アラスカの小屋の中にて断片5

「勾践だ」
再度プレハブに叩き込まれたセイバーは自らの真名を聞いてもないのに僕に教えてくれる。

 真名判明
アラスカの八番目のサーヴァント 真名 勾践

「知らんな」
「クソ! 何が知らねえだよ越の大英雄さまだぞ。まあいい。真名を教えてやったんだ。ここから出るのに協力してもらおう」
「バーサーカー。お前にこいつがなんか言ってるぞ」
バーサーカーは腐っている。
「カスが殺すぞ。マジでそいつ無理だから、マジで。殺してやる」
セイバーはバーサーカーに剣を振り上げるがすぐに下ろし体をくの字にして吐きはじめる。胃の中に何も入っていないようでそれは失敗した。僕が踏んだ轍だ。
「いや無理。そういうサーヴァントなんだろうな。見られるのが攻撃っていう。なんなんだいったい。お前は平気なのかよ」
実をいうと真名の検討はついている。僕の芸術審美スキルのおかげだ。
そこで僕は気づく。スキルってなんだ。わけがわからない。ゲーム脳かよ。サーヴァントってなんだよっていうこのくだりは前やったことなので省略する。
狭い小屋にセイバーと閉じ込められていて、向こうが勝手に話をしてくる。
「なんかカルデアのマスターを殺した暁には聖杯くれるらしいぞ。聞いた? 聖杯ってなんだ。なんか知らんが願いが叶うらしい」
「そうか」
「俺はあれかな、やっぱ歴史いじって、なんというか負け戦をなかったことにとかしたいな。俺有名だから知ってると思うけど、なんか結構戦績悪いのね。まあ後世の子どもたちの見本にっていうか、背中を見せるっていうか? 要するに見栄を張りたいわけ、わかる?」
「……」
「サーヴァントになっちゃったわけだけどさ、結構弱いのね俺。実際昔はバリバリやってたっていうか? あんまりいい感じが残ってないってことじゃん。サーヴァントってその次代の印象でしょ? そういうのよくないと思って」
「そう」
「宝具も二個だけだし? この剣な。『越王勾践剣』な。生前のっていうか全力だったら目的果たすのに四十九騎もいらないっていうかマスターもそれわかってるっていうか? こんなとこに閉じ込められんでいいわけだよな。ああー暇だ」
「……」
「気を悪くするなって。お前とバーサーカーって切り札なんだろ? マスターのクソ野郎が言ってたぜ。非人道的対カルデアのマスター最終殺戮兵器だって。すげえよなマジで。真名教えてくれよ」
「聞かないほうがいい」
「? あーはい、そういうやつね。そっち系のスキルとか宝具とか。バーサーカーと同じだ。悪いね、気遣って貰って」
セイバーはまた剣でドアをこじ開けようと頑張っている。
そして静かな時間が流れ、どれくらいが経っただろうか。もしかすると何日も? だとすれば、セイバーは僕に殺される。




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最終更新:2017年11月23日 00:46