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発言集 - (2005/11/13 (日) 18:53:05) のソース

#contents
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**吉田健一×安彦良和 (1)
(中略) 
安:実は今日のためにエウレカを見て、「どうしようかな、俺生意気なこと言いそうだな」とも思ったりも 
  したんだけど、吉田さんだっていうこと出てきたんですよ。(中略)で、エウレカでは総作監を? 
吉:いちおうメインアニメーターという名前で、全カット自分のところを通してもらっています。 
安:そうすると全話なんらかの形で手は加えているわけだ。第1話は作監? 
吉:第1話は作監です。1話に関してはレイアウトから原画まで、かなりのところまで手を入れてました。 
安:第1話は、作画はすばらしかったと思うよ。2話以降の演出はもっぱら「?」なんだけれど。 
  作画については第2話以降もね、第1話が非常にいいから多少落ちて見えるけれど、 
  じつにナイーブな感じで「よく維持なさっているな」という感じが強いですね。 
(中略) 
安:あの、最初に演出の話をしたんだけれど、察するに、演出とあなたとの間に軋轢があるんじゃないの? 
吉:え!正直、僕自身も安彦さんにそこを突っ込まれるとは思わなかったです。軋轢というか・・・。 
  たとえばエウレカなんかも監督と話をして合意してもまたズレてくるんですよね。その辺の齟齬は、 
  べつの人間だから当然なんですけれど、なかなかキャラクターをつくることと、自分の妄想を働かせることと、 
  ドラマを考えていくこととの間でずいぶん引き裂かれている感じがするんです。 
  だから時に「ちょっと違うんじゃない?」という気分に陥るときもあるんですよ。 
安:第1話から順番に見ていって、第6話で「うーん、もういいな」って思ったって感じになったのね。 
  それは率直にいって演出に対してなんですよ。こういう話をムック本に載せてどうかという気もあるんだけれど、 
  どうせだから率直に拾っていただけると、いいなと。いろんな意見が出ているんでしょ? 
吉:あると思います。 
安:はっきり言ってしまうと、監督さんが何をおやりになりたいかわからないんですよね。 
  監督さんは若い方のようだけれど、主体的にものをおつくりになる立場がおありなのだったら、 
  監督さんが未熟なんだとしかいいようがない。 
吉:・・・はい。 


**吉田健一×安彦良和 (2)
安:アニメってずっと「子供がみるんだからわかりやすく」ということもあって、ディティールはどうでもいいって 
  いうことでやっていたんだけれど、それがそこにだんだんと趣味が持ち込まれるようになったわけですよ。 
  (中略)ところがガンダムやエヴァンゲリオンの影響を受けた”子供”の作品になるとディティールから入るのが 
  当たり前になってしまって非常に瑣末になっていくんだけれど、全体が見えないっていう、そういう傾向が今強い 
  ように見えるんですね。それは趣味性のもたらした弊害ですよ。だから第6話まで進んでも、枝葉にばかり 
  興味があるから、なにをしようとしているか見えないんですよ。僕が言いたいのは、若いうちから変化球ばかり 
  投げるな、っていうそれに尽きるんです。「もっとストレートを投げろよ」っていう。エウレカというヒロインの名前が 
  タイトルなら、 もっと演出がエウレカに惚れ込んで作れば、そのタイトル通りの作品になると思うんだけれどね。 
吉:もちろん僕も参加しているわけですから、自分にも責任はあると思うんです。でもたとえば軍隊があって、 
  主人公のレントンは「ここでまともに生きていくためには軍に入るしかない」ってことを言っている。 
  じゃあ、そこで軍がどんな存在か描けているか。僕が描きたいのはそこなんですけれど、だからこそ、 
  僕自身が「出てこないじゃないか」とちゃんと指摘してきたか?と反省があるんです。 
  アニメーターとして監督と話し合いながら、かつ自分が描くに値すると思う世界を作品に投入したいときに、 
  どいういうスタンスでいればいいか、実は今は本当に迷いながらやっているというのが正直なところです。 
安:演出って、ごく一部の演出家を除いてダメなんですよ。だからアニメーターがしっかりしないと。 
  僕がガンダムの時に作画監督とかではなくアニメーションディレクターって名乗ったのは、 
  演出でも何でも文句を言うよ、というつもりだったんですよ。コンテにも文句を言ったりしたし。 
  だからそう思うならば、絵描きの側から演出にもっと強いサジェスチョンを与えていいんだと思う。 
  だから「うるさいアニメーター」になるのが一番いいんじゃないですかね。 
吉:ああ、そう言っていただけると、心強いです 


