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296 名前:fusianasan[sage] 投稿日:2010/10/10(日) 16:14:47
続き書いてみた・・・・。

 

 


シェリルの手がアルトの頭へと添えられ、その輪郭にそって降りてゆく。
身体がゆっくりと沈むと共にシェリルの背中が緩やかな曲線を描くのを背中に回されたアルトの手が感じる。
背中と腰に腕が回ればシェリルはその場から逃げられなくなった。

 

長いキスから生まれた疼きが、二人の体をゆっくりと支配していく。
互いに触れることの心地よさに溺れ始めた二人の思考を留めるものはなく、内から生まれ来る衝動は緩やかな波のように逃げ場のない海へと誘う。
吐息が互いに触れる近さで見詰め合えば、このまま体を倒し、肌や呼吸を重ね合わせてしまいたくなる。
ようやく間近で触れることができたアルトの匂いと熱がシェリルを欲情させていった。

 

"どう"すればいいか。
一応の知識は持っているものの、そういった話に触れる機会が極端に少なかったシェリルに具体的なことは分からない。

聞きかじりの知識では、好きな相手と裸のまま一緒のベットに入り、相手の"モノ"を受け入れて互いに果て、朝まで一緒に眠るというくらいだ。

不安は大いにあったけれど、ここで止められるはずがなかった。

背中に回されたままのアルトの腕から抜け出し、アルトのネクタイを解く。
シュルリという衣服の擦れる音がやけに生々しく、これから自分がしようとしていることをシェリルにより強く自覚させていく。
己の行動の大胆さと初めて触れることになる裸の男に、シャツのボタンを外す手が震えた。

 

きっと、アルトは困惑しながら自分を見つめているのだろう。
そう思うだけで、恥ずかしさが巳を焼き尽くすような感覚に囚われる。
呆れられたらどうしようという不安とそれでもどうしようもない身体の疼きがシェリルの視界を再び歪ませた。

 

シャツのボタンを外し、前を肌蹴させればいつものタンクトップが見えてくる。
いつもの格好では分からない筋肉や太い身体の骨格が見え自分との違いを際立たせる。
日に焼けていないその肌は石膏のように滑らかでありながら、触れるとひどくたくましく感じた。

 

この腕に抱かれたい。
蘇る記憶がシェリルを揺さぶる。
普段は頼りないこの男の腕に抱かれる嬉しさを身体の細部が覚えている。

 

体温をすぐ傍で感じると、体中の力が勝手に抜けてしまうのだ。
同時になんともいえない幸福な感覚が身体の中に広がり、何か目に見えないものがゆっくりと全てを満たしていく。
どうしようもなく幸せで、嬉しくて、愛しくて、たまらなくなるのだ。

 

シェリルはアルトのタンクトップをたくしあげると今度は自分の服に手をかける。
それにアルトが慌てた。

 

こんな状況に置かれているというのに、まだこの男は逃げる気らしい。
そう直感的に感じると共に怒りが湧いた。

"シェリル・ノーム"であるためにと必死で磨いた肉体ですら、意味がないものなのだと、暗に言われたような気がした。
自分ごと拒絶されたような気がしたのだ。

 

悔しい。
悲しい。
そんな感情がぐちゃぐちゃになりながら一気に押し寄せてくる。

 

この男は、本当は自分のことをなんとも思っていなかったのだろうか。
こんな浅ましい欲を抱くのは自分だけなのだろうか。
ここまで欲しいと思ってしまう自分はおかしいのだろうか。

 

混乱し、様々な感情が絡まりあってシェリルの思考を一杯にさせる。
一度湧き出した不安は消えることなく広がり、シェリルを押しつぶそうとする。
そんな考えを捨て去るように勢いよくそのまま上着を脱ぎ捨て肌を晒せば、顔を真っ赤に染めたアルトが更に慌てた。

 

直接見るのは憚られるのか、本当に見たくないのか、シェリルに馬乗りにされたままのアルトは腕を重ねて必死に視界を狭めている。
うねうねと必死に動き、逃げようとするアルトの上にしがみ付きながら、それでも、負けじと胸を覆う下着を外したところでシェリルの中の何かが弾けた。


「っ・・・・・ふっ・・・・ぇ・・・」

 

