424 名前:peeping 矢三郎 [sage] 投稿日:2011/10/16(日) 03:24:24.14
目ざとい小姑がいるって大変だよね。
壁に耳ありジョージとメアリー?
ジョージとメアリーって誰それ?
今日がお互いオフで、学校も休みだったことは幸いだった。
早朝の二回戦から俺が目覚めたのはもう昼近く。
シェリルは未だ眠っている。
昨晩と今朝の事を思い出すと、余程疲れたのだろうな、と頬が緩んでしまう。
身体を離すのは名残惜しかったが、シェリルを起こさないようそっと褥を抜けた。
そして、目覚めたら水を欲しがるだろうと思い母屋に向かった。
「アルトさん、おはようございます」
背後から兄弟子の声。
「おはよう、兄さん。えっと…」
昨晩上手く事が運んだのは兄さんのお陰だが、何と礼を言ったものか。
「よくお気張りになられましたね。本懐を遂げられてようございました」
「ああ、お陰で…え?」
「シェリルさんは未熟ではありますが、アルトさんのお稽古次第ですぐに上達なさることでしょう。
但し、閨房では常にアルトさんが手綱を引かなければなりませんよ? 相手を溺れさせても、自分が溺れてしまってはいけません」
「え、あの」
「ただ、ああいったハウツー本を鵜呑みにするのは感心しませんね。 千鳥の曲を欲するは男子として征服欲の証。求めたことを良くないとは申しませんが、秘め事とは相手の気持ちあってこそ。まだシェリルさんは初心なのですから、机上の情報に踊らされて焦ってはなりません。
何をすべきかは本能が教えてくれます、必要な時に必要なことを」
では、と踵を返した兄が、不意に振り返った。
「肝心なことを申し上げねばなりませんでした。アルトさん、男子の基本は接して漏らさず。本日のように、とうにお天道さまが高くなってからのお目覚めになってしまいますからね」
そしてすたすたと音も無く去って行った。
俺はその背中に掛ける言葉を見つけられなかった…。
何故兄さんがあのマニュアルの存在を知ってるんだ?
何故昨晩の事を知っているんだ?
そして今朝のことも…!
疑問は尽きなかったが、尋ねる気力を失っていたし、聞きたくもなかった。
重い足取りで離れに戻ると、シェリルは既に起きて縁側で呑気にお茶を啜っている。
「シェリル、起きたのか」
「ええ、矢三郎さんがいらして、ジンジャーレモネードとこれを出して下さったの」
それはお茶ではなく、早乙女家秘伝の蜂蜜と檸檬と生姜のドリンクだった。漆の盆には大根の蜂蜜漬けと、生姜の砂糖漬け。
「喉にいいですよって。でもどうして私が喉が痛いって分かったのかしら?」
そして開け放たれた襖の向こうに違和感を覚えた。
「布団はどうしたんだ?」
「それも矢三郎さんが上げて下さったの。今日はお天気がいいから干しましょうって」
昨晩と今朝、あらゆるシミを大量に付けたあの布団を!?
兄さん、今まで俺の布団の上げ下げをしたことなんかなかっただろ!?
「矢三郎さんてとても気が利くわよね。まるでグレイスみたいよ、インプラントもしていないのに。いいお兄さんがいて、アルトは幸せね」
そう言って、シェリルは花が綻ぶように微笑んだ。
お前は何も知らないからそんなことが言えるんだ…!
どっと疲れが出てその場にへたり込んだ。
この家に…いや、兄さんの前に俺たちのプライバシーは無いのか?
「アルト? 顔色悪いわよ? 大丈夫?」
最終更新:2011年11月03日 17:05