273 名前:小ネタ「ピュアなフリしてギラギラサマー♪」[sage] 投稿日:2012/10/02(火) 22:18:11.07
流れに乗って突発ネタです。話題に出てる映画後の『初めて』はまた後日投下予定です。
毎回読んでくださる方、支援・GJして下さる方、wikiに補完して下さる方への感謝を込めて…
「はぁ………」
「本日、13回目だな」
「―――何がだよ」
「さぁて?直接言って欲しいのか?」
「う……」
そう―――…気付けば自然と口から漏れ出るのは深い溜息だ。
本日だけで実に13回目。ここ数日の間、何度と無く繰り返されてきた仕草。
自分でもその事を自覚しているのだから、職場でも校内でも
隣にいる、察しのいいこの男に気付かれない訳は無かった。
「どうしたんだよ一体。何かあったのかな~?何ならお兄さんに相談してご・ら・ん」
「誰がお兄さんだ誰が!気持ちの悪い声を出すな!」
ぐぐっと肩に腕をまわして耳元に囁かれる言葉を、その腕ごと邪険に振り払う。
じろりと睨んで見せると、眼鏡の奥にある翡翠色の瞳にいやらしい光が浮かんだ。
「だってさ。お前がそんな顔してるんだとしたら
十中八九、原因はあの女王様だろ?どうした?今度は一体何をしたんだよ」
「今度はって言うな、今度はって!」
「……おや?」
「なんだよ」
「誰かさんが自覚するずいぶんと前から、妖精さんとの事に関しては
色々と手を回してあげた記憶があるんだが、気のせいかな?」
「っ…ば、バカ……!」
持ち出された過去の事に、かぁっと頬に朱がのぼるのが分かる。
遠い様で、時間的にはそんなに遠い訳でもない遠い…以前の話。
自分の気持ちが分からなくて、シェリルを傷付けて、彼女から
離れる事までも考えて…悩んで、思い詰めていた時に、助け舟を
出してくれたのは、確かに目の前にいるこの男だった事を思い出す。
「お前達がウダウダ悩んでた時にペナルティ覚悟でシェリルを連れて来てやった事もあったし。
最後のタイヤキをどっちが食べるかどうかで大喧嘩した翌日に、愚痴を聞かされた事もあったし。
しかもその原因がお互いに「お前が食え」で譲らなかったことだったなんて事もあったっけなぁ…」
「う……」
「そのくせお互いに意地っ張りで何日経っても譲らない、護衛中もそんな感じで困ってる、
そうグレイス女史から相談されて、メッセンジャーまがいの事をしてまで
お前達の仲をとりもってやったのは誰だったっけな?当人は忘れちゃってるのかな~?」
「わっ…悪かったよ、それは…恩に着て、感謝してる…」
口にしなければ次々蒸し返されそうな、シェリルとの間の出来事を
封じるためにも、俺はぐっと言葉に詰まりながらも素直にその事を認めた。
そう―――…確かに色々と世話になって感謝してはいるのだ、ミシェルには。
自分の気持ちに自覚の無い頃…それこそ彼女にスパイ疑惑がかかっていると知った
あの時にさえ、一番最初に俺が相談を持ちかけたのも目の前の男だった。
その事を考えると…やはり素直な感謝の気持ちを認めざるを得ない。
「だったら良いだろ?……またグルグル悩んじまう前に、相談くらいには乗ってやるよ」
「―――はぁ……」
だから、目の前のミシェルに苦笑いをしながら促されてしまうと…
先ほどとは異なる種類の溜息を漏らしながらも、俺は口を開くしかなかった。
「……失敗した、と、思って…」
「ん?失敗?」
「ああ」
「失敗って…だから、今度は一体何をしたんだよ?」
「う……」
けれどその先を促されると…どう言葉にしていいのか。
どうやって説明していいのか、分からなくてつい頭を抱えてしまう。
「アルト?」
「だっ、だから……!だから、その…し、失敗したな…と」
「はっはぁ~ん」
そして、そんな俺の態度を見て察してしまうのが―――…
ミシェルの厄介で、けれど時折有り難い所なのだろう。
耳朶まで真っ赤になっているだろう俺の姿を目にして
ミシェルは心底楽しそうな含み笑いを漏らした。
「バッカ!初心者のお前が初心者のシェリル相手に
お前がそこまで辿りついただけでも快挙だろ!
失敗したって何だよ?緊張し過ぎて勃たなかったか?
