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ロスファンTOP/ストーリー/7 - (2011/03/07 (月) 19:12:57) の編集履歴(バックアップ)


ストーリーモードに書かれているストーリーをまとめたページです。

ネタバレ含みますので、純粋に攻略を愉しみたい人は見ないほうがいいです。




Episode 7


プロローグ

ボルス連邦で竜騎士イェールに手痛い敗北を喫したジャン。
コルバ島へ奪われた聖杯とアリシアを取り戻すためには、
もっと、もっと強くならなければ。
ロン公国へ戻ったジャンは、ただひたすら剣の修行に励んでいた。
ジャン
「くそぉっ。まだだ!
こんなんじゃ、
あいつらの足元にだって届きやしねぇ・・・!」
ウーゴ
「焦りは禁物だ。・・・もう一度、行くぞ」
ボルス連邦の使者としてロン公国へ訪れたクローチェ隊。
焦りを募らせるジャンに協力するウーゴたち。
枢機卿の試練を経て、ロン公国の新たな枢機卿のひとりとなった
アンリも、兄とともに己の魔導の技を磨いていた。
その時・・・。
聞き覚えのある声
「心配しなくても、竜騎士が神の血をひく者に
危害を加えることはない」
ジャン
「誰だ!?」
ローラン
「大きくなったな。
ジャン。アンリ」
ジャン
「お、・・・オヤジ!?」
アンリ
「父様! 本当に父様なの!?
? ・・・その人は?」
突然現れたのは、11年前のコルバ島遠征に向かったまま、
帰らぬ人となっていた、ジャンとアンリの父親だった。

さらに、もうひとり・・・。
アージェ
「苦労をかけたな、ウーゴ。
・・・元気でやっているか?」
ウーゴ
「・・・!!」
死んだとばかり思われていた、ジャンの父と、アージェ。
二人は、さらに驚くべきことをジャンに告げた。
『魔女に対抗しうる力が眠る場所がある』
『だが、その力を得るためには、命を賭けなければならない。
お前に、その覚悟があるのか?』
父の問いかけに、ジャンはためらうことなくまっすぐに答えた……。

1人目 谷を守るゴーレム

【第一話 谷を守るゴーレム】

人間の国家からは遠く離れた地図にもない谷の入り口に、ジャンたちは向かっていた。

ウーゴ
「ティーナ。お前はもう帰るんだ」
ティーナ
「やーっ! お兄ちゃんが行くなら、ティーナも行くの!」
アージェ
「ウーゴ。ティーナはお前が守ってやればいい」

渋々という顔でウーゴが黙り込む。それを承認と解釈して、ティーナが笑顔で兄と手をつなぐ。
その前を、ジャンとアンリとローラン親子が歩いていた。

ジャン
「…なぁ。これから向かう場所に、一体何があるんだよ?」
ローラン
「『霧の谷』…一年のすべてを霧に覆われ、決して奥へ足を踏み入れた者のいないといわれる迷いの谷だ」
ジャン
「そんなところに、『魔女に対抗する力』が眠ってんのか?」
ローラン
「…行けばわかる」

父の言葉にしばし沈黙するジャン。訊きたいことは沢山ある。魔の島で消息を絶ってからこの11年、一体どうしていたのか、何故、今まで何も連絡がなかったのか。魔女に対抗する力とは一体何なのか。
何から訊ねたものか考えあぐねるジャンの隣で、アンリもまた考え込んでいた。

アンリ
(魔女に対抗する力…もしかして、父さまのいう力は…)

ティーナ
「ねぇアージェ。ジャンたちのパパは、久しぶりに帰ってきたんだよね? どうしてみんな、ああやってずっと黙ってるの?」
アージェ
「思うことが沢山あると、かえって言葉に出来ないものなんだろう」

アージェに話したいことが沢山あるのに、沈黙したままのウーゴがまったくそうだと心中で密かに同意する。
不意に沈黙を破ったのはローランだった。
ローラン
「かつて、この大地にはふたりの神がいた。お前たちも、カダラで知ったのだろう。人は大地に害なす生き物だとして滅ぼそうとした神と、それに反対し、人を救おうとした神がいたことを。そしてアンリ、お前は枢機卿として、ロン公国に隠されたもうひとつの真実を知ったはずだ」
アンリ
「! 父さま…!」
ジャン
「もうひとつの真実…?」