歪むだけだった視界はとうとうぼやけだし、熱い粒がポロポロと零れだす。
必死に結んでいた唇からは"シェリル・ノーム"とも思えない情けない嗚咽が溢れてきた。

 

「シェ・・・・シェリル・ど」
「殿とか言ったらぶっ飛ばすわよっ!!何よ・・こんな時くらいちゃんと呼んでくれたっていいじゃないっ!!」
「えっ・・・・・あっ・・・」

 

一旦、言葉が零れたら止まらなくなった。
重荷になりたくないといつもなら不安で口にできなかった言葉が、次々と滑り落ちてゆく。
素のままでいられることが嬉しかったはずなのに、その素のままでいると一番見せたくなかった弱く醜い自分まで出てきてしまう。

 

「キスだってしてくれないし、抱きしめてもくれないっ!!あっ・愛してるなんて・・・・・1回言ってくれただけよ?」
「そ・・・・その・・・・・」

 

感情の制御は効かず、一度堰を破った濁流のようにシェリルの全ての感情を曝け出してしまう。
アルトを愛しているのだという温かな感情だけを見せていたかった。
大好きだという幸せな感情にだけ包まれていたかった。

 

「ねぇ、アルト。本当に、アタシのこと・・・フィギュアとかじゃなくて、本当の、生身のアタシのこと・・・・・・」

 

腹の奥に溜められていた不安や怒りや悲しみなどは涙や嗚咽となってアルトに降り注いでいく。
こんな姿をこれ以上見せてしまったら嫌われてしまうと頭の中で警告が流れる。
拒絶されてしまうことが何よりも怖くてたまらないのに言葉を止める術は見つからず、最も言いたくなかった疑いの言葉がアルトに向かって落ちていった。

 

「・・・・・・好き?」

 

どうしようもなく歪んだ世界に見えた琥珀の瞳は、苦しそうに歪んだ後、戸惑うように視線ごと反らされた。
あぁ、とうとう終わってしまったのだとシェリルは悟り、それと同時に虚無感が心に広がり言葉が止んだ。

全てをぶちまけてしまった後に零れていくのは涙だけだ。
力なくうなだれたシェリルの視界に映ったのは、触れることを許されなかったアルトのむき出しの美しい肌だった。

 

「・・・・・っ・・・ふ・・ッ、・・・くっ・・・」

 

シェリルの問いかけに答える声はなく、ただ静かになった部屋にはシェリルの殺しきれない泣き声だけが響く。
アルトは目の前の光景に呆然としながらはらはらとサクラの花びらのように自分の上に落ちてくるシェリルの涙を見ていた。

 

シェリルが泣くのを見るのは今回が初めてではない。
けれど、いつも勝気な表情を見せたり、楽しそうだったり、怒ったりしている方が多いから驚いてしまうのだ。
アルトはまだ混乱の渦中にありながらもおそるおそる身体を起こすと、シェリルに向かってゆっくりと手を伸ばした。

 

柔らかいふわふわの髪に触れるとシェリルがびくりと震え、小動物のようにこちらを警戒しているのが分かる。
アルトはパニックに陥っていた思考を懸命に落ち着かせながら、どうすればいいのかを考える。
女性と接することを極力避けてきたアルトにとって、これは初めての経験だった。

 

きちんと女性との関係を作り上げ、経験値を溜めててきた男の子なら、抱きしめたり、キスをしたりして相手に愛していることを伝え、宥ることができるかもしれないけれど、健全なお付き合いから遠ざかっていた奥手な男子からすれば、こんな時どうすればいいか分からない。

 

自分がどこまで触れて良いのか。
自分にはどこまでが許されているのか。
どこまでなら相手を傷つけたり、怖がらせたりせずにすむのか。

その明確なラインが引けず、ただ、ただ時が解決してくれるのを待つしかない。
アルトもそんな男子の一人だった。

 

記憶の箱をひっくり返して、何かいい方法はないかとその箱の中を漁ると一番無難そうな方法を見つけた。
けれど、それは幼い時の男女の区別なく行っていた行為で、今もそうしていいのかは分からない。
それでもアルトはようやく見つけたシェリルの涙を止める術にほっと安堵した。

 

