「……すまねぇ。アイツを取り戻せなかったのは俺の責任だ……」
「いえ、キャスター、貴方だけの責任ではありません」
「巴も敵の気配を一切気付かなったのも……」
「それならば、僕だって跡を付けられたから……」
「俺ちゃんはなんも悪くねぇけどな~~~!」
『バーサーカー!! 貴方って人!!!』
「いや、そいつの言ってることは間違っちゃいねぇよ……」
『ですが……』
「間違っちゃいねぇ……って言ってんだろ!!!」
『……ッ!』
キャスターは拳で近くの木をぶん殴り叩き折った。
殴った拳から血が流れる。
しかし、ノーベルは申し訳ない気分/Zeroだ。
それに激昂するマシュだが、キャスターが嗜める。
いや、嗜めるどころが自身の怒りをマシュに極力ぶつけないようとしている。
「しかし、三日後ですか……」
「いや、ああいう輩は三日なんて待っちゃくれねぇよ……」
「何!? それは騎士道精神の欠片もないな!?」
「馬鹿か、テメェは! 人質って手使ってる時点でんなもんねーよ!!
性格が悪いやつってのは大体、上げて落とす。
やって来た目の前で人質をぶっ殺す。
もしくはすでにぶっ殺した後の姿を見せつける。
あるいは…………」
「やめてくれ……それ以上は聞きたくない!」
耳を抑えて蹲るランサー。
それを見て、軽く舌打ちをして、キャスターは溜息を吐いた。
「奪われたんなら取り戻しに行くしかねぇだろうが……!
俺らは仲間を見捨てねぇ……!」
「俺ら? 私たちですか?」
「違ぇよ……そういった仲の仲間が俺にいた気がする……今は顔も名前も分かんねぇ。
けどな……道を誤ったんならぶん殴ってでも元の道に引き戻す、そういう仲間がな……
俺にはそういう奴らが……いた気が……する……三人くらい」
「三人も?」
「で、絶対に敵わないと思ってた大将がいた……のか?」
「聞かないでください!!」
「キャスター……貴方、記憶が……?」
「……戻っちゃいねぇよ、けどな。
さっきのアイツに会った時から、妙な感覚が付き纏ってきやがんだよ」
『要塞城のアサシンですか……』
「やはり、あの城は要塞城というのか!!」
「うっせぇぞ、ランサーのガキ!」
「……す、すみません」
あの藤丸を攫った女のサーヴァント。
大量のちびノブ達を従えていたことから織田軍かもしれない。
強力な幻術あるいは妖術使いだと思えた。
そして、キャスターと同じ日本刀を振るっていたという。
「俺に目的が出来ちまったから行くしかねぇだろ……!
だが言っておくが、テメェらの仲間になったわけじゃねぇ……。
勘違いするな、ランサーのガキ、巴さん、沖田、テメェらと敵が同じだけだ」
「キャスター……」
「ツンデレ乙」
「ツ、ツンデレだぁ? 沖田ァ! 誰がベ〇ータ王子だ!?」
「誰もベ〇ータ王子だ、なんて言ってませんよ!?」
「……借りを返して、責任を取るそれだけだ。
嬢ちゃん、心配すんな、アンタの大切な先輩は絶対に取り返してやんからよ!」
『キャスターさん……! 絶対に……ですよ!』
「武士に二言はねぇ、そんだけは約束する!」
キャスターの言葉は強い。
口は悪いが、その意志は固く強い。
「まあ、俺ちゃんの拠点もこうなった以上には俺ちゃんも出るしかねぇな~~」
「あー……」
バーサーカーの拠点はボッロボロだった。
もはや廃墟と言っても差し支えない。
しかも、もう場所もバレた。
ここを出るしかもうない。
「バーサーカー、二日……いや、一日……半日くらいであの城に行く方法は?」
「車ならあるぞ、一応脱出用には用意していた」
「車? 馬車や牛車のことか?」
「いや、これだ!」
それは普通車だ。
マジで普通の車だった。
「だけど、問題なのがこの車四人用乗りだけどもな~~~!
俺ちゃんが運転手だから、乗るとしたら誰か一人、徒歩で……」
「四人乗り? なら、俺はここに乗るぜ」
「「「!?」」」
「な、なるほど、その手があったか~~~~!
これで五人乗れる!」
キャスターは車のボンネットの上に座った。
というよりどっかりと寝転ぶように座ったのだ。
だが、これで四人乗りの車に五人乗れるようになった。
運転席にバーサーカー。
助手席にランサー。
後ろに沖田と巴御前。
そして、ボンネット上にキャスターが乗った。
「………行くぞォォッ!! テメェらァアアア!!!!!
要塞城に、殴り込みだァァァッ!!!」
「んじゃあ、俺ちゃん号、発進!!!」
完全にテンションが振りきれている。
これより突撃するは要塞城。
◇ ◇ ◇
一方、その頃……
「ふっふん~♪」
鼻歌交じりに城の廊下を下って行くアサシン。
とても上機嫌。
これからあの人質をどう可愛がってやろうか。
考えるだけでワクワクする。
「首尾よくあのライダーの元に付けたのはよかったけども……
問題はやっぱり、アーチャーのアイツよね。
なんで、あいつがいるのかしらね。普通に対極側の存在だと思ってたけどね」
ライダーの持つ圧倒的な軍力。
その下にあのアーチャーがいた。
「あのアーチャー……あいつはアタシの正体に気付いていないみたいだから。
あのセイ……今はアタシが霊基と記憶を弄ってキャスターにしたあの男と戦わせる。
うん、カンペキカンペキ。アイツらがどれだけ絶望するか……楽しみ楽しみ」
歪んでいる。
そして、あのアーチャーにも何やら因縁があるようだ。
「さて、その前に……」
藤丸を捉えた地下に辿りついた。
厳重に動けないよう鎖で繋いでおいた。
そして、扉を開けた。
「…………………いない」
藤丸はその姿を消していた。
最終更新:2017年12月08日 02:05