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228 名前:22話補完「ノーザンクロス」[sage] 投稿日:2012/09/17(月) 21:23:05.18

…彼女は強い女だから。だからきっと大丈夫だと、俺はずっとそう思っていた。
彼女は強いから、自分の足で立つ事が出来る。彼女は強いから、必ず立ち直る事が出来る。
彼女は…シェリルは強いから。だからきっと俺やランカが憧れた様に…
自分の力で歌う意思を取り戻す事が出来る…。俺はずっと、そんな風に思っていた。

 

(だけど違う……)

 

あの日面影が重なった母さんの様に、彼女も俺が守らなければならない、
守らなければ消えてしまう、弱い存在なのかもしれない。
胸に込み上げるこの焦燥は…多分そう云う事なんだ。
そんな想いを抱えたまま、俺は思わず叫んでいた。

 

「やめろっ!…もういい…もういいんだ、シェリル」
「聞いたのね…。そっか…あんたにだけは知られたくなかったな…」

 

そう答えたシェリルの声は、やはり弱弱しくて、以前俺に憎まれ口を叩いていた
彼女の声とはまるで別人の様に聞こえた。本当に其処にいるのは彼女なのか…と、
我ながら馬鹿馬鹿しい不安に駆られて、そっと背中の障子戸を開く。

 

「なんでだろう…。病気の事が分かった時、真っ先にそう思ったの…」
「シェリル……」

 

けれど、開いた隙間から覗くのは、やはり見慣れたシェリルの姿で。
その姿の彼女は、数日前と同じ。俺を遺して逝ってしまった母さんの姿を思い出させた。

背中にちらつく死と云う絶対の別れの影…。身震いする様な不安に駆られると、
もうどうする事も出来なかった。障子戸を開き、懐かしい母さんの部屋に入ると…
その中央で上体を起こしているシェリルの華奢な肩に触れる。
出来るだけ優しく…彼女を傷付けない声色を作って。

 

「もう良い。もう無理して笑わなくて良い…歌わなくて良いんだ、シェリル」
「―――イヤよ!あたしは歌うわ!!」

 

けれど―――けれど。そんな俺の感傷を吹き飛ばしたのは、烈火の様に
激しい拒絶の言葉だった。魂から迸る様な強い言葉。重なりかけていた
母さんの面影を吹き飛ばす様な…そんな、強い決意を感じさせる言葉だった。

 

(そうだ、彼女は強い…。シェリルは強い女だと…俺は、ずっと…そう思って……)

 

――そう、思っていた筈だったんだ。けれど違う。いや…これも違う。シェリルは強い。
だけど…同時に脆い弱さを持った女の子だった。その事にずっと…今までの俺が、ずっと
気付けずにいただけなんだ。そして、一度その事に気付いてしまうと、
再び焼ける様な焦燥が全身を襲った。

 

「あたしにはもう歌しかないの。それだけがあたしの生きた証なのよ…!
だから……あたしは……」

 

手を伸ばせばすぐに届く近い距離。目の前にいるシェリルの瞳から透明な涙が
ぽろぽろと溢れて、ゆっくりと布団へと零れ落ちていく。その光景を見た瞬間に…
今まで繋ぎ止めていた何かが、自分の中でも溢れ出すのが分かった。
気付かぬ内に伸ばされた腕が、しっかりとその中に彼女の細い体を抱き締める。
余りに細くて華奢なシェリルの体……。何度かこの手に抱き止めた事はあったのに。
あのガリア4でも。SMSへの道の途中でも。そして美星の屋上でも、
何度もふらついた体を受け止めた事はあった筈なのに。それでも今…これまでとは
全く違う意味で、俺は初めてシェリルの体を抱き締めていた。

 

ふわり…とこんな時にさえ甘い匂いが鼻腔を擽る。
どくどくと云うシェリルの鼓動の音が、身に着けた衣服ごしに伝わって来る。
つんと胸を突く様な痛みが込み上げて来て、俺の心を締め付ける…。

 

「でも、怖いの…。怖くて寂しくて。変よね、あたしはシェリル…
 シェリルとして生きるって決めたのに…」
「っ……!俺がいてやる!お前が歌うなら、その最後の瞬間まで俺はお前の傍にいる…!」
「アルト……」

 