**上野俊哉(和光大学助教授、社会学/カルチュラル・スタディーズ)のエウレカ評@『ユリイカ』10月号 

 アニメを好んで見るDJやパーティ・オーガナイザー、 
クラバーやレイヴァーにとっては、待ちに待ったタイプの 
作品である。しかし、日本から聞こえてくる噂ではオタク、 
アニメ業界での評判は芳しくない、というか、まともな 
批評すらないらしい。毎回のサブタイトルがニューオーダーや 
ビョークのトラック名になっているなど、オタクにとっては 
ただウザいのだろうか? 
 しかし、この端的なジャンル横断をペダントリー(衒学趣味) 
としか受けとれないとしたら、あまりにも貧しい反応である。 
メカやギミックの細部や少女の表情、物語の反復に熱狂できる 
感性は、あるトラックを聴き、リミックスの差異を読み/ 
聴きとり、また別の想像力に投げわたしていくような「読解」に 
そのまま開かれている。このようなジャンル/シーンの横断こそ 
STAND ALONE COMPLEX の論理でなくて何だろう? 
サリンジャーやヒップホップ、グラフィティとハッカー文化が 
交錯した「笑い男」を絶賛することのできる感性であれば、 
すぐさま接続したくなるような複合体(コンプレックス)である。 
それともオタクやアニメの文化はビートとリミックス、 
パーティ文化のスタイルからの「引用」と「横断」は望まない 
隔離状態(自閉モード)にいたいということだろうか? 
少なくとも、踊ることと萌えることを動機として区別できない 
オタクにとっては、今までこういうアニメがなかったことの方が 
驚きである。 

**<プロデューサーからのひとこと(竹田靑滋)> 

 この作品は凡百のロボットアニメーションでは、ありません。 
 当社で放送中の機動戦士ガンダムシードをはるかに凌ぐ 
 スケールで描く、PF=フィロソフィー・フィクション。 

 単なるSFで終わらないのが、エウレカセブンで、映画で言えば、 
 「風の谷のナウシカ」と「ビッグ・ウェンズデー」と「地獄の黙示録」 
 を足して、なんにも割らなかったような感じです。 

 主人公たちの成長を追ううちに、軍事問題、宗教、ドラッグなど 
 のサブカルチャーに突き当たり、自分で答えを見つけ出すという 
 仕掛けになっています。 

 同時に発売されるゲームとも、世界観、時間軸を共有していますが、 
 ストーリーはまったく別で、サブキャラひとりが、共通に登場するという 
 ゲームの方でも新機軸を打ち出しています。 

 日曜あさ7時が、カルトアニメの発信源になること必定です。 

**京田インタビュー抜粋集 

グレートメカニック17 
京田 最近、分からないことがあると公式ホームページを見ようって 
よく言うじゃないですか? でもエウレカセブンの公式ホームページに 
本当のことが書いてあるって保証はないんですよ(笑)。 

アニメーションRE vol.1 
京田 月光号って250メートルあるんですよ。あの船を動かすために、 
最低限このくらいの人数は必要だろうなと思ったら、あの数になったというくらい。 
群像劇を期待されると困るんです。 

アニメージュ10月号 
-ー レントンは軍のKLFに人が乗っていることを知っていたんですよね? 
京田 知ってはいますが、あの瞬間まではリアリティを持って考えて 
いません。それは僕たちが、TVでイラクにいる自衛隊を見て、その 
装備が血税の一部であるのとなかなか思えないのと同じです。だから 
むしろ見ている人が「ああ、死んじゃってるよ!」と気持ち悪さを感じたり、 
腹をたてたりするのが当たり前に思うようにしてます。無神経なレントン 
っていうのは僕らの姿でもあるわけですから。 

