1節 GAME START! 3

体が軽い。
今までとは違う身のこなし。まるで人ではないかのようだ。
これでもカルデアに召喚されたサーヴァントと訓練を共にしてきた。
身のこなしや体術、武器の扱いを教わった。
しかし人の身では英霊の如き成果を上げることはかなわない。
だが今ならどうか。今ならば、彼らと互角に渡り合えるかもしれない。
いや、もしや作家ぐらいの英霊ならば打ち勝てるのではないかと思える。

(へいへーい! いいね、いいね! 最高だね!)

頭の中にスゥの声が響く。
不良の一人が拳を振り上げ、それが自身の体に向かって伸びる。
しかし拳が届くよりも早く、彼の前蹴りが不良の腹に叩き込まれる。
体をくの字に曲げる不良。
その顔に向かって思い切り拳を振り上げれば彼の体が宙に浮かび円を描き背中から地面に落ちた。
まるで漫画か映画のような挙動。
これがゲーム世界における正常なのだろうか。

(EXCITE EXCITE 高なるぅ~! 心がね、心が)

妙だ。彼は考える。自分はここまで好戦的な男だったろうか。
スゥと同化したことによって攻撃性が増しているのか。
それとも元から自分はこうだったのか。
思考は戦いの中で薄れ、消えていく。

(マスターちゃん、キメちゃえ!)

最後の一人。迫る。恐怖、なし。
見える。動き。呼吸。行動。すべて。
余裕が違う。

「あ……?」

彼の両腕が少し上に上がる。
殴られると考えた不良は顔を守る体勢をとったがそれは無駄であった。
彼の狙いはそこではなく、足。
浮かせた足が不良の足、膝を踏みしめるように伸びた。横蹴りである。
膝へのダメージ。予想外。思考の外。そしてもうそれ以上の前進はない。
ひるんだ。それを見逃すはずもない。
踏み込み、拳で打つ。中華の合理、中国拳法。その一撃。二の打ち要らずと言われた男から学んだ拳。

「が……ぁ」

倒れる。
終わりだ。文句のつけようもない勝利。

「おん……な……のくせ……に」
  • 女?
(あ、ごめーん。言い忘れてた。他人の宝具をコピーするってのはいわゆる必殺技……宝具みたいな感じ)
(あたしのスキル。いつでも簡単に使える能力は『誰かになる』ってこと)

スゥの言葉をいまいち理解できなかったが、近くの商店のドアに視線を向けた時に理解した。
そこに立っているのは自分ではなくスゥだ。

(正確には見た目とか属性……所属とか階級とかそういうのを勝手に弄れるのよ。だからマスターちゃんの姿に戻ることも出来るわけ)
  • 他の誰かにもなれるの?
(マスターちゃんが望むなら大統領の姿にもなれるよ)
  • なるほど
(メタ的な話すると、ほら関係者以外立ち入り禁止の場所に入ることもできるの。マスターちゃんに関係者って属性を付与すればね)

他人からの見え方だけでなく、立場や役職も自由自在という話であった。
便利だが初手からなにやらインチキくさい能力である。
ゲームとして考えるなら今後そういう能力を使用しなければならない場面というのがあるだろう。

(ま……これでチュートリアル終了ー)

体から何かが吹き出し、それがスゥを構築する。
体の感覚が変わる。元の自分の体に戻ったようだ。

  • とりあえずどうしたらいい?
「一つ一つゲームをクリアして行こう。ここから近い地区だったらぁ、ソード……いや、チャンバラ地区かな」
  • チャンバラ
「そ、チャンチャンバラバラ。さ、行こー!」

戻る タイトル 進む
1節 GAME START! 2 抱腹電子遊戯 FGO 2節 JUST LIVE MORE 1

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最終更新:2018年03月10日 03:42