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816 :Alto's Happy Birthday 2009/09/01(火) 21:55:05 ID:tY5dxTnG0 
いつもの通りたぶん長いですw
長い目で見てやってください。よろしくお願いします。
 
 
 
 
「よし、キレイに焼けてる!!」
 
楽しそうな声が響く台所には、これまた甘ったるい独特の匂いが漂っている。
先週からいろいろなところで買い集めてきた道具はキッチンの至る所に広げられ、その辺には失敗したと思われる残骸や粉の跡が散乱していた。
きっと、この台所の持ち主が見たらため息を付くのを通り越して、新たな境地に達するだろう。
そんな惨状の中でも、声の主はいたって上機嫌だった。
 
それもそのはず、オーブンから取り出され冷まし台に置かれたケーキのスポンジはキレイに焼きあがっていたのだ。
午前中から始めて幾度も失敗を繰り返し、材料が心もとなくなってきてのようやくの完成だったのだから、舞い上がってしまっても仕方がない。
機嫌よく、歌を口ずさむシェリルは、スポンジから離れると今度は氷を張ったボールに入れた生クリームを泡立てにかかった。
 
 
 
右手には、これまた買ったばかりのハンドミキサー。
勇ましく腕まくりをしながら矢三郎さんに教えられたとおりの分量の砂糖を加え、かき回していると次第にゆっくりと固まっていく。
クリーム状のそれがきちんと形を取れるようになるまで、丁寧に、丁寧にかき混ぜていると5分もしない内にホイップされた生クリームが出来上がった。
 
指でひとすくいして味をみると、矢三郎さんが教えてくれたと同じくらいの甘さで、硬さも滑らかさも今まで練習して作ったものより格段においしい気がする。
1週間矢三郎さんのところに通い詰めて特訓した甲斐があるというものだ。
生クリームとスポンジの出来具合に嬉しそうに微笑むと、シェリルは冷蔵庫へと向かった。
 
取り出すのは、もちろんイチゴだ。
キレイに洗ってヘタを千切り、それをまな板の上に乗せる。
コトン、コトンとぎこちない音を立てつつも、シェリルは慎重にそれらをスライスしていった。
 
ようやく半分くらいのイチゴを切り終わって、スポンジに触れてみるといい具合に冷えている。
 
 
慎重に包丁を入れ、半分にするとシェリルはペティーナイフを使って、丁寧に生クリームを広げてゆく。
ところどころに、分厚いところと薄いところができてしまったけれど、イチゴを乗せたらもう一度生クリームを被せるのでさして問題はないだろう。
そう勝手に、自分を納得させながらシェリルは作業を進めていく。
 
生クリームを塗ったあとでスライスしたイチゴを乗せ、もう一度生クリームを被せて、それから上半分を乗せる。
その上にまた生クリームを落として、広げてゆく。
塗りむらがどうしても生まれてしまい、何度なぞってみてもそれは消えてくれなかったから、ソコは諦めることにした。
 
「あとは、上のデコレーションだけね♪」
 
そう呟いたシェリルの声に答えるように、玄関のチャイムが鳴る。
驚いて時計を見るけれどまだ4時半を少し過ぎたくらいで、アルトが帰ってくるまでにはずいぶん時間がある。
頼んでいたデリバリーかしら?っと思いながら玄関に向かうと、案の定そこには数ヶ月前に料理を頼んだシェフがいた。
玄関を開けたシェリルの様子に、顔なじみのシェフは小さく笑うとシェリルの格好を指摘する。
 
 
慌てて鏡を確認してみれば、確かに服や髪に跳ねた生クリームやケーキのタネの跡、粉の跡が残り、ひどい状態になっていた。
自覚し、真っ赤になるシェリルにシェフがまた笑い、中へ通すと今度はキッチンの惨状に呆然とされた。
 
放心状態から必死の努力で我に返り、懸命に笑顔を取り繕いながら『怒られますよー』っと言うシェフから料理を受け取り、前もって準備しておいたクーラボックスに並べ、スープの入った鍋をコンロにセットする。
ついでに、デザート用のバースデーケーキを見てもらってアドバイスとちいさなバラのおまけを一輪貰った。
 
小さな応援に笑い、シェフを送り出したシェリルは一旦ケーキを冷蔵庫へしまうと、シェリルははぁっと息を付く。
落ち着いて周囲を見渡してみれば、シェフの口端がピクピクと密かに震えていた理由が分かった気がした。
流石にこのままではマズイ。
そう感じたシェリルは洗い物を次々と流しへ放り込み、軽く洗って洗浄機へ入れる。
粉が散らばった床は掃除機をかけた後で丁寧に雑巾で拭いた。
懸命に働き続け、何とかキッチンを元に戻したシェリルは続いてテーブルへと向かう。
 
 
ダイニングの円卓の中央に先ほど貰ったバラを活け、それから馴染みのレストランのように食器とグラスを並べた。
家で祝うことなど初めてだから、これでいいのか少し不安になる。
何度も何度も確認して大丈夫だと頷くと、今度は風呂場へと向かった。
流石にこんなドロドロの格好ではアルトを迎えられないと思ったし、動き回ったからうっすらと汗をかいてしまっていた。
 
汚れを全て流してしまおうとシェリルはバスルームへと駆け込み、シャワーを全開にして浴びる。
手早く身体と髪を洗い、水気をふき取ると、今度はドライヤーをかけた。
丁寧に、丁寧に乾かし、化粧水と乳液を塗って、最後に最近お気に入りのベビーパウダーをはたいた。
熱めに設定したシャワーのせいで、体が熱い。
まだまだ服を着る気には慣れなかったからショーツだけを身につけ、身体にはバスタオルを巻きつけてバスルームから出た。
時計を確認すると6時10分が少し前だ。
アルトが戻ってくるのは8時半前だと言っていたから、もうちょっとだけ時間がある。
 
 
 
予定通りに進んでいることに満足げに笑うと、シェリルは冷蔵庫へと向かい、先ほど中を片付ける際に見つけた缶ジュースを一つ取り出す。
冷蔵庫の最奥に隠されるようにおいてあったクランベリージュースのような缶の蓋を開けると、シェリルはそれを一気に流し込んだ。
動いたのと、シャワーを浴びたのとで火照った体に流れ込んでくる冷たい飲料が心地よい。
乾いた喉を潤すことだけを目的に、シェリルはそれを飲み乾す。
味も何も分からなかったけれど後を引く甘い余韻にもう一つ取り出し、それを片手にベットルームへと向かった。
 