**ガイドブック コラム あきまんの「エウレカセブンとあきまん」 

一番最近に放映された26話。吉田さんに「あなたは見てないだろうけどこれだけは見ろ」と 
言われたので見てみたら大変好みで面白かった。だけどそれまでは苛立ちの連続だったのが 
ボクにとってのエウレカセブン。このアニメの嫌いなところは「ゲッコーステイトの連中」 
「物語が説教臭いところ」「レントンがエウレカに良いカッコするために敵対勢力だからっていとも 
簡単に大量殺人をするところ」。言いあげれば数限りない。でも好みのところもあった。それは 
ニルヴァーシュが「最強であること」「エウレカがかわいいこと」。エウレカには爺さんを殺されかけても 
憎めない美貌がある。性格が悪くてもレントンは彼女に恋をし「守る」と言った。そこに共感したし、 
そんな彼を応援したいという気持ちは当初から持っていたので、彼がうかつな大量殺人をした時も 
「かわいいエウレカのためだ、100人200人の人命などしゃあないよなアニメだもん」とぶつぶつ 
言いながら見ていた。だが26話を見たらこれはぶつぶつ言わなくても良いのではないかと、そんな 
期待が生まれた。エウレカセブン。「ただ者か、ただ者ではないのか」。とりあえず見てみようよ。 

**竹田プロデューサーインタビュー抜粋(エウレカセブン)
 >…最初は2クールのつもりだった制作側に「一年やれ」と言った。その時佐藤は痺れたらしい 
 >…2クールの構成を52話にするところから参加した 
 >…最初はこんなハードな展開じゃなかった。オレが命令した 
 >…レントンが人殺しに気付くのが遅かったのもオレが狙った展開 
 >…ドロップアウトしたアウトロー連中に憧れる気持ちってあるじゃん。そういう思春期の憧れの対象の現実的な面を見て幻滅する。そんなのやりたかったんよ 
 >…イラク戦争を下敷きにした。今回もアメリカ批判です 
 >…種は軍の目線で世界を見ているがエウレカは逆にサブカルの方からメインカルチャーをみたらどうなるかって感じ。種とはコインの裏表の関係 
 >…アニメにかかわるようになって4年たったがようやく「なんとか萌え」がわかるようになった 


 >496は、今月のアニメージュの「この人に話を聞きたい」、竹田Pインタビュー。 
 >その記事によると、「BLOOD+」では「イラク人を殺しに行かせてるのは日本人」だと 
 >「子供に分からし」たいらしい。 
 >それはエウレカでもたぶん同じ。「イラク戦争を下敷きにしているところもあって」と言ってるし。 

 >先月号で、京田氏が「レントンは軍のKLFに人が乗っていることを知っていたんですよね?」 
 >と問われて、「イラクにいる自衛隊を見て、その装備が自分たちの血税の一部であると 
 >なかなか思えないのと同じ」と答えてて、妙にズレた回答だと思ったんだけど、 
 >根底に「イラク人を殺しに行かせてるのは日本人」という意識があったんだろうなあ 


**渡辺健吾の「エウレカセブンにまつわる音楽のこと」 
佐藤大が所属するフロッグネーションの代表取締役。同社の運営する老舗インディー・レーベル 
frogman recordsは、KAGAMIなども所属する日本のテクノの草分け的存在 
渡辺健吾の「エウレカセブンにまつわる音楽のこと」 

-ロボットの呼称がLFOやKLFだとか、世界を襲った大厄災がサマーオブラブだとか、それまで冗談なのかと思っていた設定が現実を帯びてきた頃、佐藤に結構本気で「やめといたほうがいいんじゃない?いくらなんでもベタすぎるだろ」と進言したこともあった。単に自分の好きな記号を並べただけになってしまうのではという不安と疑問があった。 
-ダンスミュージック中心でという話が浮上した時も、一体それは誰が仕切るんだろうとも心配になった。戦略的に売り出し中のJPOPアーティストの曲が次々と主題歌に起用される作品で、ボーイミーツガールを描く日曜朝のロボットアニメで、そんなアングラな音が必要なのかと正直思った。 
-監督と初めて会ったのはスーパーカーの解散ライブ。切羽つまった仕事を抜け出して来た彼は静かで控えめな印象だったが、音に対する秘めた情熱は少ない言葉の端々から伝わってくる。メンバー自筆サイン入りのセットリストを握りしめて、会場出口のさよならメッセージを名残を惜しむ多数のファンに混じってカメラに収める姿が印象的だった。 
-KAGAMIの曲を使いたいと監督から直接依頼があり、深夜のスタジオでプロデューサー陣を説得する会議に同席した時、監督はラジカセでその曲をフルボリュームでかけながら、曲の良さ、どうしてこの曲が必要か、どんな使い方をしたいか、僕らがビックリするほどの熱弁をふるった。追加予算は勘弁してくれという姿勢だったプロデューサー陣が折れるのに時間はかからなかった。 
-グダグダになりそうだった挿入曲の制作は全面的に引き受けることにして、監督とも密に連絡を取ってだんだんと彼の思惑や訴えたいことが見えてきた。本気で好きなものでなければ血肉として骨を支えるものにはなりえないんだという思いに応えようと決心した。 
-ようやく物語も中盤。これから自分が関わった曲がたくさん使われるかと思うとドキドキする。DJキョーダの手腕でそれがどんな波を生み出してエウレカの世界を彩っていくのかとても楽しみだ。 


