「…………君。起きてください…………」
目を瞑っていても太陽が眩しい。
真夏の南国の日差し……。
海特有の潮風の匂い、耳に心地よい波の音。
なんだか懐かしい感じもした。
あと5分くらいはこうゆっくりしていた……
「藤丸君、起きてください!! こうなったら、ゴールデンボーイ!!
あのゴールデンな宝具をぶっぱなして藤丸君を起こしてください!!」
⇒「ストーップ!!」
「ワンターンキル!?」
ヒロインXのその声で藤丸の意識は完全に覚醒した。
ここで起きないと、話が進まない気がしてきた。
「やっと起きましたか……」
『Xさん、金時さん、いくら先輩が起きないからってそれはやりすぎでは?』
「いや、流石のオレっちでもそんなことしねぇぞ!?」
通信からマシュの声も聞こえてきた。
無事にレイシフトは成功したようだ。
「ここがハワイか……で、合ってるんだよね、マシュ?」
『はい、1810年のハワイのハワイ島ですね』
場所も合っている。
季節は夏。サマーシーズン真っ只中である。
だが、やはり戦時中。
海で遊んでる人影などなく、泳いでる人などもやはりいない。
見えるのは海の上を駆け抜けている……駆け抜けている……?
「……くっ、この島にも既に連合軍のサーヴァントが!」
大型の槍を持って、海を滑るように駆け抜けている少女が1人。
『この霊基パターン……ランサーです!』
⇒「見たことがないランサーだ……」
「改造されまくった大型槍のランサー!?」
「……相手は今度こそバーサーカー……それと、えっと、セイバーかッ!」
「藤丸君、あのランサー……絶対いい子です! ええ、間違いない!!」
顔を赤めるヒロインX。
藤丸は訂正しようとしたが、今はそれどころではない。
そのサーヴァントの身体をよく見ると無数の傷。
「この島まで取られてしまっては……ハワイがハワイじゃなくなる……!」
「それってどういう……?」
「もはや問答無用!」
一先ず、目の前のランサーを落ち着かせる。
こういう時は……
⇒「ゴールデン! 任せた!!」
「ヒロインXさん! こういう子の相手は慣れてるでしょ!」
「オーケイ! 任せな!!」
鉞を右手に構えて、藤丸とランサーの間に立つ。
雷光を滾らせて、堂々と構える。
「―――行くぜ、嬢ちゃん!」
鉞を大きく振りかぶり、そのまま力任せに振りぬく。
全身のはちきれんばかりの筋肉に身を任せた攻撃。
「オラァッ!」
金時の一撃は何でも吹っ飛ばす。
だが、それをランサーはギリギリでひらりと避けた。
黒髪を靡かせてひらりと華麗にすぐに反撃に移れるように。
(あの鉞、当たればただでは済まない……それにこの感じどことなく……
……あの武者のセイバーと似ている……
やはり、こいつらは連合軍のサーヴァント……!)
「親父殿の仇……! やはり、許さん!! 日欧連合軍!!」
金時から距離を取り、槍の先端を向ける。
すると、銃弾が彼女の槍からまるでマシンガンのように発射された。
その銃弾を金時は鉞で大きく薙ぎ払う。
「ヒューッ! 随分とご機嫌でカッコいい槍じゃねぇか!」
「そりゃどうも……ハワイは平和と自由の国になる……アタシの槍はその平和と自由の象徴ッ!」
「けどよ、その槍だとランサーのサーヴァントというよりもランチャ……」
「おっと、ゴールデンストップだ!」
⇒「あのさっきからその連合軍って?」
「連合軍なのに日欧連合軍をご存じないのか!?」
「そもそも私たちはカルデアから来たので……」
「…………………………はい?」
◇ ◇ ◇
「……申し訳ない……アタシとしたことがつい熱くなって早とちりを……」
⇒「なに、よくあることだよ」
「なに、気にすることはない」
「いえ、危うく事情も知らない方々を傷つけるところでした……」
深々と頭を下げるランサー。
こう落ち着いて、話を聞くと礼儀はわきまえている。
戦闘中に性格が変わるタイプのサーヴァントなのだろうか?
そんなことを藤丸はふと、考えた。
『それでそのランサーさん……』
「うーん、こういう時にはちゃんと名乗った方がいいのかな?
こう……『ランサー』って呼ばれるのはあまり慣れてなくて……
ほら、そっちのバーサーカーとセイバーはちゃんと真名で呼ばれてますからね」
「藤丸君! やはり、このランサーはいい人です!!」
⇒「それでキミの真名(な)は……?」
「………そうだね、セイバー」
「アタシは『ハメハメハ』って呼ばれてます。
ちなみに『ハメハメハ』でも『カメハメハ』でも構いませんがね……」
⇒「え?」
「ええーーーーっ!?」
最終更新:2017年05月15日 02:48