サイドボードに缶を置き、クローゼットを開けて服を選ぶ。
家でささやかに祝うだけだから、思い切りめかし込まなくてもいいのだ。
いつものように見えて、でも、いつもと少しだけ違うくらいで丁度いい。
いくつもいくつも服はあるというのに、どうしてコレ!と思うようなものがないのだろう。
ケーキばかりに気を取られていた自分にシェリルはため息を付きたくなった。
 
「コレか、こっちよね。」
 
そう言って取り出したのは紫色のワンピースと真っ赤なワンピース。 
どちらもアルトの前で着たことがあるものだ。
その二つをクローゼットにかけるとシェリルは後ろにあったベッドへと腰掛けた。
 
朝、取り替えたばかりのシーツに少しだけ皺がよる。
ふわりと軋んだスプリングの感触が心地よくて、一瞬だけ表情を綻ばすとシェリルはそうっとベッドへ転がった。
 
洗剤の良い匂いがする。
それから、微かにアルトの匂いがする。
それに愛しげに笑ったシェリルの体温に、シーツがゆっくりと温まってゆく。
居心地のいい空間に引きずられるように、シェリルの思考はまどろみはじめる。
 
歪む視界でなんとか見つけた時計の時刻は7時が10分前。
少しだけなら良いだろうと、シェリルはそっと意識を手放した。
 
 
**********************
 
 
 
「ただいまー。」
 
夢うつつの状態でいる自分の耳に、苦笑しているような優しい声が届いた気がした。
うっすらと目を明けてみると、はしばみ色の優しい瞳がこちらを覗き込んでいる。
帰ってきたのだと分かって、嬉しくなり、手を伸ばすとすぐに大好きな背中に触れた。
と、同時に大好きな腕が自身の背中に回る。
 
「おかえりなさい。」
 
胸いっぱいに広がるアルトの匂いに嬉しそうにそう呟いてぎゅっと頬を寄せると、布越しに温かい肌の感触が伝わった。
シェリルはそれを堪能しながら、ゆっくりと息を吐きだし、身体の力の全てを自分をだく腕にゆだねる。
 
「・・・風邪引くぞ?それとも誘ってるのか?」
 
照れを隠すためか苦笑交じりに言われた台詞。
その言葉にはっと我に返ったシェリルは自分の格好を確認した後、固まった。
 
ぎゅっと抱きしめたままでいるのはもちろん本物のアルト。
記憶違いでなければ、この人物の帰宅と同時に玄関でクラッカーを破裂させる予定だったはずだ。
 
「・・・・・!!」
 
呆然としながら時計を確認すると、すでに8時を軽く回っている。
 
「っうそっ!!」
 
ひゅっと吸い込んだ空気に喉が小さくなった後、信じられないっという叫び声が上がった。
アルトの腕の中から慌てて抜け出したシェリルが立ち上がり、バタバタとダイニングへと向かう。
背後からかけられるアルトの声も耳に入っていないようなシェリルの様子にアルトは小さく苦笑いし、ことの原因と推測されるそれに軽く視線をあわせた。
サイドボードに置かれたままの缶は結露を起こし、サイドボードへと落ちた雫がリビングからの光を受けて小さく輝く。
暗がりではっきりとは分からなかったけれど、描かれている絵から昨晩自分がこっそりと買い込んだ物だと分かった。
それに、先ほど抱き寄せたとき微かにシェリルからアルコールの匂いがしたのだ。
 
「・・・・うまく隠したと思ったんだけどな。」
 
ぽつりっとそう呟くアルトの声を聞くものはいない。
サイドボードに置かれた缶の淵を人差し指で拭うと、きゅっと小さな音がたつ。
もう一度だけ軽く苦笑すると、混乱の真っ只中にいるであろう"彼女"の元に向かうべく、アルトはゆっくりと立ち上がった。
 
急いでダイニングまでやってきたシェリルはキッチンの前で固まっていた。
当然のことながら、テーブルの上に並べられた食器も冷蔵庫の中のケーキもデコレーションを待っているという数時間前のままだ。
料理も温めなければならないし、それを皿に盛ったりケーキの仕上げだって身支度だってある。
5分10分でこれらの準備が終わるわけはないし、第一、アルトはもう帰ってきてしまっているのだ。
シェリルの表情からさぁーっと血の気が引いていくのとは反対に頭の中では色々な感情が入り乱れ、シェリルを追い詰めていく。
 
こんなはずではなかったのだ。
きちんとケーキを用意して、料理もすぐに食べられるようにして、クラッカーを構えてアルトを迎えるつもりだったのだ。
帰ってきたと同時に驚かせて、楽しい誕生日を演出するはずだったのだ。
 
自分自身の失態がいたたまれない。
迎えるどころか、自分が起こされてしまった。
 
「シェリル?」
「待って!!ちょっと・・・えぇと、」
 
自分でも不思議なくらいうろたえてしまう。
いつもなら、すぐにどうすればいいのか分かるというのに、今日に限って何も浮かばない。
 
(どうしよう。どうしよう。どうしよう。どうしよう。)
 
そんな単語が、シェリルの頭をぐるぐると回るだけだ。
 
「シェリル、落ち着け。」
 
アルトの言葉も今は逆効果で、さらに慌ててしまい、事態は着実に悪化していく。
悔しさに熱くなる目頭から零れそうになる涙を唇をかみ締めることで必死に堪えた。
滲む視界に映るアルトの驚いたような表情が悔しい。
こういうことで驚かせたいわけではなかったのに。
 
「うぅ〜〜」
 
抱き寄せられた腕の中で零れた声は、声にならなかった。
悔しさをかみ締めながらシェリルはアルトの腕の中から逃げ出す。
そして慌てて冷蔵庫の中からケーキとホイップクリームとイチゴを取り出した。
 
