「・・・・お前は何をやってるんだ?」
アルトからの質問に、シェリルは瞳を瞬かせた。
二人がいるのは航宙科男子が使用している更衣室。
ロッカーやソファーなどが雑然と置かれている簡素な唯の一室だ。
そして奇妙なことに、シェリルはアルトのロッカーの中に1人で潜り込んでいた。
「何って、隠れてるのよ。アルトも参加してるんでしょ?かくれんぼ。」
「・・・・っ」
まるで先生の話を聞いていなかったの?っと言うように軽く呆れを含んだような言い草に、握ったアルトの拳がフルフルと震えた。
本来ならば授業が行われているはずなのに、どうしてシェリルとアルトが航宙科の更衣室なんかにいるのかと言えば、オリエンテーションだからである。
バジュラとの戦闘を終えた後、行政府主導で始まった街や住居などの復興作業がひと段落を向かえ、ようやく高校などの学校も再開しだした。
ただ、バジュラの襲撃や戦闘時の事故等によって教師や生徒などにも被害が及んでしまったために全てが元通りとはいかない。
教師の数が足りないために、他船団から出向してきた教師が新たに採用され、また、惑星居住に興味を持つ者や新たな仕事を求めて移って来た者、その家族等が加わり、殆どの学校は開校初の学生を迎えたようなありさまだ。
特に三星学園は、スペシャリスト養成校として名高いことに加え、大戦の英雄である早乙女有人や銀河の歌姫シェリル・ノームが在学していることからその入学希望者数はとんでもないことになっていた。
入学試験や面接を通し、全ての生徒が学校に通えるように手配が行われ、教科書の配布や学校の教材・校舎などの設備チェックが終了し、新たな生徒・教師・在学生を含めた面々で学校再開の式典が行われたのが先週の末。
いよいよ今日から授業が始まるのかと思えば、先ずは各クラスに分かれて新たなクラスメイトや担当となる教師、HRを預かる教師等それぞれとの対面だった。
級友との再会を果たし、互いの無事を喜び合ったり、新たな生徒からの興味に満ちた視線や一方的な敵視の視線に晒されながら、何とかかんとかそれらをクリアしたのが午前中。
その後、積極的に交友を深めようとする彼等に内心辟易しながら、逃げるように屋上に避難し、同じような目に合っているルカと苦笑しながらアルトは2人で一緒に昼食を取った。
その時に吹き抜けた風の匂いが濃さを増していたことを、アルトは鮮明に覚えている。
それを気持ちいいと感じたのと同時に、アルトの元に2通の嬉しいメールが届いたせいかもしれない。
書き方は少し違っていたけれど、書いてあった内容は同じだった。
それぞれが、午後からのオリエンテーションに参加するという。
そのメールを受け取ってから、アルトはワクワクしながら2人の到着を待った。
1人は一昨日病院を退院する時に会ったばかりだけれど、学校で会えるというのはまた意味が違う。
もう1人は、ぶっ続けに入る仕事のせいでもう4日会っていない。
何度か時間を見ながらメールを送ってはみたのだけれど、本当に忙しいらしく返ってくる時間も、内容の濃さもまちまちで電話をかけられそうな時間はなかった。
ぼんやりとするアルトの思考を断ち切るように昼休み終了のチャイムが鳴る。
アルトは大きく伸びをすると、再会に胸を躍らせながら教室へ向かった。
「遅くなってすまなかったな。私が臨時教師のクラン・クランだ。
見た目は小さいが、ちゃんと教員免許は持っている。フロンティアの大学生物学のドクターコースに在学中だ。
ちなみにメルトランで、今はマイクローン化している。それから、こっちが・・・・・」
「ミハエル・ブランです。元々この学園の生徒で、一昨日まで病院で入院していたので合流が遅れました。これから、よろしくお願いします。」
授業開始のチャイムと同時に教室へと入って来たのは、クラン・クランだった。
担当教員が遅れてくるとしか聞かされてなかった生徒の殆どはその小ささに驚いたようだったけれど、教員免許を見せられては仕方がない。
その驚きをそれぞれの内にしまいこみ、それから新たなクラスメイトに注目した。
傷は塞がったのだが、まだこれから先にリハビリを続けて行く必要がある彼はフライングボードと同じ原理を利用した自動車椅子に乗っていた。
