黒と白のはざま
題名:黒と白のはざま
原題:Between White And Black (2016)
著者:ロバート・ベイリー Robert Bailey
訳者:吉野弘人訳
発行:小学館文庫 2020.1.12 初版
価格:¥950
アメリカ南部ミステリーは何故か一様に骨太である。
最近、アマゾン・プレミアムでドラマ化され本国で人気復活中との噂のあるジョー・R・ランズデールのハップとレナード・シリーズ。
ジョン・グリシャムの『
評決のとき』に代表される大型リーガル・サスペンス。
『
ザ・プロフェッサー』で一躍名を馳せたロバート・ベイリーは、グリシャムよろしく、南部作家で法廷ミステリーである。グリシャムは一方でノン・ミステリーのアメフト・スポ根小説『
奇跡のタッチダウン』で暑い男たちを描いているように、ベイリーの『ザ・プロフェッサー』もまた熱きアメ・フトの青春を共有した男たちを主役としたリーガル・スリラーであった。
そして本書は待ちに待ったその続編。前作より遥かに南部小説としての存在感を前面に出したタイトルの通り、のっけからヘイト・クライムを主題とした骨太<胸アツ>ミステリの開幕とあり、こちらも尋常でない構え方。
前作で、教壇から現場に下りてくる羽目になった主役のトム・ジャクソン・マクマートリー70歳を手助けして印象的な活躍を見せたポーセフィス・ヘインズ(通称ポー)が、KKK(クー・クルックス・クラン)誕生の町テネシー州プラスキでクランの粛清殺人を模したような派手な殺人事件の
容疑者として逮捕される。ポーには、父がクランの粛清を浴び、木に吊るされ殺されるのを見たという幼児体験があり、その復讐を所かまわず公言する黒人としては唯一の街の法律家として知らぬ者のない存在だった。どう見てもポーによる復讐のように擬せられた殺人現場をどう覆すのか?
トムとリックの新進の教授+教え子コンビは、本作では前作で世話になったポーを救うため、アラバマを発ち、地元弁護士であるレイモンド・ピッカルー(通称レイレイ)に協力を求める。レイレイもまたトムとのフットボール仲間なのだ。彼は現在、アル中の気配でどうも積極性がないのだが、なぜか一目でぼくは彼のことが好きになる。何故なのかはわからない。
プラスキの現在の住人はKKK誕生の町であることを恥じているらしいが、今もなお残る差別感情は現在もアメリカ全体に影を落としてやまない。さらに白黒はっきりしない多くの人物たち。有り余る状況証拠に取り囲まれ不利としか思えないポー。前作を引き継いで登場する
殺し屋ジムボーン・ウィラー(通称ボーン)の影。意外な展開が連続しつつ、法廷は開幕する。
大団円に繋がるスリル&サスペンスが法廷シーンであるのだが、ラスト・ランがまた疾走感たっぷり。暴力の権化ともいえるボーンの動き、そして見え隠れする
真犯人の殺意。思いもかけぬ展開、畳みかけるアクションの果てに残される苦い真実。
ラスト・シーンが秀逸である。男なら泣ける。そんな胸アツ小説。続編でありながら、前作を凌駕する出来である。さらに続編があるらしく、これまた秀逸の展開だと言う。絶対に目の離せない作家がまた一人!
(2020.02.01)
最終更新:2020年02月01日 20:55