「・・・・・っ・・・」
「・・・・・ケーキ?」
 
絞り袋を持つ手が不自然に震える。
うまく行かないことにイライラが募る。
思わず伸びてきたアルトの手を睨んでしまい、またもや自己嫌悪に陥った。
 
「大丈夫よ。一人でできるわ。だから・・・」
 
唸るように呟いた声が震えた。
視界がもっと滲んだ。
それが情けなくてたまらなくなった。
 
「シェリル。」
「・・・・んっ」
 
ぐっと詰まり動けなくなったシェリルの耳に届いたのはため息を付くように呼ばれた自分の名前。
もう一度『大丈夫』だと伝えようと顔を上げた瞬間、唇に何かが触れた。
息を飲んだ瞬間に、割られ、熱い舌が潜り込んで来る。
流されている場合ではないと、咄嗟に押し返そうとするけれど、アルトがシェリルに迫る力は強く、振りほどくことができない。
 
舌が絡められ、一方的にむさぼられ、交じり合った唾液がとろとろになってシェリルの口内に溢れてくる。
舐め取られる感覚に体がぞくりっと反応し、意識を持っていかれそうになった。
背の低い流し台に下半身を押し付けられなければきっと、立っていられなかっただろう。
 
長い長い口付けの後、シェリルはすとんっとその場に崩れ落ちた。
上を見上げれば、落ち着いた表情でこちらを見下ろすアルトが見える。
じっと見上げるとアルトがゆっくりと腰を下ろし、視線を合わせてくれた。
 
「本番は、明日だろ?楽しみにしてる。」
「・・・・・・」
 
『大丈夫』と。
『怒ってなどいないから、落ち着け』と。
瞳が語る。
 
何を言っていいかわからず戸惑うシェリルを見て、しょうがないなと微笑するとアルトが立ち上がり、作業台の上に置かれたままのイチゴを一粒取るとそれにたっぷりの生クリームをかけてシェリルに差し出す。
それをしばらく見つめた後で、シェリルがおずおずと口を開くと、ぽいっと口の中にイチゴが放り込まれた。
咀嚼するごとに、イチゴの果汁があふれ出し、それに生クリームが甘く絡む。
 
「・・・オイシイ。」
 
ポツリとそう呟くとそれを聞いたアルトが笑った。
それから、まだぼんやりとした思考のままのシェリルを優しく抱き寄せ、頭を撫でてくれる。
シェリルがゆるゆると息を吐き、落ち着きを取り戻すと同時に、アルトも同じように安堵の息を吐いたのを感じた。
触れるアルトの手は優しく、まるでシェリルが酔ってしまった時のような甘やかし方だ。
 
シェリルがゆっくりと顔を上げると、アルトが少しの間見止めそれからシェリルの首元に軽くキスをしてからシェリルを開放してくれる。
そのくすぐったさにシェリルがようやく笑うと、ごほうびだというように新たなイチゴが差し出された。
 
アルトに促されるようにしてシェリルがもう一度口を開くと、ゆっくりとイチゴが近づいてくる。
口に放り込まれると思った瞬間、わずかな静止の時間が生まれ、そのすぐ後に先ほどとは違うべちゃっとした感触が走った。
 
口の中ではない。
丁度胸の上辺り。
そこに、濡れた感触が走った。
そして、白く染められたイチゴは、シェリルの胸元を汚し、バスタオルの上を転がって、露なままの太ももを汚し、床を汚す。
 
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・悪い。」
「大丈夫、すぐにっ・・・」
 
数秒の空白。
転がるそれを互いに視線で追った後、僅かに強張ったような、押し殺したような声が聞こえた。
その声に、大丈夫だと答えた瞬間、シェリル左手首が捕られ、背後の壁へと縫い付けられる。
その力強い感触に言葉を失ったと同時に胸元に濡れた熱い感触が走った。
 
「ッ、ある・・」
 
瞬時にピンッと張り詰めたシェリルの緊張。
それを溶かすかのように、アルトの舌が丁寧に、丁寧に生クリームの後をなぞる。
熱く、ざらりとする舌の感触にシェリルの体が震えた。
 
時々、軽く噛まれ、それを癒すように再び舌がシェリルの肌を滑る。
キスをするように唇が強く押し付けられ、跡を残されない程度に吸われる。
それから、舌でチロリとくすぐられた。
まるで神聖な儀式のように、アルトはそれを何度も、何度も繰り返した。
 
クリームの跡が残る左胸から、右胸へと移り、同じようにくすぐられた後で、その谷間へと降りてくる。
鼻先をその間に埋め込まれ、杭を外すようにアルトが動いた瞬間、はらりとバスタオルが落ちた。
 
露になった白い肌。
豊満な胸。
先端の桜色の蕾。
 
「あッッ・・・やだぁっ・・まっ、・・・て・・」
 
羞恥に耐え切れなくなったシェリルがたまらず叫ぶと、覆いかぶさっていたアルトがゆっくりと顔を上げた。
けれど、その瞳は先ほどまでの優しい色ではなかった。
瞳が纏うのは、いつもより深い情欲の色。
その眼差しの強さに思わず息を詰めたシェリルの呼吸を攫うように、アルトが唇を重ねる。
 
先ほどの胸への愛撫とは違う口付け。
甘さや優しさは同じようにも思えるのに、込められる感情の濃さが全然違う。
だんだんと深さを増す、ビロードのようなしっとりとした口付けにシェリルの思考が蕩けだした。
 
二人の蜜は絡められる度にその粘度を増し、二人の間でとろとろになったものを注がれたシェリルがこくりっと飲み下す。
熱の生み方と生まれ方を知った身体が、相手を求めようとゆっくりと蠢きだした。
 
長い、長い口付けからで生まれた熱を育てるように、アルトの唇が再びシェリルの肌を滑り落ちてゆく。
長い黒髪がさらさらと微かな音をたてて素肌の上を滑っていくのが心地よい。
熱い肌に押し付けられた流し台の冷たい感触が心地よい。
冷たい壁がシェリルの逃げ道を塞いでいるのだけれど、それに気づくことなくシェリルはアルトが生み出す波にゆっくりと翻弄されてゆく。
肌をなぞる舌と唇の感覚だけがシェリルの感じられる現実だった。
 
