それは、外を走る車の音も、通りを歩く人も居なくなった時刻。
誰もが寝静まり、小さく時計が時を刻む音だけが響く中で小さな人影がごそごそと動き出した。
身を横たえていたベットから静かに身体を起こし、そっと時計の置いてあるサイドボードの方を向くけれど、決して電気を灯そうとはしない。
蛍光塗料のおかげでかすかに見える文字盤と針の位置から今の時刻を確認すると、今度は背後に眠るもう一人の様子を確認するためにそうっと身体を捻らせる。
すうすうと規則正しい呼吸音と変わらない気配を感じると、その人影は優しく微笑んだ。
床に足を付けると、ひやりとした感触が伝わる。
それに一瞬身を縮こまらせるけれど、次の瞬間には体重を移動させてそうっとベットから立ち上がる。
あまりベットが揺れなかったことにほっとしつつ、もう一度ベットに眠る人物の様子を確認すると、今度はそろりそろりと部屋の出口に向かって歩き出した。
一歩、また、一歩と静かに、静かに歩く様子は、まるで泥棒のようだ。
当の本人もちょっぴりそういうスリルめいたものを感じているらしく、足の運びが先ほどまでとは変わりだしている。
音を立てないようにと細心の注意を払いながら歩いていたはずが、機嫌が良いのか今はリズム良く前に進んでいく。
よほど上機嫌であることがその足取りから窺えた。
「ふふっ♪今のところは問題なしねっ!!」
パタンっと寝室へと繋がるドアを閉め、電気を灯した瞬間にぎゅっと胸の前でガッツポーズをとった彼女は嬉しそうにそう言うと、今度は自分の部屋へと向かう。
自分の部屋と言っても用は衣装やダンベル、小道具などをしまってあるだけの、要はウォークインクローゼットだ。
きちんと整理された部屋の奥へ向かうと、彼女は慣れた手つきで裾の長い衣装の下へと手を伸ばした。
床に着きそうなくらいに長い衣装がたくさんかかったこの一角は、他に比べて視線が奥に届きにくいため、モノをかくすのにはうってつけの場所だ。
しばらくごそごそと衣装の下をかき回していた彼女は目的のものを見つけたのか、その瞳を輝かせながらゆっくりと"何か"を取り出した。
その手に握られていたのは両手に乗るくらいの小さな箱。
厚さはそれほどなく、ハンカチがプレゼント用の包みに入れられているようにも見える。
それを手にした彼女は嬉しそうに微笑むと大切そうにぎゅっと握り締めた。
「まだ、十分冷たいわね。良かった。」
ほっとしたようにそう言った彼女はすばやく立ち上がると、再び衣装の下へと手を伸ばし置いてあってカバンの蓋を閉める。
床へと漏れ出していたドライアイスの冷気が再びカバンの中に納まったのを確認すると、今度は足早に出口へと急いだ。
せっかくドライアイスまで使って冷やしていたというのに、ここで溶かしてしまっては本末転倒になってしまうからだ。
ぱちんっと音を立てて部屋の電気を消すと、彼女はキッチンを目指した。
リビングとキッチンが並ぶ部屋に戻り、そっと中を確認するけれど、先ほどと変わった様子は見られない。
どうやらもう一人の住人は、自分が抜け出したことに気づかず、ベットで眠りに落ちたままのようだ。
このまま行けば、きっと明日の朝には自分が予想した通りに"アイツ"を驚かすことができるだろう。
楽しげな彼女の脳裏に、唖然とする表情を浮かべるもう一人の顔が浮かぶ。
驚いた後で、アイツはどんな表情を見せるだろうか?
嬉しそうに笑うだろうか?
それとも、やはりぶきっちょにお礼を述べるだけだろうか?
それを考えるとなおさらワクワクしてくる。
笑い声が今にも零れてきそうな表情のまま、彼女はいそいそと冷蔵庫へと向かうとその扉を開け、胸に抱くようにしていた小さな箱をその最上段へと仕舞い込んだ。
後は明日の朝、アイツより先に起き出して準備を整え、アイツに渡せば完璧だ。
計画通りにコトが運んでいることに満足げに笑うと、彼女はゆっくりと冷蔵庫の扉を閉めた。
ぱたんっ。
っと、そんな音が聞こえるはずだった。
けれど、音が聞こえる前に、背中に圧し掛かった重さが全ての感覚を遠ざけてしまい、結局その音は彼女の耳に少したりとも届かなかった。
ぽすんっという衝撃と共に、長い腕が少女の両肩に絡みつく。
同時にその首筋を気だるげな吐息がくすぐった。
「えっ?!なっ?!アルト?!」
「・・・何・・してんだよ・・シェリル・・」
突然のことに驚く彼女とは異なり、背中に抱きついている少年は眠たくて堪らないらしく、目を閉じたまま己の額を彼女の首筋に押し付けている。
眠たげな声は先ほどまで眠っていたせいでほんの少しだけ掠れ、それが壮絶な色気をかもし出す。
解かれた黒色の髪は、清流のように少年の身体を流れ落ちながら絹の衣のように二人を包み込み、黒髪に包まれた少女の肌の白さが、静かなコントラストを描いていた。
見れば誰もが感嘆の息を漏らすような美しい光景だというのに、抱きつかれた方も抱きついている方も慣れたやりとりのようで、後ろを振り返った少女は溜め息一つでその少年のイタズラを終わらせてしまう。
まるで、飼い猫が主人に甘えるのを許すかのような気軽さなのに、二人を包む雰囲気はどことなく甘く柔らかい。