気持ち良すぎてすぐ終わらせちまったか?それとも挿れる場所が
分からなくてモタモタしてる間に暴発しちゃったとか?」
「ばっ…ち、違う!って言うかなんで初心者だって分かるんだよ!?」
「そりゃお前等見てたら誰でも分かるって…で、一体何を失敗したんだよ」
「あ……ぅ……」
ミシェルの言葉に蘇るのは先日の…シェリルと過ごした『初めて』の時間だ。
グレイスさんの事を思い出して寂しくて、俺がフォールドした時の事を
思い出して不安になって…泣くのを我慢しているシェリルが、たまらなく愛しくて。
抱きしめて、ずっと一緒にいると約束して、初めて一つに結ばれた。
お互いに初めての行為に緊張して、ドキドキして、時々じゃれあったり
笑い合ったりしながら―――…心も体も一つに繋がったあの時間。
その時の事を思い出しては、今も心と体がじわりと熱を帯びるのが分かる。だが……
「別に…お前が言っている様な事で失敗した訳じゃない」
「ほぅ?」
「そりゃ緊張したには緊張したけど、シェリルも緊張してた点は同じだったしな。
お互いに緊張よりもずっと幸せな気持ちで一杯になってますます興奮する位だったし。
気持ち良いのは確かに気持ち良くてこの世の中にあんなに気持ち良い事があるのかと
驚く位だったが、だからこそ少しでも長くあの気持ち良さを感じたくてむしろ後から
初めてのシェリルに無理をさせたんじゃないかと心配する位だった。
挿れる場所が分からないんじゃないかって不安は確かにあったさ、でもだからこそ
その前に指と舌とでしっかり探ったりほぐしたりして確かめておいたから
思っていたよりもスムーズに場所は確認できたと思う。もちろんシェリル自身も
初めてだったからかなり痛がる様子を見せたけどそれでも健気に
『良いから来て…あたしの中に』って泣きながら俺を受け入れてくれたし、
自分だって苦しいくせに俺が我慢して動かずにいるのを察して
『アルトになら壊して欲しいわ』とか『アルトにも気持ち良くなって欲しいんだから』とか
言い出して。それが嬉しくて俺も『大事にする』ってアイツに伝えて可愛い唇をそっと吸………
「分かった!分かったからアルト!それ以上は良いからその口閉じろ!」
「……?なんだよ、自分から聞いておいて。ヘンなヤツだな…」
「…で、それでお前は一体何を『失敗した』んだ?」
「ああ……」
そう。思い返しても行為自体に失策があったとは思えないのに。
それでもこの時の『初めて』以来…何故かシェリルには、2回目の行為を拒まれていた。
何が悪かった?何が良くなかった?俺は一体何を失敗してお前を傷付けた?
その理由を探る為にも、何度もこの時の事を思い返しては蘇る情欲を持て余す日々。
それが何度となく繰り返される溜息の理由だとは…流石に素直に口には出せない。
しつこく食い下がるミシェルに、シェリルに拒まれているその事実だけを伝えると
俺はもう一度はぁ…と一つ溜息を吐き出した。
将来を嘱望された天才女形、伝説の桜姫、濡れ場と言えば早乙女有人。
そう言われて来た事はあっても結局は女心なんて一つも分からない。
中でもシェリルは特に厄介なんだ。すごく分かり易い所もあるのに複雑で、
複雑でどう対応すれば良いのか分からないかと思うと妙に素直な所もあって。
彼女の笑顔を見る度に、もっとその内面に触れたいと思う。
彼女の全てを知りたいと思う反面、次々見せてくれる自分の知らない一面に
ドキドキさせられるのを楽しいと思う自分もいる。
けれど今回ばかりは本当にお手上げだった。
出来れば今夜にでも何とか機嫌を直して貰って、あの幸せな時間を…
彼女と溶け合う溜まらなく幸福な時間を、二人で過ごしたいと思うのに。
「…で、本当に何も心当たりはないのか?」
「いや…。ここ数日考えて、一つだけそうじゃないかと思うこともあるにはあるんだ」
「なんだよ、だったら早くそれを言えって。お前自身は何が原因だと思ってるんだ?」
此方を覗き込む様にしながら先を促すミシェルの視線から目を逸らし、
俺はまだ少し残る気恥ずかしさや躊躇いを振り切って、もう一度口を開いた。
「アイツは満足してなかったんじゃないか…と思ったんだ」
「ん?」
何を言っているんだコイツは、と云う表情を浮かべたミシェルの態度に
むっと眉根が寄るのを自覚しながら、先を続ける。
「―――だから!俺はすごく気持ちよくて…シェリルが『良いから』って
言ってくれてる言葉に甘えて、一晩中、その…満足させて貰った。
何度も出させて貰って…何度もイかせて貰って、すごく良かったんだ、だけど…」
「………だけど?」
心底うんざりしてます、と。どんどん半眼になって行くミシェルが更に先を促す。
「だけどアイツは…満足してなかったのかな…って思って…
俺の腕の中で何度もぐったりして弓なりに体を反らせて甘い声で泣いてたから
シェリルも気持ち良くなってくれてると思ってたんだよ。でも思い返してみたら
途中から『もう止めて』『アルトお願いもう放して』とか言っていた気もして…
なぁミシェル。やっぱり、その…俺だけが幸せで、楽しんでいたんだと思うか?
もっと自分の欲求を抑えて、アイツの方をもっと沢山イかせてやれば良かったのか…?」
「……………」
思い返してみれば、俺は何度も気持ちよく出させて貰ったけれど…
本当にシェリルは気持ち良くなってくれていたんだろうか?
自分ばかりが楽しまないで、シェリルをイかせる事にこそ専念すべきだったんだろうか…
「本当に…失敗したよな……はぁ……」
そして漏れる本日16回目の溜息。恥ずかしさを押し殺しながら相談したにも関わらず
気付けばミシェルは無言のまま姿を消していた。全く、なんて友達甲斐の無いヤツなんだ。
何度思い返してみても、失敗なんてその位しか思いつかない。
けれどこのまま、シェリルに拒まれ続けているのは余りに辛すぎる。
だから―――もう一度シェリルが許してくれたら。その身をこの腕に任せてくれたら。
今度は何度でも何度でも…彼女が満足するまで何度でも奉仕してイかせてやろう。
その事をひっそりと胸に誓いながら、俺は17度目の溜息を口から吐き出したのだった。
そんな感じで短いネタですが、お茶請けにでもどうぞ。
今になって気付いた誤字脱字がありますが、そっと見逃して下さいorz
アルトさんがしている「失敗」に関しては、お察し下さいと言う事で。
ようやくお許しが出た二度目のその後、涙目になった妖精さんに更に拒まれて
学校の屋上で青くなったり赤くなったりしながら頭抱えてる未来しか見えませんが(笑)
ここまで読んで戴いた方、本当に有難うございました。
最終更新:2014年06月15日 09:09