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3スレ75 250物語1


75 名前:fusianasan 投稿日:2009/01/17(土) 18:17:20

約束の時間はとうに過ぎたというのにアルトが来ない
初めのうちは「私を待たすなんていい度胸だわ!」と言っていたシェリルだったが
イライラが不安に変わり酒を煽る
「アイツが来るのをこんなにも楽しみにしていたなんて…」
アルトが自分の元へ来るのは彼の要望への対価として自分が下した命令だ
本当は自分の相手などしたくないのかも知れない
そこまで考えて、ついにその空色の瞳が涙に濡れる
「やだ…どうしてこんな…っ。………アルトのバカ」

「悪い、遅くなった!」
「………っ」
「シェリル…? お前、泣いて…」
「そ、んなワケないでしょ! ただの欠伸よ! 今夜はもういいから帰って!」
そう言いながら顔を背け俯くシェリルに、アルトはどうしようもない思いに駆られ抱きしめた
「待たせてごめん」
(…嘘。ホントは来たくないんでしょう?)

豪奢なストロベリーブロンドを広げて、シェリルがアルトの方を向いて布団の中で横臥している。
アルトが撫でる金髪は、その絹の夜着にも勝るほどに滑らかだ。
いつもは物語の展開に合わせて豊かに変わる表情が可愛らしいシェリルだったが、
今夜は頬をほんのり赤らめ、まだ涙が残っているのか瞳を潤ませて、悩ましい様子で
アルトは別の意味で目が離せなかった。
その刺激に翻弄されないよう、アルトは物語りに集中する。


物語はちょうどラブストーリーの山場に来ていた。
先ほどまで不機嫌だったシェリルも、物語に集中しているのかぼんやりとこちらを見ているだけだった。
禁忌を犯して、主人公がヒロインに愛の告白をするシーンに差し掛かり、
アルトはシェリルの瞳が自分をとらえるのを待った。
物語は相手の反応を見ながら、適切な間で話すものなのだ。
続くはずの愛の言葉がないことを不思議に思ったシェリルがようやくアルトの瞳を見詰めた。
視線が絡んだところでアルトが口を開いた。
「お前を愛してる。もう、離さない」
思いの外甘い声が出て、アルト自身どきりとしたが、
シェリルは物語に浸っているのかうっとりとするばかりだったのが、少し面白くなかった。


めでたしめでたしと、恋人達が結ばれた事に満足して、シェリルは目を閉じた。
しかし、今だ髪を撫でられていることに気づき、落ち着かない。
あなたは旅に出るために、そんなに優しくしてくれるのよね?
アルト…、物語の恋人たちと違って、私たちは結ばれない。
結ばれるとか…イヤだ私酔ってるんだわ…。
愛してると囁いたアルトの真剣な顔を、声を思い出し、胸が締め付けられる。
すぐ近くの息遣いを感じて、シェリルがゆっくりと瞼を開くと、
目前に切なげに自分を見つめるアルトがいた。


シェリルが泣いていたので、今晩は眠るまでは一緒にいてやろうと思っていた。
髪を撫でる手を退くタイミングを失い、撫で続けているせいで、この至近距離。
やわらかそうな頬や唇は、正直、目の毒だ、などと考えていたところにシェリルが目を開いた。
ぼんやりと切なげにアルトを見つめているシェリルは、涙を潤ませ、唇を噛む。
やわらかな唇に傷がついてはいけない、アルトはつい、シェリルの唇に手を伸ばした。
触れた唇はめまいがするほど柔らかく、赤い舌が歯の間から覗いた。
アルトは指で唇をなぞると、顔をよせ、唇を重ねた。
甘い刺激がゾクリと背を走るままに、アルトは従順に受け止めるシェリルの唇を貪った。

弱って酔ったシェリルに手を出すなんて、最低だ。
物語の反応を見る限り、色恋に関してシェリルは初心で世間知らずなようだったので、尚更、性質が悪い。
ようやく官能を欲する己の欲に打ち勝ったアルトは唇を離す。
が、組みしいたシェリルは、頬はますます上気し、濡れた唇が艶めかしい。
頼りなげな様子でシェリルがわずかにこぼした目じりの涙を唇にのせると、
アルトは甘い香りに誘われて唇を首筋へと移した。
頼むから、いつもの調子で抵抗してくれ!と願うアルトを余所に、シェリルから甘い吐息が漏れる。
なんで、今日はそんなに、儚げなんだ。置いて行けるわけないだろ。
布団を剥いで、シェリルを強く抱き締めた。
「何か、言えよ、シェリル」
抱き締めた体は柔らかで温かで、折れそうにか弱い。
「アルト…」
シェリルが、か細く名を呼び、背中に手を回してきた。

「お前このままどうなるのか分かってるのか。後悔しても遅いんだからな」


どんなに指で馴らしても、初めて受け入れるシェリルは狭く、
アルトが努めてゆっくりと腰を進めるものの痛みにシェリルは身をすくませていた。
その耐える姿が扇情的で、健気さに愛しさが溢れる。

精を放ったアルトはシェリルの胸に顔をうずめて息を整えた。
恐る恐るシェリルの様子を伺うとシェリルも放心している。
シェリルに見てほしくて、アルトがキスを送ると我に返った様子だった。
シェリルが恥ずかしげに微笑むのを見て、安心したアルトは
逃がさないように腕に閉じ込めてしばしの眠りについた。


腕の中のシェリルが身じろぎして、アルトも目を覚ました。
「起しちゃったわね」
シェリルがかすれた声で囁くので、アルトは水を差しだした。
「湯浴み、するか?手伝うぞ」
「いいわ、女官たちにお願いするから。
あんたの方こそ帰らないといけないんだから、浴びるなら先に行きなさい」


ぬくもりが離れて行き、シェリルは夢心地が急速に冷えたのを感じた。
身支度をしたアルトが傍に腰かけると、シェリルは彼に抱きつき、髪をすいて、心の中で密かに別れを惜しんだ。
話し終えれば、彼は去ってしまう。だけど。
「また、話をしに来なさい、アルト」
250話を終えるまでは、甘い夢を見せて。

アルトがいつもの時間に寝室を訪れると
シェリルはすでに眠っていた。

公務はいつも激務で、昨夜初めて男を受け入れて、疲れたのだろう。
読みかけの本を握ったまま、安らかな様子だ。
来いって言ったのはお前なのに。

話終えるとすやすやと眠っていた、というシェリルの寝顔は幾度となく見てきたが
こんなに触れたいのは初めてだった。
正直、ベッドで自分の話に耳を傾けるシェリルは昼の雄々しさと対照的に可愛らしく、
男としていろいろと我慢させられたことは数え切れないほどあったのだが、
お互いの信頼の上に続けてきた夜伽だ。
裏切るわけにはいかない。

しかし、昨日の今日だ。

そりゃあ、今日も淡い期待を抱いて来たし、ちょっとくらいは、許されるだろ。
昨日の行為を思い出し、目がギラギラとし始めたアルトは
それに気づき、なんとか自分を落ちつけた。

アルトはシェリルの額に口づけを落とすと、灯りを消し、ベッドを後にした。
いい夢、見ろよ。
明日はきっとあの青い瞳に映ることができるだろう。
「また、来るよ」

おわり
最終更新:2009年03月28日 23:48