「アルト?」
しょうがないわねっという言葉を暗に含んだその声は、相手への愛しさへ溢れていた。
シェリルと呼ばれた少女が身体に回された両腕を持ち上げようとすると、抱きついていた少年がちらりと瞳を開き、その口元を緩ませる。
だらしなく圧し掛かっていた身体をほんの一瞬だけ自分の力で立たせ、その瞬間を狙ってシェリルが身体をくるりと反転させると、再び甘えるようにして抱きついてきた。
「眠たいなら、そのまま寝てればいいのに。・・・夜勤だったんでしょう?」
「・・・お前が勝手にいなくなるのが悪い。」
優しい声に返ってくるのは、少し拗ねたような声。
子供のようなその声にくすりと笑うと、シェリルは胸に被さるアルトの頭をゆっくりと撫でた。
SMSの夜勤が明けると同時に学校へ登校し、律儀に6限目までをこなした後で、部活にも顔を出しているのだから、体力的にしんどくて当たり前だ。
昨日も授業だったことを考えると、睡眠時間は夜勤に着く前の3時間程度で、それから帰宅するまで一睡もしていないのだろう。
戦闘ではないといっても常にある程度の緊張感を強いられる場所にいなければならない時の疲労度は通常よりも濃くなるだろうに、アルトはシェリルが帰宅するのをずっと食卓で待っていてくれた。
それが、嬉しくないはずはないのだ。
「・・・私だって、夜中に水くらい飲みたくなるわよ?」
「・・・夜中にか?」
「えぇ。」
浮かぶ嬉しく、こそばゆい感情を少し気恥ずかしく感じたシェリルが冗談めいてそういうと、ほんの少しの間を置いてアルトが問う。
その問いかけに何の疑問を抱かずにシェリルが答えると、今まで胸に顔を埋めるようにしていたアルトがゆっくりと顔を上げてシェリルを見つめた。
「よく"冷えた"ミネラルウォーターを、か?」
「・・・・・・・・」
"よく冷えたミネラルウォーター"
通常ならば、違和感のない言葉。
けれど、歌手を生業とするシェリルにとっては致命的とも言える言葉だった。
喉を冷やすことを避けるために、シェリルが極力常温に近いものや温かいものを口にするようにしていることをアルトは知っている。
そのアルトがこう尋ねた意味を即座に理解したシェリルは、ぐっと言葉に詰まった。
慌ててそらした視線をゆっくりと戻すけれど、相変わらず琥珀色の瞳はまっすぐにこちらを見つめている。
きっと、自分が冷蔵庫の前に立ったのを見たときから何か予想を立てていたに違いない。
これは、もう逃げようがなかった。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
ふいに降りた沈黙。
明日の朝にと考えていたけれど、下手な嘘をついてアルトをだますより、今渡してしまってもいいかもしれない。
そう考えたシェリルは軽く息を吐き出すと、もう一度だけ優しくアルトの頭を撫でた。
「アルト?」
「ん?」
「ちょっと、身体起こしてくれる?」
「なんでだ?」
「ほら、早くっ!」
珍しくぐずるアルトにシェリルが微笑むと、アルトもつられる。
シェリルを困らせることが楽しくてしかたがないのか、なかなか離れたがらないアルトにシェリルが嗜めるようにいうと、しぶしぶといった感じでアルトが離れた。
まったくとんだ駄々っ子だ。
よくできましたというようにシェリルがアルトの頭をくしゃくしゃと撫でると、瞳をしょぼつかせ、僅かに不満そうな表情をしたアルトから早くも腕が伸びてくる。
つかまっては堪らないと慌ててシェリルが逃げ出し、冷蔵庫の中から先ほど入れた箱を取り出すと、今にも床に沈み込みそうなアルトの目の前に掲げてみた。
「なんだぁ?ソレ・・・」
視界がぼやけるのか何度か目を擦ったアルトが不思議そうにそう問う。
流石に自分がココに何しに来たのまでかは分かっていないらしい。
妙に感はいいくせに、肝心のところは鈍いのがアルトらしかった。
「疲れてるんなら、ちょうどよかったわね。ハイ」
「?」
「バレンタインチョコレートよ?Happy Valentine,Alto♪」
「・・・・あ、あぁ・・・そうか・・」
ぽいっと投げられた小さな箱を驚いたように見つめた後で、その表情が嬉しそうにくしゃりと歪む。
照れたのか、その頬が軽い赤色に染まるのが見ていて無性に可愛らしかった。
「ね、開けてみて?」
「今か?」
「えぇ。疲れたときには甘いものっていうでしょ?」
「そうだな。」
うきうきとするシェリルの声に押されてアルトが受け取ったばかりの箱に掛けられているリボンを解く。
濃く、深い色をした青色のリボンは、こげ茶色の箱からサラリと解け、さらさらという軽い音を立てて床へと落ちた。
「すごいな。」
並んでいたのは、スタンダードな茶色のチョコーレートの他に、白やピンクのチョコレートがいくつか。
円柱やダイヤ、ハートなど様々な形が模られ、中にはアーモンドやパフ、フルーツのパウダーが混ざっているのが分かる。
アルトは、その中からスティック方のピンクのチョコレートを取ると口の中へと放った。
カリッというチョコレートの砕ける感触が伝わり、同時にストロベリーの香りが広がる。