手に触れるのは自分のものとは違うふわふわの感触。
何度も、何度も撫でていると、人懐っこい毛並みのよいネコを思い出す。
甘いシャンプーの香りがアルトの鼻先を掠め、目の前の子がネコのように強がりなくせに泣き虫で寂しがりやな女の子であることを改めて自覚させられる。
アルトは何度も、何度も優しくシェリルに触れ、いい子、いい子をするように撫でてやった。

 

柔らかく温かい、フィギュアとはまた違った感触にアルトの胸が苦しくなる。
アニメもゲームも美少女フィギュアもメカコレクションもどれも心の底から好きだけれど、それと同じくらい目の前で涙を零す少女が大好きなのだと実感する。
シェリルに触れていた手をゆっくりと滑らせ、頬に触れれば俯いていたシェリルがゆっくりと顔を上げた。

 

「・・・っ・・」

 

泣いていたせいで、瞳がまだ涙に濡れている。
口元は未だに零れそうになる嗚咽を飲み込もうとしているのか、一文字に引き結ばれ、同時に堪えるために眉根が寄ってしまっている。
必死に堪えていることは分かるのだけれど、どう見ても泣く寸前と変わらないその整っていない表情がなんだかとても可愛いと思えた。

 

シェリルと"付き合う"ということになって気づいたことは、人の表情がきれいだということだ。
フィギュアやアニメは作る手によってそれこそ本物のような出来ばえになることもあるけれど、逆もある。
けれど、人間はそうではないのだと思い知らされた。

メイクをしても、していなくてもシェリルは、変わらず可愛かった。

むくれた表情や怒った表情、洗濯機を前に真剣に悩む表情。
その全てがいきいきとしていて、シェリルの色々な側面が出てくる。
色んな表情を見るのはとても楽しかったし、自分のすることでシェリルが笑えば胸がドキドキと高鳴った。

 

「・・・・シェリ・・・ル・・・」

 

こっちを睨んだようになったままのシェリルに向かってアルトが口を開く。
自分があの瞳に映っているのだと思うと、なんだか照れくさくて思わず視線が泳いでしまう。
いつものくせで呼びそうになった敬称はなんとかぐっと飲み込んだ。

 

どういう反応をされるのか。
もう泣かせなくてすむのか。
それとも、また何か言われるのか。

 

おそる、おそる視線を戻してみる。
と、目の前にあったのは驚いたように瞳を丸くしたシェリルだった。

 

これはどういうことだろうかと思わずアルトも固まる。
っと、シェリルがゆっくりとアルトの方へ腕を伸ばし、ネコのように手を使って歩き、身体を近づけてくる。
シェリルがゆっくりと進む度に、先ほどまで髪で隠れていた白い胸元やその先端の蕾がちらちらと露になりアルトの瞳に映った。

 

見たくないといえば、もちろん嘘になる。
むしろ、シェリルがいないときはいけないと思いながらも率先してそのスカートの中や胸の形を確認したりすることもあるくらいだ。
それなのに、本人を前にしてどうして齧り付かず、こう尻込みしているのかといえばただ単に、日頃フィギュアに強いてきた己の行いからの罪悪感と己の欲の暴走への恐怖ともし間違ったことをしてしまった時のシェリルからの拒絶が怖かったからである。

 

再び迫りくる魅力的な誘いと打って変って無防備になってしまったシェリルに再びアルトの頭が沸騰しだす。
一気に身体の熱が上がり、それと共に先ほど自分の中を駆け巡った欲と舌先から伝わった気持ちよい記憶がアルトを刺激し始める。
知らず知らずのうちにアルトの喉がごくりとなった。

 

「アルト?」
「シェ・・・シェリ・・・・」

 

あわあわと慌てるアルトの声はところどころ裏返ってしまう。
もうかなり近い距離にいるというのにシェリルは一向に止まる様子を見せず、なおも近づいてくる。
アルトが逃げるように後ろに手をやれば、その一瞬を付いてシェリルの顔がより傍に寄った。

 

唇からもれる呼吸がアルトの唇を優しくなぞる。
間近に迫った青い瞳がアルトを見据える。
肌の良い匂いと温かな体温が空気を介して伝わってくる。

すでにアルトの喉はカラカラだった。

 

「ねぇ、もう一度。」
「シェ・・・シェリル?」
「・・・・ふふっ。ねぇ、もう一度。」

 