かねてからからの旧友はその痛々しい姿に苦い表情を見せながらも、無事であったことに喜びの歓声を上げた。
それに乗じて新入学の女子の一部からは、その整った容姿に感化された小さな黄色い悲鳴が上がる。
それに呼応するかのように、新入学の男子からは小さなブーイングのようなものが上がった。
学年首席と言うだけでもポイントが高いというのに、金髪・緑瞳の美男子なのだ。
さらに次席もそれに劣らぬ美男子であり、さらに大戦の英雄とも言われている。
三席までは続かないだろうと期待するも、美男子ではないが美少年であり、さらに今度はコレに財力までついてくるのだ。
入ったばかりの彼等が太刀打ちなど出来るはずもない。
何人かが涙を呑むように勢いよく机に顔を伏せた。
「さて我々のオリエンテーションだが、かくれんぼをやる!」
そんな彼等の悲観を断ち切るように、楽しげなクランの声が響いた。
ミシェルの退院が決まってからというもの、彼女はずっと嬉しそうにしている。
その理由が、彼女の胸元に下がっている指輪にあることをアルトは聞いて知っていた。
「午前中のオリエンテーションで、教室の配置等は説明されたはずだ。そこで、いまから1時間かけてかくれんぼをやるぞ。範囲はこの校舎全て。ただし、他のクラスが利用している教室は絶対に使用するな。校庭はメインのところだけ許可をする。
誰か1人でも残ればご褒美としてこの後、娘娘に移動して杏仁豆腐を食べながら交流会。もちろん私のおごりだ。もし、誰も残らなかったら、自腹を切ってもらう、いいな?
それから団体で動くなよ。一気に見つけてしまうのは面白くないからな。場所に自信のないものは在校生に聞くか、設置してある地図を頼りにするように。明日から、授業が始まるのだから、これを期に完璧に叩き込んでおけ。・・・質問はあるか?」
作戦の過程を復唱するようにスラスラと話すクランに向けて小さく「ないです。」という返事が返ってくる。
それにコクリと頷くと、クランは先ほど自身が入って来た扉をガラリと開けた。
「よし。今から10分後に私が探索を開始する。終了は授業終了のチャイムだ。では、始めるぞ。」
そう言うなり、クランは教師用の席に腰掛けた。
大人用に作られた席にちんまりと座るクランはアンバランスで可愛らしい。
何人かが席を立つとつられるように生徒が席を立ち、教室から出て行き始める。
それを目の端で見ながら、アルトは窓の外をじっと見ていた。
"彼女"を乗せているだろう黒塗りの車はまだ、現れない。
「早乙女アルト。お前は参加しないつもりか?協調性に欠けるぞ?」
殆どの生徒が教室からいなくなった言うのに、席を立とうとしないアルトにクラン・クランが声をかける。
残っているのはミシェルを誘おうとしている女の子が2,3人くらいだ。
その子たちもどうやらクランの手伝いをする予定だと言うミシェルに振られたらしく、すごすごと教室を出て行った。
残ったのはもう自分1人しかいない。
どうしたものかとも思ったけれど、いつ来るかも分からない彼女をここで待ち続けた挙句、隠れもしないで捕まるのは確かに協調性に欠けると言われても仕方がない。
アルトは後でメールでもしようと決めると、急いで教室を抜け出した。
「・・・・・・・・・」
とりあえずメールを打とうと1人になれそうな屋上側の更衣室に来たというのに、ドアを開けた瞬間に見た光景がロッカーの中に入ろうとするシェリルだったアルトに、そんなことで脱力するなと誰が言えるだろうか。
へなへなと崩れ落ちそうになる自分の太ももを叱咤激励しながら震える眉間の皺を必死に均す努力をしつつアルトは優しく問いかけた。
『何をやっているんだ』と。
しかし、返ってきたのはアルトのそういった努力を一掃するかのような声。
大声で怒鳴らなかった自身をアルトは褒めてやりたいと思った。
自分の中で暴れだそうとする怒りを押さえ込みさらに詳しく事情を聞けば、元々クランと仲の良いシェリルは授業開始に遅れそうになることから事前にオリエンテーションの内容を教えてもらっていたらしい。
そこで、間に合わないと判断したシェリルは、先に1人で潜伏場所に潜むことにしたというのだ。
あれだけ、しきりに外を気にしながらその到着を待っていた自分はクランにどのように見えたのだろう?
