【―――――さて】
レイシフトは無事終了、場所は――――海の上か。風はなく、ぬるく潮の匂いが漂っている。
ところどころに浮いているのは、死体かなにかだろうか。船の残骸もある。どうやら戦争の真っただ中であるらしい。
らしい、だ。本来ならこの場がどういうところなのか、聞いている状態なのだがまだそれは為せないでいる。
と言うのも――――
GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!
「――――っはあああ!!!」
ゴガァン!!!
大盾の一撃で迫るスケルトンの顔を砕く。剣を弾く、矢を払う。
レイシフト先が船の上。そしてその乗組員が全員――――スケルトンであったりするのだ。
『――――ッ!!!ええい状況把握するヒマもありゃしない!!なんでこんなに魔物がいるんだ!』
『この時代にここまでの魔物を維持できるほどのマナはない筈だ!神代と言っても過言じゃない量だぞ!?』
『クソッ!!とにかくその場を切り抜けてくれ!魔素が濃すぎて索敵もおぼつかない!先にそちらをどうにかするから・・・!!』
眼鏡をかけた美女(美しい女性の姿をした人型と言う意味。空を飛ばないものを指す) の毒吐きも聞こえてくる。
さもありなん、というのもこのスケルトンたち、やたらと強い。剣や弓、槍を使うのが一般的なスケルトンだったはずだが・・・
この船に乗っている連中は杖、双剣、鞭に短刀と多種多様。単純な有象無象にしては『強すぎる』のである。
まるでサーヴァントを相手にしているようだ。一体一体が確実な個性と強靭な霊基を持って襲ってくる・・・!!
『よし!索敵準備完了!って、これは・・・!!』
『マシュ!!□□□!!気を付けてくれ、巨大な霊基反応だ!』
『スケルトンレベルじゃない、明らかにサーヴァント・・・それもA級の反応だ!!』
『高速で迫ってくる・・・泳いできているのか、これは!!?』
そして次なる凶報。その報がくる前にこちらも異変に気が付いている。
――――高速で迫る、海獣。
全身から棘を生やした巨大なナニカがこちらに向けて牙を剥く。
船の制動権などこちらは持たない、避ける術はない。このままでは激突して――――
《ぞんっ!!!》
――――その瞬間、船の上のスケルトンのおよそ半数が『千切れ飛んだ』。
「ハッ、硬いだけの残骸どもが。魂も誇りも込めぬその刃で俺の呪を防げるものかよ。」
棘だらけのその巨体は、その体のごときざらりとした声でこの場を撫でる。
放たれるは鑢の如き敵意。激痛と血風を引き起こす、呪いのようにざらついたそれが空気に満ちる。
世界は今、この巨獣に支配された。血と棘でできた敵意の獣。その獣の名は――――
「全呪解放。加減はなしだ。絶望に挑むがいい残骸ども・・・」
『 噛み砕く死牙の獣 』!!!!
最終更新:2018年03月18日 22:12