メガネにシェリルの長い睫が触れてしまいそうな距離に近づいたシェリルはアルトが名前を呼ぶと嬉しそうに微笑んだ。
頬には未だに渇かない涙の筋が残っているけれど、微笑んだシェリルはひどく幸せそうに見える。
シェリルに促されもう一度アルトが名前を紡げば、今度は勢い良く伸びてきた腕に捕まった。

 

もう何度目か分からないくらいの熱烈なハグ。
腕がぎゅうっと首元に絡まり、自分の胸に柔らかい肢体の感覚が降ってくる。
そして、視界一杯にシェリルのストロベリーブロンドが広がるのだ。

 

甘い色の海に抱かれたアルトは、ほうっと体から余計な力が解け落ちていくのを感じた。
そして、胸に苦しい痛みと幸せな感情が満ちていくのを感じる。
アルトは一瞬躊躇いながらも、優しくその身体を抱き返す。
するとシェリルが嬉しそうに息を吐いたのが聞こえた。

 

ふわふわとするような何度味わっても慣れることのないその感覚に思考の全てを持っていかれそうになったその瞬間、今までにない柔らかい感触がアルトの裸の胸に触れる。

 

「ッ?!」

 

ふにゅっとした、ひどく柔らかいものだ。
そして、弾力があり抱きつくシェリルと同じくらい温かい。
その感触と思い出した状況からそれが何かをアルトは悟った。

 

「シェリッ!!シェリルさんっっ?!」
「なぁに?」
「そ、そのっっっっ!!!む、む、む・・」
「ム?」
「胸が・・・あ、当たってるっっ」
「・・・・・・・・」

 

言うべきか、言わざるべきかこのままそっと堪能していたい感覚に揺り動かされながら必死に良心に従うように頭の中で唱える。
まだ迷いを引きずりながらなんとか口にした言葉にシェリルは数秒固まった後、アルトから少しだけ身体を離して自分自身の姿を見下ろす。

二人の間に丁度良い隙間が現れ、ありがたくもアルトは自分の胸の上で潰れていた柔らかいモノの正体をはっきりと見ることができた。

 

「・・・えっ・・・あっ・・・やぁあああああああ!!」

 

数秒の沈黙の後、耐え切れなくなったとばかりにシェリルが悲鳴を上げる。
パニックに陥りながら先ほど自分から脱いだ服を見つけると、シェリルは急いでそれを自分の胸に当てて隠してみせた。

 

どうやら、さきほどの積極的な行動はやはり気持ちが昂ってしまっていたせいらしい。

襲おうとしたり、泣いたり、笑ったり、忙しいシェリルにアルトが小さく噴出すと、胸元をがっちりと押さえたシェリルが涙目でアルトを睨みつける。
その様子がたまらなく可愛く思えて、アルトはとうとう笑み崩れた。

 

「アルトのバカ!!な・・・・なんなのよっ!もうっ・・・」
「いや・・・別におかしくて笑ったんじゃない・・・ですから・」
「本当に、本当ね?!嘘ついたら許さないんだからっ!!」

 

笑うアルトとは反対にシェリルは必死だ。
アルトは止まらない笑いを必死に堪えようとしながらゆっくりとシェリルに向かって手を伸ばす。
本当のことを言えばシェリルに触れることはまだ少し怖かったけれど、それでも先ほど腕に抱いたようにシェリルが嬉しそうになってくれるのなら、自分も嬉しいと思ったのだ。

 

最初に触れるのはやはり甘いストロベリーブロンド。
アルトが触れるとシェリルから警戒が解け、少し恥ずかしそうな視線に射止められる。
輪郭にそって手を滑らせ、その頬に触れてやればやがてシェリルが嬉しそうに笑った。

 

「ねぇ、アルト。私・・・・」
「・・・・好き・・・です。」

 

今日2度目の問いかけ。
言葉にすることがもっとも苦手な感情をアルトが伝えると、再びシェリルの感覚がアルトに近づく。
今度は片腕だけになったハグの代わりにアルトが両腕でシェリルをそっと抱きしめると、シェリルが嬉しそうに擦り寄ってきた。

 

手のひらから伝わる裸の感覚がアルトの心を騒がせる。
この先の展開を思うと少し後ろ髪を引かれたけれど、それでもまだ今はこうして甘えたがりで泣き虫なシェリルを抱きしめていたいと思った。

 

 

 

END

 

 

 

 

最終更新:2010年10月29日 23:48