アットウィキロゴ

250物語7 儀式


234 名前:えっちな18禁さん[sage] 投稿日:2009/04/05(日) 05:50:05 ID:5k/IFSnD0
250物語。久しぶりなので文体が変わってるかも知れません。
突然始まりますが、端折ってる部分は適当に補ってください。エロまで到達してません。



儀式の場は、暗い洞窟内に移った。
シェリル、祭司達に続いて、神官や近衛兵たちが入っていき、
アルトもそれに倣い洞窟内に足を歩みを進め、儀式の進行を見守った。

洞窟の中央で白い薄布の長衣を着たシェリルが祭司から渡された捧げ物を
神への言葉とともに祭壇へと捧げている。
たいまつに薄暗く赤い灯りではアルトからの距離ではあまりよく見えないが、
神官に儀式の意味を学んでいたので、シェリルの一挙一動を興味深く観察していた。

ふいにシェリルが白く輝きだした。
天井の穴からちょうど頂点に上った満月がシェリルを照らしているのだ。
その姿、動きや表情、支配される場の神々しさにアルトは息をのんだ。


白く浮かび上がったシェリルが祭司の声に唱和し、洞窟内にこだましていた。
その歌にも聞こえる澄んだ音声に身をゆだねようとしていたところ、
ふと、アルトはシェリルをはさんで対角線上の近衛兵が
じわりと中央へと近づくいていくのを目にした。
きらりと、持っていないはずの刀が明りを反射したのが見えた瞬間、
アルトは反射的に走り出した
「シェリル!」

「この、あばずれめ!」
アルトは刀を振り上げた男とシェリルの間に割って入り、
たいまつで刀を受けたが、2分され失速した刃がアルトの左腕を切り裂いた。
男の勢いを殺した隙に、アルトが男を足でけり飛ばすと、
他の近衛兵が近づき、取り押さえた。

アルトがシェリルを振り返ると、儀式を続けていたシェリルがちらりと目をやり
目と目があった。
うなづくようにまばたきで合図を送ると
シェリルは再び儀式に無心な、まるで憑依されたかのような表情になった。


シェリルが無事儀式を続行するのを見届けたアルトは
神官に連れられ、傷の治療のために洞窟を後にした。


幸い、毒は塗られていないようであったが、
傷により治療後から発熱し始めたアルトは、儀式へ戻ることなく、床へ臥した。

目を合わせるだけで存在を感じ合えるシェリルの
人でないかのように神々しい女王の表情を思い出し、胸がざわりとしたが
夜遅いこともあり、熱にうなされたアルトの意識は次第に遠のいていった。



怪我が大きなものではないことを見てはいたが、
儀式を終え、首謀者洗い出し捜査の指示を出したシェリルは
アルトの下へと急いだ。
アルトの命に別状はなく、眠っているとの報告を聞いたが、
それでも彼の顔が見たい。

熱と痛みにうなされてはいるが、うす明りに照らされたアルトの血色は良く、
ほっとしたシェリルは体の力が抜けていくのを感じた。
シェリルは、自分が十分な世話が出来ないことを分かっていたので
看病をしている女官を下がらせることも出来ず
アルトに縋るたい気持ちを抑え、ただアルトの枕もとに静かに坐した。

自分の近くにいれば、いずれアルトを危険にさらしてしまうとは分かっていたが
いざその時が来てしまうと、怖くて、悲しくて、悔しくて仕方がなかった。
眠る愛しい男の顔を眺めながら、
別れの時を決断しなければならないのだろうかと、
シェリルは疲れた頭でぼんやりと考えた。

神がいるとしたら、とても残酷な存在だ。
泡沫の幸せを与えておきながら、それを自らの意思で破壊させるのだから。
しかし、自分の幸せに縋りついて、彼を道連れにすることはきっと、もっと苦しい。


####
日が高くなり始めた頃、アルトが目を覚ました。
馴染みの蒼い瞳を目にしたアルトから安堵の笑みがこぼれた。
「シェリル……陛下、お怪我は召されませんでしたか?」
シェリルがベールとマスクをしているのに気づいたアルトは
とっさに女王陛下への会話に切り替えた。

「ええ、おかげ様で。礼を言うわ。無事、儀式も終えることができました。」
シェリルの瞳が微笑み返してくれたが、マスクに覆われない顔が見たい。
抱きしめてその無事を実感したい、と思い、アルトは周囲の者を下がらせようとしたが
シェリルが制止した。
「目を覚ましたばかりです。まだ暫くはゆっくり休みなさい」
シェリルがすっと立ち上がり去っていくのを
留めたい気持をもてあましながら、アルトは見送った。