そう考えると、自分があまりにも間抜けに見えてくる。
勝手に熱くなる頬をどうすることもできず、アルトはとうとうその場に座り込んだ。
「アルト?急にどうしたの?」
シェリルが不思議そうにアルトを呼ぶ。
原因が自分に有るとは微塵にも思っていないところが少し悔しい気がするけれど、ばれていたとしてもそれはそれで気まずい。
もどかしい気持ちをどうすることもできず、アルトはばれないようにため息を付くとようやく顔を上げた。
見上げた先には、不思議そうな表情のままのシェリルがいる。
けれど、仄かに見える嬉しそうな表情に、アルトの気持ちが霧散し、たちまち嬉しい感情がアルトにも移ってきた。
自分に向けて伸ばされた腕に掴まって立ち上がると、シェリルが『変なアルト!』っと言って笑う。
途端に湧き出した抱きしめたいという衝動にアルトが襲われた瞬間、扉のすぐ外を誰かが歩く音がした。
勢いよく引かれ、そのままシェリルと一緒にロッカーの中へ入ると扉を急いで閉められる。
いつかの自分達と全く反対だ。
覚えているかと聞いてみたかったけれど、当の本人はかくれんぼに夢中らしく、外の様子に耳を傾けたまま動かない。
邪魔をして怒られてもイヤなので、アルトは大人しくシェリルに抱きしめられたままでいることにした。
「いないぞーミシェル。」
「あれ?ホント?っかしーな。」
「鍵はかかっているから開かないが、叩いてみれば一発だ。鈍い音しかしない。」
「学校に来てるはずなのに、歓声の一つも聞こえないからそこ辺に隠れてると思ったんだけどなぁ~。」
「着てはいるぞ?だが、あいにく中は荷物でいっぱいのようだ。・・・何をこんなに詰め込んでいるんだ?」
「さぁ?女の子なんだからクランの方が詳しいだろ。」
「う~ん。」
扉や壁のせいで聞き取りずらいが、声からして二人に間違いない。
先に女子更衣室を覗いたようだから、次はこちらに来るのかも知れない。
アルトとシェリルを焦燥感が襲うけれど、なすすべはない。
今動けば逆に自分の首を絞めることになりかねない。
二人はじっと息を潜め、二人が通り過ぎるのを待つ。
けれど、その願いもむなしくドアの開閉音がした。
コツン、コツンという足音に続いて、自動車椅子の音がする。
しばらく続いた足音が止み、代わりにゴンゴンという鈍い音がした。
誰かは知らないが、ソイツも思い切り荷物を詰め込んでいるらしい。
『ふむ。』という小さな呟きが聞こえた。
「ミシェル!お前のロッカーはどれだ?」
「はぁ?!お前何言ってっ!」
「私は教師になったのだからなっ!!お前の持ち物チェックでもしてやろうかと思っただけだ!!」
「バカ言ってるんじゃないよ、クラン。教師だってプライベートくらいは守るもんだ!」
「ちぇ。」
「ほら、いないなら行くぞ。とっとと探さなきゃお前の驕りになっちまう。」
「む~。」
「くーらーんー?」
「先生だっ!バカ者!!」
「はいはい。・・・・」
「・・・・ッ・・・・」
急に止んだ二人の声に引かれ、こっそりと隙間から外を覗き見たシェリルがビクリッと震えた。
それを不思議に思ったアルトが同じように覗こうをすると、それに気づいたシェリルが慌てて、アルトを押し返す。
その強さに押され、奥へと押し付けられたものの二人の姿はバッチリと見えてしまっていた。
唇を重ね合わせる二人は、いつもの身長差がみえないせいかいつもよりお似合いに見える。
きっと宙に浮く高さを細かく調節したに違いないミシェルの努力と慌てて自分を押し返して何とか現場を見せないようにしようとするシェリルの身体が僅かに緊張していることにアルトは小さく笑った。
「シェリル。」
「なっ、何よ・・・」
アルトの問いかけにシェリルが上ずる。
そんな様子に噴出しそうになりながらもアルトは平静を装った。
「元気だったか?」
「ッあ、当たり前でしょ?・・・たった、4日よ。」
アルトの言葉のトーンから、ばれていないと判断したシェリルが、一瞬詰まりそうになった後で、優しく言葉を返す。
少しだけ先走ってしまった自分が恥ずかしかったのか、言葉の最後の方が少し拗ねたようになってしまっている。
