アラスカの小屋の中にて断片2

しばらくプレハブの中で暴れて、落ち着いて悪臭に嘆きながら床に寝て、起きたら慣れというのは怖いものでもう臭いが気にならなくなっていて、座っていても暇で暇で仕方ないから小屋の中の唯一の家具、バーサーカーを観察することにした。
腐ったり骨になったりしていることを除けば全くの美人に見える。死んでいるようにしか見えないがサーヴァントなのでこれが普通の状態なのだろう。服装は、これは東洋の着物か? そこで初めてシステムから与えられた知識とやらが備わっていることに気づく。
何だ? 東洋の服装なんて俺は知らない。知る気もない。いつどこで知ったのかわからない記憶が頭の中にある。今は二十世一紀で最近のトレンドはハイブリッドカー、映画は手元のスマートフォンという板で観る時代。ここは未来で、しかも僕は未来人並に未来の記憶がある。気持ち悪い。気持ち悪くてたまらない。違和感がないという違和感に気づいたとたん気持ち悪くて吐いた。胃の中の物を全部吐こうと思ってえづいたがサーヴァントなので勿論吐けない。胃液も分泌されていないので真実吐くものがない。しばらくおえおえいっていたが諦めて吐くのをやめた。
サーヴァントになるだなんてたまったもんじゃないな。いつまで続くんだこれは。もしかしてこれ僕かマスター死ぬまで続くんじゃないだろうな。冗談じゃない。殺してくれ。
バーサーカーを振り返った。相変わらず腐っている。
「なあ、おい、頼むよ。殺してくれ。バーサーカーさん、なあ、意識はあるのか? 狂戦士なんだろ? 僕を引き千切るなり磨り潰すなりして殺してくれ」
何も起きない。アラスカの林の中に突っ立ったプレハブ小屋は静まり返ったままだ。バーサーカーは目を開けることすらしてくれない。

しばらく時間がたったとき、扉が開いて男が小屋に叩き込まれる。開いた隙に飛び出そうとしたが叩き込んだ方のサーヴァントに突き飛ばされ壁に激突する。いいぞその調子だ。僕を殺してくれよと言ったときにはもう扉が閉まっている。
放り込まれた男はバーサーカーを見た途端に叫び声をあげ、嘔吐する。ふざけるな。外で何か食べてたから吐けるんだろ。ずるいぞ僕も吐きたいし。
男はバーサーカーを目視したショックが落ち着くとセイバーだと名乗り、なんか喚きながら短い剣で扉を叩く。叩くが扉はやはりびくともせず外には誰もいない。一通り暴れると僕に話をする。
「マスターの野郎わかってないんだぜ。死にに行っても意味ないのによ。俺は相手のマスターを話術でたぶらかし戦略的撤退をしたんだ」
わかった。僕はここで初めてこの小屋を懲罰房として使われたと気づく。この男は敵から逃げてきた罰としてここにぶち込まれたんだ。クソ!

セイバーは八番目のサーヴァントで、四十九騎のうち彼以前の七騎がやられたらしい。
緯度が高いのに寒くないということに気づき寒くなる。夜は長い。




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最終更新:2017年11月16日 08:11