攻城戦~突撃~

「オラァ! 退きなァッ!」

 一直線に要塞城に突き進んでいく。
 まさに文字通りの『蹂躙』。
 男の通った道にはさっきまでノブだったモノたちが転がっている。

「こりゃ、一人頭……五千は討ち取っても釣りがくるぜ……!」

 数が多い。
 あまりにも多い。
 そして、遠い。

「やっぱ、多すぎんだろ!!!」

 目の前にある城。
 その道を完全……とはいえないが、それなりに塞がっている。
 キャスターが斬り拓いても、すぐに新たなちびノブが現れて行く手を塞ぐ。

「バーサーカー!! 突っ込むんだ!!」
「見ろ! 俺ちゃんのドラテク!!」
「うおっ! あぶねぇッ!」

 間一髪のところでキャスターは躱したが。あと少しで撥ねられるところだった。

 それに構わずにノーベルはアクセルを全力で踏み込み、ちびノブ軍団に突っ込む。
 だが、止まった。
 ちびノブたちに止められた。
 止まってんじゃねぇぞ……。

「今だ、脱出!!」
「おう!!」

 二人は勢いよく車から脱出。
 それと同時にノーベルは手にしたスイッチをカチリと押した。

 すると、二人が乗っていた車は数秒後に爆発した。

「……あまりこういう使い方したくはなかったんだけどな。
 ……まっ、こっからはノーベリウム全開で行くぜ~~ッ!!」

 導火線が円筒状のモノに火をつける。
 それをちびノブが密集している地点に投げつける。

「んじゃ、やるときゃ……ドーンとド派手にいってみよう!」

 そして―――――爆ぜた。

 連続して爆炎が上がる。
 火炎が着弾地点を中心に広がっていく。
 もはやテロリストと何ら変わらない。
 ただの爆弾魔(ボンバーマン)だ。


「一番乗りはもらった!!!」


 爆炎をかき分けて、ナポレオンが要塞城に一番乗りした。
 続いて、ダイナマイトをばら撒きつつ、ノーベルが後を追った。

(なんだ……あの槍は……? まるで炎がアイツだけ避けていったような……)

 キャスターにはそう見えた。
 が、キャスター視線からなので偶然なのかもしれない。

「つか、先越されたじゃねーか!! 巴さん、沖田、行けるか!」
「はい!」
「ええ! ……というかなんで私は呼び捨てなんですかー!」
「んなこたぁ、今はどうだっていいだろ!!」

 道が開いたなら、そこに全力で突っ込む。
 一団の先頭に立って走るキャスター。
 本当にキャスタークラスのサーヴァントに思えないほどの動きだ。

(……本当に俺はキャスターなのか……?)

 自分でも疑問に思っている。
 決して、カルデアを疑っているわけではない。
 悪い奴らだとは思ってはいない。

 だが、それはそれ。
 これはこれ。

(やっぱあのアサシン女だな……)

 鍵を握るのは間違いなくあのアサシン。
 自分のことを確実に知っている。

 そして、彼らも城の中に突入……

「……ゴフッ!」

 ……しようとしたところで、また沖田さんが血を吐いた。

「私のことはいいですから、先に……「承知した」「沖田さん、あなたのことは忘れません」
 ……返答早くないですか!?」

 キャスターはマジでさっさと沖田を置いておいて行った。
 巴御前の方は……というと、流石に冗談だったようだ。

「まったく洒落になってませんよ……」
「すみません」
「ですが……先に行ってください、殿は私がやっときますんで……
 私にも少しはカッコイイところ見せ場をくださいよ」

 確かに城内にも敵がいるかもしれないのに背後の敵にまで手が回らない。

「それに今の沖田さんにはちゃんと宝具がありますからね!」
「……任せていいんですね?」
「ええ!」
「では、任せました」
「はい、任されました!」

 立ち塞がるは幕末の剣豪。
 立ち向かってくるは戦国の魔王のような何か。

 いざ 尋常に。


「……斬る」



 ◆  ◆  ◆ 



「おう、来たか」
「先に行ってたんじゃないんですか?」
「それも考えたんだがな……これだからな」

 階段が三つある。
 三方向に伸びている。

「真ん中か、右か、だ……」
「左は選択肢に入らないんですか?」
「人は迷ったり未知の道を選ぶ時には無意識に左を選択する……。
 きっと左の道は……あいつらが先に行った、それに……」
「匂いですか?」
「……ああ、あのバーサーカーの匂いがしやがる。だから、左に行った」

