攻城戦~回天~

「俺のことを知っているのか?」
「名前くらいは……」
「そうか……」

 卜部季武。
 頼光四天王の一人として立花は認識していた。
 だが…………。

(どうしよう……本当に名前くらいしか知らない!)
(マスター、ここは私が話を合わせます)

「はい、存じ上げています。
 頼光四天王の一人で都を守った武人として……その弓を使った武勇は聞きしに及んでいます」
「俺がやってきたのは弓を弾き、矢で射抜いき続けただけだ」
「いえいえ、1000の人間でも敵わなかった妖怪――産女(うぶめ)から逃げ切ったという逸話を残していたのを聞いたことがあります」
「産女か……それは奴の羽根を撃ち抜き、叩き落とし、そのまま館に帰っただけだ……決して大したことなどしていない」
「そ、そうですか……」
「そうだ」

 季武はさらっと言ったが、巴は驚愕の表情を浮かべた。
 産女というのは藤丸は朧げながら聞いたこともあった。
 確かその聞いたことのある内容とは何か違うような気もしていた。

「それにしても頼光四天王とな……」
「はい」
「後世でそういうことになってりのであれば先程の発言は撤回しよう。
 ……主君である頼光様とその四天王の残り三人は知られているだろうよ」
(えーと、目の前のアーチャー・季武さんと頼光さんとゴールデンと名前を出しただけでイバラギンが顔を真っ赤にする人と……あと誰だっけ?)
「彼らはともかく……自分勝手に動いていただけの俺などが含まれているとはな、少しも思わなかっただけだ
 ……すまんな、俺はこういう輩だ……人がどう思っているかは知らんが、俺がしてきたことなど彼らに比べたら大したことではない」

 自己評価がとんでもなく低い。
 皮肉屋なんてものじゃない。

「それとあのアサシンの真名を知っているのですか?」
「……奴の真名を知っているか、だと?」

 殺気が一気に増した。
 ビリビリと空気がいきなり痺れるような感覚に陥った。



「人が鬼になった……奴はそういった類の奴だ」



「………奴の名は………」


  ◆  ◆  ◆


「よぉ……また会ったなァ!」
「あらあら、随分と早いご到着で……」

 中央の階段の先に奴はいた。
 キャスターのテンションは高い。
 それと対照的にアサシンは気だるげだ。

「藤丸はどこにやった……!」
「さあ?」
「さあ? ……じゃねぇだろッ!!」

 キャスター振るった日本刀から突風が巻き起こる。
 それをアサシンはちびノブを盾にして防ぐ。
 その刹那にキャスターは一気に加速する。

「全く手癖が悪い」
「うるせぇ! こっちはテメェに奪われたモンを取り戻しにきただけだ!」
「あらあら、まさか護る側の貴方が奪う側に行くなんてね」

 火花が散る。
 同じ衝撃が幾度も重なる。
 その度にちびノブたちが吹っ飛ぶ。

 アサシンは二刀目を抜く。
 こちらも一刀目同等の業物に見える。
 が、キャスターは即座に対応して躱す。

「この瞬間的対応力は……変わらないわね」
「俺は俺だ、クラスが何だろうとやることは変わりやしねぇんだよ! 目の前の……」
「目の前の『鬼』を斬るだけ……かしらね?」
「そうだ……!」

 二刀での連撃を一刀で全て受けきる。
 アサシンの変則的な動きに対して、キャスターは無駄を極限まで無くした正統派な剣技である。 

「……にしても、どうして思い出せたのかしらね?」
「身体が覚えてんだよ、身体動かしてりゃそのうち思い出す。
 戦い方を思い出した、試す機会も十分にあった。
 ならば、自分のことくらい思い出せて当然だろう?」
「そんなことで思い出すなんて……馬鹿げてるわね」
「馬鹿で上等ッッ!」