「んっ・・・」
 
吐き出される息が震える。
空色の瞳が潤み、揺れる。
短い声が上がる度、アルトの熱が高まってゆく。
 
「・・・・・」
「はっ・ぁ、・・・あ、ると?」
 
ざわざわと肌の下を走るようにしていた感覚が急に止んだ。
膨らみ始めた熱は膨張を止められずに燻り続け、再び愛撫が与えられることをもどかしそうに待っている。
堪え切れずに零れた名前に返ってきたのは、アルトの真っ直ぐな視線だった。
 
長く、宵闇色の前髪の下の琥珀色瞳。
薄い唇。
肌理の細かいアジア系の肌。
 
派手な化粧などしなくても誰もが振り返るであろうその美しさ。
"静"の美しさ。
けれど、それらは同時に妖艶さを醸し出し、人を誘う。
 
衝動が、止められなくなる。
触れずにはいられなくなる。
その身体を抱きしめられずにはいられなくなる。
 
「っ」
 
胸にキリキリと苦しい感覚が走り、それに僅かに表情を顰めたシェリルが傍に置かれたアルトの手を攫う。
そして、見せ付けるように唇を寄せた。
指先一つ一つにキスをして、チロリと軽く舐め上げる。
僅かに動いたアルトの指がシェリルの口内へと落ち、跳ね上がった指が軽く歯とぶつかる。
カチリ、と小さな音がした。
 
「・・・・・・」
「・・・・・・」
 
ほんの一瞬。
時間が、
止まった。
 
その静寂を破ったのは、コトン、という小さな音。
音のした方を見れば、頭上の作業代からボールがアルトの片手に握られ、ゆっくりと降りてきた。
 
「・・・動くなよ。」
「?・・・・・っ、ぁっ・・」
 
アルトはそれを床へとおくと、シェリルに向かって一言、そういった。
囁かれた言葉の意味が分からず、一瞬不思議そうになったシェリルが次の瞬間走った感触に思わず息をつめる。
見てみれば、先ほどとは比べ物にならないくらいの生クリームが胸元に落とされていた。
 
「えっ、ちょ・・・、んっっっ」
 
訳が分からなくて、声を上げようとした途端、肌に落ちた生クリームの塊の一部がアルトの指に攫われ、すうっと肌の上を伸びてゆく。
絵を描くように何度も肌の上を滑っていく指。
指が肌をなぞる度に生クリームの濡れた感触と中に含まれていた空気が潰れる小さな音が響く。
 
少し冷たくて、でも、肌に触れる指先だけは温かい。
愛撫で敏感になった箇所に触れるたび、シェリルの体がぴくん、ぴくんと震える。
触れられるたびに背中にぞわりとする感覚が走り、全身の産毛は立ち上がったまま萎えることがない。
必死に目を閉じて、羞恥と漏れそうになる声を抑えていると今度は先ほどとは違う冷たい金属の感触がした。
 
慌てて目を開けると、アルトがペティーナイフを持っている。
先が尖っているわけではないからそう危険なことはないけれど、その冷たい感触に背筋が少し震えた。
それをまるでペインティングナイフのように使って生クリームを広げていくアルトは無心のようにも見えるけれど、心なしか少し楽しそうにも思える。
時々視線が合うたびに文句を言おうとも思ったのだけれど、与えられるキスが再びシェリルの熱を高めだしそんな思考を奪っていく。
くちゅりっと絡む音がする度、生まれた波が全身へと広がっていった。
 
「・・ぁ、っ・・」
 
ぬるぬると身体の上を走っていた感触がようやく止んだ。
いつの間にか握り締めていた床に落ちていたバスタオルから手を離し、羞恥に耐えるために硬く閉じていた目をシェリルがおそるおそる開くと、肢体のあちらこちらに純白の絵の具が引かれている。
それらは胸の先や下腹部や脚部にも施され、シェリルの肌の所々をキレイに覆い隠していた。
 
下着を着けていないせいで、凹凸が明確なはずなのにそれが透けるようなことをしていないところは流石だと思う。
そこまで考えたシェリルの顔がかぁっと熱くなった。
まるで、アルトが"こんなこと"に手馴れているようではないか。
 
居たたまれなくなったシェリルが思わず視線を下へと向けるけれど、目に入るのはアルトの装飾した自身の身体だ。
自身がどういうことになっているのかを想像しかけたけれど、あまりの恥ずかしさに頭の中が真っ白になる。
反射的に顔を上げるけれど、そこにあったのはアルトのまっすぐな視線だった。
 
「〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!!」
 
羞恥が全身を焼き、アルトの視線の真っ直ぐさがさらにシェリルを追い立てる。
反射的に先ほど捨てたはずのバスタオルをシェリルの手が片方ずつその裾を掴み、握り締めると、薄ピンクをしたそれに行く筋もの線が走った。
パニックに陥りかけたシェリルの瞳に滲んだ涙が、一粒零れ落ち、肌を滑って引かれた白い線の中へ混じると、それを見つめていたアルトがそこに優しくキスを落とした。
 
熱い唇の感触
 
それを肌に這わせるようにゆっくりとアルトが口を開き、舌でペロリと舐め取る。
アルトの熱い口内にシェリルの肌が触れ、その感触にシェリルの身体が震えた。
広がった純白にが絡めとられる度に、その下から別色の白を浮き立つ。
気まぐれに滑る舌によって、シェリルの肌には濃淡が描かれていく。
 
「・んぁっ・・ぁッ・」
 
背中に回されたアルトの手が逃げようとするシェリルの身体を押しとどめ、アルトの方へと近づける。
抵抗しようにも走る波によって力の抜け切った身体ではどうしようもなく、全てアルトの成すがままだ。
左胸へと乗せられた純白をあらかた取り除いてしまうとアルトは残った先端を口へと含む。
そして決して口の中からそれを出すことなく、アルトは執拗にソコを攻め立てた。
 
甘く噛まれ、優しく撫でられ、追い立てるように舐られる。
もうクリームなど全て溶け落ち、アルトの中へと下っているに違いないのに、アルトは見せ付けるようにそれを何度も繰り返す。
 
「やぁ・・・だ、・・ソ、レ・・やっ・・ア、・ルトォッ・・・」
 
走る波にシェリルの身体が硬くなり、僅かに背中が反るけれど、それはアルトの前へ胸を突き出すのと同じ行為だ。
ピクンッと身体を震わす度に、シェリルの胸がぷるんっと揺れる。
自らがアルトの熱を高めているとも知らずに、シェリルは切なげにその名前を呼んだ。
 
