アナタの物語を始めます
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ネームエントリー
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N a m e E n t r y
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性別:【アナタの性別】
名前:【アナタの名前】
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「起きて、起きてよ……起きてってば!」
少女がアナタの身体を揺すって起こそうとしている。
睡眠不足によって引き起こされるものであろうか、異様に頭が痛い。
アナタはもう少しだけ、寝ていたいと思い――少女の呼びかけに応えること無く、意識を手放し闇の世界に――――
「起きてよ!!」
――痛い、とアナタは思った。
頭痛ではない。両頬が少女の手によってお餅のように引き伸ばされている。
ゆっくりと眠っていたいとアナタは思ったが、どうにもこのままでは眠れそうにないので、ひとまず起きることにした。
「おはよう、ご機嫌は……うるわしくないみたいね、ごめんね」
アナタは眠りを邪魔されて、不機嫌そうな表情を少女に見せた。
しかし、拝むように両手を合わせて謝罪する少女に対して、毒気を抜かれたのか怒る気はすっかりと失せてしまった。
見覚えのない少女である。
美術の教科書で読んだような昔のヨーロッパの農民のような服を着た、どことなく素朴な少女である。
風で金の髪がさらさらと揺れ、青い瞳には何に対してであるかはわからないが強い意志がはっきりと宿っている。
「ねぇ……自分の名前、わかる?」
アナタは少女に対し、自分の名前を答えた。
「じゃあ、ここがどこで……アナタはココに何しに来たか、わかる?」
そこで今まで薄ぼんやりとしていたアナタの意識がはっきりと覚醒した。
アナタは上体を起こし、周囲の光景を確認する。
見慣れた日本の公園の風景だ、アナタはどうやら今までベンチで眠っていたらしい。
何故、ベンチで眠っていたのだろう――思い出そうとしたが、どうにも記憶がぼんやりとしていて思い出すことが出来ない。
「……ダメみたいね、アナタなら大丈夫……って思ったんだけど、でも大丈夫。
そのうちきっと思い出せるわ!!だって、アナタの腕を見て」
アナタは少女に促せるままに自分の腕を確認した。
一体これは何なのだろうか、思い出すことが出来ないが何かしらの文様が刻まれている。
――頭が痛い。
絶対に忘れてはならないことを、忘れさせられてしまっているような気がする。
「いい?これはアナタとアナタの仲間を繋ぐ絆、忘れないで。アナタはタダの人間。
でも、そんなアナタだからこそ、アイツと戦えるの」
戦う――アナタはどうやら、誰かと戦わなければならないらしい。
アナタの頭が痛む。
―――イ
――パイ
アナタははっきりと思い出せない記憶の中で、誰かの声を聞いた。
大事な誰かの声を。
今はまだ思い出せないけれど、絶対に忘れてはならない誰かの声を聞いた。
アナタは今は思い出せない声の主との再会を心に誓った。
「……いい顔をしてるわね、大丈夫。それならきっと負けることはないわ。
いい?アナタは今、アイツの手で記憶を奪われているの。
今、この青森県の全てがアイツの宝具の対象になっている。
流石のアナタでも……ダメだったみたいね」
宝具――聞いたことが無い言葉だが、どうにも耳に馴染んでいる。
どうやら、記憶を失う前のアナタはは宝具という言葉を知っていたらしい。
「宝具っていうのは簡単に言うと、えーと……えーっと……必殺技よ」
必殺技らしい。
「……ごめんね、説明下手っていうか、シンプルで。
ボク、頭悪いからさ……まぁ、アナタならきっとそのうち思い出せるわ、メイビー」
アナタは目の前の少女に、自分が何をすれば良いのか尋ねることにした。
「……そうね、今からボクたちは青森の地獄をめぐるわ。
言うなれば、アナタがダンテ、ボクがベアトリーチェってところね。
戦いはボクがするし、きっと……アナタも……大丈夫だと、思う」
アナタは空気に向かってシャドーボクシングを繰り出し、親指を立てて少女にニヒルな笑みを向けた。
「えーと……う~~~ん……ほんと、ごめんね。
こんな状態のアナタを巻き込みたくなかったんだけど、アナタを放っておいたら最高にタチの悪いことになっちゃうから」
アナタは気にしなくていいよ、と少女に言った。
記憶を取り戻したいとは不思議と思ってはいない。
だが、記憶の中の声の主にどうしても会いたいと心の底から思う。
そのためなら、よくわからない戦いにだって突っ込んでいける、とアナタは思った。
「それじゃあ、よろしくね。
ボクの名前はジャンヌ……アサシンのジャンヌだよ」
アサシンと聞き、アナタはなんとなく官能的な肌面積が異様に多い水着のような服装の少女を思い浮かべた。
それにしても暗殺者という肩書は目の前の少女は不似合いに思える。
「えーっと、アサシンっていうのは単純な暗殺者のことじゃなくて……えーっと……えーっと……
もういいじゃない!!行くよ!!」
考えすぎてグルグルと目を回しながら、走り出した少女を追ってアナタも走り出す。
――パイ。
――先輩。
――マシュ。と口から勝手に言葉が零れ落ちる。
記憶の中の少女の名前らしい。
アナタは拳を作り、思い出した名前を零さないように、しっかりと握りしめた。
最終更新:2017年05月25日 20:58