小さなパフがさくさくとした食感を伝え、ドライフルーツのつぶつぶとした欠片が下の上へと零れてきた。
「おいしい?」
「・・・・・」
まるで自分が貰ったように瞳をキラキラとさせながらそう問うシェリルにアルトが笑う。
そして、ちょいちょいっと手招きをした。
「?」
不思議そうに小首をかしげるシェリルの頬を両手包み込み、ぐうっと引き寄せたかと思うといきなり唇が重ねられる。
突然のことに驚き、固まっている間に口内へチョコレートの欠片とアルトの舌が押し入ってきた。
広がるベリーの甘い香り。
半分ほど蕩けたチョコレート。
それから、甘く染まった唾液と温かく柔い感触。
「っ、んっ!!!」
吐息が漏れた一瞬を狙って、奥へ、奥へと押し入ってくる。
いつの間にか再び腕の中へと引き込まれていた。
顎を固定され、後に引けなくされながら口内を貪られる。
二人分の熱によって、チョコレートが蕩けるスピードを上げていく。
くちゅりと音がする度に、舌と舌が絡み口内をくすぐった。
シェリルは溢れそうになる唾液を飲み下すだけで精一杯だ。
触れられるたびにぞくぞくとしたものが背中を這い上がり、下腹部に覚えのある感覚が走り始める。
「っ、も、うっ!!」
唇が離れる頃にはシェリルの息が上がっていた。
息を整えながらアルトをぐっと睨むけれど、当の本人はご満悦のようで口端を上げて笑うだけだ。
バレンタインのチョコレートをもらえたことがよっぽど嬉しかったらしいその表情に、シェリルも毒気を抜かれてしまう。
毎度の理由は違えども、こうしていつも丸め込まれているのだ。
その度に面白くないという感情も浮かぶのだけれど、それすら数分と持ちはしない。
アルトの表情や手つきによって、容易に解かされてしまう自分の感情がほんの少し憎らしかった。
「~~~ッ!」
「あ、おいっシェリル!」
両腕をバタつかせ、なんとかアルトの腕の中から抜け出したシェリルがくるりと身を翻すと、慌ててアルトが後を追ってくる。
アルトだって少しくらい困ればいいのだっと思い通りに行かない自分の感情への苛立ちの代わりに、意地悪をしてみるのだけれど、腕の中の心地良さがシェリルの後ろ髪を引くせいでうまくいかない。
先ほどまでとすっかり甘やかす立場が逆転してしまっていることに納得がいかない様子のシェリルは再び背後から伸びてきた腕に捕まりながら、やっぱり面白くないっ!と頬を膨らませた。
「・・・眠いんでしょう?ほら、早くベットに戻るわよ。」
「はいはい。」
「っ、もうっ!!」
シェリルが怒って見せても、アルトは楽しそうに笑うばかりだ。
もう一言、二言何か言ってぎゃふんっと言わせてやりたい気もするのだけれど、流石に今の状態のアルトに勝つのは至難の業だ。
そう判断したシェリルはぐっと言葉を飲み込み、背中にくっつくアルトを引きずるようにしてベットルームへと向かった。
「着いたわよ?」
「んー。」
サイドボードの灯りを付け、ベットへと腰掛ける。
気を利かせてアルトを先にベットに腰掛させたというのに、アルトは相変わらずシェリルの背中に張り付いたままだった。
ベットに座るアルトの膝の上に座らされた格好になったシェリルは再び子供に逆戻りしてしまったアルトに溜め息を付き、アルトに離れるように言うけれど、アルトはシェリルを抱きかかえたまま離そうとせず、相変わらずシェリルの項に顔を埋めている。
力で敵うはずもないため、大人しく抱きしめられたままでいるけれど、アルトから吐き出される息はシェリルの肌を擦り上げ、うぶ毛を逆立てていく。
湿り気を帯びた吐息が当たったり、首筋に唇の感触が落ちるたびにシェリルはドギマギとしなければならなかった。
「ね、そんなに眠いならベットに横になったら?」
「・・そうだな。」
「って、えっ、あっ、きゃぁっ!!」
背後のアルトの存在をどうしても意識してしまうことを恥ずかしく思ったシェリルがワザとそっけない口調で言うと、数秒置いてアルトが同意する。
ようやくこの状態から解放されるのだとシェリルがほっと胸を撫で下ろした瞬間、その視界がぐるりと回り、シェリルから小さな悲鳴が上がった。
「・・・ちょっと。」
次に視界に入ったのは天井の模様。
背中が小刻みに震えるから、下に敷いているアルトがどんな表情をしているのか容易に分かる。
それでも自分に回されたままの腕が嬉しいやら、恥ずかしいやらでシェリルは大変だ。
抗議の声を一応は上げてみたけれど、それでもきっとこの力は緩まないのだと分かったら、なんだか抵抗するのも馬鹿らしくなってきた。
思えば、こうしてアルトとゆっくりした時間を過ごすのは随分と久しぶりなのだ。
シェリルは明日一日をオフにするべく仕事の消化に奔走していたし、アルトはアルトでSMSやら学校やらで毎朝、毎晩おはようとおやすみを言うくらいの時間しかなかった。
シェリルはふうっと息を吐き出すと、身体から力を抜き、自分に回る腕に愛しそうに触れた。
アルトがこんな風に珍しく甘えんぼさんになっているのも、最近の反動なのかもしれない。
そう思ったら、なんだかもう少しだけこのままでいたくなった。
「シェリル?」