 キャスターの速度が徐々に上がっていく。
 じりじりとだが、アサシンを圧倒していく。

「……だが、貴様はわからん……何者だ、貴様はッ!!!」

 大きく踏み込んで放った一撃。
 アサインを大きく吹っ飛ばした。

「……全くこれだから源氏の武者は……」
「源氏だとかそういうことではない、俺が俺だから、当然だ」
「あら、だったら女の子に騙されて不意打ちを食らったことも覚えているかしら?」
「残念ながら、覚えている……故に貴様を許すわけにはいかない」

 戦いの中。

 キャスターは完全に思い出した。
 自分がどこの何者なのかも。
 本来、自分は『セイバー』だったことも。
 なぜ、記憶を失ったのかも。

 そして、斬らなければならない『金色の鬼』の名も。


「俺は『源綱』。我が太刀の名は『髭切』! 悪鬼羅刹を斬る一刀なりッ!」


 キャスターは源綱を名乗った。
 しかし、後世ではこちらの名で通っている。
 その名は!!


     真名判明
佐渡島のキャスター 真名 渡辺綱


「さあ、俺は名乗ったぞ、貴様も日ノ本の武士らしく……」
「生憎、あたしは武家の娘だが、武者ではない」

 おもむろにアサシンは綱から距離を取る。
 明らかに何かを狙っている。


「本来はこのあとの本土の大戦で投入するつもりだったけど、試運転にはちょうどいいかもね」
「俺相手に試運転だと、舐めるな」
「…………起動せよ!! アルターエゴ『M』!!!」
「何?」


 そして、それは床をぶち抜いて現れた。

 その起動音はまるで武者の咆哮のようだった。

 まるでブースターが付いているかのような推進力。

 ドリルのように回転する大型の日本刀。

 金色に光っている武者鎧。

 それはまさしく――――ロボットじゃねぇか!


「これがあたしの切り札よ。
 ちなみにライダー軍の全財産の五分の三を注ぎ込んだ」

 アルターエゴ『M』の目からビームが放たれた。
 本当に舐めてやがる。
 しかし、そのビームの威力は絶大だった。
 当たった床が一瞬で溶けた。

「なんだ、それは?」
「使える手はなんだって使う……それが」



「――――それが平家の娘がすることか?」


 殺気が飛んできた。
 しかし、動揺しているのはアサシンだけ。
 アルターエゴ『M』はロボだもの。
 そして、綱にとっては……。

「お前、季武か?」
「そうだ……久しいな、綱」

 時を超えての再会。
 だが、喜びは今はない。
 今、言葉を交わす必要もない。 

 平安最強の神秘殺しの四天王のうち二人がここに揃ったのだ。

「いましたね! アサシン!!
 ってなんですか、あれは金色のぼすきゃらですか!?」
「か、カッコイイロボだ……」

 ついでに藤丸と巴の二人も来た。

「あらら、これは探し人がそっちから来るなんてね」
「こっちも探していた……アサシン。いや……」


「俺は貴様を殺しに来た…………」



「平将門公の娘――――滝夜叉姫ッ!!!」



     真名判明
要塞城のアサシン 真名 滝夜叉姫



  ◆  ◆  ◆


 一方、その頃……


「えーっと、私の『誠の旗』で呼べるのは新選組だったんですけどね」
「まあ、僕も平安時代に京を護ったものだしね、多少は縁があったんじゃないか?
 所謂、連鎖召喚って奴だと思うよ」
「はぁ」

 地上では沖田さんの宝具『誠の旗』により呼び出された新選組vsちびノブ軍団の様相を呈していた。
 そんな中、新選組側に明らかに新選組ではない者が一人混じっていた。

「で、貴方は一体……」
「僕は……」
「おい、沖田ァ! 今、無駄口を叩いている場合か!」
「すみません、土方さん!」

 土方に促されて、沖田さんは結局その正体不明の男のことを聞けず仕舞いだった。


「……通りすがりのランサーもしくはアサシンってとこじゃないかな」


 右手に大鎌を、左手に薙刀を携えて……


「さて、やろうか……!」


 そう、つぶやくと男はちびノブ軍団に突っ込んでいった。


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最終更新:2018年02月28日 02:18