それでも、何とか自分を立て直すと、今度はシェリルがアルトに尋ねた。
「アルトは?・・・元気だった?」
「元気だよ。お前と違って俺は通常任務だけだからな。」
「そう。」
アルトがゆっくりとシェリルの背中に両腕を回すと、シェリルもアルトの胸へと倒れこんでくる。
久々の柔らかい肢体の感触と甘い匂いに、アルトの胸がぎゅっと苦しくなる。
こみ上げる愛おしさが与える痛みを甘受しながら、アルトはシェリルが苦しくない程度にぎゅっとその身体を抱きしめた。
久しぶりの感覚。
1人では埋めることのできない感覚。
シェリルにしか与えられない感覚。
砂漠に撒かれた水が一気に浸透するように、アルトの心が満たされていく。
『たった4日だ』とシェリルが言った。
たった4日だったはずなのに、いつの間にか自分の心は枯渇してしまっていたらしい事実にアルトの心が震える。
どれだけ、自分はシェリルに捕らわれているのだろうかと少し怖くなった。
胸に抱かれたシェリルが猫のように嬉しげに擦り寄るだけで、背筋がビリビリする。
心臓から一気に血液が送り出されたように、全身がカッと熱くなる。
もっと、もっとシェリルを感じたいと思った。
背中に回していた手をゆっくりと持ち上げ、顔に触れると、シェリルが視線を上へと向ける。
視線と視線が絡んだ瞬間、そうっと唇を啄ばんだ。
ふにゅっという柔らかい感触。
それから、甘いリップの香りが一瞬だけ強く鼻先を掠める。
余韻に浸る余裕もなく、アルトはもう一度唇を重ねた。
同じように2,3度啄ばむと、じれったくなったシェリルの唇が薄く開く。
舌先で軽く唇を舐め上げた後で、アルトはゆっくり舌を中へと差し込んだ。
絡む舌先が熱い。
触れる唾液が甘い。
漏れる息すら愛しくて、飲み込んでしまいたくなる。
絡んだ舌がアルトを吸い上げる度に、ゾクゾクとした感覚が体中を駆け巡った。
背後に回されていたシェリルの手がきゅっとアルトの服の裾を握る。
それを感じたアルトは、少し速度を緩めてようとするけれど、心と身体がうまく繋がらない。
くぐもった悲鳴のような声が耳に届くまで、アルトはシェリルを味わいつくそうと舌を這わせる。
できることなら、その全てに触れてみたかった。
「んんっ・・・っ・・んッ」
鼻にかかったような甘い声にアルトの思考が一瞬フリーズしそうになる。
上がる熱に合わせてグズグズに溶けてしまえたらどんなに気持ちいいだろう。
キスするだけ。
そう思っていたはずなのに、全てを暴いてみたくなる。
タリナイ。
タリナイ。
コンナノジャ、タリナイ。
モット、モット、欲シイ。
モット、モット、感ジタイ。
モット、モット、奥マデ触レタイ。
高鳴る心音と共にうねる欲が脳裏を真っ白に染め上げていく。
そのまま突っ走ってしまいたかったけれど、流石に息が続かない。
名残を惜しむように唇を唇で優しく食み、少し引っ張ってから放すと、ソレはぷるんっと弾けた。
荒い息遣いが、狭く薄暗い空間を埋めていく。
けれど、その暗闇の中でもシェリルの瞳が十分すぎるくらいに潤んでいるのは分かった。
「シェリル。」
一言、そう小さく呼んで、また唇を重ねた。
今度は、ゆっくりと重ねた。
右手で頭を支えたまま、左手をゆっくりと身体のラインに沿って下ろしていく。
なだらかな曲線の感触がとても艶かしかった。
頬を滑り、喉元を下り、肩口をなぞって、手を身体の内へと向ける。
そのまま、ピンッと制服の胸元を張らせたそれに触れさせると、シェリルの身体がビクリッと跳ねた。
少し指先に力を込めれば、弾力を返しつつも指先が沈む。
ピクンッ、ピクンッと跳ねるシェリルの反応を楽しみながらアルトはゆっくりと手を滑らせていく。
「アルッ・・・んっ・・・・待っ、あッ・・・」
やわやわと手を動かしたり、唇を塞いだりして、遮りそうな言葉を邪魔してやると翻弄されながらもシェリルがきっと睨みつけてくる。
そんな理性なんか吹き飛ばして、一緒に溶けてしてしまえばいいのにとアルトはぐっとシェリルに圧し掛かる。
腹部まで下ると、アルトは制服の脇から中へと進入させた。