「・・・何よ?」
「いや、別に・・。」
「ふふっ。変なアルト。」
シェリルが笑うとアルトの腕の力がふっと緩む。
その瞬間を狙ってくるりと向きを変えると、シェリルは下に敷いたアルトをじっと見つめた。
柔らかなオレンジ色の光の中に浮かぶ真っ直ぐなはしばみ色の瞳。
白いベットに艶やかに広がった黒髪。
端整で中性的な表情と柔らかい笑み。
いつ見てもキレイだと思うその表情に優しく笑うと、シェリルはそうっと確かめるようにアルトに触れた。
白く滑らかな頬を滑り、長い前髪を揺らす。
それから、小指で紅を引くようにその唇をなぞった。
「・・・・・」
「・・・・・」
一瞬の間。
空色とはしばみ色が結ばれる。
その沈黙を割るようにして、シェリルがそうっとその額にキスをした。
軽く啄ばむようなバードキス。
その感触を確かめるように、アルトが自分の額に触れる。
それを見たシェリルはもう一度、その手の甲にキスを繰り返した。
「・・・シェリル?」
「何よ?」
照れくささが、頬を焼く。
きっと赤らんでいるだろう自分の表情に苦笑しながらつっけんどんにシェリルが答えると、アルトがふわりと微笑んだ。
ゆっくりと伸びてきた両手がシェリルの頬を包み込む。
長いその指はほんの少しだけ冷たく、心地よい。
それを楽しんでいると、柔らかい感触が唇へと触れた。
「ン・・・・・」
先ほどのキスとは違うキス。
互いを確かめるかのように静かなキスに息が震える。
頬の熱さも手伝ってか、離れた後もしばらく瞳を開けずにいたシェリルに、再び柔らかい感触が降った。
「んんっ・・・・・」
いつの間にか入り込んだ舌が、優しくシェリルの舌を吸い上げる。
触れる手の冷たさと吐息の熱さに頭がクラクラとし始め、身体がジンッと疼きだす。
今身体に触れている何もかもが気持ちよかった。
「シェリル・・・。」
軽いリップ音が弾けると共に呼ばれた名前。
いつもと違う音の響きがシェリルにアルトの意思を伝える。
真剣なその視線に耐え切れず、コクリと頷いた瞬間再び身体が反転したのがシェリルにも分かった。
「んく・・・・」
服の上からわき腹を撫でる用に触られ、くすぐったい感触が湧き上がってくる。
それを閉じ込めるようにアルトの唇がシェリルの唇を塞いだ。
布越しに感じる手の熱。
触れられる度に肌と布とが擦れ、直に触れてもらえないことにもどかしさが沸き立つ。
それでも、アルトは焦らすようにシェリルの胸をまさぐりながら、指の腹でソコを見つけ出し、先端のしこりを立ち上げていく。
執拗に煽られたシェリルの胸の先は、まだ舐られてもいないというのにつんっと立ち上がり、すでにシェリルが感じ始めていることをアルトに伝えていた。
「っあ、・・・ン・・」
零れそうになる吐息を飲み込もうと必死なシェリルから小さな嬌声が上がるとアルトが笑う。
それを見たシェリルの脳裏に一瞬だけズルイッという感情が浮かぶけれど、次の瞬間にはほろほろと壊されてしまう。
むき出しの肩に触れた唇は、シェリルの熱を受け、その温度を上げていた。
肢体を覆う夜着の胸元のリボンが解かれ、緩んだすき間をさらに押し開くようにアルトの指が蠢き、一気に肩紐を引き落とされた。
軽い締め付けから解放された胸がその衝撃によって零れ落ち、アルトの目の前でぷるりっと魅惑的に揺れる。
肌を暴かれたことにシェリルが羞恥を感じる前に唇が重ねられ、いつも以上に長い口付けに飲み込みきれなくなった唾液がその口元を穢した。
「ふ、ぁ・・・・・」
息付く間もない強引なキスに溺れかかりながら、シェリルも必死に応えようとするけれど、アルトの愛撫によって追い詰められてしまう。
やわやわと胸や太ももを撫でられるたびに波が生まれ、シェリルを翻弄していった。
触れる手の熱さと外気の冷たさが心地よい。
悦楽の波は小ぶりながらも、シェリルを確実に高めていく。
それでも、もどかしさがシェリルを先へ先へと突き動かしていった。
「あ、ると・・っ・・」
ぎゅっと瞳を瞑ったまま、切なげにアルトの名前を呼ぶ。
もっと、もっとアルトに触れて欲しいと、全身で叫ぶようなその声に、アルトが少し意地悪をしすぎたかと苦笑する。
一度手を止め、視線を絡ませた後で、アルトはそっと尖りきった先端を口に含み、舐ってやった。
「んんんっ・・・!!」
即座に漏れた甘い嬌声。
ようやく濡れること許された先端がアルトの唾液に鈍く光を反射する。
熱くねっとりと胸をもむような舌の動きが一際大きな波を呼び、巻き込まれたシェリルが肢体をくねらせる。
白い肢体が何かを求めて暗闇で舞う様子は、アルトをさらに高ぶらせた。
「シェリル・・・声。」
シェリルとはまた違った艶やかな声が部屋に落ちる。
それは懇願するようにしながらシェリルの耳へ流し込まれるけれど、どことなく支配的な余韻を持っていた。
唾液によって濡れた胸元をマッサージするように何度も優しく捏ね上げつつ、硬くなる一方の先端は舌や指の腹で転がし、つぶしてはまた丁寧に立ち上げて遊ぶ。
所々を優しく吸い上げ、赤い印を刻めば、シェリルの身体が幾たびも震えた。
指や唇や舌先を使って、余すところなくシェリルに触れる。
