AD:1281――――壱岐島。
日本の鎌倉時代中期、世界史上最大規模の海戦である弘安の役が大きい事件であろうか?
ここの戦闘で元軍を撤退させ、その後神風により元軍は壊滅的な被害をこうむることになる。
その後この戦争被害により幕府が疲弊し、南北に分かれ壮大な内戦に発展するところであるが――――
「神風は吹かなかった。海の流れすら途絶えた」
「船は動かず、屍は沈まず、瘴気は散らず」
「この戦さは長々とここに滞り続けている――――俺みたいな奴らを呼び寄せながらな」
【――――聖杯か】
「お前らの話を聞くんならそういうことなんだろうよ」
「誰かが聖杯に願いその力で『神風を止めた』」
「その結果散るはずのものが留まり、腐臭を発しながら変質し続けている」
「俺がここに来たのもおそらくはそれが原因で――――と」
ざぶん、と海獣は船を止める。
我々の立場を説明した後に『心当たりがある』と船を引っ張って連れてこられたわけだが――――
【ええと、ところでなんの心当たりが?】
「だから聖杯だよ。神風を止めたってことはようはこの戦さが終わって欲しくなかったってことだろ?」
「結果はともかくそういうアホなことをしでかす奴に心当たりがある。確かこの辺に――――」
『あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!!!!!!!!!!!!!!』
瞬間、甲高い少女の声が辺り一帯にけたたましく鳴り響いた。
【何事!!?】
『い、い、いたあ海獣くん!!な、な、なんで!?と、とつぜんどこにいったの!?』
『と、と、突出しないでって私お願いしたよね!?あ、あ、あ、あいつら何するかわかんないから刺激はあたえるなって!?』
『なんで言う事聞いてくれないの!?どうして勝手なことしちゃうの!?』
『わ、わ、私のいってること間違ってるの!?ねえ!!ねえ!!!ね゛え゛え゛!!!!!!!』
――――声の主は目前の島から。
おそらくはサーヴァントなのだろうか?和風、それも『この時代』に近しいと思われる古式な鎧装束に身を包んでいる。
背は小さく、この高い声に相応しい外見をしている少女だが――――それよりも。
「ああ、うるせえ・・・おいお前ら、とりあえず構えとけ」
「あれは猪と一緒だ。何かあったらすぐに弾けて――――」
『聞いてるの!?聞いてるの!?聞いてないよね!!そうだよね!!?』
『―――――そうなんでしょ!!!!!んもおおお゛おおおおおおおおおおお゛お゛お゛ああああ゛あああ゛んんんん!!!』
「ぶつかるまで止まらねえぞ」
叫び声と共に少女が刀を抜く。不動明王の迦楼羅炎を彫られた見事な、神秘が高く深いと分かる刀。
いや、それよりも。
『もういい!もうい゛い゛!!いいんだもん!!』
この子、はいてない。
『私のことなんてだあ――――れも!!!!わかっちゃくれないんだからああ゛ああ゛ああああ゛!!!!!!!』
下半身、なにも、はいてない――――――――――――――――――!!!!
最終更新:2018年03月18日 23:17