枢機卿だけが知る、大きな秘密。ジャンがそのことを訊ねる前に、突然ずしーん…と大きな地響きが響き渡る。
咄嗟に身構える一行の前に、巨大なゴーレムが現れた。

ゴーレム
「グゴォォー…!」
ジャン
「でっけぇ! なんだありゃ? 機械とも違うよな」
ローラン
「聖域を守る番人だ。…来るぞ」

2人目 水晶の精霊クリスティーナ

【第二話 水晶の精霊クリスティーナ】

ローラン
「我々は邪な意思にて訪れたのではない。この地の先に眠る思いを託した者に連なる同胞だ。道を開けよ」
ゴーレム
「ゴオォーン…」

重く足音を響かせながら、ゴーレムは現れた道を引き返していった。

アンリ
「父さまの言葉が通じた…のかな?」
ジャン
「それより、どういう意味だよ『ロン公国に隠された真実』ってのは!」
ローラン
「ジャン。何故、ロン公国が神の手で創られた聖杯を守っていたと思う。…それは、人を滅ぼそうとした神を倒した者が、ロン公国の祖だからだ」
ジャン
「…ちょっと待てよ! それじゃもうひとりの神はどうしたんだよ? アリシアは、神の子孫なんだろ?」
ローラン
「……」
ジャン
「大体、なんでオヤジがそんなこと知ってんだよ! 枢機卿だけが知ってる秘密なら、アンリはともかくオヤジが知ってるわけねーだろ! 一体この11年の間、何やってたんだ! 魔の島から、どうやって戻ってきたんだよ!」
ウーゴ
「落ち着け、ジャン」
ローラン
「…あれは、神の血をひく娘の気まぐれだった」
アンリ
「父さま! 魔女に会ったの!?」

再び黙るローラン。代わりにアージェが口を開く。

アージェ
「君たちの父上は、ずっとひとりで魔の島と魔女のことを調べていたらしい。詳しいことはわからないが、深い事情があるのだろう。察してやれ」
ジャン
「……。そういうアンタは、オヤジに命を助けられたんだっけか」
アージェ
「命を救われたのは、俺だけじゃないらしいがな」
アンリ
「え?」
ローラン
「その話はどうでもいい。そろそろ、谷の入り口だ」

辺りを見回すと、うっすらと霧が立ち込め始めていた。

ローラン
「ここからは視界が極端に悪くなる。はぐれないように注意しろ。霧の中で迷ったらおしまいだ」
ウーゴ
「ティーナ、絶対に俺のそばから離れるな」
ティーナ
「お兄ちゃん、誰かいるよ!」

ティーナの指差す方向に、美しい少女が立っていた。

ジャン
「こんなところに、人が…?」
アンリ
「兄さまよく見て。あれは人じゃない」
クリスティーナ
「あなたたちは誰…? ここに人が訪れてはいけない…」

言葉と共に、鋭く輝く水晶が飛んできた!

3人目 獣人ボー

【第三話 獣人ボー】

ローラン
「我々は怪しいものではない。この地の主を訪ねて来ただけだ」
クリスティーナ
「あなたたちのような人が、時々この地にやって来るわ…。辿り着くことが出来ると思うなら、進んでみればいい」
それだけ告げると、霧に紛れてクリスティーナの姿は見えなくなった。

ジャン
「しっかし、うっとおしい霧だぜ。先がどうなってるのか、さっぱり見えやしねぇ」
ウーゴ
「油断すれば、元来た道も見失いそうだ」
アンリ
「父さま…。この地に眠るのは、『神を倒した』力なんだね?」
ローラン
「そうだ」

神を倒す。その言葉に、全員の顔がひきしまる。

ローラン
「ジャン。お前は竜騎士と戦ったのだろう。竜は、それ以上に強大だ」
ジャン
「オルメカでは、竜よりも竜騎士の方が厄介だったって聞いたぜ」
ローラン
「空を飛来してくるものではない。コルバ島には、おそらくこの地上に生きるどんな生き物よりも強い、最古の竜がいる。人間を滅ぼすために神が創り出した、世界最強の生き物が」
ウーゴ
「竜騎士以上の、竜…。これ以上、まだそんなものが…」
アンリ
「神を倒した力は、それに対抗しうるほどの力…?」
ティーナ
「でも、神さまを倒しちゃう力なんて…使い方を間違えてうっかり世界を滅ぼしちゃったらどうするの?」

ティーナの言葉に、全員がローランを見る。

ジャン
「もう、聖杯の暴走みたいなのはごめんだぜ」
ローラン
「だからこそ、扱う者の資質が試される。資格のない者であれば命を落とすだろう。ジャン、それでも力を得たいと思うのか?」