**ガイドブック コラム 菅正太郎の「脚本家にままある出来事」 
-さかのぼること数時間前、私は毎週月曜日定例のエウレカセブン脚本家会議の場にいた。物語も佳境であり、シビアな会議が続いた。 
-次々といろんなことを思い出した。大さんと初めて会った日のこと。別件の忘年会の席上で大さんに叱られたこと。 
-最初に京田さんと引き合わせてもらった時のこと。京田さんは大きなリュックを背負ってニコニコとはにかんでらした。確か私たちは握手をした。あれから1年以上が経過する。この間、お二人の良い面も悪い面も見た。けどこの作品を含めてお二人に対する私の気持ちは一貫している。ああ、ようやく書きたいことが見つかった。けれど、それを原稿に落とし込めないことも、ままあることである。 

**佐藤大×秋元康 

◎佐藤が秋元の事務所(ソールドアウト)に在籍していた関係で、この対談が実現。 
◎佐藤が東放学園在学中、特別講師に来た秋元の質問コーナーで佐藤が「ソールドアウトに入るにはどうしたらいいですか」と質問。「何か書いたものはあるの?」 
と聞かれたので、佐藤はそれまでに書いた詞を200編ぐらいまとめて送る。 
◎作詞家志望だったのに<なぜか>放送作家チームに入れられる。 
◎電話は「ハイッ!ソールドアウトです!」とテンション高く出なければいけない。時々先輩たちが夜中に電話をかけてきて、テンションが低かったら「テメエ!今から行くかんな!」とベンツで乗りつけ、さんざん怒られた後、焼肉行くぞ!と5~6台の外車をつらねて出かける。 
◎(秋元)血尿出た奴には血尿手当やるぞ!って話もあった。そういうことをおもしろいと思える人がクリエイター。 
◎ウチの事務所に脚本家になりたいみたいな若い人が来るんですけど、まだ雇う気になれないんですよ。 
◎僕がソールドアウトにいた頃の「あこがれの人と一緒にいる若者」を、自分で書いてみようと思ってたんです。 
監督がどう考えてたのかは知らないですけど、ゲッコーステイトも軍人の集まりじゃなくて、サーファーの集まり 
みたいな感じにしたかったんですよ。 
◎(エウレカはこれの意味が知りたいから次の回を見る、普通は説明から入るのに、 
言語から入るのがおもしろいという秋元に対して) 
そこはすごく批判の対象にもなってるんですけど(笑)。でもそれはかなり意識してやっています。僕自身、 
テレビ業界をまったく知らずに入って、ソールドアウトでたたき込まれた部分も多いし、今の位置がある。 
あそこで僕が感じたことが、主人公の成長として表現できればいいなと。それなら自分でも1年間かけて 
やる意味があるのかなと思う。 
(以上) 

**ガイドブック 声優インタビュー
三瓶由布子(レントン) 
実は放送当初、疑問を抱いた。 
「エウレカとニルヴァーシュで戦って勝ってうれしそうで・・・。でもある時監督さんや音響監督さんに 
聞いたことがあるんです。レントンはこれでいいんですか?って。こんなにあっさりと素直に、 
君を守るという意思だけで戦っていいのかと思ったんです」 
問いに対する答えはこうだった。 
「レントンが暮らす世界は大人になったら軍人になるのが当たり前だからこういうものなんだよ。 
と言われて、そうなのかあと演じていたんです。そうしたらやっぱり後からすごいショックを 
受けちゃって、うわ、騙されたー!って(笑) 私は視聴者の皆さんとの架け橋なので、 
先を知らせないということになっているみたいで、そういうことが多いんです」 
「でも先を教えてもらないからなー。時々エウレカ役のかおりん(名塚佳織)だけ呼び出されて 
何か教えてもらってるんですよー!もう気になるぅ~」 

名塚佳織(エウレカ) 
「実は役について最初に説明していただいたのは、感情がないということと、登場人物の中で 
一番色が白いということでした。改めて思うと情報として少しも役に立たなかったような(笑)」 
「人間ではないということを教わったのは、レントンが月光号に乗り込んだ時に皆さんの前で、 
エウレカはほんとうにお母さんなの?という声があって、そこで初めて明かされました」 