けれど、アルトはそれをちらりと横目で確認しただけで止めようとはしない。
シェリルからは見えないような小さな笑みを口元へそっと浮かべるとようやく口を離し、今度は左胸から谷間へと下っていく。
右胸に残された模様はそのままだ。
唾液にまみれ、煽られたことで赤さを増した果実はぷっくりと立ち上がらされたまま放棄され、淫乱に光を反射していた。
 
柔らかく弛む両胸の合わさる部分を伝い、縦に線の入ったヘソをくすぐり、下着のギリギリのラインをなぞってから、腹部の横へとアルトの愛撫が流れていく。
所々をくすぐられ、撫上げられるけれど、先ほどのような強い刺激は与えられない。
ゆるゆるとむず痒いまま、身体を放置されているようなもどかしさがシェリルを襲った。
行き場をなくした熱塊だけが身体の中を蠢き続け、もっと、もっとと刺激を求める。
 
触れて欲しかった。
アルトに触れて欲しくてたまらなかった。
 
足の付け根をアルトの舌がゆっくりと滑っていく。
見せ付けるようにちらちらと覗く赤い舌。
 
アレで触れて欲しい。
アレに自らのソレを絡めたい。
アレにもっとぐちゃぐちゃにされたい。
 
熱い吐息を吐くごとに、シェリルの脳内が情欲に染められていく。
きっと、自分から求めなければアルトは先に進んでくれないだろう。
そんな小さな予感がシェリルにはあった。
最初はそんなことなかったのに、最近のアルトはいつもそうだからだ。
 
"調教"
頭に浮かぶ言葉の卑猥さに、シェリルの頬がまた羞恥に染まる。
そんなことはない。と信じたい自分がいる。
けれど、それであってもいいか。と思う自分もいる。
誰かの支配を受けたいと思ったことはなかったけれど、それがアルトだと考えると少し心が揺れ動く。
シてる間に、もっと激しくして欲しいと、もっと乱暴に扱ってくれてもいいのにっとそれを懇願するような心はいつもどこかに潜んであるのだ。
 
「・・・・・あっ・・・ん」
 
攻め立てる熱に頭が朦朧としだす。
早く、アルトを感じたくて自制が効かなくなってくる。
シェリルはぎゅっと握り締めていた片方の手を開くとアルトの方へおずおずと寄せる。
そしてアルトの服の端をぎゅっと握った。
 
「・・・ア、」
「シェリル」
 
口を開こうとしたシェリルの声をアルトが遮った。
おそるおそる顔を上げると視線が合わさる。
もう一度、名前を呼ぼうとした瞬間、アルトの指がシェリルの秘部を暴いた。
 
「・・・・・ゃ・・ぁッ!!」
「もうぐちゅぐちゅだぞ?・・・ベッドじゃないから興奮した?・・・・それとも明るいから?」
 
直接耳に注がれるアルトの声がシェリルの羞恥心を煽る。
同時に、下着の上から秘部をアルトの指が擦るたびに小さな水音がする。
アルトに指摘されたその通りだった。
 
まだ愛撫されてもいないというのに秘部は潤みきり、零れ落ちた愛液は下着を浸してその意味を奪い、さらにはゆっくりと床へ落ちようとしている。
2、3度ゆるく上下に擦っただけのアルトの指があっという間に湿り気を帯びた。
下着を取り払ったその中がどうなっているのかなど想像するに容易い。
自らの乱れ様にシェリルは目を覆いたくなった。
 
「シェリル、"どう"したい?」
 
確かめるようなアルトの声。
そう聞いてみせたって選択肢など、1つしかないのはアルトだって分かっているはずだ。
先ほどまでは言えたはずの一言もせっかくのタイミングを失ってしまい、声が出てこなくなっていた。
 
「・・・・・・」
 
シェリルにはとてつもなく長いように感じられたアルトにとっての数秒。
シェリルが口を開く気がないのだと感じ取ったアルトはもう一度下着の上からゆっくりと指を上下させる。
くちゅりっという音と共にシェリルの身体がビクンッと跳ねた。
 
その感度の良さにアルトは小さく笑う。
自らの内で膨らむ欲望をナカへと埋め、思うままに貪りたいとも思ったけれど、アルトはそれを必死で押しとどめた。
 
まだ、なのだ。
まだ、先が見たい。
 
もっと、熱に、情欲に、浮かされる姿を。
早くと、切なげに強請るシェリルの姿を。
泣きそうに歪む、求めるものを得たシェリルの喜ぶ顔を。
 
アルトははやる心をなんとか押さえ込むとゆっくりと身を屈め、舌をシェリルの下着の上へと這わせた。
滲みだしていた愛液の味が口内へと広がり、他のどの箇所より熱いその感触に喉が渇きそうになる。
拒むようにして一度張ったシェリルの太ももを優しい手つきで解し、尻をつかせて膝を立ち上げると、アルトはより強く自身の舌を押し付けた。
 
新たな刺激に濃さを増した愛液が零れ落ちてきて、アルトの唾液と混ざり合う。
優しく吸い上げ、舌を使ってくすぐればシェリルから甘い嬌声が零れ始めてくる。
陥落はもう、目前だった。
 
アルトはゆっくりと唇を離すと、代わりに指を下着の隙間から差し入れる。
犯した先は、温かな浅瀬の海のようだった。
温かく、とろとろに蕩けた水が柔らかい蜜のようになって指へと絡みつく。
そうやって蜜をたくさん溢れさせているのにシェリルはまだ小さくしか入り口を開けていなかった。
 
アルトは慎重に中を伺い、丁寧に愛撫を施しながら、指の埋まる場所をゆっくりと探してゆく。
緩急をつけてアルトの指が動くたびにシェリルの身体がピクピクと小さく痙攣した。
 
「シェリル。"どう"したい?」
 
ようやく見つけた入り口から少しだけ指を押し込み、中をかき回しながらアルトが尋ねる。
耳を侵す水音と自身の身体を照らす光があるせいか、いつも以上に頬を染めたシェリルが小さく唇をかみ締める。
もう一度見せ付けるようにゆっくりと指を動かすと、弾かれたようにシェリルの唇が開放される。
それを見計らうとアルトは優しく、優しくキスをした。
 
