人、人、人、人。
雑誌、雑誌、雑誌、雑誌。
新聞紙、新聞紙、新聞紙、新聞紙。
ニュース、ニュース、ニュース、ニュース。
バラエティ、バラエティ、バラエティ、バラエティ。
ウェブサイト、ウェブサイト、ウェブサイト、ウェブサイト。
どこから生まれる。
どこへ行く。
どこからでも生まれる。
どこへでも行ける。
映画館を渡り歩いて、塾を一回り、一般家庭で休んだら、学校へ行かなくちゃ、オフィスの休憩室も居心地がいい、コンビニで立ち読み、マクドナルドで駄弁る、眠る前にスマホを弄って。
あなたはだあれ。
わたしはきみさ。
ぼくはだれなの。
おれがおまえで。
私は。
みにくい。
────
「ようやくお目覚め?」
瞼を開ければ、やや、不機嫌そうな顔でさかさまに、『綴るキャスター』────鳥山石燕が映っていた。
「英霊とはいえ、こう長く膝枕していると、痺れるような感覚に襲われるというか、思い出す? どうも奇妙な感覚だね、これは。」
夢と現が入り交じるような奇妙な感覚に溺れる中、彼女の言葉で思い出す。
「あれから何時間経った?」
「さあ、私も時計なんかは持っていないから分からないが。少なくとも昼にはなっちゃいないみたいだ、お天道様はまだまだ真上にゃほど遠い。」
「気絶しちゃってたみたいだ、いや、けど夢を見たから、寝てたが正しいのかな?」
「さあ、同じじゃないのかい。それよりもそろそろ退いて欲しいところなんだけど。」
一言謝り、対面。
「改めまして、おはようマスター。」
「うん、おはよう────鳥山石燕?」
「ああ、ペンネェムだからね、それでいい。まあ、別に私としては鳥山でも、石燕でもいいけどね。」
周りを見渡すと(前も来た隠れ家だ。)、『語られるライダー』が見当たらない。
「ああ、『語られるライダー』なら、いつもそうさ。気がつくと居ない、気がそれると現れる。私が言うのもおかしな話だが、妖怪のようだ。」
「私が、なに。」
「うわあ!」
いつの間に僕の真後ろに。
「ちょくちょくどこ行ってるんだい君は?」
「偵察と、散歩。」
「ふうん、それじゃあその情報をすり合わせて、作成会議といこうじゃないか。」
────
「結論から言えば、やはりバベルの塔────いや、最早あれは要塞や城というべきか。あの強固な守りに固められた中に、この異変の原因、聖杯が存在すると見て間違いないね。」
『語られるライダー』の話によると、バベルの塔は本来、それが作り出す巨大な影に潜み、この街を監視する幻霊達がいた。それらが今は消えており、街の人間は続々と離れていくそうだ。
「鳥山石燕の宝具で傷つき、その隙を突かれないため、聖杯の防衛を固めた。結果、街を監視する余裕もないってこと?」
「そうだね、つまり叩くなら今だ。」
「……外壁を壊すとか?」
「もうやった、けど、固くてどんなことをしても壊れなかったよ。」
僕の発言に呆れた眼差しを向ける鳥山石燕と、既にそんなことは考えていると『語られるライダー』。
いや、別の受け取り方ができる『唯一言語』が悪いのであって、と、そこで僕はやはりこの言語は歪められたものでまったく正しくないことに気づく、不完全なのだ。僕達が常日頃使う言語と同じように。
「何度でも、と、あの時は意気込んだが、私の宝具は回数を重ねるごとに威力が減退する。たとえ面白くとも同じ、代わり映えのしない内容ばかり何度も書いていけば読者が離れるように、影響力が弱まるのさ。かわりに書く手間が省けるから消費魔力は減少するけどね。」
つまり、この機会を逃せば、いずれ力関係は元に戻るということ。
「乗り込むしかない。」
「問題は、こういうのは大抵頂上にあるのが相場ってところさ。」
遥かにそびえるバベルの城、雲に隠れて見えないその先を。
三者三様、うんざりと見つめた。
────
「いや、けれど『塔』ではないから『昇れない』なんて。」
外壁から攻めようとして見えない力に阻害された僕たちは暗いバベルの塔────いや、城の内部を進んでいた。
「案外、ここが壊れないのはそういったことも関係しているのかな。」
「面白い着眼点だ、なるほど、バベルは『塔』であるからして崩れたのであって、『城』であるこれは崩れない、『壊れない』。そして『城』であるがゆえに『塔』のように『昇れない』。どこまでも言葉に縛られた世界だね、ここは。」
内部は延々と続く螺旋階段、そして天井、一定の高さごとに区切られ、そこに部屋が存在する。
「なら、なんで『階段』は『昇れる』の?」
『語られるライダー』の質問に答える。
「この『階段』は部屋で区切られている、だから『上れる』。」
しばらくマスクの下でなにやらこちらに言おうとしていたようだが、面倒になって止めたみたいだ。『唯一言語』のルールは無秩序。誰かが使いやすいように、間違った解釈で、それを誰もが行使できる。それに反論したところで、何にもならないのだから、飲み込むのが一番得だ。
そうして軽口を叩き合いながら、ようやく一つ目の部屋につく。
足は既に棒のようで、これがあと何度続くのか、恐ろしい未来を考えたところで。
「アハハ、そんな心配しないで大丈夫っ! だってあなた達はここで死ぬのだから! って横の二人は全然見えないってか見えづらい? レジストするスキルでも持ってるのかなぁ~ってさっちゃんはちょっと警戒度アップ! はじめましてさっちゃんは『人の心が分かるキャスター』! いやあ、つってももうそっちの眼鏡の宝具でバレてるんだからさっさと明かしちゃおうそうしよう! 改めましてさっちゃんは『覚』だよ!」
真名判明
人の心が分かるキャスター 真名 覚
「あはは、弱体化? してるよ、めっちゃしてる。半分以下かな? だったら数で戦えばいいだけじゃん! 私含めてまず十四騎! 驚いちゃった? やったサプライズ大成功~! えへへ、これだけいれば、たった二騎の英霊とただの人間相手なんて囲んで犯して壊せるよ。勿論時間を稼ぐって目的もあるんだけどね、けど、別に殺しきっても構わないっていうんだから頑張りがいがあるよ! さあさあ殺し合おう殺し合おう殺し合おう殺し合おう! どうしたのりっちゃん? あ、いきなりあだ名とか馴れ馴れしかったかな。ゴメンね。 けど、怯えるほどではないでしょ?」
最終更新:2018年03月06日 23:51