しばしの沈黙。しかし、既にジャンの心は決まっていた。

ジャン
「難しいことはオレにはよくわかんねーよ。…けど、覚悟なんてとっくに決まってる」
アージェ
「待て。何かくるぞ」

突然霧の中から跳ねるように何かが飛び出してきた。
獣かと思ったそれは、猿の耳と尻尾を持った少年だった。

ボー
「へへっ。久しぶりの人間だ! ここを通りたければ、オイラを倒してからにしな!」

4人目 聖域の歌い手ライラ

【第四話 聖域の歌い手ライラ】

ボー
「なかなかやるな! 次はオイラが勝つからな!」
楽しそうにそういうと、ボーはひらりと身を翻して霧の中へ消えた。

ジャン
「それにしても、ちゃんと奥へ進んでるんだろーな…。一向に景色が変わりゃしないぜ」
アンリ
「兄さま。…何か聴こえる」

耳を澄ますと、微かに物悲しい澄んだ竪琴の音色と、少女の歌声が聞こえてきた。

ローラン
「何があっても、絶対にその場を動くな! 恐れなければ、何事もなくすぐに終わる」
ジャン
「オヤジ? どういう…」

訊き返す間もなく、竪琴の音色が直接ジャン達の脳内に響き渡った。瞬間、すべてが白い霧に包まれて、仲間の姿が見えなくなる。

ライラ
「あれは遠い、遠い悲しい出来ごと…」
霧の中で、少女の歌声と竪琴の音色だけがはっきりと聞こえた。

ライラ
「かつて大地にふたりの神がいた… 神は、争いで穢され、汚れた大地を憂えていた… この世界を元の美しい世界にするために… ふたりの神は力を合わせて大地の浄化に取り組んでいた…」

ジャン
「アンリ! ウーゴ! みんな何処へ行ったんだ? 動くなってオヤジのヤツ言ってたよな。くそ、なんにも見えやしねぇ…」

ライラ
「ひとりの神が、大地を蘇らせるには、大地を穢す人間を滅ぼすべきだと考えた… 対する神は、他にも大地を救う手はあると反対した… 互いに力を合わせた神々は、こうして袂を分かってしまった…」

ジャン
「この歌は…? カダラで聞いたのと同じ…いや、ちょっと違うな」

ライラ
「大地に害なす人間を滅ぼすために… ひとりの神は聖杯を創った… 聖杯の恐るべき力から、人間と、大地の生き物を守るために… もうひとりの神は聖櫃を創った… そして、大きな悲劇が起きてしまった…」

ジャン
「悲劇? …なんのことだ?」

ライラ
「聖杯を創った神は、かつての友である神を殺して聖櫃を奪った… 自分たちの神を失った人間は、嘆き悲しみ、滅びを恐れた… けれど、残された神の子と仲間を守るために、一人の若者が立ち上がった… 彼は神の遺した力を手に、神を倒して聖杯を手に入れた…」

不意に、ジャンの背後から少女の声がした。

ライラ
「神をも倒す力を手に入れて、あなたは一体何をするつもりなの…?」

5人目 仮面の魔導士カッツェ

【第五話 仮面の魔導士カッツェ】

ジャン
「オレはただ、連れ去られたアリシアを取り戻したいだけだ! それ以外の何も考えちゃいねーよ!」
ライラ
「そう…。そうなのね。あなたも、同じ…」
そう言うと、ライラの姿はかき消すように消えた。
代わりに、先ほどと変わらぬ様子で仲間の姿が現れる。