そうして胸の中に抱き締めたシェリルの体を離さぬ様に…
より強く自分へと引き寄せながら。気付けば俺はそんな言葉を口にしていた。
シェリルが俺の労わりを拒んだあの迸る叫びの様に、気付けば溢れ出た自身の本音。
その本音に、漸く……本当に漸く、自覚する。この身を包む焦燥の意味も。
思わず抱き締めた両腕の意味も。今腕の中にシェリルが存在している
事の意味も―――…自分自身の心が出した彼女への気持ちを、漸く俺は自覚した。

 

(シェリル…俺は…俺は、お前が…)

 

込み上げてくる想いの意味を自覚した俺は、もう一度シェリルの顔を見たくなって、
抱き締めていた腕からゆっくりと力を抜いた。何時だって俺を強気に見つめ返して来た
空色の瞳。その瞳に滲んだ涙が月明かりに照らされて、あんまりに綺麗で―――
気付けば俺は…そっと彼女の顔に、自身の顔を近づけていた。

 

「アルト…私に勇気を頂戴…。ずっと歌い続ける勇気を……」

 

そして、俺の行為を拒まずにシェリルがそんな言葉を口にしたから。
だから、頭の隅の方で「ああ、良いんだな…」と、俺の方もまたそんな事考えながら。
しっとりと濡れたシェリルの唇に自身の唇を重ねたまま…ゆっくりと体重を傾けて行った。

 

「あ…、はぁ…っ。ん、んふ…」
「―――シェリル…」

 

重なり合った唇から苦しげな息遣いが漏れる。以前にも一度だけ触れた事のある唇は、
あの時と同じで蕩ける様に柔らかい。そっと自分の唇を重ねながら軽く下唇を食んでみる。
触れ合う事で僅かに汗ばんだ肌から伝わる鼓動の音は早い。自分の心臓の音と
シェリルの心臓の音が、唇の様に重なり合いながら、どくどくと早鐘を打つのが分かった。

 

「はぁ…はぁ…シェリル…シェリ…ル…っ」
「ぁ…ん、んぅ…」

 

上下の唇の僅かな隙間から、そっとシェリルの口内へと自身の舌先を差し入れる。
おっかなびっくりの不慣れな行動に同じ様に小刻みに震えながら、それでも
シェリルは軽く口を開いて…俺の舌を受け入れてくれた。お互いの緊張を
ほぐす様にそっと髪の毛を梳ると、重なり合った唇から小さな吐息が漏れる。

 

それを了解の合図と勝手に受け取った俺は、そのままゆっくりと彼女の口腔を
探り始めた。温かなぬめりを帯びた粘膜を舌で丁寧になぞって行く。荒い息を吐きながら
そこを探っていると、ぎこちない動きでシェリルの舌も精一杯俺に応じて来てくれた。

 

「んっ…ん、はっ…シェリル…んっ…」
「アルト…ぁ、はぁ……あると…!」

 

不慣れな動きで舌と舌が触れ合い唾液の絡まる水音が響く度、
崩れ落ちる様に組み敷いた形のシェリルの細い体に漣の様な緊張が走る。
時折びくんと震えながら…俺を受け入れようとしてくれているその事実に
ますます興奮を煽られながら、夢中で甘い口内を貪った。
息苦しさに息を吸い込んだ鼻腔に広がる匂い。その匂いに惹き寄せられる様に、
シェリルのふわふわの髪の毛を梳いていた右手を落として、
ゆっくりとゆっくりと……滑らかな肌の上に、指先を這わせて行く。


「あ…、あると…っ…?や、やだ…」
「―――いいから、じっとしてろ」
「ん…っ、んは…あ…」

 

俺の意図を察してあがる驚きの声をもう一度唇で塞ぎながら、そっと浴衣の
袷の間へと指先を忍ばせた。元々寝間着を兼ねていた浴衣は自然と着崩れていく。
その事を知っているから少し強引な動きで、俺は指先から掌までを
さらさらとした布地と肌の間へと押し入れた。

 

はらりと帯が緩んで、掌の動きに押された浴衣の胸元が大きく開くのが分かる。
途端に固さを増す体を落ち着かせる様に、逸る気持ちを必死に制して
彼女の膨らみを包み込んだ。掌から零れ落ちるシェリルの胸の感触…。
触れた部分から伝わるその柔らかさや弾力にくらくらしそうな意識を
必死に引き戻して、俺はゆっくりとそこを揉みほぐして行った。

 

「あ……ぁっ…」
「はぁ…シェ、リル…」
「アルト…ん、んふ…はぁ…んぅ…」

 