できることならば、身体中全てに所有印を刻んでやりたい。
そんな独占欲と色欲がアルトをゆっくりと飲み込んでいく。
もっと、もっと奥まで触れたかった。
触れることのできる全てに触れ、シェリルを感じたかった。
「んっ、ぁッ・・ぁ!」
胸の谷間に顔を埋め、何かを探すようにアルトの舌と唇が肢体を滑っていく。
絡んだ唾液を塗りこめるように指がなぞり、その緩慢な動きがシェリルを翻弄する。
上半身だけに与えられる刺激の強さと触ってもらえない切なさに思考を乱され、シェリルはいやいやと首を振るしかない。
優しく乳房を揉まれ、強く吸い上げられ、時にカプリッと歯を立てられたかと思えば、それを癒すようにペロペロと優しく舐められた。
快楽に打ち震えながら足を張り、瞳に生理的な涙をためながらシーツに幾重にも波を立て、恥辱に耐えるその様子は扇情的で美しい。
自分だけが見れるシェリルの痴態を楽しみながらも、己の欲望の塊が膨れ上がり、芯を持ち始めていることをアルトは感じていた。
早く重なりたい。
早く溶けてしまいたい。
早くシェリルを抱いてしまいたい。
じりじりとするようなもどかしさに耐えながら、アルトはシェリルを翻弄する。
あえて下肢に触れず、シェリルからの懇願を待つか、このまま侵してしまおうかというギリギリの狭間をアルトが彷徨っていると、惑うように延びたシェリルの手がシーツをつかみ、ぐっと引き寄せた。
新たな波が引かれる音が響いた瞬間、ぱたんっという音と共に何かがその枕元から転がり落ちてきた。
「?」
「・・・ッ・・はぁっ・・っ」
興味を引かれたアルトが思わず手を止め、現われたものを見つめる。
シェリルはといえばようやく波が途切れたことで力を抜けたらしく、ぐったりとベットへと沈み込んでいた。
随分と耐えていたらしく、呼吸が荒い。
汗の粒が浮かびだした額にかかる髪を優しく掻き揚げてやると、アルトは軽くキスをしてやった。
シェリルの息が整うまで、小休止もいいだろうと考えたアルトは、先ほど突然枕元に現われたモノへとおもむろに手を伸ばす。
それは、両手を立てに並べたくらいの大きさの白い箱だった。
赤いリボンが巻かれ、小さなピンク色のカードが刺さっている。
不思議そうにしながらも、カードを開いて見れば、『Happy Valentine to Alto』の文字。
シェリルがチョコレートとは別にプレゼントまで用意してくれていたのだと知ったアルトの表情がたちまち嬉しそうになった。
「・・・シェリル、これ」
「んっ・・・あぁ・・うん・・いつものお礼よ?・・・アリガト」
荒い息をしながら開けてみる?っと小首をかしげて見せるシェリルにアルトが頷き、巻かれたリボンを丁寧に解くと、中から小さなプラスチックの棒に似たものが転がり出てきた。
出てきたものに驚き、言葉をなくすアルトを見たシェリルがそれほど驚いてもらえたのだと喜び、表情を綻ばせる。
「・・・・・」
「ソレ、・・・今流行りの、マッサージ器・・なんです・・って。」
反応のないアルトにシェリルは気づかず、途切れ途切れになりながらもそのまま言葉を続ける。
仰向けになっていた身体を反転させる前に、一度だけ大きく息を吸い込み、呼吸を整えた後で、手早く乱れた夜着の肩紐を直す。
濡れた胸元に夜着が張り付く感覚はあまり心地の良いものとはいえなかったけれどそれを表情には出すことはせず、頬杖を付いてニコニコと笑いながらアルトを見上げた。
「・・・・いつも家事してくれてるけど、私は何もしてあげられないから、ねっ。あっ、もちろん手伝いはするわよ??で、でも、あんまりすぐには役にたたないだろうからっっっ。
ほ、本当はアタシがマッサージとかしてあげられたらよかったんだけど、シロウトがやると逆に筋痛めちゃって大変なことになったりするらしくて、だから・・・それが一番・・いい・・・かなぁ・・・って。」
最初は一人得意げに話していたのだけれど、アルトからの反応がないことに、何か変なことでも言っているのではないかと考え出したシェリルが一人わたわたと慌て出す。
よくよく考えてみれば、こんなの自分のキャラじゃないのかもしれない。
そんなに自分がマッサージ器をプレゼントするのは可笑しかったのだろうか?
それともやはり手伝う気がないと思われ、怒らせてしまったのだろうか?
いや、バレンタインデーにマッサージ器という考えてみれば色気のない選択肢自体が間違っていたのかも知れない・・・。
ぐるぐると様々な不安要素が浮かび始め、シェリルの脳内を染め上げていく。
必死になってもとの原因を考えるけれど、思い当たることはたくさんあるのだ。
はっきり言って、どれが原因でも納得はできただろう。
「・・・シェリル、これどこで・・」
「えっ?・・どこって・・・ディープアキハバラだけど・・・」
アルトの一声に一度は凍りかけたシェリルはその言葉の意味を理解すると、きょとんとしながらアルトを見た。
どうやら、マッサージ器という選択肢は少なくとも間違っていないらしい。
場所を聞いたということは、買った場所に関連する何かが悪いのだろうか?
