LOUDER

「おい、ライダー……!」
「どうしたッ!! セイバーッ!!!」
「なんでここに『鬼』がいんだよ!!」

 セイバーは自分よりも遥かにでかい鬼を叩き斬った。
 まるで鬱憤を晴らすかのように豪快に。

「鬼ではないッ!!! これはオーガだッ!!!」
「そんな変わんねえんだよ、鬼の匂いがプンプンしやがんだよ……!」

 セイバーとキャスターはハワイ本島でライダーと合流した。
 その直後だったか、数多くのエネミーがセイバー達の前に立ち塞がった。
 これはライダーが自分で召喚したものだった。
 しかし、それらを(主にセイバーが)片っ端から斬っていった。

 セイバーは迫りくる鬼を殴り殺した。
 蹴り殺した。
 投げ殺した。
 絞め殺した。
 すり潰した。
 斬った。
 斬った。
 斬り刻んだ。
 鬼を情け容赦なく殲滅した。

「なぁ、コイツら呼んだのはテメェなんだろ?」
「そうだよッ!!!」
「ライダーのテメェがなんでこんなこと出来んだよ!!」
「それは吾輩が可能だと思えば可能だからだッ!!! 造作もないことだッ!!! 」
「それはテメェのスキルか……それとも宝具か?」
「フハハハハハッ!! 面白いことを申すな、セイバーッ!!
 いいだろう!! もうこの戦いも少しで終わるだろうしなッ!!
 答えよう!!! これが吾輩の宝具だッ!!!」

 うるさい上に常にテンションが高い。
 そして、リアクションがかなりオーバーすぎる。

「あーあと一々、声がでけぇ、人と話す時くらい馬から降りろ……」
「フハハハハハハハッ!!!! 馬に乗ってた方がカッコイイだろッ!!!
 それとこやつは……否ッ!! 我が愛馬『マレンゴ君』をただの馬だと思うなッ!!!」
「……キャスター、テメェもなんか言ってやれ」
「ええーっ……いえ、ライダーさんは馬に乗ってる姿が非常に様になってるようで……ええ、とてもお似合いですよ」
「そうだろッ! そうだろッ!! 絵にして後世まで残したいくらいだろォッ?
 では、行くぞッ!!! フハハハハハハハッッ!!!」

 高笑いをしつつ、突き進んでいくライダー。
 まさに傍若無人の自由気ままな皇帝。
 その後ろ、セイバーとキャスターはぶつくさと駄弁りながらついて行く。

「アサシンとあのランサーやったら……アイツ(ライダー)、倒していいんだよな?」
「ええ、その時は私も手を貸しましょう。
 …………そのあとは分かってますね?」
「アーチャーも含めて、まとめてテメェらを倒す」
「おお、怖い怖い」

 あくまでもこの同盟は本島のアサシンと最有力だったランサーのマスターを倒すための同盟。
 それが終わってしまえば、それっきりの関係。

「単純な武力でいえば、私の見立てでは貴方の方が上でしょうね。
 ……ですが、世界的な知名度ではライダーさんの方が断然上ですね。
 世界的な皇帝(エンペラー)ですよ、『彼女』は……まあ、私が知っているのは男でしたがね」
「知らん、それがどうした……ウチの大将だって女だ。
 戦場で強けりゃ男だろうが女だろうが関係ねぇよ」
「そうですね」

 戦場に立つ以上は武器を持てば男も女も関係ない。
 敵対して立てばあるのは殺すか殺されるか、惨めに生き恥晒しながら生き延びるかの三択。

「キャスター……テメェは何を望んでいる? 戦いか?」
「私がしたいのは『戦い』でも『戦争』でもなく『勝つ戦争』ですよ」
「……んなもんに俺の国を巻き込むな、他所でやれ、他所で」
「だからこそ、貴方は私と同盟を組んだのでしょうよ。
 ……『自分の国を守る』ためだけ、に」
「たりめーだ、俺らが鬼から守った国を……民を……壊されてたまっかよ」
「約束はしましょう、あんな小さな島の一つは巻き込まれないようにしますよ」
「小さかろうが、何だろうが国は国だ」

 セイバーは仲間と共に鬼から都を守護し続けた。
 その結果、都はそんな平和な時代が続いた。
 そして、いつしか鬼は姿を消した。
 だが、その国も遠い未来には外の大国から攻撃を受けた。

「……私の国は未来の彼女の国に宣戦布告されましたからね。
 今は耐えるとき、ええ、私にとってはまさに綱渡り状態ですよ……
 万能の願望器でこの島を失くしてしまえば、貴方の国は近い未来の大国からの攻撃は免れます。
 ここは重要な拠点になりますからね……ええ、その結果、たくさん死にますよ、貴方の国の民は」
「――未来を変えることが可能なのか?」
「ええ、聖杯は不可能を可能にする万能の願望器ですよ。
 何より私はこの時代よりも未来から来て、あのライダーさんは……多分この時代のヨーロッパの人物ですからね」

 キャスターの国は未来のライダーの国と戦い負けた。
 だから、そんな未来は自分が変える。
 例え小さなきっかけでもバタフライエフェクトは起こりうる。

 ――奇跡は起こす。

 ――例え、何を犠牲にしてでも。

「にしても……なんであのライダーはずっと馬に乗ってやがるんだ?
 本当に恰好つけてるだけか?」
「それはですね、足が短いという理由だけで馬に乗っているんですよ、彼女は」
「は……?」
「もう一度言います、足が短いという理由だけで馬に乗っているんですよ、彼女は」
「すまん……意味が分からん」
「ええ、私も意味が分かりませんよ」


「遅いぞッ!!! うぬらッ!!!
 いや!!! 吾輩のマレンゴ君が速すぎるだけかッ!!?
 まあよい!! フハハハハハハハッ!!!!!!」


「あんなのに……負けたのか、俺らの国……」
「ええ、変えますよ、そんな未来は」


 それぞれの思惑は複雑に絡み合う。


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最終更新:2017年07月02日 02:31