その掌に当たる固い感覚。胸の先端にある部分が次第に尖り始め、膨らみを
包み込む掌を押し返しているのが分かった。その間も俺は何度もシェリルの唇に
自分の唇を重ねて、柔らかな口内を探り続ける。離れては重なり、重なっては
また息苦しさに離れ…。そんな風に繰り返される口付けで唾液と舌が絡まり合う音と、
そこから漏れる二つの息遣い、さらさらとした衣擦れの音と…俺たちがお互いを呼び合う声。
聴覚に届く全ての音が溶け合って一つの歌になり、ますます俺の興奮を煽った。

 

―――もっと、と言う想いが強く胸の中へ込み上げてくる。
もっと彼女に触れたい。自分を感じて零れる吐息と甘い声を聞きたい。
俺に溺れて上がる熱を、その心と共に全身で確かめてみたい……

 

「シェリル…」
「アル…ト……?あ…あ、そこ…っ」

 

優しく揉みしだいていた手の動きを止めて、固くなった先端部分をきゅっと摘むと、
組み敷いたシェリルの身体が小さく跳ね上がるのが分かった。そんな彼女を自分の重さで
押さえ込みながら、コリコリとした感触を確かめる様に指先で其処を弄り始める。

 

「や…あ、い、痛い…から、アルト…!乱暴にしないで…っ」
「―――ごめん」

 

だが、俺の指に触れられる度尖りを増していくのが嬉しくて、自分でも気付かぬ内に
余計な力をこめてしまっていたらしい。シェリルの指先が弱弱しい動きで俺の
指先を押し留める。その細い指先に自分の指先を絡めてお互いの手を握り合うと、口付けに
痺れかけていた唇で彼女の白い肌をなぞり始めた。恥ずかしさに染まった項へ、
細い肩口へ、小さく窪んだ鎖骨の間へ…そしてさっきまで指先が玩んでいた
胸の先端へ。謝罪の意味も込めて優しい口付けを落とすと、その感触に
耐え兼ねたシェリルの唇からすすり泣く様な声が漏れた。敏感な女の子の身体を
労わる様に、指先を解放してもう一度そっとシェリルの膨らみを優しく包み込む。

 

「あぁ…っ、アルト…!」
「ん…っ、はぁ…は…シェリル…」

 

彼女を労わる様に、傷つけない様に…唇で先端の蕾を吸いながら
掌でゆるゆると揉んでその感触を確かめた。伝わる温もりが愛しくて…
そして泣き出してしまいたい位に悲しかった。

 

(俺は…お前が……っ…)

 

今夜思い知らされたばかりの想いが胸をきゅっと締め付ける。
その想いを察してくれたのか、否か。気付けばシェリルの細い腕が
ぎゅっと俺の頭をかき抱いてくれていた。その、抗いとも悦びとも
判断出来ないシェリルの行為にまた一つ胸を高鳴らせながら…俺は、
ゆるゆると掌を更に下へと這わせて、僅かに出来た足の隙間に忍ばせて行った。

既に肌蹴た浴衣の生地を押しのけてしっとりと汗ばんだ内股を探る。
俺の意図を察したシェリルは、びくりとしながら慌てて足を
閉じようとするが…もう遅い。下着の上から恐る恐る触れてみると、
じんわりとした感覚が指先へと伝わって来た。

 

「やっ…あ、は…っ、あ、あぁっ…」
「シェリ…ル…っ」

 

湿りの正体を確かめる為に、サイドの紐をしゅるりと解いて彼女の大切な部分を
守る布地を取り除く。震える指先を我ながら情けなく思い、焦れる気持ちと
込み上げる恐れに急かされながら…直接、先程と同じ場所に触れてみた。

 

「あぁっ、いや…っ!」

 

シェリルの唇が紡いだ言葉に、怯えた指先がびくりとその動きを止める。
彼女の許しを請う為に表情を伺うと、思わず漏れてしまった拒絶の言葉を
飲み込む様にシェリルはきゅっと唇を噛み締めていた。

 

「だいじょうぶ、だから…、アルト…」
「あ、ああ…」

 

―――そのまま続けて。途切れた言葉の続きを察した俺は、緊張してどんどん
固くなる体を宥める様に、もう片方の手で胸を揉みながら先端を優しく吸い解す。

噛みしめたシェリルの唇から甘い息遣いが零れ落ちると、入り口の感触を確かめる様に
ゆるゆると往復を繰り返していた右の指先にとろりとした雫が絡み付いて来た。

 