緩々と舌を差し込むけれど、決して自ら煽ることはしない。
夢中で絡めてくるシェリルのいいようにさせているだけ。
衝動の突き動かすままにアルトを求めるシェリルの舌をアルトが大人しく受け止めるだけに徹していると、シェリルの動きが段々と緩慢になってくる。
アルトが先ほどのように求めてこないことがシェリルの不安を煽るのだ。
 
「・・・・・・」
 
ちゅっと軽いリップ音の後でようやく唇が離れると、シェリルの瞳がアルトをじっと見つめる。
言わんとしていることは分かったけれど、アルトはわざと応えず、その代わりに指を動かす。
自分から求めれば、相手が動かなくなり、自分の衝動を抑えようとすれば、相手の指が追い立ててくる、まるで距離の縮まらない追いかけっこのような状態にシェリルの理性が磨り減っていく。
 
「・・・・あると。」
「何?」
「・・・シて。」
「何を?」
「・・・・せっ、くす。」
 
アルトが惚けてみせても、シェリルはそれにもう乗ってこなかった。
そんな余裕など、身体の中にはヒトカケラも残っていなかった。
彼女は、それほど限界だった。
 
「誰と?」
「・・・・・・」
「誰とナニしたいんだ?」
 
それでも、アルトは許さない。
アルトのさらなる問いかけにシェリルの瞳が泣きそうになり、やがて小さな声が懇願するようにアルトへと吐き出される。
 
「アルト、と、・・・せっくす、した・・い。」
 
いつもはアルトの軽快な包丁の音が響くはずのキッチンに、淫乱な台詞が小さく響いて落ちた。
ぞくりっとする感覚がアルトの背筋を這い上がる。
支配欲が一気に満たされ、抑えていた気持ちが暴走しようと走りだす。
アルト自身、限界が近かった。
 
へたり込むシェリルを何とか立たせ、キッチンの作業台へとつかまらせる。
それでも、足に力が入らないらしくシェリルは目を離すとすぐに座り込んでしまいそうだ。
それがどうにも危なっかしくて、一度自分のほうを向かせるとアルトは優しく唇を塞いでやった。
よくできました。というご褒美も含めて、優しく優しくキスをして、頭をゆっくり撫でてやる。
優しい手つきにシェリルの瞳が丸くなり、そしてとても嬉しそうに笑った。
 
自分に抱きつかせたまま、アルトはそのままシェリルの下着を落とすと、先ほどと同じように作業台へつかまらせる。
そして手早く自分も服とズボンを脱ぎ捨てた。
いつものキッチンらしからぬ惨状にアルトは内心苦笑する。
そして、たぶんしばらくはここでのことを思い出さずにはいられなくなるだろう未来の自身に向けて心内で手を合わせた。
 
「シェリル、入れるぞ?」
 
アルトが声をかけるとシェリルが小さく頷く。
それを見とめたアルトは自身を宛がいゆっくりと中へ埋め込んでいった。
ズブズブと埋まっていく感覚に頭の芯が痺れてゆく。
 
持って行かれそうになる意識を懸命に引きとめながらアルトは自身を全てシェリルの中へと収めた。
 
「あ、ると・・。」
 
切れ切れになりながらシェリルがアルトを呼ぶ。
いつもなら見える自分がいないのが不安なようで、ゆるゆると肩越しに手が伸びてくる。
それに少し触れ、背後から抱きすくめてやるとシェリルが安心したように息をした。
 
熱い、シェリルの背中に唇を寄せて軽く痕を残してやる。
それを何箇所かに同じように施した。
回した手をゆっくりと乳房に触れさせると同時にシェリルの中がきゅっと締まった。
指先に感じた感触から、まだ、先ほど自分が舐った後が乾いていたいのだと分かる。
その感触を伝えるように擦れば、またシェリルの身体が反応を返し僅かに背中が反った。
同時にナカがきゅとしまるけれど、アルトは吐精感をなんとか飲み込む。
 
「気持ちいい?」
 
自身の変化をおくびにもださず、ゆるゆると腰を振りながらアルトがそう問いかけるけれど、シェリルは応えない。
迫り来る波をやり過ごすだけで精一杯のようだ。
アルトはその反応に気をよくすると今度は右胸へと触れる。
すると、にゅるっとした感触が走った。
 
覚えのあるその感触に手を上げてみれば、指先がクリームにまみれている。
忘れていたことに気づいたアルトはそれをシェリルの前へと運んだ。
親指を使い唇の位置を確認すると、汚れた指をソコへ押し付ける。
数秒後、それらはシェリルの口内へと招きいれられた。
 
熱い舌がアルトの指先に絡み、丁寧に舐められてゆく。
上下にゆっくりと舌が動く様は自身のソレに絡みつく舌の感触を思い出させ、その情景がアルトの脳裏へと蘇る。
途端にアルトの腹部がきゅうっと締まった。
 
濡れた指にかかる息に誘われるようにアルトがゆるゆると腰を揺らめかせ出すと、差し込まれた指のせいで閉じることのできないシェリルの口からその動きに合わせて声が漏れてくる。
甘いその声と絡み付いてくる内壁はとてつもなく甘美だった。
 
「はっ・・・ぁ・・・・ん・・・・ぅ・・ッん・・」
 
シェリルの腰を掴み、出し入れを繰り返して中をかき回す。
アルトが奥を突く度に、アルトの形を覚えこもうとするナカが蠢き、また新たな形を成そうとする。
崩れ去り、追いすがるその感触を確かめるようにアルトは夢中で腰を振った。
 
「・・・っぁ、・・・あ・・・・んんっ・・やぁ・・ん」
 
立て続けに寄せる波に、つかまるもののないシェリルが崩れ落ちそうになってくる。
本人としては立っていたいのだろうけれど、内腿がビクビクと震えてしまっている。
それでも構わずに、アルトが攻め立てていると、とうとうシェリルの身体が崩れ落ちてしまった。
ここでこれ以上スルのはどうやら無理そうだ。
 