オーダーメイドに作られた制服をインナーごと胸の上まで押し上げると、流石にシェリルの抵抗が強くなる。
「少し触るだけだ。変なことはしない。」
「もッ、十分・・変・・・・。」
「シェリル。少しだけ。」
限界が近いことは分かっていた。
そしてきっと自分はこれ以上進んだら止まれないであろうことも。
けれど、止めておこうという気が面白いくらいに起きてこない。
それを感じ取ったのか、はたまたアルトのみえみえの嘘を信じたのか分からなかったけれど、耳元でアルトがそう囁いた後シェリルはゆっくりと抵抗を止めた。
そんなシェリルの唇をもう一度優しく塞ぐと、シェリルの手がアルトの背中へと伸びてくる。
そのすぐ後に感じたぎゅっとすがりつくように握られた感触にアルトは小さく笑った。
"ココ"で、"コンナコト"をしようとしているのに、甘んじて受け入れてくれたのが嬉しかった。
シェリルも自分と同じくらい、自分に溺れてくれていればいいのに。
そう、思った。
ロッカーの壁にシェリルの身体を押し付け、シェリルの唇を塞いでいたアルトの唇が滑り出す。
いつものように頬を伝うようにして、首筋や胸元までおりていきたかったけれど、制服に阻まれてしまった。
いつもならば身近に感じる温かい肌の匂いが遠い。
ただそれだけなのに、なぜか自分とシェリルの間に見えない壁のようなものがあるように思えて、胸が切なくなる。
さきほど抱きしめたときは十分に満たされていると感じられたのに、一度走り出したら、それだけじゃ足りないのだ。
変わり身の早い自分に苦笑が漏れる。
それでも、触れたいという誘惑には勝てなかった。
下着に覆われたままの胸元へすばやく唇を移すと、いつもと違う匂いがした。
ここ数日仕事で家へ帰っていないから、きっと宿泊先のソープの匂いなのだろう。
嗅いだことのない匂いに新鮮さを覚え、それを覚えこもうとする自身はなんだか獣のようで、少しおかしかった。
下着に覆われていない胸の谷間ギリギリに顔を埋め、チロリと舐め上げるとシェリルの身体がまた震える。
触ろうにも胸を覆う下着が邪魔で仕方なかったので、アルトはすばやく手を背中へ回すとホックの部分をパチンッと片手で弾いた。
いつの間にこんな事が出来るほど慣れてしまったのだろうかと思うけれど、初めてそれが出来た時の記憶なんてない。
きっと、お互いを感じることだけに夢中だったのだと思うと改めて気持ちの部分では成長していないのだなと実感させられる。
いや、執着だけはより強くなっているだろう。
「ア、ルト・・・ちょ、と・・んッ」
浮いた下着を先ほど押し上げたインナーと同じ要領で持ち上げると同時に、胸の先端を唇で食む。
まだまだ柔らかいであろうと思っていたソレは少し硬くなり、尖りかけていた。
軽く吸い上げ、コロコロと舌先で煽れば、数秒でぷっくりと立ち上がってくる。
キスだけでそんなになっていたのだから、執着を強くしているのはきっとシェリルも同じなのだと感じられた。
服の裾を引っ張る手が少し強さを増す。
いつもならば、彼女は逃げ出そうと試みるのだけれど、この狭いロッカーの中では無理だ。
アルトは狭さを利用して、左足をシェリルの足の間へと押し込み、ゆっくりとそこを広げていく。
安定の取れない不安からか、少しぐらつくシェリルの身体を支えつつ、アルトが舐っていた先端を軽く噛むとシェリルから小さな呻き声が上がった。
仰け反るシェリルの喉元が、扉の隙間から差し込む光を受け、艶やかな印象を生む。
同時に、ぷるんっと震える胸元がアルトの頬に柔らかい感触を与える。
それは、ギリギリのところを行き来していたアルトの理性をブチ切るのに十分な破壊力を持っていた。
先ほどまで愛撫していたほうの胸からもう片方へと唇を移し、同じように先端を食んだ後で、舐め上げる。
それから、もう片方の手で胸を揉みしだくと、ふにゅふにゅとした柔らかい感触がアルトの手の平全体に広がる。
どこまでも、どこまでも柔らかく、ずっと触れていたくなるその感触は男の身体にはないものだ。