ジャン
「みんな! 無事だったか!」
ローラン
「全員揃っているな。先へ進むぞ」

再び霧の中を歩き始めた一行。永遠に続くかと思われた霧が、ようやく晴れ渡った。

ジャン
「ようやく霧が晴れたか」
ウーゴ
「思ったより、深いんだな…この谷は何処まで続くんだ」
アージェ
「ここからが本番だ。気を抜くな」

アージェの言葉に呼応するように、声が投げかけられた。

カッツェ
「ここまでたどり着く人間がいるなんて、何百年ぶりかな」
見れば顔の半分を奇妙な仮面で覆った青年が立っていた。

カッツェ
「けど、ここから先はそう簡単に通すわけにはいかないよ。…一応訊ねようか。君たちは、誰? 何故こんなところに来たんだい」

ローラン
「我々は、聖杯と神の血をひく者を守る誓いに名を連ねし者。この谷の主に会いにきた」
カッツェ
「…神を倒した約定を守る国の末裔か。何故今頃、ここの主に用があるのかな」
ローラン
「聖杯と神の血をひく者が奪われ、もうひとりの神の血をひく者の手に落ちた」
カッツェ
「それは大変だ。本当なら、俺もこんなところで人間なんか相手にしている場合じゃなさそうだな」
ジャン
「どういう意味だよ?」
カッツェ
「そんなこともわからないのかい。聖杯の力の前では、この谷も耐えられはしないだろうからさ」
ウーゴ
「…一体、どうなるんだ?」

ウーゴの問いに答えたのはローランだった。

ローラン
「大地は激しい地震に崩壊し、空は暗雲に包まれ嵐となり、すべてを押し流す恐ろしい大洪水が世界を襲う。…そうなれば、この地上で生き残る者はいないだろう。何としても食い止めなければならない。通してもらおうか」
カッツェ
「あいにくだけど、この先には資格のあるものしか通しちゃならない決まりでね。通りたければ、俺と戦ってからにしてくれ」

カッツェの言葉と同時に、凄まじい冷気が辺りを包み込んだ。

6人目 月の騎士メルヴァ

【第六話 月の騎士メルヴァ】

カッツェ
「仕方ない。約束どおり、道を譲ろう。何処まで行けるか楽しみにしているよ」
冷めた笑顔でそう告げると、カッツェはその場を立ち去った。

ジャン
「大地震に嵐に大洪水って…そんな天変地異、どうやって防げばいいんだよ?」
アンリ
「兄さま。だから、人間の力では聖杯を防ぎようがないんだ。神の遺産である、『聖櫃』でないと…」
ジャン
「聖櫃があったところで、どうせ人間には扱えないんだろ? どっちにしろダメじゃねーか」
ウーゴ
「…ずっと気になっていたんだが、聖杯が天変地異を起こすものならば、そもそも聖櫃ってのはなんなんだ?」

ウーゴの問いにローランが口を開こうとしたその時、突然辺りが闇に包まれた。

ジャン
「なんだ? 急に暗く…」
ティーナ
「お兄ちゃん! お月さま!」
ジャン
「月? 何いってんだ、空も見えないのに月なんか見えるわけ…」
アージェ
「いや、あれを見ろ」

辺りを完全に岩壁に閉ざされた谷に、漆黒の闇が集まっていた。その中心に、青白く丸く浮かぶ月。そして、その下に鎧をまとい馬にまたがる細く美しい騎士の姿があった。

ティーナ
「ティーナ嘘なんか言ってないもん!」
ジャン
「女…?」
ローラン
「月と夜の魔力を自在に操るおそるべき力の持ち主だ。そろそろ、目指すものが近いぞ」

メルヴァ
「この地に訪れし者たちよ。汝に、この先に進む資格のありやなしや」

ジャン
「…なんか、どいつもこいつも同じことばっか言ってねーか?」
ウーゴ
「それだけ、この奥に待つものが重要なものなんだろう…何せ、神をも倒すほどのものなんだからな」

ジャンたちが剣を構えるよりも速く、メルヴァのハルベルトが風を斬った。

メルヴァ
「いざ、尋常に勝負!」

最終決戦! 天駆ける白き虎

【第七話 天駆ける白き虎】

メルヴァの強烈なハルベルトの一撃を、ローランは大剣で凌いだ。ハルベルトが、大きく弧を描いて跳ね飛ぶ。

ローラン
「奥へ進んで、問題ないな」
メルヴァ
「…完敗だ。認めよう」

ウーゴが感心したように呟く。
ウーゴ
「あんなに軽くあしらうなんて…ジャン。お前の父さんは、相当の腕だな」
ジャン
「…まぁな」

幼い頃、父は誰よりも強く憧れだった。ジャンはふと、魔の島へ旅立った日の父の背中を思い出した。

さらに奥へと進みながら、ジャンが先ほどの疑問を口にした。

ジャン
「オヤジ、さっき言いかけてただろ。聖櫃ってのは、一体なんなんだ。…霧の中、歌で聞いたぜ。ふたりの神は、かつてはともに荒れた大地を救う同志だったんだろ。それが、たとえ考えが変わったからって…殺してまで奪わなきゃならないものって、なんだったんだよ」
ローラン
「聖櫃は、どんな激しい天変地異からも、命を守るもの…巨大な箱舟だ」
ウーゴ
「箱舟? 巨大といわれても…ぴんと来ないな」
ティーナ
「ボルスやオルメカにある船よりも、もっとずーっと大きいの?」
アンリ
「でも、それなら…どうして今まで誰にも見つけられなかったんだろう?」

