友人の話をしよう。
彼は私と同じ幻霊の一種でね。と言っても私ほどには知名度もないから何処かの誰かに喚ばれるということもないだろうし、本当に単なるフィクションのキャラクターのようなものなのだが。幻霊というからには英霊として成立する理由がないか虚構の存在であるかだが、彼はそうだね、どちらでもある。
彼は日本で製作されたフィクションの中の登場人物で、英訳はされているけれどあまり知る人が多いものではない。発表年数だって1990年代だし幻霊としてもギリギリの存在で、一度見かけたときなんか彼のトレードマークしか確認できなかったくらいだ。存在が曖昧なのだネ。しかし彼の宝具の性能自体は強力なのさ。強力すぎる上に扱えるものも少ないし、非常に反発を受けたからバアルもあれの使用はやめたくらいだ。
彼は人の持つ運命やそれに憑くものをゆらゆら振るって落としてしまう。自我に根付いた何かを揺さぶって足場をなくしてしまう。言葉と正気を保った者にとって、これほど恐いものはなかろう。魔力などなく、しかし言葉の通じるもの全てに彼の言葉は効くのだ。試したことはなかろうが、英霊でも彼に口を開かせたらおしまいだろうさ。彼の呪いは効く。魔術など使えずとも、彼固有の魔法は確実に存在している。
■■■■■。それが彼の宝具名であり、魔法であり、彼のfate(運命)だ。
──まあ、彼自身は、運命など土台偶然が折り重なって出来た事象に過ぎないと、これを云う私を嗤うのだろう。
どうしてそんな話をするのかって?いやねマスター、先程君のシールダーが以前彼の登場する小説の三作目をロビーで熱心に読んでいたのさ。幻霊同士、探偵に迷惑をかけられている者同士で知らないわけではないのを、それでふと思い出したのだよ。
……ドクターの蔵書だと彼女は言っていたねえ。ああして彼のいない淋しさを埋めているのか、殊勝なことだよ。
最終更新:2018年03月30日 00:00