口の中で転がす胸の蕾を唾液でべとべとにしながら、アルトはシェリルの声を引き出しにかかった。
頭の隅で小さく警鐘がなる。
それが、散々に散ったはずの理性がもたらしているいものなのか、自身の情欲がもたらす限界のからのものなのかはアルトには分からない。
けれど、それが理性の方だったとしても、もう自身では暴走し始めた自分を止めることなど出来なかった。
奥まで触れたくてたまらないのだ。
熱を感じたくてたまらないのだ。
肌も、熱も、想いの深さも、全て感じて、感じた全てをナカに吐き出したくてたまらない。
これでは、本当に獣のようだとアルトは低く笑った。
それでも、指先に触れる柔らかい肌は、触れた先から、そんな比較的まともな思考さえもを奪い取っていく。
いつしか頭の中は、感じるものだけではち切れそうなくらいにいっぱいになっていた。
「・・・アッ・・・ふ、ぅっ・・んんっ・・」
「シェリル、足。」
『開いて』っと言う言葉を紡がなくても伝わる。
それは、自分達が幾度も身体を重ねてきたからだ。
でも、今回は違った。
アルトがそう囁いても、シェリルは足を開こうをしない。
アルトはそれに小さく舌打ちをしたくなる。
それがどうしてかを考える余裕なんて、これっぽっちも残っていないのだ。
従順でないシェリルの態度に、荒々しくアルトは胸を煽っていた手を下ろし、スカートの中へと潜り込ませた。
胸とは違うけれど、柔らかい感触がアルトを出迎える。
けれど、それはアルトを招き入れるのではなく、拒むかのように少し張った筋肉のものだった。
アルトの足が間にあるせいで閉じることのできないシェリルが、せめてもの抵抗とばかりに身体を硬くしたのだ。
それが、アルトを苛立たせる。
ねっとりと手を這わせ、付け根の部分まで這い上がるとアルトはそこを愛撫するかのように優しく2,3度撫でた。
すると、シェリルの身体が震え一瞬だけ隙が生まれる。
それを見計らってアルトは指先を下着の中へと進入させる。
ぐちゅっという水音。
それから、十分に潤んだ熱い秘部の感触。
かき回す度に、指に絡むとろみを帯びた透明な糸の感触。
「びしょびしょだな、もう。・・・どうして?」
「ッ///////////」
「なぁ、どうして?」
耳元で囁かれる声に答える声はない。
視線もふち目がちになり、アルトのものとは絡まない。
それが尚更アルトの心を騒がせる。
苛めれば、苛めるほど、シェリルはキレイに乱れていく。
それをもっと、もっと見たかった。
羞恥心を煽り、辱めて、もっともっとぐちゃぐちゃにしてやりたい。
心も、身体も溶かしだして、一緒に堕ちてしまいたい。
「・・・シェリル?」
「っ・・・アルト、の、・・せい、デショッ!」
「・・・オレのせいか。」
低く呟いた一言に、シェリルが震え、やがて言葉が吐き出される。
アルトはその言葉に、剣呑に笑った。
「・・・じゃあ、責任取らなきゃな。」
「えっ?!・・ちょ、・・・っひぁ、」
言うが早いか、アルトはすばやく身体を屈めた。
決して低いとは言えない身長を器用に折り曲げ、ロッカーの床に膝をつくと、そのままシェリルの制服のスカートの中へと潜り込む。
それから、手探りで下着をずらし、たっぷりと唾液を含ませた舌をソコへ這わせた。
ぺろりとひと舐めして舌に触れた愛液を口内へ持ち帰ると、口いっぱいにシェリルの味が広がる。
けれど、それだけではすまないくらいにシェリルのソコは潤みきっていた。
きっと、下着を外せばソコからよく伸びる愛液が床へと数滴零れ落ちるに違いない。
それほどに、シェリルがアルトを求めているのだ。
アルトは無意識に嬉しそうに小さく笑うと、そのまま舌を這わせ続けた。
ぺろぺろとソフトクリームを舐め取る要領で舌を動かすと、奥からとろとろと愛液が溢れ出してくる。
雫を作り出したそれを時々吸い上げたり、舌先で花弁をくすぐれば、シェリルから甘い声が上がる。
先を尖らして、ゆっくりと舌先をナカへ入れると、シェリルの腰が微かに揺らめいた。
「あっ・・・・・も、やぁ・・・」
泣き声交じりの声。
シェリルは自分を煽る舌先から必死に逃げようとするのだけれど、狭いロッカー内に逃げ場所などあるはずもない。
