降臨アナザーゴット

ギャギイイイイン!!!!!

激突、激突、激突、激突――――

何合目になるであろうか?火花散り爆風荒ぶ突撃を、□□□は確実にいなしている。
その前に立つのは盾を持った人形(マシュ・キリエライト)、それと――――

「呪い師だとは思ったが・・・予想以上だな」
「手前・・・『どこの英霊』だ?」

5体の影法師を変幻自在に形を変えて攻撃する、『カオのないヒトガタ』である。

【それを答えると思うのかい、クーフーリン?】

無貌のヒトガタはとぼけた様子で返してくる。
山彦のように、反響するように、平凡とした普通な口調でそれを返す。

「ハッ、そうだな――――いやまあそうだろうよ」
「『この特異点(せかい)を救いたい』なんて狂人(ケダモノ)だ、あるいは答えてくれるくらいに狂ってるかもと思っただけさ」

『海獣くん、それは流石に失礼じゃないかな?』
『□□□は歴戦の英霊だ、世界なんて何度でも救ってきた』
『私たちは――――終わった世界(みらい)を救うためにやってきたんだ』
眼鏡をかけた美女(美しい女性の姿をした人型と言う意味。空を飛ばないものを指す)が海獣に反論する。
――――その通りだ。

『私たち』は確かに見た。
全てが沈黙した、荒涼とした未来(せかい)。
彼女が見せたその風景、それを覆すために我々は存在する。
その為ならば、例えこの身が『人でなし』になったとしても――――!!!!!

海獣が吠え、少女が激発し、無貌は暗く笑う。

ここは孤立した特異点。
人理を救う機関より『動くに値せず』と切り捨てられた特異点。
人理を司る抑止力に『動くに値せず』と打ち捨てられた特異点。
人は関わらず、人理の及ぶところもなく、顧みられることもない。

そこは敗北者の為の場所。執着するものが収着し、終着する為に争う特異点。

今はまだ、獣同士が踊るのみ。
縁は今だ繋がらず。
――――真の救いは、今だ来ず。

さて、ここにいるのは『英霊と化した□□□』そして『異形と化したクー・フーリン』だ。
どちらも各々の物語の中において主役級、伝説級の働きをした一騎当千たち。

レオナルド・ダ・ヴィンチの如き叡智でもあれば。
はたまたシャーロック・ホームズの如き知啓でもあれば切り抜けられる目があるかもしれない。
だがそうでない限り英霊とは巻き込まれたら吹いて飛ばされる厄災に他ならない。

それが二騎。本来ならば大叙事詩の主役級であろうとも切り抜けられぬほどの戦力である。
だが、それでも。

『ああ゛あ゛あああああ!!もうやだ!もうやだ!怖い!痛い!お腹すいた!ひもじい!』
『たたかいたくないたたかいたくないたたかいたくないそもそもなんでたたかってるんだっけ!?』
『わからない!わからない!わからない!!私にはなーんーにーも―分からないiiiiiiiいいいい!!!』

その厄災の猛攻を目の前の少女は捌き続けていた。
棘に貫かれ盾に弾かれ影法師の責めを受けても止まらない・・・いや、むしろより鋭く早くなっている。

【――――ッ!!?】

□□□の影法師が切り裂かれる。ガントで止めるも止まらない。
怯ませ弱らせ幾重に防壁を整えても、敵が有利になればなるほどこの少女は有利になる。

口から漏れる脅えは本心。しかしてその技の冴えも真実。
そしてその冴えは一線級の英雄に引けを取るものではなく、一部一部では凌駕する代物だ。
さもありなん。彼女も物語の主役級だ。それも日本において最大級の物語の一つの主役。

そしてこの状況、この不利において彼女の特性は非常に『相性がいい』
彼女の物語は敵に反逆し味方に反逆し逆境に反逆し好機に反逆し天に反逆し神に反逆した物語。
日本史最大級の物語でありながらも謎の多いアンタッチャブル。

『三毒悉く打ち払え!!――――倶利伽羅、火焔不動!!!!』

その半生は謎。その行動も謎。その思想も謎に包まれたこの英雄は――――
負けて当然な状況であればあるほど、何故か勝つ。

何故か、勝つのだ。

手に持つ剣が□□□の腹を突く。その宝具は『触れれば骨をも砕く』名刀である。
持ち主の地位や責任の重さに応じて重くなるこの刀を、かの家康公は重くて持てぬと言った。
そして家康公と『同じ地位』に居た彼女は、その刀を軽々と振るう。

その重さ、その威力は恐ろしさを保ったままで――――!

『食い千切れ――――骨喰藤四朗!!』

その真名は足利尊氏。
日本史上最も戦争をし最も業に塗れ最も高い地位につき――――

神を撃ち破り征夷大将軍(ちょうてん)に立った、武士のハイエンドの一人である。


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最終更新:2018年03月30日 00:00