「濡れてる…」
「っ!言わないでよ、バカぁ…っ」
「あ―――…わ、悪い」

 

恥ずかしそうなシェリルの言葉に思わず謝罪を返しながらも、指先で彼女の感触を探る。
全身に感じるシェリルの柔らかさ……。女の子特有のその柔らかさは、かつて
女形としてどんなに女らしく育てられていても、俺には決して手に入れられなかった物だ。
その事に改めて、自分は男で彼女は女なのだと云う事を自覚する。

(そして何時の間にか男として…俺はコイツの事を…)

今夜気付いたその想いに、胸にズキリと痛みが走った。もっと早くに気付けていれば…
もっと何かが変わったのだろうか?俺はシェリルにもっと何か…
別の何かを与えてやれたんだろうか?

 

「アルト…?」
「―――シェリル…」

 

俺の気配が変わったと感じたのだろうか?シェリルが不安げな声で俺を呼ぶ。
体に与えていた行為を中断させて布団に肘をつくと、彼女の柔らかな頬に手を当てて、
その不安を取り除く様に唇に今夜何度目かのキスを送った。最初はシェリルを
安心させる為だったその口付けに…また次第に熱が篭り始める。
甘く絡み付いてくるシェリルの舌先と、唾液と…ふわりとした彼女の匂い。

俺がした初めてのキスはシェリルとのキスだった。生まれて初めて唇に感じた
柔らかな女の子の唇の感触。あの時にはこんな風に、こいつと何度もキスする様に
なるなんて思わなかった。こんなに失いたくないと思うほどに…
大切な存在になるなんて思わなかった…。

 

「はぁ…あ、ると…ぁ…」
「―――ん…」

 

唇を溶け合わせる度にお互いの身体に熱が篭って行くのが分かる。俺の首筋に
絡み付いてかき抱こうとする細い腕に逆らう事無く身を任せると、藤色の布越しに
二つの膨らみの柔らかさが伝わって来た。割って入った膝頭をじんわりと濡らす雫の感触…。
我慢が出来なくなってもう一度ゆっくりと…彼女の大切な場所へと指先を這わせて行く。
堅く閉じた入り口からじわじわと滲み出たその雫を絡めながら、
誘われる様にその部分を割って、俺は自分の指先をシェリルの中へと滑り込ませた。

 

「っ!?…ぁ、やぁ…ッ!」
「っく…キツイ、な…」

 

入り込んできた不埒な侵入者を拒もうと締め上げる襞の動きに、思わずそんな言葉が漏れる。
まだ狭いままのそこを解す様に、少ない知識を総動員させて指をゆるゆると蠢かせると、
シェリルの中は僅かにひくつきながら不慣れな俺の動きに応えてくれた。
きゅん…っと入り込んだ指先にまとわりつく襞を捏ねると、
奥の方からはとろとろと温かな雫がまた新しく溢れて来る。

 

(…もっとちゃんとミシェルの話を聞いておけば良かったかもしれないな)

 

こんな時にさえ自然と浮かんだ皮肉気な横顔に、また一つズキリと胸が痛んだ。
だがどんなに悲しんでも嘆いても…その横顔は失われてしまって、
もう二度と取り戻す事は叶わない。……そして。

 

(シェリル―――…!)

 

腕の中に存在するこの人を……俺はまた、失ってしまうのか。失いたくない人を。
ずっと傍にいて遣りたい人を。ずっと傍にいて欲しいと願う…たった一人の女の子を。
…足掻いても足掻いてもどうにも出来ずに……俺はまた…失ってしまうのか……

 

腕の中に彼女の全てをかき抱いていても尚、胸を苛み続ける喪失感。「いやだ」と。
まるで駄々っ子の様な自分が今も泣き声を上げているのが分かる。
だが泣き出す事は出来なかった。一番辛いのはシェリルなのだ。
彼女を失いたくない俺よりも…自分の命の限界を知る彼女の方が…俺よりも辛い。
きっと今の俺よりも、シェリルの方が沢山辛い想いをして来た筈なんだ…

 

そして、一方で…そんな子供の自分自身を悲しげに見詰めながら、何処かで腹を括った
自分がいる事にも俺は気付いていた。例え彼女を失う時が来るのだとしても…
その時まではずっと傍にいようと。彼女が命を失うその最後の瞬間まで、俺だけは
ずっと傍にいようと。そう腹を括ってしまった自身がいる事にも俺は気付いていた。