「あっ・・・やだっ・・・抜いちゃ、やだぁ・・・」
 
アルトがゆっくりと自身を引き抜こうとすると、シェリルから声が上がった。
身体を精一杯捻り、潤んだ瞳でそういうシェリルにアルトが小さく笑う。
そして、額にキスをし、ベッドへ行こうと誘うと、ほっとしたようにシェリルが頷いた。
 
「っ・・・あ・・はぁ、っ・・・・」
 
まだいきり立ったままの自身を引き出すと切なそうな声が上がる。
引き抜かれ、まだ濡れたままのソレを口に含もうとするシェリルをアルトは優しく諌めた。
せっかくここまで我慢したのだから、イクならばやはりシェリルの中がいい。
シェリルに立てるかと問いかけてみるけれど、まだ少し無理そうだったので、アルトは下に落ちたままになっているバスタオルごとシェリルを抱き上げた。
 
そのままキッチンを出て、ダイニングを横切る。
準備がされたままのテーブルに少し悪い気もしたけれど、ここで自分達が止まれるはずもない。
アルトはその横を通り過ぎると、すぐさま寝室へと向かい、ベッドへとシェリルを下ろした。
二人分の重さにスプリングが軋む。
いつもの感触に安心したのか、ほっとしたようになったシェリルにアルトが笑った。
 
シェリルの腕がアルトへ向かって甘えるように伸ばされる。
それに捕まるとアルトは誘われるままシェリルにそうっと口付けた。
 
一度軽く離し、空間を作り上げたあとで、そのまま侵入して舌を絡めあう。
先ほどの名残りか、甘い生クリームの味がふわりと香った。
微かになりつつあるそれを味わいつくそうとアルトの舌がシェリルへと何度も触れ、生まれる唾液を吸い上げる。
とろみを増したその唾液のぬめりが心地よく、シェリルの熱を再びゆっくりと膨らましだした。
首筋へとアルトの唇は滑り、鎖骨とその窪みへと降りてゆく。
 
「どうだった?」
「?」
「生クリーム。・・・感じてただろう?」
「ッ!!」
 
胸元から聞こえるアルトの声にシェリルがピクリッと震える。
確かに感じてしまったことはアルトにも筒抜けだろうから、偽ることはできないと思うけれど、わざわざ言葉にすることはできれば遠慮したい。
口をつぐむシェリルにアルトが小さく笑った。
 
「それから、コレも、好きだろう?」
「ひぅ・・・ぁ、ゃぁ・・ん」
 
その声が耳に届くと同時に乳房の先端にぬるりとした感触が走る。
舌先はその先端を軽く弄ぶと、先ほどとは違って全体を愛撫し始めた。
ぬるり、ぬるりという感触が小波のようになってシェリルに押し寄せる。
思わずシーツを握り締めたものの、耐え切れず、思わず声が漏れてしまった。
そんなシェリルの様子にアルトが嬉しそうに笑う。
 
「ッ・・・流石に、もう、限界だな・・」
「えっ?・・・・・・・・あぁぁぁぁぁあぁっ!!」
 
かすれたような声にシェリルが気を取られた瞬間、一気に熱塊が中へと押し入ってきた。
先ほどの名残のせいで痛みはないけれど、貫かれる時の衝撃と質量は変わらない。
比べ物にならない波のうねりにシェリルは一瞬呼吸の仕方を忘れてしまった。
 
浅くなる息と共に下肢が震える。
それを感じてくれたのか、アルトは一瞬だけ動きを止めた。
シェリルの唇と鼻を塞ぎ、息をさせるとシェリルからゆっくりと力が抜けてゆく。
それを見計らってアルトはシェリルの足を抱えた。
 
「・・・待てなくって、悪いッ、な。」
 
短くそう言った後、アルトは律動を開始した。
初めはゆっくりと、まだかたくなさを崩さないナカを解していくように進めていく。
ぴっちりとアルトを咥え込んだソコが追いすがれる程度に動いてゆく。
高みを求めて蠢きだしたソレにシェリルの手がシーツをぎゅっと握りしめた。
 
「はっ・・・あっ・・・・んゃ・・・あぁっ!!」
 
何度も何度も腰を動かしていくと、段々と深いところへ潜り込み始める。
シェリルの身体が慣れてきたことを知るとアルトはもっと深く潜り込もうと腰を打ちつけた。
蠢く内壁はアルトに熱く絡みつき、一瞬でも離れるのを拒むようにすがり付いて来る。
蕩けきった愛液は潤滑油となり、アルトをさらに奥へと引きずり込んでくれる。
全てをソコから抉り取られそうな感覚は恐ろしいようにも感じけれど、それでも押し込むときと引き出すときの痺れるような感覚は追わずにはいられなかった。
 
両太ももを抱き込み、繋がりを深くしようとするとシェリルの身体がビクンッと跳ね、背中が僅かに反る。
豊満な乳房が揺れる様子は、白い閃光のようなイメージとなってアルトの脳裏へ焼きついた。
 
「あっ・・・あっ、・・・んっ・ぁ・・」
 
しどけなく上がる嬌声に先ほどまでのシェリルの姿が重なる。
暗がりでなく、シェリルの頬が染まる様子を見たのは先ほどが初めてだ。
潤んだ瞳や真っ赤になった頬は夜のベッドで見るのとはまた違って、アルトの支配欲と嗜虐心を擽った。
 
「あると・・・・あ、る・・っ・・」
 
甘い声がアルトの名前を呼ぶ。
呼ばれる度に、アルトの腹の辺りが苦しいくらいにぎゅっとなる。
先ほど見た作りかけのケーキも、セッティングされたお皿も自分のためだと分かると嬉しくてたまらなくなる。
もっともっと、自分だけのことを考えて欲しいという自分勝手な欲望さえ湧いてきそうになった。
 
「シェリ、ルッ・・・んっ・・・」
「ふっ・・ぁ・・・ん。・・っ・・」
 
合間をぬうようにして、キスをして、瞳に互いを映す。
この空間にいられるのが自分達だけなのだと感じて、シェリルを抱いているのは自分なのだという証を刻みたい。
誰かに言いふらしたくて、でも、誰にも見せたくない変な矛盾が心に生まれてなんだか笑えた。
 
