートリッジが射出され、その力が解放される。
金時の怪力なくしては操れない鉞『黄金喰い』。
正式名称及び真名不明だが、坂田金時の宝具だ。
「必殺……『黄金衝撃』ッ!! 」
吹き飛ぶ敵エネミー(巨大ゴースト)。
宝箱から大量のクォンタムピースが手に入る。
それを素早く回収する藤丸。
「一丁あがりだぜぇ! 大将!」
『……先輩。やはりここの特異点おかしいですよ!』
「全然わからない、私たちは雰囲気で前に進んでいる」
「確かに盾子……マシュの言う通りですね。さっきからセイバーのエネミーが出てきません」
『そういう話ではないです』
山に近づけば近づくほど道は険しく。
敵はだんだんと強くなって来ている。
まるで彼女たちの行く手を阻むように。
⇒「もう少しで目的地の山の麓だよ」
「ハワイ、怖い」
罠である可能性も十分にあった。
しかし、今は前に進むしか道はない。
「くっ、道中に罠を仕掛けるなんて姑息なアサシンだ」
「全くですね、これだから、アサシンというクラスは……」
「いや、こんだけ陣地をがっちり固めているってことはキャスターって可能性も……」
「つまり、『二重召喚(ダブルサモン)』という奴ですか?」
⇒「なるほどね(とりあえず、そういうことにしておこう)」
「マシュ、『二重召喚(ダブルサモン)』って?」
果たしてこの道中の大量のエネミーはアサシンが仕掛けたものなのか?
藤丸たちが考えても仕方ない。
考える前にまずは行動を起こす。
出たとこ勝負もいいところだが、それしか手段がない。
「なあ、大将?」
「どうしたの?」
「……なんか臭わねぇか?」
⇒「この匂いは……!」
「温泉!」
鼻を刺激する独特の匂い。
温泉地でよく漂っている匂い。
「温泉……温泉卵……藤丸君、お腹がすきました」
「確かにね……さっきの街じゃそれどころじゃなかったしね」
「……すみません、ですが、今はご飯どころでは……」
「カメちゃん、『腹が空いては戦は出来ぬ』という言葉をご存知ですか?」
「確かにな、カメ公、メシってのは重要だぜ」
「つまり、ゴールデンさんの力の源はご飯……!」
「まあ、そうだな」
一先ずは食べられそうなものを探す。
この面子で何か料理が出来るかはさておき、食材を探す。
ゲイザーは食べたことがあるが、スプリガンは食べたことはない。
だが、出来ることならばまともに食えるものがあったらいい。
「さて、行……!?」
「フジマル!?」
特に何もないところを歩いているはずだった。
藤丸が地面に落ちて、消えた。
罠として古典的な落とし穴だ。
落ちる。
転がるように落ちる。
目が廻る。
脳が揺さぶられる。
天と地がひっくり返るような感覚が襲う。
ゴロゴロと掘られた穴を転がり続ける。
『もし、この先に剣山とかあったら即死する』だろう。
余裕ではないはずなのに、おかしなことを考え始めた。
きっと、ヒロインXがこの場にいるおかげだろう。
彼女が出てくると9割くらいの後で思い返せば与太話になる。
だから、次には……
ドボン、という大きな音が響いた。
⇒「ここは温泉……」
「いい湯だなぁ……」
これが幸運なのかどうかはわからない。
音が反響しているということは地下空間なのだろうか?
それはそれとして、着ていたカルデアの制服がびしょびしょになった。
「藤丸君! 生きてますか!!」
「大将! 無事か!?」
「フジマル!!」
落ちてきた穴の先から声が三つほど聞こえてきた。
しかも、近づいている……。
つまり……
「3・2・1……はい!」
ドボン!
ドボン!!
ドボン!!!!
三つほどまた大きな音が響いた。
三人全員で地下の温泉に落ちてきた。
「……どうやら、無事みたいだな」
「まあね」
「それよりもここは何なんですか?」
「温泉ですね、温泉饅頭はどこですか?」
服を乾かしたいが、今のこの状況。
特に金時がやばい。
なんせ周りが女子三人というこの状況。
そんな中に思考が小学生男子並みの男一人。
その時である。
「おや、こんなところにお客さんかな」
「!?」
『先輩、この霊基は……』
⇒「ハワイのアサシンか……!」
「日本刀持ってるし、貴方、きっとセイバーだな」
藤丸達の前には日本刀を持った男。
その背中には大鎌とどこかで見たことがある薙刀。
「声が聞こえたから来てみれば可愛らしいお嬢さん方三人……
それと……君はどこかで……」
「ア、アンタは!?」
「ん、その声といい、体形といい……誰かと思えば金太郎君じゃないか、久しぶりだね」
「このセイバーはゴールデンボーイの知り合いですか?」
「僕はセイバーじゃないよ……この日本刀は武士としての嗜みさ。
そこの赤い髪の子が言う通り僕はこの聖杯戦争に『暗殺者(アサシン)』のクラスで呼ばれた者さ」
「いや、アサシンってアンタほどの男が……」
⇒「で、ゴールデン、このアサシンは誰なの?」
「この人はオレっちを源頼光四天王にスカウトした……碓井貞光サンだよ!」
「えっ……『碓井貞光』……って?」
「ハハハ……やっぱりそうなるよね……」
藤丸の容赦のないその一言にそのアサシン――碓井貞光は苦笑した。
最終更新:2017年06月11日 22:24