**ガイドブック 声優インタビュー(2)
藤原啓治(ホランド) 
「ダメダメホランドですが、みんなに助けられてリーダーでいさせてもらってる気がするんです」 
役についていろいろと考察するが、迷いもあると語る。 
「最近は謎だった部分が明らかにされてきて、抱え込んでることも多そうなので、単純に怒るシーンでも、 
これは本当に怒っているのかな?誰に対して怒っているのかな?と考えてしまうんです」 
「レントンの成長の物語ではあるんですが、ホランドも成長する物語なのかなと僕は勝手に思っているんです。 
エウレカに選ばれなかったことで、もっと大人になって視野を広げてほしいなと思ってます」 

根谷美智子(タルホ) 
恋人(?)のホランドについてはこんな思いが飛び出した。 
「こんなに手間がかかるというか、子供だとは思わなかったので驚いています(笑)」 
印象に残った台詞をうかがった。 
「いったい何回『逃げないで!』と言ったことか(笑)」 
「時々ホランドのどこが好きなんだろうと思うんです。あんなに手がかかるのにね」 
「これからの二人も気になりますが、何よりこの先、誰も死なずに幸せになってほしいと思っています」 

**京田知己×神山健治 
(中略) 
神:(監督の仕事は)一言で言えば説得業(笑)。例えば自分が右に行くべきだと判断を下していても、 
  左に行きたい人はいっぱいいる。そのとき彼らにどういう方法で右を選ばせるか。延々話し合う場合もあれば、 
  あたかも本人が最初から右を選んでいたかのように、いろんな準備をした上で説得したり。 
京:監督になると、各話の演出では考えつかないレベルで作品を見るようになるんですよ。全然思考が変わる。 
  こういうのが監督なんだろうって見えてくると同時に課題もわかってきた。俺は右に行きますって宣言してるのに、 
  それを聞いてる周りのスタッフがみんな左に向かっちゃうとか。 
(中略) 
京:スタッフをどう納得させるのか、彼らの感情導線をどう導いてあげるのかという部分はすごく悩んでますね。 
  みんなのことを考えてやったことが、かえってヘンな方向に曲げる原因になったり。 
(中略) 
京:実は、そういうコントロールをしたいんですけど、そこまでたどり着けてない感じが強いんですよね。 
  今気をつけているのは、これはお客さんに見てもらっているんだと。俺はこう思ってるから、お前らもこう思え 
  ではなくて、お客さんが知らないうちにそういう方向に導かれてる。それが演出というものだと思うんですよね 

**京田知己×神山健治 (2)
(中略) 
神:(監督の仕事は)一言で言えば説得業(笑)。例えば自分が右に行くべきだと判断を下していても、 
  左に行きたい人はいっぱいいる。そのとき彼らにどういう方法で右を選ばせるか。延々話し合う場合もあれば、 
  あたかも本人が最初から右を選んでいたかのように、いろんな準備をした上で説得したり。 
京:監督になると、各話の演出では考えつかないレベルで作品を見るようになるんですよ。全然思考が変わる。 
  こういうのが監督なんだろうって見えてくると同時に課題もわかってきた。俺は右に行きますって宣言してるのに、 
  それを聞いてる周りのスタッフがみんな左に向かっちゃうとか。 
(中略) 
京:スタッフをどう納得させるのか、彼らの感情導線をどう導いてあげるのかという部分はすごく悩んでますね。 
  みんなのことを考えてやったことが、かえってヘンな方向に曲げる原因になったり。 
(中略) 
京:実は、そういうコントロールをしたいんですけど、そこまでたどり着けてない感じが強いんですよね。 
  今気をつけているのは、これはお客さんに見てもらっているんだと。俺はこう思ってるから、お前らもこう思え 
  ではなくて、お客さんが知らないうちにそういう方向に導かれてる。それが演出というものだと思うんですよね 

