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384 名前:えっちな18禁さん[sage] 投稿日:2009/04/18(土) 02:04:02 ID:8nu3mSBUO
携帯からなので、読みづらいかも…

 

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紡がれる声音に空気が溶け、まどろみが体を包む。
幾夜も重ねた感覚にシェリルは身を委ねた。

頬ずりするシーツは滑らかで花の香りがする――仄かに香る彼の体臭さえも自分を安堵させるものなのだと、気づくと面映ゆい。
そんな宵が、いとしい。

限りのある逢瀬を指折り数え一喜一憂する少女があることを、きっと彼は知らない。


彼、アルトの語る寝物語は伝記が多い。
諸国漫遊を夢に持ち、暇を見つけてはふらりと旅に出るのだと、彼は目を輝かせて笑う。

だからだろう、思いを馳せる地の歴史や風土のみならず伝承さえも吸収し、心を奪われ、いつしかその地を訪れる日を待ち望む。
王の娘などに生まれず、ただの貴族か普通の娘に生まれていれば結ばれることも叶っただろう――時折、自分の出自が恨めしく思う。

 

「これは東方の国に伝わる話だ。今日は勘弁してくれ」
「なぁに、考えてこなかったわけ?」
「考えてないわけじゃあない。ただ、構想がうまくまとまらないんだよ」

「それって考えてないのと一緒じゃないの?」
「ちがっ、全然意味が違うだろ!」

 

天蓋の幕を直していたアルトは振り向きざまにそう肩を怒らせて、そう吐き捨てた。
シーツの中に潜り込み幾重にもなるように並べられた枕から一つをたぐり寄せ、頭を預けけたシェリルは催促するように、アルトを仰いだ。

 

「言い訳はいいから、ほら。いつでもどうぞ」

ぞんざいな言葉で突っぱね、瞼を落とす。

溜め息が落ちるとしばしの沈黙の後、淡々と前置きが紡がれた。

 

(――あなたがいない夜、私はどうやって眠るのかしら)

 

聞き慣れた常套句に、一日の緊張が解かれてゆくのをシェリルは感じた。


「男は、妻の体に残った傷跡をみて驚いた――かつて、旅先で出会った老人に告げられた未来の伴侶の特徴の通りだったからだ」

 

話は古い昔話。
東の国では迷信だとも言われているらしいが、その反面廃れないのは人々がささやかにそれを願っているからだろう、とアルトは思う。

 

「素敵。じゃあ、そのお爺さん二人を結びつけたの?……でも天のお使いにしてはちょっとロマンチックに欠けるわね」
「話しは最後まで聞けって」

 

じろりと含みを持たせてアルトはシェリルを睨め付ける。

大人しく聞いていろ、と窘められるとシェリルは小さく舌を出す。
――男は老人の言葉を妻に向かい合い、ようやく思い出した。

 

『この縄は、将来夫婦となる男女を縛る縄だ。ある女は男の小指にその縄を引っかかってるのを見つけ結ばれた。お前もいつか出会うだろう』

 

聞き流していた筈のそれが一片の狂いもなく蘇ったことに男は再度驚き、そして妻を抱きしめた。

 

「どうしてだか、わかるか?」

「……運命の人だから?」

 

シェリルの答えに頷くと、アルトは結びの一節を口にする。

 

「そう、運命の相手同士は赤い糸で結ばれているんだ」

 

それから文献を漁って得た、国交のない東の国についての話しを二三交わした。

そこよりもっと遙か東には黄金の国あるらしい、と添えるとまどろみながらもシェリルは笑った。

 

「ふふ、全部が金色なら眩しくて目がくらみそう」
「お前なら見慣れてるから大丈夫だろう」

 

肩をすかせ笑い返しながら、呑み込んだ言葉の滑稽さに胸が小さく軋んだ。

(東の国も黄金の国も一緒に見に行くか――なんて言えるわけがない。冗談にもほどがある)

女王である前に一人の女性として、シェリルには笑っていて欲しいアルトは思う。

思慮を欠いた言葉をかけて困惑させるのは本懐ではない。
いつまでも返って来ない声を怪訝に思い、シェリルを見やると青の双眸は瞼に覆われ、うつ伏せの状態のまますやすやとかすかな寝息が聞こえてきた。


うなじを隠し、頬にかかる髪をすくい背の方へやる。

むき出しの白い肩を隠すようにシーツを掛け直すと、女王は少女の顔をして小さく身じろいだ。
シェリルが眠ったのなら静かに立ち去れ、というのが女王の命。

だが、その命令を下した当の本人はアルトの服の裾を掴んだまま放さない。

溜め息をつき、寝顔を見つめながらアルトはシェリルの手を取り、優しく指を外していく。

すべてを外し終えると、ただ手を繋ぐだけになった。これを放してしまえば、後は立ち去って静かな夜を送るだけだ――それが些か口惜しい。

 

(お前は誰と繋がっているんだろうな……)

 

物語の老人は「どんなに身分違いであろうと、敵対している者同士ですら、その運命にあれば結ばれるのだ」と言う。

だが、自分たちの身分差はそれを越えられるものであろうか――卑屈になるのは易い。

 

(何より、赤い糸の相手だっていうのが前提だし)

 

しかし脈がないと諦めるには彼女への思いに溺れすぎていた。

 

「……なあ、俺にしておけよ」

 

相手が眠っているからこそ吐露できるささやかな嫉妬だった。

いとしい温もりを手放すことも出来ず、主が寝付いても暫くの間は天蓋の幕は揺れることはなかった。


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いつかアルトが髪紐を赤い糸に見立ててシェリル女王を口説いて欲しいです…

 

 

 

 

 

最終更新:2009年04月18日 21:35