唯一逃げられた場所は、上空のみだったけれど、つま先が伸びなくなってしまえばそれでお仕舞だ。
スカートの中に身体を潜り込ませたアルトは逃げるシェリルをおってゆっくりと背を高くして追い詰めてくる。
シェリルに許されるのは、熱に浮かされることだけだった。
少しでも気を抜き、高さを失ってしまえば自らの秘部をアルトの口先へ押し付けることとなる。
それでなくとも、ぴちゃぴちゃと秘部からの雫を舐め取る音は耳にいたいのだから、これ以上の恥辱などたえられない。
頭が、熱に犯され続けてぼうっとしてくる。
このまま波に飲まれてしまえたら、どんなに楽だろうかとシェリルは思った。
「・・ひぅ・・・・あっ、・・・あぁぁっ・・」
輪郭をなぞる熱く濡れた感触が、気持ちいい。
舐め取られた後が外気に触れると、すぅーっとする。
どれだけ自分が欲を持て余しているのかを突きつけられているようで、それがいたたまれないと同時に、心を急かした。
「溢れてくるの、止まらないな」
「ねっ・・・も、ムリ・・・んぁ、っ」
アルトの肩あたりに手を置き、腰を浮かせて未だに逃げようとするシェリルをさらに追い詰めようとアルトが声をかける。
それでもシェリルの反応は変わらない。
思ったよりも強情だなと、アルトは笑った。
そうまで言うのならっと最後にひと舐めして、先端のしこりをくすぐり、唇を離すとシェリルの身体が一瞬だけ強張り、その後、力を失ったように崩れ落ちて来る。
それを慎重に支えると、アルトはゆっくりと胸に抱いた。
「・・・シェリル?」
「んっ・・・・・や、やぁっ・・・ある、とぉっ」
荒い息を必死に整えるシェリルを胸にながら抱きしめるけれど、自分の情欲が飛んだわけではない。
アルトは左腕一本でシェリルを抱えなおすと、右手をスカートの中へと滑り込ませる。
アルトの行動に気づいたシェリルがすぐに身体を硬くしたけれど、ぼんやりとした思考の海に落とされていたシェリルの行動が、乱れるシェリルしか見えていないアルトの行動に間に合うはずもない。
先ほど舌が押し当てられていた箇所へ、アルトの長い指が沈んだ。
「・・・シェリル、嘘は吐くなよ・・・・」
艶めいたアルトの妖艶な声にシェリルがびくりと震える。
それに沿うようにして、自分のナカで指が襞を擦るように蠢く。
再び押し寄せる波に、シェリルがアルトにしがみ付いた。
すでに煽られ続けてシェリルの腰は砕けそうになっている。
それを感じながら、アルトはゆっくりと動きを緩慢にしていく。
急に凪いでいく感触に、シェリルの腰がもどかしそうに揺らめいた。
「・・・・シェリル?」
「・・・・・・」
やがて指を止めたアルトが優しくシェリルの名前を呼ぶ。
自分の胸にしな垂れかかるシェリルを見つめるアルトに先ほどまでの面影はない。
追い詰めて乱れさせたいのも、貝のようにだんまりを決め込むシェリルを落ち着かせて思い切り可愛がり、甘やかしてやりたいのも、どちらもアルトの本心だ。
まるでメトロノームの針のように、正反対の気持ちが等しく穏やかに揺れる。
優しく髪を梳いてやると、大人しく抱かれていたシェリルがゆっくりと顔を上げる。
絡んだ視線が気まずさに振りほどかれ、それがアルトの濡れた唇にぶつかると、シェリルの顔がまたかぁっと赤くなる。
再び視線をアルトの胸へと落としたものの、シェリルの細い指先はアルトの制服をぎゅっと掴んだままだ。
シェリルの心がすでに揺らいでないことを悟ったアルトはゆっくりとその先の言葉を待った。
「・・・・あると・・が、欲しい。」
「・・・了解。」
小さく小さく呟かれた一言。
きっと、今上を向かせればこれ以上ないくらいに真っ赤になっていることだろう。
アルトは一度ぎゅっとシェリルを抱きしめると、軽く唇にキスをした。
そして、再びスカートの中へ手を入れるとシェリルの下着をそのまま引き摺り下ろす。
恥ずかしさに耐えるように、アルトにすがりつくシェリルの頭にもう一度キスを落とし、アルトは自分の制服のズボンを寛げてから自身を取り出す。
