いざ聖地へ(1)

「いやあ、見事食べっぷり……ハハハ……」
「まだ腹八分目ですが、何か?」

 食事も終わった。
 用意されていた饅頭の半分はヒロインXが食べ、残りを4人で分けた。

⇒「おかげさまでカルデアのエンゲル係数があがります」
「同じ人があと何人かいます」

「エンゲル係数……?」
『家計の消費支出に占める飲食費の割合のことです』
「なるほどね、未来は随分と平和のようだね」
「今のところはですけど……」
「いやいや、一時的でも何事も平和が一番だよ」
「……随分と刹那主義者なんですね」
「そういうところなんだか……」
「皆まで言わなくてもいい。言いたいことは分かっているさ」

 言葉を遮る。
 貞光はいつものように振る舞う。 

「さて、話を戻すとしようか……ランサーちゃん、キミはどちらを選ぶ?
 前に出て戦いか、後ろで構えて防衛戦か?」
「決まっている! 前に出て、必ず討ち倒す!」
「……ふむ、敵の情報を分からないまま戦うのは僕でも少々骨が折れるよ。
 少しでも持っている情報もしくは何か君視点で気付いたことを教えてもらえるかな?
 僕にはそれくらいの権利はあるはずだよね」
「わかりました」

 セイバーとキャスターの知ってる限りの情報を共有する。
 話を真剣に聞き、クッソ真面目な顔して何かを考える。

「なるほどね、僕の剣の太刀筋と似ていて、鬼嫌いで、赤黒い日本刀をぶん回して。
 と、思ったら、殴ったり、蹴ったりしてきて、で、鬼嫌いの男のセイバーか…………」
「碓井さん、何か心当たりでもあるの?」
「そんな戦い方をするのはどう考えてもセイバーではなくバーサーカーですよね?」
「……そうだね、僕の知っている限りはそれにかなり近い人が一人いるけどねぇ……。
 もしセイバーの真名が僕『ら』の知っている『彼』なら、この上なく厄介だ、そうだよね、金時君?」
「実際に会って見なきゃ分かんねぇよ……アイツかどうかなんてな」

⇒「二人の知り合いとなると……」
「頼光四天王の……」

「いや、確証が持てない以上、深読みは厳禁さ」
『それにしても冷静で的確な判断ですね、碓井さん』
「いやあ、マシュちゃん、昔っから……一人くらい冷静じゃないと。
 そうでないとみんな勝手に突っ込んで行っちゃうから……ハハハ……」

 すごく遠い目をしている。
 生前から苦労人だったんだろう。
 その気質が未だに抜け切らない。

「……セイバーが相手ならば、私が出ます」
「いえ、Xさん……それは譲れませんね、直接の敵討ちはアタシがやります……!」
「二人とも頑固なうえに負けず嫌い……なら、二人でやればいいんじゃないか?」
「なるほど、じゃあトドメをカメちゃんが……私は他のセイバーと戦わなければならないカルマがあるだけなので」
「確かにそうですね、Xさんとのコンビネーションに磨きを掛けなければ……!」

「戦いにおいて数は絶対的アドバンテージ!」
⇒「合体宝具だ!」

「藤丸君、それはまだ実装されてません」

 打倒セイバーとセイバー殲滅を目指すならば二人で戦うのがいいと結論付けた。
 作戦は一応は立てる、先程の力試しのような拙い連携では絶対に勝てないことを思い知ったからだ。

「それにしても碓井さん、なんかさっきから、そのセイバーを避けてない?」
「いやいや、三騎士クラスには三騎士クラスをぶつけるだけだよ」

 表情や声色は変わらない。
 だが、今までよりもほんの僅かな口調が違うような気がする。
 若干の変化だが、藤丸は気づいた。

「……それはそれとしてそのセイバーのそばにいたそのキャスターは僕が相手をする。
 少しの間は足止めくらいは出来ると思うから」
「そのキャスターの真名の見当は?」
「付かないね……軍服にちょび髭で大柄な男なんて星の数ほど居そうな気がするよ」
「確かに……しかし、190cmくらいの巨体の魔術師の男ってなると……」
「せめて、何か特徴的な武器が見えたらわかったんでしょうか?」
「いいえ、実際に見たのがカメちゃんがあの状態だったので仕方ないですね」

 正体不明のキャスター。
 キャスターと呼ばれていたからキャスターなのだろうかもしれないが。
 どう戦うのかもわからない、完全初見殺しの敵。

「だったら、あまり情報が出ていない僕が当たるのが最善の策だと思うよ」

⇒「理にはかなっているのかな?」
「初見殺しには初見殺しをぶつけるんだよォッ!」

「貞光サン、オレは?」
「立花ちゃんの護衛だね、もしくはもしかしたらいるかもしれない他のサーヴァントの相手かな」
「おうよ、それが一番だ」
「さてと、そろそろここを出るとしようか。
 ……すでにこの場所が気付かれている可能性が高い」
「マシュ、サーヴァントの反応は?」
『今は先輩の周りにいるXさん、ゴールデンさん、カメハメハさん、碓井さんだけですね』
「マシュちゃんだっけ? 出来れば、サーヴァントの反応があったらすぐに立花ちゃんに知らせることは出来るかな?」
『はい、勿論です! 先輩のバックアップなら任せてください!』

 準備は出来ている。
 もうすぐ夕暮れで夜も近い。
 夜は危険も多いが、先程までゆっくり休んだので体力的には十分だ。

「夜の移動は危険だとは思うけど、平気かい?」
「勿論です!」

 力強く返事をカメハメハ。
 それを見てうんうん、と頷く貞光。

 そして、彼女たちはここを経った。
 その移動中に藤丸は金時に話しかける。

「ねぇ、ゴールデン?」
「今度はどした?」
「信用していいんだよね、碓井さんの『勘』を」
「昔っから、あの人の言う『勘』は外れたことがねぇんだよ。
 それが良い方面でも悪い方面でも何故か全部当たっちまうんだよ」
「碓井さんがいう『山の声』?」
「ああ、そうかもしれねぇな……」

 『山勘』とは違う『山の声』。
 正直なところ、藤丸が信じられるか信じられないかといえば五分五分。

「決して分が悪い賭けをするような人じゃねぇよ、あの人は」

「……母親の仇なのに信用してるんだね」
⇒「ギャンブルに強そうだね、碓井さん」

「ま、あの人が博打してるとこなんて見たことないけどな」
「確かにしなさそう、真面目すぎるほどに真面目だし……」

 金時は口元でにやりと笑う。
 かつての頼りになる仲間が再び共にいる。
 共にまた戦えるかもしれない。
 それだけで金時のモチベーションは上がる。

「まあ、いざとなりゃ、オレがいる! 大将だっている!」
「ゴールデンは頼りにしているよ」

 星と月は照らす。
 行き先は………………。

「ハワイの北西の街・コハラか……確か」
『はい、カメハメハさんが生まれた街ですね』




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最終更新:2017年07月09日 05:01