**京田知己×神山健治 (3)
神:これは傲慢に聞こえるかもしれないけど、よくスタッフに「お客様をどうしたいのかが大切なんだ」って言ってたのね。 
  今回は泣かせたいんですか。それとも泣かせたいんですか。「泣かせます」と言った以上、脚本段階でも 
  絵コンテ段階でも泣けなきゃダメ。目的を獲得できてないんだから。基本的に主導権は我々が握っている。 
  でもそこがコントロールできなければ、完膚なきまでに打ちのめされるわけで。 
京:一昨年前までの俺って、ものすごい傲慢だったんですよ。どんなシナリオが来ても、俺がコンテを切れば 
  泣かせることも笑わせることもできる。というか、実はまだそう思ってて、「俺に4週くれたら、ちゃんとそういうものを 
  作るよ」と思うんだけど、そういうのにも飽きてきたんです。ベタに泣かせたり笑わせるんじゃなくて、裏に別な感情や 
  事情がある。その裏のつながりだけで翌週まで引っ張れないかと。それがエウレカの最初の3話で試みたこと 
  なんですけど、結局そこがうまく伝わらなかった。そこはすごく反省してて、「すみません。私、天狗になってました」と。 
神:我々にはそういう基本ができてないのだという前提でアプローチすべきじゃないかと思うんだよね。 
  お客さんを泣かせたいとか笑わせたいとか、そういうことが僕らの世代は全くできてないんじゃないか。 
  「S.A.C」はそういう可能性に立ち返ったんだよね。 
(中略) 
京:うん、だから日々成長中なんですよ。ぶつかってはこうしよう、ぶつかってはこうしようって・・・。 
(中略) 
京:だからたぶん、スタート当時とは全然志向が変わってる。 
  さっき話したことと、今はもう全然違っちゃってますからね。 
(中略) 
京:本当にいろんな実験ができるんですよ。「今回は脚本にこだわってみよう」「音響にこだわってみよう」とか。 
  わざとコンテのチェックを緩くしておいて、カッティングで作っていくとか。逆にヘンに肩の力が入ったりすると、 
  計算しすぎちゃって、グルーヴが出なくなる。 

**21
(中略) 
京:俺はやっぱりお客さんに気持ちよくなってもらいたいんですよ。喜怒哀楽を含めてすべての感情を揺さぶられる 
  というのが見たいんです。「俺が揺さぶられるものはお客さんもきっとそうだろう」と信じながらやってるんですけど、 
  どうやればうまく伝わるのか。そこは試行錯誤の日々ですね。 
(対談終了) 

**ガイドブック 参加脚本家に対する佐藤のコメント 

大野木寛について 
京田さんとはラーゼフォンで仕事をしていた関係から、河森さんとはマクロスからの旧友。僕自身もZを 
見てたくらいなんで入ってもらえて心強かった。彼がおもしろがってくれたのが仏教圏の話で、ヴォダラク 
が関わる話数が多いかな。あとロボ大活躍(笑) ケレン味のある話は大野木さんの独壇場ですよね。 

野村祐一について 
野村さんは大野木さんと同様、最初に名前の挙がった脚本家の一人です。絢爛舞踏祭の時に一緒に 
各話ライターとして参加したんですけど、すごくおもしろかったんで、ぜひぜひっていう。野村さんは 
基本的にラブストーリー担当(笑) #19なんてそうは見えないかもしれないけど、実は直球のラブ 
ストーリー。ケレン味がある人間ドラマで、ちょっと大人な関係や友情話だったりっていう部分を中心に 
書いてもらってますね。 

菅正太郎について 
菅さんに声をかけたのはもちろん僕です。S.A.Cの神山イズムをエウレカにも入れたくて(笑) 
みんなで話し合って決めてくとか、僕自身のシリーズ構成のスタイルを同窓生として助けてもらえたらなと。 
#07のような、僕が各話ライターなら手を入れたい回を担当してもらうことが多くて。構造が決まってる 
から回が多いんですけど、僕にはないアイデアを盛り込んでくれて助かってます。 

大河内一楼について 
当初大河内さんは忙しいから絶対無理って言われて。でも僕も京田さんも吉田さんも仕事をしたことが 
あって、絶対やってほしいと考えていた。で、全員で懐柔(笑) ワンポイントリリーフ的に3本やって 
もらいました。アニメ業界プロパーでない、シリーズ構成の先輩として、脚本以外の部分でも相談に 
乗っていただきました。 

小中千昭について 
小中さんは京田さんのたっての希望。制作の初期から会議などでは参加してもらい、様々なアイデアを 
いただいたのですが、具体的な脚本にしてもらったのは#16。でもあの回は小中さんしか書けない世界 
ですよね。小中さんは、演出の山本沙代さんとTHXHNOLYZEでも仕事をしてるし、ある意味エウレカの 
極北。 
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