すでに芯を硬くしていたそれをすぐにでも埋めてしまいたかったけれど、それには少しシェリルとの距離が近すぎる。
優しく名前を呼んで距離をとらせると同時に後ろを向かせた。
イスか何かあれば、膝の上に乗せたりすることもできるのだけれど、あいにくロッカーの中では難しかった。
相変わらず細い腰には不安を覚えるけれど、それでも触り心地が悪いほどではないので、アルトは苦言をなんとか飲み込む。
「声、出してもいいけど。加減はしろよ?」
「バ、カ・・・」
憎まれ口にもいつもの力強さはない。
アルトは小さく笑うと、先ほど解かした入り口へ自身を宛がう。
当てられた熱とその硬さにシェリルの肩がピクリと震えた。
いつもよりナカを慣らす時間をかけていない分、アルトは慎重に挿入していく。
久しぶりの感覚に腹の内側が震え、今すぐにでも吐き出してしまいたいという欲が一瞬アルトの頭を横切る。
それを瞬時に打ち消すとアルトは最後まで収めきり、そして熱い息を吐き出した。
「動くぞ?」
小さく呟いた一言がシェリルに届いたかどうかは分からない。
けれど、もうこのまま止まっていることは出来なかった。
熱い内壁がアルトを包み込む。
ぎゅっと締め付けて追い出したいのか、より深い場所へ引き込みたいのかは分からない。
頭にあるのはそれらを擦り上げて、もっと、もっと高みへ上りたいということだけだった。
「あ・・・あ・・・・っ」
ゆるゆると動き出したアルトに合わせてシェリルの甘い声が上がる。
淫らなそれはアルトの聴覚を刺激し、じわりじわりとアルトを興奮させていく。
自身の欲が熱を上げ、膨張していくのをアルトは感じていた。
引き抜き、押し込む度にぐちゅりという水音が立ち、濡れた二人分の吐息が狭い空間に零れ落ちる。
幾度も繰り返される間に積もるそれらは、隙間なく空間を埋めていった。
絶えるように前の壁に押し付けられたシェリルの指が僅かに結露を起こした壁を滑り、きゅっと音が立つ。
狭い空間でシェリルをぶつけてしまわないかだけがアルトの気がかりだった。
「ねっ・・・もっと・・し、て?」
零れ落ちる嬌声の合間に聞こえた声。
驚いたアルトが動きを止めると、急にその声が切なさを増す。
答える代わりに背中にキスを落とすと、アルトはカタパルトを飛び立つときのようにゆっくりとそのスピードを上げていった。
腰を打ち付けるたびに、より熱く、熱く絡み付いてくる感覚が気持ちよくてたまらない。
穿ち、中を擦り上げる度に、持っていかれそうになる。
それをギリギリのところで焦らすのも気持ちよかった。
「くっ・・・・あっ・・・」
もっと、もっと、ギリギリまで。
吹き飛んでしまえるほどの最高速度まで。
離れていた時間を全て埋めてしまえるまで。
めくり上げられた象牙なような白い肌に重なり、思いのままにナカを蹂躙する。
翻弄しているのか、されているのか、もう分からなかった。
かき回す度に息が上がっていく。
もう少し。
もう少し。
誘うように目の前でひらひらと揺れる波をアルトは必死に追いかけた。
指先に何度かは触れるけれど、するりと逃げていくそれに向かって手を伸ばす。
アレを思い切りつかんで、思うままに引きちぎってやりたかった。
「・・・っあ、あ、・・・ぁあ・・・・んぁ・・」
シェリルの声が段々艶めいていく。
手に感じる熱はこれ以上ないほどに高かった。
弾けるまで、もう数秒もないだろう。
アルトは小さく息をつめるとシェリルを高みに押し上げるべく、自身が届く最奥を犯していく。
残りの力を振り絞って腰を揺さぶった。
シェリルの愛液が触れていないアルトの部分はもうない。
奥からあふれ出てくるその蜜が泡立つのではないかというほどの勢いで攻め続けた。
「んっー・・・・あ・っ」
一際高い声が上がった瞬間、今までにない力でアルトを包む内壁が押し寄せる。
シェリルが達したのだと、理解すると同時に、その強い締め付けにアルトも意識を持っていかれる。
熱を放ったのとは反対に、身体を満たした悦楽はどこまでも甘く、幸せに満ちていた。
END
また今度、終わった後を加筆させていただきます。