そんなことを考えながら、シェリルが正直に買った場所のことを話すと、アルトの表情に少しだけ感情が戻ってきた。
「・・・お前、なんて言ったんだ?」
「えっ?!手軽なマッサージ器くださいって。」
「・・・型とかの指定は何もなしか?」
「?・・・えぇ。それが一番売れてるし、動きもいいから一番気持ちよくなれるって・・・」
「・・・・・・・」
確かめるように問うアルトの表情は訝しげなまま。
アルトの様子が少しおかしいことにシェリルも気づくけれど、その理由はシェリルにも分からず、戸惑いのままに語尾がだんだん小さくなっていく。
結局最後が尻すぼみのまま言い終えると、アルトはすっかり黙り込んでしまった。
「・・・アルト?」
不安そうなシェリルがアルトを呼ぶけれど、アルトは不満そうな表情のまま、言葉を発さず視線を返すだけ。
それでも、手に持ったままのマッサージ器を離そうとはせず、手の中で器用に弄んでいる。
マッサージ器自体は気に入ってもらえたと考えてよいのだろうか?
不思議な感覚のまま時間だけが流れていった。
「シェリル、来いよ。」
沈黙を破ったのはアルト。
何気にそちらの方を見れなくなっていたシェリルが名前を呼ばれて振り向くと、今度はほんの少しだけ表情がにこやかになっていた。
急に甘えたり、無口になったり、意地悪になったりと、今日のアルトは本当に分からないと首を傾げてみるものの、名前を呼ばれ、おいでというようにちょいちょいと手招きをされて嬉しくないはずがない。
せっかく伸ばされた腕が引いてしまってはもったいないというようにシェリルが慌てて飛び込むと、アルトが小さく笑ったのが分かった。
いつもの感触といつもの匂いがシェリルを満たしていく。
アルトが側にいてくれるのだと感じられる大好きな感覚をもっと味わいたいと顔をその胸へとすり寄せると大きなアルトの手がぎゅうっと頭を包み込んでくれた。
愛しくて、愛しくて、幸福感が溢れてくる。
触れる体温や鼓動や吐息の音がたまらなく愛おしく感じた。
「シェリル?」
「ふふふっ」
「おーい?」
胸に抱かれたまま幸せそうに笑うシェリルにアルトが苦笑する。
何がそんなに嬉しいのだろうかと考えるけれど、その様子を見ているだけでどうでもよくなってきてしまった。
胸に抱き寄せたまま片手を使ってシェリルの頬を固定し、視線が混ざった瞬間を狙って唇へと齧り付き、舌先でくすぐりながらもう一度口内へ侵入してやる。
舌と舌が絡まり、互いを求めるようにして吸い合った瞬間、アルトの背中を再びぞくりとするものが蠢きだす。
まだまだ激しいには遠いキス。
それでも、これほどまでに熱を上げたのは先ほどまでの戯れのせいなのだろう。
アルトは感情の赴くままに舌を奥へ奥へと差し込みながら、何度もシェリルと交わった。
頬に触れていたアルトの手が、ゆっくりと降りてくる。
首筋をなぞられ、肩へと降り、再び肩紐を外された。
支えを失った夜着の肩紐はストンと落ち、シェリルの裸体をアルトへと晒す。
座らされたままの状態でベットへ押し倒されたシェリルは、いくつも積み上げられた枕に背中を支えられ、完全にベットに横になることも出来なかった。
馬乗りになるような形でアルトがシェリルへと覆いかぶさる。
背後に枕があるせいで胸が突き出されるような形になり、アルトに触れてほしいと懇願しているようにも見える。
両足の間に座られてしまえば、足を閉じることも出来ない。
開かれた足によって夜着の裾は捲りあがり、シェリルの下着がその裾から見えてしまう。
滅多にないその状況が羞恥を煽り、シェリルがうろたえるとそれを面白がるようにアルトが笑った。
唇にキスをされて思考を溶かされたかと思えば、胸を遊ばれ快楽の波に悶える。
身を焼くような恥ずかしさと同時にもっとしてほしいという淫らな欲望が頭をもたげ、シェリルを惑わす。
身体に走っていた波はシェリルの下肢へと波紋を広げるようにして届き、芯を痺れさせた。
「シェリル、濡れてる。」
「あっ・・・言わない、で、・・」
アルトに言われるまでもなく、ソコがどうなっているのかはシェリルにも分かっていた。
まだ触れられていないのに濡れそぼる自分の下肢にシェリルが思わず顔を背ける。
いつの間にこんなに淫乱になってしまったのだろうか?
こんなになってしまったアルトが呆れはしないだろうか?
