セイバーがバーサーカーを目にしては叫び喚き暴れを繰り返すので、彼の申し訳程度の対魔力スキルが助力をし扉が叩き潰される。外の空気だ。セイバーは歓喜の声をあげ、しかし外に出る前に懲罰房の看守が現れる。
「ずいぶん、我慢のきかない、人なのね。マスターも、怒っているわ」
女だ。前髪で両目が隠れている。ずいぶん辿々しい喋り方をする。
「私は、バーサーカー。あなたがもし、ここから、出て、一緒に、戦うことになれば、そのときは、その、よろしく」
「巫山戯るな、セイバー。折角張った結界を破りおって。もう少し俺の気が短かったら令呪で自害させているところだぞ」
折角張った結界が破られて怒るのは僕とバーサーカーが脱走する恐れがあるからだ。巫山戯るなとはこっちの台詞だ。手前で喚んでおいてあんまりだろう。なんだその言い草は。
「バーサーカーも彼に近づくではない。話すなどもっての他だ」
バーサーカーというのはこの前髪女の方か? 四十九騎も召喚しておいてクラス名で呼ぶとは面倒なことをする。一瞬気づかなかったがマスターが彼と指しているのは僕だ。そんなに僕は危険なのか? 小屋の扉を開けることもできない無害なサーヴァントだぞ。
「セイバー。これに懲りたらもう逃げ出すなんて真似はしないことだな。会敵した時のみ、宝具の使用を許可する。そらバーサーカー、扉を押さえておいてくれ。結界を張り直す」
そして僕はまたプレハブに閉じ込められる。腐れサーヴァントと一緒に。
何日が経っただろうか。窓のない部屋の中で明かりも薄暗いので時間の感覚が無くなる。窓があったとしても日は登らないのか。食事も摂らなくていいというのは便利かもしれない。
不意にノックの音が聞こえる。誰だ。こちらからは開かないのだから、用があれば開ければいいのに。ゆっくり扉が開く。
「あなた、アサシン? バーサーカー? 私は、二十番目のサーヴァント、バーサーカー」
「僕はアサシンだ。バーサーカーはあっちの死体の方。いや、僕が殺したとかじゃなくて。見てもいいが見ないほうがいい」
「そう。結界、外から開くなら大丈夫。あなた、暇じゃないの。ずっと、閉じ込め、られて。よかったら、なにか、話して」
「暇でも暇じゃなくてもつまらないことには変わりないだろう」
「そう。いや、そうじゃなくて。あ、じゃあ、真名を教えて」
「教えやってもいいが、知らない方がいい」
「うん、私は、フランケンシュタイン、の、怪物、の、次」
「次?」
「そう。ヴィクター・フランケンシュタインの、二番目の、娘」
「なんだか知らんが、僕の読んだ小説とは些か違っているようだ」
「そんな、ときも、ある」
見張りを任されていた彼女は好奇心に負けて小屋の中を覗いてみたらしい。僕の話なんて暇潰しにもならないどころかもっと直接的な害なのに。ところでバーサーカーって死体のクラスなのか?
最終更新:2017年11月18日 04:50