184 名前:時間なくてエロ入れられなかったよ[sage] 投稿日:2012/07/27(金) 23:53:59.87
「あんたってホント欲がないのね~」
彼女と迎える何回目かの誕生日を前に何が欲しいかを聞かれて、毎年のように答えたら言われたのだった。
銀河の妖精を独り占めとはかなり贅沢なことだと思うので、欲がないと言われると奇妙に思える。
自分の誕生日にわざわざ休みをとって恋人と過ごすなんて出来る社会人は早々いないだろう。
(不規則な仕事なので、どうせなら、と誕生日前後に取ってるだけなのだが)
現に彼女は、自分の誕生日は当然のようにライブをしていて、
俺が一緒に過ごせるのは朝と日付も変わるころだし、ゆっくりと過ごすこともままならない。
わざわざ出かけなくてもいいと思うのだが、折角だからと、毎年小旅行へと出かけている。
外へと出てみれば、様々な体験を共有できて、喜ぶ彼女を見れて
忙しいシェリルをひっぱり出してきてよかったと、毎年思うのだ。
忙しく日々を送るお前と俺と、とても、幸せで贅沢な事、だよな?
欲を言えば、彼女の特別な日にだって彼女を独占していたい。
毎日でも・・・・いや、仕事をする彼女は輝いているので、悩むところではある。
(彼女がイエスというかというとそれは否だが)
彼女が彼女であるためには、必要な事だからだ。
「ずっと先のスケジュールまで決まってるお前が、俺のために休みを取ってくれてるだけいいさ。
来年の予定も開けてくれてるんだろ?」
「この辺りに仕事すると縁起が悪いから開けてあるだけよ…」
恥ずかしげに答えるお前が見れるのは俺だけ、だろ?
***********
情事の後の彼女はひどく甘い。
「あのね。アルトの誕生日、みんながお祝いしたがってると思うの。
なのに、独占しててなんだか悪いなって」
素肌を触れ合わせながら、余韻も落ち着いた頃に彼女がさっきまでの吐息の代わりに紡ぐいだ。
「そうか?誕生日なんて、一年なんて昔人類が住んでいた惑星の時間に合わせただけの区切りだろ?
季節があるなら、また巡ってきて思い出すこともあるんだろうが、残念ながら1年はこの星の自転周期じゃないしな」
「『生まれてきてくれてありがとう。今、あなたと生きていられてい嬉しい』って何かきっかけがないと伝えられないじゃない。
だから、口実に、季節のイベントがあるのよ。でも、誕生日はその人だけのものなんだもの」
まだうっとりとした様子で日頃よりも少し幼げに話す彼女の頬を撫でる。
「俺の誕生日なんだから、俺の欲しいもの貰っていいんだろ?
みんなからは、お前と二人きりの時間、貰ってるじゃないか。
来年も、こういう風に過ごせたらいいって思える最高のプレゼントだよ」
柄にないことを言ってしまうのは、彼女に満たされたせいだ、きっと。
さっきまで官能の涙をこぼしていた瞳が再び潤んで、それを見せまいと、俺の胸に顔をうずめた。
そう、彼女と迎えた初めての誕生日には、病魔に侵された熱で潤んだ瞳の彼女が倒れこんできたのだった。
もう、泣き顔なんて隠さなくていいのに。
一瞬見えた、くしゃりと歪んだ表情が愛しくて、そっと柔らかな髪を梳いた。
そんなに喜んでもらえるとは、我ながら恥ずかしいやら嬉しいやら。
(ああ、本当にお前が生きていてくれてよかった)
あの時の危機的な状況も乗り越えて、凶悪な運命も乗り越えて、俺たちは今こうして生きてる。
犠牲が大きすぎて、今の幸せをただ喜ぶばかりではいられず、悼む気持ちもまた湧いてくるのだが、
彼女を救ってくれた全ての人たちに、
そして、彼女を喜ばせることが出来る自分に生み育ててくれて導いてくれた全ての人たちに
なにより、この温かな感情を与えてくれる恋人に、
欲深い俺も感謝の気持ちが湧いてくるのだ。