 

母さんの時には、その死の影に気付かずに後で泣いているだけだった。ミシェルの時は
別れは一瞬の内に訪れて、後になって波の様な後悔と悲しみが押し寄せてきた。
なら、今は…全てを刻み付けておこうと思った。失う痛みも、
それまで共にいられる幸せも、その全てをシェリルと過ごした時間の証として。

 

(そうだ…刻み付けたい)

 

何時か天に帰る妖精が、それでも俺の傍から離れて行ってしまわない様に。
シェリルにも俺にもお互いの物なのだと言う証を刻んでしまいたい衝動が
不意に胸へと込み上げてくる。

 

「シェリル……」

 

そして、その衝動に背中を押されるままに…首筋にそっと唇を這わせて強く吸い上げた。
さっきまでとは違う「印」を刻む為のキス。何度も白い肌を吸っては赤い自身の痕を遺す。
シェリルが俺の物なのだと言う赤い証…。そんな事を言うと彼女には
「シェリルノームは誰のものにもならない」と拗ねられるかもしれない。
だが、それでも今はそうせずにいられなかった。

 

「や…ん、くすぐったい……」
「良いから…少し、じっとしてろよ…?」
「ん…っ…あ、あぁ……っ!」

 

白い肌に口付けの痕を刻みながら、内側に入り込んだ指先を動かせて少しずつ自分に
馴染ませて行く。指先が襞を捏ねる度にまとわりつく雫がくちゅりと音を立てて
俺の鼓膜を震わせた。シェリルの身体が紡ぐその水音を耳にする度に、下腹部に
云い様の無い熱が篭るのが分かる。心と身体に甘く絡み付いてくる衝動…。
この状態で充分なのか、何もかもが初めての自分には分からない。
だが、そろそろ自分を抑えることが難しくなって来たのも確かだった。

 

「っ…シェリル…。い、良いか…?」
「…ぁ…」

 

自分自身でも可笑しくなる位に情けない声が漏れた。震える言葉の意図を察した
シェリルの表情が躊躇いに揺れるのが分かる。空色の瞳に宿る逡巡の光…。
その瞳が薄い涙のヴェールで滲んでいるのが見える。綺麗だ…と素直にそう思った。

 

「―――シェリル」
だが、それでも…俺が掠れた声でもう一度名前を呼んで促すと、シェリルは
その蒼い瞳を潤ませたまま、こくりと小さく頷いてくれた。そんな彼女を安心させる様に、
瞼へとついばむ様な優しいキスを送る。それから一度上体を起こし、
汗でまとわり着く衣服を脱ぎ捨てた。熱を持って固くなった自分のモノを取り出し、
ゆっくりと右手で支える様にして…シェリルの入り口へと宛がった。

 

ぬるりとしたその感触が自分の身体から出た先走りのせいなのか、
シェリルの中から溢れた雫のものなのかは分からない。或いはその両方かもしれない。
その答えも出せないまま少しずつ腰を進めて行くと、シェリルの身体にも
強い緊張が走るのが分かった。何かに怯えているかの様な彼女の緊張を感じながら…。
それでも自分を止められずに、さっき指先で確かめた所へと肉体を埋めて行く…

 

「あ―――…あ、ると…っ!」
「っ…くぅ…!」

 

じわじわと押し入ろうとする異物を頑なに拒もうとするシェリルの胎内。
キツイ抵抗を示すその中へと、それでも少しずつ入り込んで行くと、
彼女の口からは痛々しい声が漏れた。止めるべきなのか…と俺が動きを止める度に、
背中に回された腕にぎゅうっと強い力が込められるのが分かる。
止めないで…と云う無言の訴え。多少強引でもいっそ奥まで一気に
入り込んでしまったほうが楽かもしれない―――…そう思い至った俺は

 

「シェリル…っ、ごめんッ!」
「えっ…あ、―――あぁぁぁぁぁっ!?」

 

彼女の細い腰が逃れられない様にぐいっと引き寄せると、自分の身体を
根元まで一気に埋めていた。だが、その途中で…押し入った自分の身体が何かを…。
淡い抵抗をした何かを、無理やり引き裂いてしまった…そんな感触を確かに感じた。

 

(え――…?)