天駆ける白き虎
「それは、その舟が深い海の底に沈んでいたからです」

不意に頭上より届いた声に見上げると、白い翼を持った虎がゆっくり舞い降りてきた。

ジャン
「海の底!? そんなところに沈んでも大丈夫なのかよ、その舟は!」
天駆ける白き虎
「聖杯を創り上げた神は、その時気づいた。聖杯だけでは、人間ばかりか自分の愛する生き物たちまで死なせてしまうと。聖櫃を創った神は、それを理由にもう一度話し合うつもりだった。人間を滅ぼすことなく、力を合わせて新しい世界を作ることが出来るはずだと。けれど…」
ウーゴ
「聖櫃を創った神は殺され、聖櫃は奪われた…」

白い虎は、ゆっくりと頷いた。

アージェ
「あなたが、ここの主なのか」
天駆ける白き虎
「ここに来た理由はわかっています。あなたがたのこれまでの行動も。最後にもう一度、私の目で見極めます。命が惜しいのならば、今ここで引き返しなさい」
ジャン
「冗談だろ。ここまで来て帰れるかってんだ」

天駆ける白き虎
「…わかりました。では、来なさい」

エピローグ (1周目)

天駆ける白き虎
「いいでしょう。
あなた方を、求める力のある場所まで案内します」
天駆ける白き虎
「ただし。
この先へ進むことが出来る者は、ただ一人」
天駆ける白き虎
「神にも等しい力を手に入れることが出来るのは、
あなた方のうちの、たったひとりだけです」
長い時間の中、迷いの霧を無事にくぐり抜け、
ここまでたどり着いた者は、今までにも何人かは居たのだった。
だが、神にも等しき力を手に入れることが出来るのはたったひとりだけ。
この地にたどり着いた誰もが皆、力を手に入れるのは自分自身だと、
共に苦難をくぐり抜けた仲間同士で争い、あい果ててしまったのだった。
アージェ
「ふっ…。
力を手に入れる者は、最初から決まっている」
ウーゴ
「ああ。
…行け、ジャン」
仲間たちを裏切ったあの時、自分にはもはや生きる資格はないと思っていた。
けれど、仲間たちにこれ以上悲しい思いをさせてはいけないと己を(さと)し、
生きる目的を再び与えてくれた剣士に報いるためにアージェはここまでやって来た。
それはまた、大切な師を自分の手で倒してしまったと
悔やみ続けていたウーゴにとっても、同じ思いだった。
天駆ける白き虎
「迷いはないというのですね。
わかりました」
天駆ける白き虎
「ではもうひとつ、
私はただ力のある場所に案内するだけ」
天駆ける白き虎
「世界を救う力を得られるかどうかは、あなた次第…
力を得られなければ、命を落とすことになるでしょう」
ジャン
「世界を救うとか何とか、
そんなでっかいことは、オレにはよくわかんねーよ」
ジャン
「けど、竜騎士のヤツらのやろうとしていることは、
ぜってー間違ってる!
それを止めるためなら、命だってなんだって
賭けてやるぜ!」
アンリ
「兄さま。
必ず…無事に戻ってきてね」
魔女と戦う力を得るために、単身『神を倒す力』の眠る場所へと進むジャン。
仲間たちは、その後ろ姿を見送った…。
2周目へ続く

最終決戦! 試練を与えるもの

【第八話 試練を与えるもの】

ジャンは、白い虎の背に乗り、たったひとり、小さな神殿のような建物の前に舞い降りた。

天駆ける白き虎
「ここから先は、あなた一人です。さぁ、行きなさい」

促されるままに聖殿に足を踏み入れると、光に満ちた玉座に立派な杖を手にした老人が座っていた。

試練を与えるもの
「おぬしが、力を求めるものか」
ジャン
「そうだ!」
試練を与えるもの
「何ゆえに力を求める」
ジャン
「大事なものを取り返し、守るために!」
試練を与えるもの
「…では、そのためにおぬしは、なんでもする覚悟があるというのだな?」
ジャン
「なんでも…? 命を賭ける覚悟があるかってことか?」