病床でかいた汗を流してすっきりしたアルトは、
腹が空いていることに気づいた。
もともと、怪我をしただけなので、食欲は旺盛なのだ。

女主人として客人はもてなすとのことで
このオアシスについてから儀式で同伴できない場合を除いて
毎食をシェリルとともにしていたが
今日はさすがに無理だろうと思いながら、アルトは食卓へ向かった。

シェリルと最後に食事をしたのは一昨日の夜で、大して時間は経っていないのだが
明るい食卓がやけに懐かしく感じられた。
オアシスに来て初めて、シェリルと食卓を囲んだにも関わらず
その温かさがアルトの心に沁みついていたのだった。
シェリル不在の食卓にアルトが無自覚に意気消沈していたところに、シェリルがやって来た。

入口でマスクとベールを外し、テーブルへ向かうシェリルは、
光のもとで色素の薄さが際立ち、絵画の中の妖精のようだ。
アルトは妖精の羽を捕まえに行きたい焦燥感を我慢し、その挙動を見守った。
「何よ?」
久しぶりに会うのがくすぐったいのか、アルトに見つめられるのが落ち着かないのか
シェリルが照れ隠しにしたふてぶてしい態度で羽が消えた。

「…い、いや!…無事で良かった。儀式、最後まで見れなくて悪かったな」
「いいの。依頼の件ならどうにでもなるわ。そんなことより、アルト、怪我はいいの?」
包帯の巻かれたアルトの左腕を心配そうにシェリルが見やった。
「このくらいの怪我は珍しいものじゃない。
そんなに、心配するなよ、シェリル。」
表情を曇らせるシェリルを抱きしめに行こうとしたアルトの腹が鳴り、
二人は顔を見合わせて笑った。

「そうね、いっぱい食べて、怪我を治さないと」
食卓についたアルトは、用意された水でひとまずの乾杯を促した。
「お水で乾杯?」
「お前、昼は酒飲まないだろ」
「それはそうだけど」
クスクスとシェリルが笑い、アルトの釣られて笑った。
「「カンパ~イ」」
「まずは、「お疲れ様!」」

水で喉を潤し、二人は陽の光りを存分に浴びた食事を開始した。
「あの洞窟の仕組みは良く出来てるな。
ちょうど夜半に月光が射すのに合わせて天窓が開けてあった。
…美しかった。儀式の時はどんなこと考えてたんだ?」
「神の恵みと民と国家の平安と繁栄を、と言いたいところだけど、
残念ながら、次の手順で頭がいっぱいよ。ある意味、無心ね」
「まあ、そんなもんだよな…」
「ふふっ。洞窟はなかなか良かったでしょ?これが王家の歴史の重みよ。
あんた一人だけで調査が終わるとは思ってないから、
ぼちぼちやって引き継げるようにしておいてちょうだい」

アレこれと会話を交わしつつ食事をしていたアルトは
視界に干し肉をつまむシェリルの指先が入り、どきりとした。
そして、シェリルが肉を口にするのを意識してしまう。
(禁欲は終わったんだな)
アルトは、自分の考えた事に、心の中で苦笑いをした。
肉を食む唇さえ、妖美だ。


食事を終える頃になり、シェリルがうとうととし出した。
昨晩は一睡もしていなかったらしいので
疲れのたまった心身には無理もない。
「シェリル、もう寝ろ」
「ん~~~~、口を清めたら」
眉根を寄せて、目をしょぼしょぼとさせる
滅多に見られない幼い様子が、愛らしい。
不純な自分を申し訳なく思いながら、アルトはシェリルを洗面場へと連れていった。
握った手も、手を添えた華奢な肩も漂う甘い香りも、悩ましかった。

耐えきれずアルトがシェリルを後ろから抱きすくめると、
ふわりと今にも眠りそうなシェリルの顔がほころんだ。
その可憐な様子を見て、今は休ませてやらなければ、と
ほとんど表に出てきそうな、己の奥に燻る欲を押さえてアルトは決心した。

ともすると寝込みすら襲ってしまいそうだったので
シェリルの世話を女官に任せて、後ろ髪をひかれつつアルトは離宮を離れた。



最終更新:2009年05月07日 16:50