 

その感触に、そうとは知らなくてもどきりと心臓が大きな音を立てる。

 

「シェ……シェリル……?」
「あ…あ、はぁ…はぁ…あ、るとぉ…っ」

 

そしてその予感は、痛みに顔を歪めるシェリルの姿を見て確信に変わった。
濡れた唇から漏れる切ない息遣い…。きゅっと寄せられた形の良い眉。
目尻に滲んだ涙の雫…。押し当てられた膨らみから伝わる鼓動の音が、
今まで以上に大きく感じられる。その全てが、一つの事実を俺へと伝えてきた。

 

そう…。シェリルも『初めて』だったのだと言う事を。

 

特にその事を意識はしなかったし、そんな事に拘る必要も無いとは思っていた。
だが、そうだったのだと分かると…驚きや痛い想いをさせた事への申し訳なさと共に、
やはり嬉しさがこみ上げて来てしまう。今も痛みに浅く息を吐くシェリルを労わる様に、
その痛みをほぐす様に、俺は彼女の上に何度も優しい口付けを落とした。

涙を滲ませた瞳に。溢れた雫に濡れた頬に。恥じらいに赤く染まった耳朶に。
そして…柔らかくて甘い、温かく濡れた唇に…。

 

「あ…ん、アルト……はぁ…」
「っ、シェリル…」

 

俺の唇と彼女の肌が触れ合う度に、入り込んだ肉体を女の身体がやわやわと小さく
締め付けて来る。途端に、繋がった下腹部から強烈な快感が背筋を這い上がって来た。

 

「っ……!」

とっさに腹に力を込めて全身を包む衝動をやり過ごした俺は、ほ…っと小さな溜息を
吐いた。入り込んだシェリルの胎内は狭くて、健気な動きで今も俺の肉体を締め上げている。
本当にこんな場所に入ってしまう物なんだな…と、少し場違いな事を考えている自分に
苦笑しながら、我慢出来なくなった俺はシェリルの耳元へと囁いた。
流石にこのままだと俺の方も余り長く保ちそうにない。

 

「シェリル…動いてもいいか…?」
「…い、いいわ…、アルトのしたい様に…して…」

 

自然と荒くなる息遣いを押さえながら尋ねると、シェリルも微かに震える声で
求めに応じてくれた。きゅっと絡めた腕に力を込めながら頷いてくれるシェリルの姿。
僅かに顔を上げて覗き込むと淡い微笑を浮かべてくれるその姿に、
早鐘を打っていた胸が、また一つだけとくんと大きな音を立てた。
この後に続くだろう「こんなサービスめったにしない」と云うお約束の
口癖が自然と頭に浮かぶ。当然来るだろうその台詞を待っていると…
彼女の唇からは予想外の言葉が続いた。

 

「それにあたしも…もっと…たくさん、アルトを感じたいの…」
「っ…バカ…!こんな時にそんな事言うな…っ!」

 

ますます我慢出来なくなるだろうが、と言う言葉をぐっと飲み込む。その言葉を
飲み込んだ勢いのまま、俺は彼女に深い口付けを落とした。
唾液を交換する様に舌を絡ませあい、熱の篭ったキスでお互いを求め合う。
細い身体を組み敷いたままぎこちない動きで動き始めると、
二つの身体が交わる水音が響き始めた。その音に重なる様にして、
シェリルの声と俺が吐き出す息遣いが離れの静寂を乱していく。

 

「っく、はぁ…っ、シェリル…」
「アルト…あ、あぁ…っ…あ、はぁ…あると…アルト…っ」
「シェリル…く、もっと…っ」
「あぁぁぁんっ!」


気付けば、シェリルの細い手足が絡みつきしがみ着いて来ていた。つんと込み上げる
愛しさが胸を焼く。泣きたい気持ちになったのは…嬉しいからなのか
気持ち良いからなのか…悲しいからなのかは分からない。ただ今は、
彼女が与えてくれる全てに溺れていたかった。その全てを忘れる事が
無い様に…心にも身体にもシェリルの感触を憶えこませて置きたかった。

 

「アルト…ッ、あっ、やぁ…んっ」
「っ…イイ…ッ…」

 

最初は固く拒んでいた筈のシェリルの中が、俺が往復を繰り返す度に少しずつ
馴染んで来るのが分かる。放すまいとでもするかの様にキツクしめつけて俺のモノを
呑み込もうとする動き…。その甘い感触を名残惜しく感じながら腰を引き、
応える様にもう一度奥まで突き入れる。大きく…小さく…寄せては返す波の様に。
漸く手に入れた愛する人の温もりを貪る様に。何度も何度も…二人がお互いに
守ってきた大切な部分を溶け合わせて行く。