浮かぶ不安がシェリルを煽る。
足を閉じてしまいたいけれどそれも叶わず、シェリルは触ってと懇願するようにアルトに向けて足を開くしかない。
身を焼くような羞恥を超えて、アルトを求めてしまいそうになるシェリルもまた、己の限界を感じ始めていた。
「・・・あ、アル・・んッッッ!!」
下着の上から軽くなぞられただけ。
それでも、待ちに待った刺激にシェリルの身体が震える。
ぞわりと広がる波に、受け入れた時の気持ちよさが甦り、シェリルの下腹部がずくんっと軋む。
切ないほどのその感覚にシェリルが懇願を口にする前に、濡れた感触がシェリルを包んだ。
下着越しでもありありと分かるその感触。
アルトの舌が舐め上げる気持ちよさに、思考が蕩けてしまいそうになる。
最初は、あんなに恥ずかしかったというのに一度その気持ちよさを知ってしまってからはもう止められなかった。
唾液と愛液が混ざり合い、下着がべったりと肌に張り付く。
その上から何度も丁寧に愛撫され、さらに蜜壷からアルトを誘うように愛液が零れてくる。
すすり上げられる度に、跳んでしまいそうになる思考を必死につなぎとめることしか、シェリルには出来なかった。
「ある・・・、とぉ、・・・あっ、あっ、あぁッ」
「気持ちいいのか?」
「・・・・ッ・!!」
言葉を紡ぎたくても、言葉が出てこない。
今気を抜いてしまえば、自分がどうにかなってしまう。
シェリルに分かるのはそれだけだった。
耳をくすぐるアルトの声とはしたなく下肢を広げる自分の姿。
与えられる刺激をやり過ごすことしかできず、自分ではないような声が漏れてきてしまう。
ビンカンになった全ての感覚が、与えられる刺激の全てが二人の情欲を煽った。
「んんっ・・・ふぁっ・・!」
直に触れた指の感触。
直接的な刺激にシェリルの身体がピクリッと跳ねる。
シェリルの反応に満足そうに笑うと、アルトはそのまま指をナカへと挿入させた。
愛撫によって十分に溶かされたせいで指はどんどん簡単に飲み込まれ、内壁が掴まえようと纏わり付いてくる。
軽く指を回せば、クチュクチュと水音が立つ。
下着をずらし唇で触れると、たちまちシェリルの味が口内へと伝わった。
子犬がミルクを飲むように舌を使い、ぺちゃぺちゃと音を立てて舐めとると、音を拾ったシェリルの表情がさらに真っ赤になっていく。
羞恥に涙を滲ませるくせに、気持ちよさに翻弄されたその表情は堪らなく淫らだ。
そんな表情をもっと見たくて、アルトはぐちゃぐちゃにナカをかき回す。
指を使って入り口を開き、奥へ、奥へと舌を差込み、くすぐるたびにシェリルの身体が跳ね上がるのが嬉しい。
零れる喘ぎ声がもっと乱れさせたいというアルトの欲望を刺激し、さらに大胆になっていった。
逃げる腰を太ももを抱え込むことで引き寄せる。
音を立てて愛液共々吸い上げれば、ひくひくと内壁が何かを求めるようにして震えているのが分かる。
ココに自分のモノを入れてかき混ぜたら、どんなに気持ちがいいだろうか?
そんな考えが過ぎるたびに、アルトの下肢がジンッと痺れた。
もう少しだけ。
もう少し、シェリルを辱めてから。
焦る心を押し留めながら、アルトはシェリルのナカをとろとろに溶かしていく。
両足を肩へと抱え上げた瞬間、アルトの膝がコツンッと何かにぶつかった。
「・・・・・・」
なんだ?と不思議に思ったアルトの視界に映ったのはシェリルからのプレゼント。
それが視界に入った瞬間に、先ほどまでの感情が再び膨れ上がった。
自分を労わろうとしてくれたのは正直嬉しかったし、驚かそうと考えてくれたことも嬉しかった。
が、アルトが引っかかっていたのは買った場所だった。
シェリルは自分の正体がバレてはいけないと考え、一般的な電気店でなく裏道に入ったショップに入ったらしい。
店員の対応は聞いたところ普通のようにも思えたけれど、一番人気だと差し出された商品が問題だった。
他にもいろんなマッサージ方法を携えた商品はたくさんあるだろうに、差し出されたのはシェリルがアルトにとくれたソレだという。
ヘッド部分がまるくなっており、簡単な振動しかしないだろうソレは一見確かにマッサージ器に見えるけれど、別のモノとしても使われる
ことがあるということをアルトは知っていた。
それも、見ていたことを絶対に知られたくないような内容のメディアでだ。
あのマッサージ器をどっちの意味でシェリルに進めたのかは流石にその場にいなかったアルトには分からなかったけれど、あんな簡易なモノを差し出したこと、
それから"ソウイウモノ"関係をあつかうことの多いディープアキハバラの裏道ショップで買ったこと、さらに勧めたという店員の文句も気にかかる。
そういった方面には妙に疎いシェリルをもし、"ソウイウ"興味本位の視線で見られていたらと考えるとやはり面白くない。
脳裏にニヤけた口元が浮かんだ瞬間、アルトの中で何かが小さく爆発した。
「・・・ある、と・・?」
動きを止めたアルトを不安そうにシェリルが見つめる。
揺れる空色の瞳に見つめられたアルトは小さく不適に笑った。
「シェリル、コレこういうことにも使えるんだぞ?」
「えっ・・・っ、やぁあああああああ!!!」
カチリッという音と共にヴィーという駆動音が上がる。
アルトはそれを躊躇いもせずにシェリルの下肢へと押し付けた。
押し付けられたモノが与える振動に、シェリルの身体が硬くなる。
迫りくる刺激の大きさから逃れようとするけれど、それをアルトの身体が押さえてしまい動くことは不可能でいやいやと頭を振り、耐えることしかシェリルには許されない。