「あると」
 
眩しげに細められたシェリルの瞳がアルトを呼ぶ。
こちらを見上げる潤んだ瞳の妖しさが名前を呼ぶ舌足らずな口調とちぐはぐで、恐ろしく凶暴にアルトの胸を苦しくする。
 
情けない呻き声を上げなかった自分をアルト思わず褒めたくなった。
反射的にぎゅっと太ももを引き寄せたことで、シェリルのナカが強張り苦しいくらいに締め付けられる。
飛びそうになる意識をアルトはギリギリのところで繋ぎとめるけれど、もう限界すれすれであることは変わりなかった。
 
シェリルの締め付けが弱まる一瞬を狙って、アルトは抽挿のスピードをどんどん上げていく。
それと同時にシェリルから零れ落ちる声も多くなってゆく。
中へと伸ばされたシェリルの腕が何度かアルトの背中を掠め、ようやくその背中を掴んだ瞬間、カリッという痛みが走った。
共に限界が近いことを感じたアルトはその痛みとシェリルを引きずるようにして最後の坂を駆け上る。
 
「っ・・あぁあ、・・アルッ・・・んっ、ぁ・・んーーーーッ」
 
熱を一点へと高め、全てをそちらに向けていく身体と反対に、思考は蕩け、光の渦に霧散していく。
弾けさせてしまいたいような、まだ、ぎりぎりまで踏みとどまっていたいような、相反する思いが交差する。
体中に寄せる波から落とされないように追いすがり、頂点で白波となって砕け散るのを待つ。
身体がバラバラになってしまいそうだった。
 
「あっ・・・んっ、んっ、んんーー・・・・っ」
 
一際強くシェリルのナカがきつく締まった瞬間、アルトも波が爆ぜたのを感じた。
内壁の全てが触手となりアルトのオスへと絡みつく。
何も残さないというようにアルトを締め付け与えられる白濁を全て内に飲み込んでしまおうとする。
アルトはされるがままに、その全てをシェリルへと与えた。
 
熱が分け与えられる感覚にシェリルの表情が優しげに潤む。
アルトがナカで熱を放出し、その衝撃に震える度に背中に回されたシェリルの腕がアルトを撫でた。
大丈夫だと。全て預けてくれて構わないのだと。
そう言われているようで、幸せな気持ちが体中に満ち溢れて、なんだか泣きたくなってくる。
 
アルトが繋がりを解くと、安心したように、まどろみに落ちようとするように、ふわりと身体から力を抜いたシェリルはゆるゆるとベッドに沈んだ。
サイドボードに置かれたティッシュを使い、アルトは手早く後処理を済ますとすぐにシェリルの横へともぐりこんだ。
アルトがシェリルの側へ寄ると、シェリルがうっすらと瞳を開け、擦り寄ってくる。
 
汗が張り付いた額を優しく掻きあげてやると、アルトはそこにキスをする。
すると、シェリルがくすぐったそうにくすくすと笑った。
ベッドに散らばったストロベリーブロンドが甘い香りを放つのを感じながらアルトは優しく髪を撫でてやる。
達した余韻の中でけだるげになっていたシェリルの瞳がうとうとしだしたのを見つめながら、アルトは小さく笑った。
 
「ありがとうな。」
「何が?」
「今日の準備」
「・・・・・」
 
アルトの一言にシェリルが困った顔をする。まだ、自分の失態を許せていないのだと知ったアルトは苦笑しながら、それでも嬉しかったと伝えたら、シェリルが少し悔しそうにしながら、ようやく笑った。
 
「生クリームもいい出来だったし?」
「ッ・・・・」
 
続くアルトの一言にシェリルがガシッと固まる。
"アンナコト"に使われて良い出来だったと褒められても正直微妙だ。
どう応えるべきだろうかと顔を赤く染めたシェリルに今度はアルトが慌てて、味のことだと伝えると誤解していたのだと悟ったシェリルがますます真っ赤になった。
向けられる視線に耐え切れなくなったシェリルがくるりとアルトに背中を向けると、今度はアルトがシェリルに擦り寄り、裸の背中を抱き寄せる。
上手だったと耳元で褒めてやれば、嬉しそうにシェリルが矢三郎に教えてもらって頑張ったのだと伝えてきた。
 
思いもよらない返答に今度はアルトが口を噤む。
出来れば今は聞きたくない名前と事実だった。
ここ一週間自分は明日を休日にするべく奮闘しており、そのせいで自分はめっきりシェリルと会う時間がなかったのだ。
それをあの義兄と一緒にいたのだと知るとやはり面白いはずがない。
心が狭いといえばそうなのだろうかも知れないが、今日、明日くらいは少しくらい我がままを言っても良いだろう。
そうアルトは心の中で勝手に答えをだした。
シェリルを抱く腕に少しだけ力を入れ、ぎゅっと抱きしめるとアルトはそっと耳元へと唇を寄せる。
 
「・・・シェリル、明日朝起きたら、また、抱くから。」
「!!!」
 
アルトの発言にシェリルがビクリッと震える。
パクパクとシェリルが二の句が告げなくなっていることをいいことにアルトはシェリルの背中に唇を落とすと瞳を閉じた。
 
『おやすみ』
 
夢見心地で紡がれた言葉をシェリルがようやく理解するころにはアルトはとっくに夢の中だ。
アルトの発言をどう取るべきか迷いながらも、裸の胸の前で組まれたままの腕はシェリルの心を嬉しくする。
それにシェリルは優しく笑った。
 
『Happy Birthday, Alto.アルトにとって幸せな年になりますように。』
 
小さく小さく呟いたハッピーバースデイ。
応える声はなかったけれど、安らかな寝息がすぐ側で聞こえるのは、とてもとても幸せで、嬉しかった。
心を満たす嬉しさにシェリルはそっと目を閉じる。
明日の夜こそはちゃんと祝うのだという小さな決意を胸に秘め、シェリルもまたゆっくりとまどろみの世界へと落ちてゆく。
 
 
 
END
ようやく終わったー!!!
随分遅くなりましたがアルトさんHappy Birthaday!!劇場版でもシェリルと一緒に幸せになってください!
長々と本当にすみません。久しぶりに書きましたのでつたない部分があるかとも思いますが、ソコは目を瞑っていただけると嬉しいデス・・・・。
エロ度不足していたらスミマセン!もっと精進いたしますので!!
ここまで読んでいただき本当にありがとうございました。orz
最終更新:2009年09月05日 22:27