 

「っ…はぁ…シェリル…シェリルっ」
「アルト…あっ、だ、だめ…ッ」
「―――シェリル…」

 

「好きだ」と思わず唇が紡ぎそうになった言葉を、俺は咄嗟に呑み込んだ。
こんな時に勢いに任せて伝えてしまうのは何処か卑怯なんじゃないか…と、
そんな気がしたから。代わりに肉体を一つに繋げたまま、今夜だけでももう何度目か
分からない口付けを交わす。唇と唇が結び付き、肉体と肉体が溶け合う感触…。
腕の中にいる女と自分が一つになっている事を、胸に染み込む様な喜びと共に強く実感した。

 

「はぁ…あぁ…アルト…」
「ああ…ここに、いる…シェリル…」
「うん…。あ、あったかい…アルト…」
「大丈夫だ…ずっと、そばにいるから……」

 

甘い吐息混じりにシェリルが俺の名前を呼ぶ。
いつの間にか溢れた涙がぽろぽろと毀れ落ちてはシェリルの頬を濡らしていた。
胸に込み上げる衝動のままにその涙を唇で拭うと、ふわりとその顔に
柔らかな微笑を浮かべて、蒼い瞳が俺を見上げて来る。

 

「あると……」
「…っ…」

 

―――愛しいと思った。彼女の全てが大切だと思った。
このままずっと、この声で自分の名前を呼び続けて欲しいと…心の底からそう願った。

(例えそれが…決して叶わない望みなのだとしても…)
じわりと込み上げてくる痛みを、軽く左右に首を振って追い払う。今だけでも
その事を忘れて…ただシェリルを腕の中に抱ける幸せを感じていたかったのかもしれない。

 

「もう少し…動くぞ…?」
「うん…」
「痛かったら、泣き出す前に言えよ?」
「ばか…。泣いたりなんてしないわよ…」
「もう泣いてるだろ…強がるなよ、このバカ…」
「ん…あ、あぁ……」

 

ちゅ…っと、強がる唇を封じる様にして、俺はピンク色の可愛い唇を優しく吸った。
ついばむ様な口付けを繰り返しながら、彼女の反応を探る様にして
もう一度ゆっくりと腰を蠢かせ始める。それでも目の前のシェリルの表情に微かな痛みが
浮かぶのが分かったが、もう止められる筈もなかった。彼女の様子を伺いながら、
ゆるゆると腰を動かせて一つに繋がる幸福へと溶けて行く。…シェリルの方もそれを感じて
くれているだろうか?離れるまいと俺の背中に回された腕に込められた力は強い。

 

「く…ぅ、はぁ…はぁ、シェリル…良い…ッ」
「アルト…っ」
「感じさせてやるから…っ、だから俺の事だけ…」
「あ、ふ…ふぁっ、あぁぁ…アルトぉ…っ、や、あぁっ、熱い…っ」
「そのまま…お前も俺のことだけ、感じていてくれよ…っ!」

 

くちゅくちゅ…と熱を帯びた自分の身体がシェリルの中を擦り上げる度に紡がれる水音。
その音に混ざり合う様にして漏れる二つの吐息が妙に艶かしい響きを
伴って耳朶を振るわせた。上手く言葉を紡ぐ事も出来ない。
こんな時に言うべき気の効いた言葉も出て来ない。

だから、ただ相手の名前を呼び合いながら…俺とシェリルはお互いの存在を求め合い続けた。
不意に背筋に感じるぶるりとした感覚…。シェリルの存在を貪る様に蠢いていた肉体に
溜まる熱が、次第に俺を急かし始める。どんなに腹部に力を込めても、
もう我慢出来そうにない…。このまま上り詰めてしまいたい衝動と、もう少し今の幸福に
溺れていたいと云う名残惜しさのせめぎ合いの中で、自分がどうにかなりそうだった。

 

「ッ…もう、俺…ッ!良いか?シェリル…」
「あ…アルト………」
「このまま…出る…ッ!」
「―――あ…あ、あぁぁぁぁぁっ!?」

 

ぐっと逃れられない様にシェリルの身体を組み敷いて、柔らかな肉の狭間に自身を埋め…
そのまま一番深い場所へと押し入らせる。全身に感じるシェリルの柔らかさ…。
鼻腔を満たすシェリルの匂い。彼女から伝わる全てに誘われる様にして、
俺は自分自身の欲望を解放した。