感じたことのない感覚にシェリルからポロポロと涙が零れた。
アルトの首筋に抱きつき、波をやり過ごそうとするけれど、初めてのことにそれがうまくいくはずもない。
追い詰められたシェリルが小さく息を吐いたそれすら刺激となり、シェリルの思考を一瞬にして飛ばした。
「・・・・しぇりる?」
「・・・・」
遠慮がちな声に揺り起こされたシェリルが見たものは、きまづそうな顔をしたアルトの表情。
ぼんやりとする思考のまま周りを確認したシェリルはようやく状況を判断すると、倦怠感が付きまとう身体をぎこちなく動かし、アルトに触れた。
しゅんっとなった眉毛が子犬を思わせて可愛らしい。
そこまでしゅんっとされては、怒れないではないかと一人心内でゴチた後で、シェリルは優しくキスをした。
きっと、アルトにも何かあるのだろう。
それを絶対後で聞きだしてやろう。
そう考えながら、シェリルはもう一度アルトの首筋に腕を回す。
そして、その耳元に唇を寄せるとそうっと囁いた。
「・・・もっと、優しくしなさいよ?」
「!!・・・シェリル?」
「・・・なぁに?」
シェリルの言葉にアルトが振るえ、ぼうぜんとしながら名前が呼ばれた。
そのことに、アルトが戸惑っているのだと分かると、シェリルはもう一度唇を重ねる。
傷つけたと思ったことに、アルトもまた傷つくのだと分かってしまったら、もう攻めることなどできるはずがない。
そして、そんな状態になってもアルトが自分を積極的に抱くということはなかなか考えられないから、こちらのリードが必要だ。
シェリルはアルトを誘うように優しく舌を絡ませた。
「・・・アルトも気持ちよくなりなさいよ?」
茶目っ気たっぷりにそう言い、体重をかけて今度はシェリルがアルトを押し倒す。
そして、キツそうになっている下の夜着をずらし、立ち上がっていたソレを口に含んだ。
「ッ!」
絡んだ感触にアルトから声が上がる。
そのことに感じてくれていることを知ったシェリルは嬉しそうに笑うと丁寧に舌を這わせた。
先端を舐め上げ、括れを締め付けるようにしながら何度も飲み込み、アルトを高めていく。
先走りのとろみを感じるようになるまでシェリルは、何度もソレを繰り返した。
熱く、硬くなっているのが舌や口内の粘膜を通して伝わる。
コレが自分のナカをかき回すのだと思うと、自然にシェリルの熱も上がっていく。
すでにぐっしょりと濡らされたソコにコレを受け入れたらどんなに気持ちがいいだろう?
そう考えたシェリルの喉がゴクリとなる。
思わず腰が動いてしまいそうになる自分を自覚し、余計に恥ずかしくなった。
「・・・・アルト、・・・あの、・・・ィ・・れて、・・いい?」
戸惑いながらそう告げたシェリルに、アルトは一瞬だけ目を丸くした後で頷く。
再び、自分が押し倒すべきだろうかとはち切れそうな頭で考えていると、ベットの上に膝立ちしたシェリルが自ら自分の下着を下ろし、アルトの上へと被さってきた。
今までになく積極的なシェリルに内心驚きつつも、自分にまたがったシェリルに手を貸してやる。
一度指と舌で愛撫しただけだというのに、シェリルのソコは簡単にアルトを飲み込んでいった。
口内とは違った感覚がアルトを包み込む。
熱く、蠢く内壁はアルトを見つけると奥へ引き込むようにきつく絡み付いてくる。
一緒に蕩けてしまいそうなその感覚が気持ちよくて堪らなかった。
「んっ・・・・ふっ、ぁ・・・」
アルトを受け入れたシェリルから甘い声が上がる。
自ら上に乗ったせいでいつもより深く侵され、その強い刺激がシェリルをあっという間に飲み込んでいく。
そのままイってしまいそうなシェリルに小さく笑うと、アルトはシェリルをそっと抱き寄せた。
なるべく刺激を与えないように胸へ抱き、そのまま位置を入れ替える。
ようやくいつもの体勢を整えると、アルトはゆっくりと腰を揺らした。
先ほど届いた最奥へ進入しようと、勢いをつけて何度も何度も突き入れる。
それを拒もうとするように締め付けが強くなるけれど、内壁を擦りあげる気持ちよさはアルトをどんどんと熱くしてゆく。
アルトがシェリルを揺らすたび、シェリルから声が零れ、押し寄せる快楽の波に耐えるようにシーツが引かれる。
アルトは姿勢を低くし、シェリルの身体に沿うようにしながら、舌でも刺激を与えた。
穿つ度にぷるんと胸が揺れ、先端の蕾がアルトを誘う。
時々、それらを煽ってやりながらアルトは腰を蠢かせ続けた。
「あぁっ・・・・あっ・・・ぁ・・・」
奥を突くたび、トロトロとした愛液が零れ落ち、シーツに染みを作ってゆく。
ぐちゅぐちゅという卑猥な水音が部屋を満たし、それに荒い呼吸が重なる。
長い愛撫によってすでに蕩かされていたシェリルの身体は、限界が近かった。
アルトにもっと触れたいと、背中に腕が回る。
それは、シェリルが自分に寄せる悦楽を受け入れた瞬間だった。
抵抗をなくした身体は、いとも簡単に波へと飲まれた。
その絶頂で波は砕け落ち、飛沫となってシェリルの意識を奪い去る。
アルトを包んでいた壁が一気に押し迫り、持っている全てを吐き出させようと苦しいくらいに絡みつく。
待ち望んだ解放にアルトも全てを放ち、弾けた熱塊を全てシェリルへと注ぎ込んだ。
全てを吐き出したアルトがベットへと沈むと、シェリルがうっすらと瞳を開く。
空色の瞳が、アルトを見つけると、優しく微笑んだ。
降りた静寂には、幸せな空気が満ちていた。
END
グダグダで済みませんデシタorz
支援ありがとうございました^^
最終更新:2010年03月30日 11:12