老人はゆっくりと首を横に振った。

試練を与えるもの
「たとえ他の誰かを傷つけ、時には死なせることになろうとも。己の守るもののためなら、鬼にも…蛇にもなってみせるのか?」
ジャン
「そんなことするわけねーだろ! それじゃ、オルメカの皇帝や、ボルスの大統領、竜騎士たちとおんなじだ! 自分の大事なものを守るために、他の誰かを泣かせたら…結局、別の大事なものをなくしちまうんだ!」
試練を与えるもの
「それで大事なものを守りきれると思うのか」
ジャン
「わかってるよ…オレには、力が足りねー。だから、『力』が必要なんだ!」

ジャンを冷ややかに見下ろすと、老人は沈黙した。

試練を与えるもの
「…聖杯から身を守る巨大な箱舟は、海の底深くに沈んでいた」
ジャン
「急になんの話だよ?」
試練を与えるもの
「箱舟を完全に動かすには、何千年もの時の間、力を蓄える必要があった。だが、その準備が整い、箱舟は再び海上に姿を現した。…今から12年前に」
ジャン
「12年前? ……まさか!」
試練を与えるもの
「おぬしが『魔の島』と呼び、魔女の住まうあの島こそ、神が創りたもうた聖櫃そのものなのだ。今、聖杯と聖櫃が揃い、神の血筋もあの島にある。…魔女は、世界を滅ぼすすべてを手にしてしまった」
ジャン
「させねーよ! そんなこと、絶対に!!」

老人は、ゆっくりと玉座から立ち上がった。

試練を与えるもの
「…では、おぬしの想いの強さを見せてみよ。魔女や竜騎士にも打ち勝ち、鬼にも蛇にもならずに大事なものを守って見せると言うた、その想いを!」


エピローグ (2周目)

試練を与えるもの
「もう、終わりなのか?」
ジャン
「…まだだっ! まだ、やれる!」
試練を与えるもの
「あきらめの悪い奴だ。
では、こうしよう」
試練を与えるもの
「おぬしとともにここに訪れた者の中から、
誰かひとり。
おぬしの代わりに命を差し出すならば、
おぬしに力を与えよう。…どうだ?」
ジャン
「ふざけるな!
そんなこと、絶対認めねー!」
試練を与えるもの
「仕方ないだろう。
おぬしの力が足りぬのだから。
…ではさらに譲ってこの谷にいる仲間ではなく、
おぬしの敵だった国の者ではどうだ」
試練を与えるもの
「ふむ…そうだな。
散々おぬしの国を苦しめたオルメカの皇帝か、
おぬしの大事なものを失う原因になった
ボルスの大統領ならいいのではないか?」
ジャン
「いい加減にしろ!
相手が誰だって、そんなのは絶対にお断りだ!」
試練を与えるもの
「やれやれ、しょうのない奴だ。
では仕方ない。
おぬしの命をもらうとするか」
ジャン
「他の奴らの命はやらねー!
オレの命だって、死んでもやるもんか!!」
試練を与えるもの
「…まったく、あきれ果てた強情者だ。
おぬしの国の祖と目的は同じでも、中身は大違いだな」
ジャン
「あ、あれ?
ジジイは…?」
試練を与えるもの
「何を驚いている。あれは、仮の姿。
我こそが、神が人に(のこ)したもうた力そのものだ」
試練を与えるもの
「いささか不安はあるが、
おぬしを新たな主と認めよう。
求めれば、我はおぬしに相応しい刃となる。
その杖を手にとるがよい」
ジャンがひとりで神の遺した力の試練に挑んでいる頃、
仲間たちはただ、じっとジャンを信じて待っていた。
ウーゴ
「少し、遅いな…」
天駆ける白き虎
「何故、あなた方はあの少年を
そこまで信じられるのですか。
世界を揺るがすほどの力を、
どうして彼ならば、託せると…?」
ウーゴ
「…別に、そこまで信じてるわけじゃない」
ウーゴ
「ただ、あいつなら…
どう転んでも、世界を滅ぼしたりなんかは
出来なさそうだからな」
アンリ
「ウーゴさん……。
それって、全然褒めてませんよ」
ティーナ
「お兄ちゃん!
戻って来たよ!」
苦難を乗り越え、神の遺した力を手に入れたジャン。
しかし、本当の戦いはこれからだった。
さらわれたアリシアを取戻すため。
聖杯により、大地を滅ぼされるのを阻止するため。
ジャンたちは、魔の島へ向かう決意を新たにするのだった。
エピソード8へ続く…



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