 左の階段から血と火薬の匂いが漂う。
 間違いなくあの二人は先に左の階段を上っていたんだろう。

「アイツら二人は人の英霊だよ……きっとな。」
「では、貴方は?」
「さあな……だが、人でありたいとは思っている。
 人でしか……人が斬らなきゃならんものはこの世にはあるはずだぜ?」

 キャスターの手におのずと力が入る。
 記憶がなくても、わかっている。
 自分が為すべきことを、確実に。

「じゃあ、俺は真ん中の道に行くわ、巴さんは右行ってくれ」
「私に選択肢はないんですか!?」
「先着順だ……それに俺は真っ向勝負とか好きだしな、やるんなら正面突破だ!!」

 キャスターは走るように階段を駆け上がっていく。
 もう後ろの巴御前など見ていない。

「……仕方ないですね」

 巴御前は流されるままに右の階段を上がっていく。
 そして、その数分後。



「巴さん!」



 聞き覚えがある少女の声がした。
 見慣れたカルデアの制服を着た少女。
 そう、紛れもなく藤丸立花である。

「待て……そいつは本当にお前の知り合いか?」

 その近くには藤色の着物の男。
 その醸し出す殺気が空気を伝い、その肌を突き刺す。

「マスターから離れてください! さもなくば!」
「……貴様、鬼のようだな」

 巴御前は薙刀を構え、アーチャーは日本刀を構える。
 とても弓兵同士の戦いの前触れとは思えない光景だ。

 一触即発。
 そうとしか言い表せないこの状況。

「ストーップ!!!」

 空気を変えるべく立花が放った一言は……

⇒「巴さん、この特異点に来る前にやってたゲームは!」

「ぽけもんG〇ですが! 今はそんなことよりも!」
「アーチャーさん、これ間違いなく本人だよ! 安心できるよ!」
「……そうか」

 すると、アーチャーは日本刀を鞘に戻した。
 そして、立花を巴御前の元に届けた。

「約束は果たしたからな」
「待ってください! 貴方は一体……?」
「……ただのアーチャーだ」
「それでも貴方にも真名があるはずだ!」

 鋭い眼つきで睨むように立花と巴を見る。
 殺気もさっきよりか多少はない。

「そうだな……そこの鬼もアーチャーのようだしな、アーチャー呼びは被るな」
「!?」
「……見たところ、巴さんとやら鬼との混血か……これは珍しいな」

 見透かしたような眼で巴を見るアーチャー。
 今まで藤丸と同行してきたにも聞いたことがない声で話す。

「都近くの鬼は一匹を除きあの人らが全員殺したしな……俺が生きてた時代とは違う時代の鬼か?」
「なんでそんなことがわかるんですか?」
「……愛だよ、愛」
「何故、そこで愛なんですかッ!?」
「まあ、お前とよく似た目をした人を俺は知っている……そういうことだ」

 つまり、そういうことだ。

「……で、貴方の真名は?」


「……アーチャー・『卜部季武』だ。
 俺よりも主君や他二人の方が後世に名は残っているだろうよ」


 だが、立花はちゃんと知っていた。

「卜部季武……まさかあの頼光四天王の一人の!?」

 ちゃんと、この立花は頼光四天王の名前くらいは源頼光と坂田金時から聞いていたのだ!


     真名判明
要塞城のアーチャー 真名 卜部季武


 ◆  ◆  ◆


「ここは……」
「フランスパン工場だ!!」


 一方、その頃、左の階段を昇りきった二人はその先にあったフランスパン工場に辿り着いていた……。


「戻るか~~~」
「おう!!」


 そして、二人はフランスパンを何十本か拝借して来た道を戻ることにした。


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最終更新:2018年02月03日 04:22