ハイキングウォーキング(2)

「派手に行くぜ……!」

 鉞から放たれる雷。

「吹き飛べ……」

 装填されたカートリッジが射出され、その力が解放される。
 金時の怪力なくしては操れない鉞『黄金喰い(ゴールデンイーター)』。
 正式名称及び真名不明だが、坂田金時の宝具だ。

「必殺……『黄金衝撃(ゴールデンスパーク)』ッ!! 」

 吹き飛ぶ敵エネミー(巨大ゴースト)。
 宝箱から大量のクォンタムピースが手に入る。
 それを素早く回収する藤丸。

「一丁あがりだぜぇ! 大将!」
『……先輩。やはりここの特異点おかしいですよ!』
「全然わからない、私たちは雰囲気で前に進んでいる」
「確かに盾子……マシュの言う通りですね。さっきからセイバーのエネミーが出てきません」
『そういう話ではないです』

 山に近づけば近づくほど道は険しく。
 敵はだんだんと強くなって来ている。
 まるで彼女たちの行く手を阻むように。

⇒「もう少しで目的地の山の麓だよ」
「ハワイ、怖い」

 罠である可能性も十分にあった。
 しかし、今は前に進むしか道はない。

「くっ、道中に罠を仕掛けるなんて姑息なアサシンだ」
「全くですね、これだから、アサシンというクラスは……」
「いや、こんだけ陣地をがっちり固めているってことはキャスターって可能性も……」
「つまり、『二重召喚(ダブルサモン)』という奴ですか?」

⇒「なるほどね(とりあえず、そういうことにしておこう)」
「マシュ、『二重召喚(ダブルサモン)』って?」

 果たしてこの道中の大量のエネミーはアサシンが仕掛けたものなのか?
 藤丸たちが考えても仕方ない。
 考える前にまずは行動を起こす。
 出たとこ勝負もいいところだが、それしか手段がない。

「なあ、大将?」
「どうしたの?」
「……なんか臭わねぇか?」

⇒「この匂いは……!」
「温泉!」

 鼻を刺激する独特の匂い。
 温泉地でよく漂っている匂い。

「温泉……温泉卵……藤丸君、お腹がすきました」
「確かにね……さっきの街じゃそれどころじゃなかったしね」
「……すみません、ですが、今はご飯どころでは……」
「カメちゃん、『腹が空いては戦は出来ぬ』という言葉をご存知ですか?」
「確かにな、カメ公、メシってのは重要だぜ」
「つまり、ゴールデンさんの力の源はご飯……!」
「まあ、そうだな」

 一先ずは食べられそうなものを探す。
 この面子で何か料理が出来るかはさておき、食材を探す。
 ゲイザーは食べたことがあるが、スプリガンは食べたことはない。
 だが、出来ることならばまともに食えるものがあったらいい。

「さて、行……!?」
「フジマル!?」

 特に何もないところを歩いているはずだった。 
 藤丸が地面に落ちて、消えた。
 罠として古典的な落とし穴だ。

 落ちる。
 転がるように落ちる。
 目が廻る。
 脳が揺さぶられる。
 天と地がひっくり返るような感覚が襲う。

 ゴロゴロと掘られた穴を転がり続ける。
 『もし、この先に剣山とかあったら即死する』だろう。
 余裕ではないはずなのに、おかしなことを考え始めた。
 きっと、ヒロインXがこの場にいるおかげだろう。
 彼女が出てくると9割くらいの後で思い返せば与太話になる。

 だから、次には……

 ドボン、という大きな音が響いた。

⇒「ここは温泉……」
「いい湯だなぁ……」

 これが幸運なのかどうかはわからない。
 音が反響しているということは地下空間なのだろうか?
 それはそれとして、着ていたカルデアの制服がびしょびしょになった。

「藤丸君! 生きてますか!!」
「大将! 無事か!?」
「フジマル!!」

 落ちてきた穴の先から声が三つほど聞こえてきた。
 しかも、近づいている……。
 つまり……

「3・2・1……はい!」

 ドボン!
 ドボン!!
 ドボン!!!! 

 三つほどまた大きな音が響いた。
 三人全員で地下の温泉に落ちてきた。

「……どうやら、無事みたいだな」
「まあね」
「それよりもここは何なんですか?」
「温泉ですね、温泉饅頭はどこですか?」

 服を乾かしたいが、今のこの状況。
 特に金時がやばい。
 なんせ周りが女子三人というこの状況。
 そんな中に思考が小学生男子並みの男一人。 

 その時である。

「おや、こんなところにお客さんかな」
「!?」
『先輩、この霊基は……』

⇒「ハワイのアサシンか……!」
「日本刀持ってるし、貴方、きっとセイバーだな」

 藤丸達の前には日本刀を持った男。
 その背中には大鎌とどこかで見たことがある薙刀。

「声が聞こえたから来てみれば可愛らしいお嬢さん方三人……
 それと……君はどこかで……」
「ア、アンタは!?」
「ん、その声といい、体形といい……誰かと思えば金太郎君じゃないか、久しぶりだね」
「このセイバーはゴールデンボーイの知り合いですか?」
「僕はセイバーじゃないよ……この日本刀は武士としての嗜みさ。
 そこの赤い髪の子が言う通り僕はこの聖杯戦争に『暗殺者(アサシン)』のクラスで呼ばれた者さ」
「いや、アサシンってアンタほどの男が……」

⇒「で、ゴールデン、このアサシンは誰なの?」

「この人はオレっちを源頼光四天王にスカウトした……碓井貞光サンだよ!」
「えっ……『碓井貞光』……って?」
「ハハハ……やっぱりそうなるよね……」

 藤丸の容赦のないその一言にそのアサシン――碓井貞光は苦笑した。


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最終更新:2017年06月11日 22:24