 

「あっ…あ、あぁ…っ、やぁ…っ、アルト…!アルト…っ!」
「ぅ…はぁ…はぁ、ハァ…く…ぅっ…」

 

どくん、どくん、どくん…と。跳ね上がった肉体から溢れた雫が中へと注ぎ込まれる度に、
自分の欲がシェリルの中を汚して行くのが分かる。全身を包み込む深い深い満足感と共に、
敢えて彼女の中に出す事を選んだ自分に一瞬だけ強い嫌悪を感じた。

 

(だが…それでも遺して置きたかったんだ…)

 

シェリルの中に自分自身の存在を。そして俺自身も覚えて置きたかった。シェリルと
身も心も一つに繋がった…この瞬間の温もりを。ハァハァと乱れたままの息遣いを、
二人で折り重なったまま整える。俺の背中に回されていたままのシェリルの腕。
その白い腕がすいと動いて、髪の毛を縛ったままの赤い組紐へと回された。
そのまま、しゅるり…と云う音を立てて彼女が俺の髪の紐を解く。

 

「シェリル?何を……?」
「ふふ…綺麗ね、まるで本当にお姫様みたい…」
「この期に及んでお姫様扱いは止めろよな…」

 

口では文句を言いながらも、楽しそうなシェリルの表情に俺の顔にも自然と笑みが浮かんだ。
この部屋の縁側で母さんが良く結んでくれていた髪の毛と、赤い組紐……。
自身を縛っていた何かが解けて行く様な不思議な感覚が胸へと込み上げて来る。
そのままもう一度シェリルの顔を覗き込み、ゆっくりと顔を近づけると…
俺の意図を察した彼女も瞳を閉じて唇を寄せて来てくれた。ふわふわとした
夢の中にいるかの様な幸福感。重くならない様に横抱きになって、
シェリルの頭を自分の左腕に乗せる。

 

「何だか不思議…」
「うん?」
「だって、アルトがこんなに優しいなんて」
「ばっ…!そりゃこんな時くらいは、俺だってお前に優しくしたくなるだろ?」


くすくすと笑いながら紡がれたシェリルの言葉に、途端に戻って来た気恥ずかしさが
俺の語尾を乱させる。何と言っても、その…彼女の初めてを有り難く頂戴した後なのだ。
ここで優しく出来ないのなら、一体いつコイツに優しくすれば良いって言うんだ…。

 

「あのなぁ、シェリ…」
「―――こんな時…か…」
「…シェリル…?」
「ふふ…ううん、何でもないの…」

 

苦笑いを隠しながら口を開こうとした俺に先んじて、シェリルが小さく呟いた。
一瞬だけ感じた…小さな小さな、本当に小さな違和感。その理由を尋ねようと俺は
言葉を続けようとした。だが、それよりも先に彼女が俺の胸の方へと頬を
すり寄せてきてしまったから、結局は俺は何も聞けないまま…。
何故さっきの声があんなに寂しそうなのかの理由を、聞けないままになってしまった。
…一瞬彼女が見せた悲しげな表情の理由さえも。

 

「シェリル……」
「―――…ん……ううん…」
「なんだ、寝ちまったのか…」

 

そのまま暫く、擦り寄せられた頭を撫でる様にふわふわの髪の毛を梳っていると、
いつの間にか彼女の唇からは安らかな寝息が響き始めた。僅かに頬に残る涙の痕を、
シェリルを起こさない様に気遣いながら唇で拭う。きっと俺が気付かない間に…
一人ぼっちで流し続けて来ただろう涙の痕…。だが、もう一人きりで泣かせたりはしない。
伝わる温もりに、改めてそんな事を思う。ずっと俺が傍にいる…と。
お前が寂しい時にも悲しい時にも、一人きりでは立てなくなりそうな時にでも…
ずっと、これからはお前の傍にいる。もうお前が一人ぼっちで孤独に
震えなくて済む様に。その事が俺にとってもお前にとっても…
どんなに辛い事だとしても―――その、最期の瞬間まで。

 

 

 


…と少し重い暗いお話にどうしてもなってしまいました。でもこうして22話で二人が
結ばれていたと分かって、一つ納得行った事。22話ノーザン衣装のシェリルの胸元が
普段の衣装と違って隠れてたのはそう云うことですよね、アルトさん(笑)
 

最終更新:2012年09月23日 15:44