アヌビス神-12 - (2007/09/07 (金) 17:51:11) の1つ前との変更点
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ガキンッ
叩きつけられるゴーレムの鋼の拳を、デルフリンガ―で受け流し刀身が鈍い音を立てる。
「一応褒めておいてやるぜ、その頑丈さ」
「俺の偉大さが判ったかアヌ公」
「ケッ、褒めてんのはお前を作った刀鍛治だぜ」
軽口を叩きながらも、くるくると身を翻しその鋼鉄の腕を、アヌビス神で斬りつける。
キンッ
しかし高い音がして弾かれる。
「くくっ、鋼鉄のゴーレム……その硬さ憶えたぞッ!」
しかし二度目の斬撃は鋼鉄をバターの様にあっさりと斬り飛ばす。
動きが重たいゴーレムの周りを、女神が舞うかの様に華麗にワルキューレが跳び、そして跳ねる。
「お仲間が使い手だった時はおどれーたがよ。こうしてきちんと剣の癖して剣を操れるってんだから納得だ」
ゴーレムの後ろを取りながら、鋼鉄の部分をアヌビス神、そうで無い部分をデルフリンガーと器用に使い分けながら次々と斬りつけて回る。
身体から引き出せる力を最大限とし、人の目にも止まらぬ速度で、今までのゴーレムの再生速度を越える速さで四方から斬撃を加え続ける。
タバサ操る風竜のシルフィードが一瞬、アヌビス神らの背面を翔け抜ける。その一瞬タバサがこくりと頷くのが見えた。
大きく跳躍し、魔剣、妖刀、二振りを持ってして大上段から一気にゴーレムを上から下へと斬り裂き、其の侭跳ぶ様に後ろへ下がる。ワルキューレの青銅の身体が、その負荷に耐え切れずに罅割れを大きくし、肩が、背が、砕け崩れる。
自らの側を旋廻し飛翔する風竜に向ってアヌビス神が怒鳴るように叫ぶ。
「ギィィーシュ!!」
叫びに応える様に花びらが舞い、ワルキューレの砕けた身体を次々と健常体へと『錬金』していく。
ギーシュのその動きに続けてタバサが杖を大きく振るう。それと共に巨大な竜巻が現れ、ゴーレムを包み込む。
「次は、あ・た・し」
キュルケが杖を振るい巨大な炎を放ち、竜巻を火炎竜巻へと変える。新鮮な酸素を次々と吸い込む竜巻が炎をより高熱とし、渦巻く高熱の風が、全身切裂かれたゴーレムの全身の構成をぼろぼろにしていく。
「次はあなた」
タバサが少し呆然とその様子を伺っていたルイズを振り向く。
「わ、わたし?」
「これ以上は打撃や衝撃を与えないと駄目。風では足りない。氷は炎で弱る」
タバサがこくりと頷く。
「あの火の中ではワルキューレは耐えられない」
つまり失敗魔法の爆発力で攻めよと彼女は言っている。
ぱしんっとキュルケがルイズの背を叩く。
「わ、わわ、判ったわよ!」
息もつかせぬ速度で次々と、もっとも詠唱が短いルーンを唱える。
火炎竜巻に翻弄されるゴーレムの巨体の彼方此方で、ボンッボンッと爆発が起こり。その脆くなった部分を崩していく。
竜巻が収まった後には、身体を白ませボロボロになったゴーレムが佇んでいる。しかしその身体は未だ動きを止めない。
ワルキューレの身体を持ち直したアヌビス神とデルフリンガ―が、大きく吼え、ゴーレムへと飛び掛る。
脆くなった肩を踏みつける。
半壊した片腕を斬り捨てる。
その頭部を叩く様に斬りつけ砕く。
「おれ的にイメージは良くねえけどよォー」
「あ、何だって?」
「気にするな、行くぜェー」
胴を、狂った様に両の手を振るい次々と斬りつけはじめる。
「斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る」
連撃の負荷に耐えかね、ワルキューレの肩が、腕が次々と皹を走らせ、ギシギシと疲労音で泣き声を上げる。
「か、勘弁してくれ……た…まえ…」
ギーシュが顔を真っ青にして、ふらふらしながら、シルフィードの上から薔薇の花びらを撒き散らす。
それはタバサが起こした小さなつむじ風と共に、花吹雪となってワルキューレを美しく彩る。
ゴーレムの上半身が細切れとなり風に散る。
花吹雪と共に力を取戻したワルキューレを酷使し、其の侭ゴーレムの、腹、腰へと斬撃を加える。
「もういっちょ行くぜデルフ!!」
「おうよ、いっちまえ兄弟!!」
「かァァァァァ――――――
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬るKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLキッルァァァァァァ―――!!!!」
足首を残しゴーレムがサイコロの様に切り刻まれ散る。
それは魂運ぶ戦乙女が齎す死の踊り。
「やっぱおれ、これはイメージ悪いな。オラオラ見てえだ」
「オラオラってなんだ?」
「気にすんな」
そしてワルキューレの身体がついに耐え切れず次々と崩れる。
肩が、腕が、肘が、掌が、首が、胸が罅を走らせ砕ける。
アヌビス神とデルフリンガ―が、崩れる手から取り落とされ、青銅と土の山の上に突き立つ。
「やったの?」
キュルケが下の様子を首を伸ばす様にして覗き込む。
「はは……これで終ってくれていないと僕はもう駄目」
ギーシュはついに力を使い果たし、気を失う一歩手前とばかりにシルフィードの上に突っ伏す。
ルイズは自分の手の平を見て、何かを握る様にぐっと力を入れる。
タバサは気をまだ抜かずにじぃーっと下の様子を伺い続ける。
「駄目……まだ」
残った足首からゴーレムが回りの土を取り込みながら再生を始める。
「うっそォーん」
「だ、だだだ、駄目じゃねえかァッ!」
「脚だ、脚残したからっ」
「ア、アホォッ、何で最後まで斬らなかったんだっ」
「ちょ、ちょっと地面に埋まってたから、てへっ」
「てへっじゃねえ、この若造ッ!」
「と、兎に角やり直しだ。ギィーッシュッ!!」
アヌビスの声に、上空からタバサが腕で×の字を書いて答える。
その僅かなやり取りの間にゴーレムは腰の辺りまで再生している。
「マジかマジかマジか」
「そりゃドットメイジにあそこまでやらせちゃ持たねえだろうよー!」
「嘘だろ嘘。だって修理の分考えてもワルキューレ七体行ってねえよォー」
「馬鹿でっけえ剣作らせてたじゃねえか馬鹿っ!それにあんな空の上から地上への『錬金』
普通にやるよりちょっと負担でかいって。馬鹿馬鹿馬鹿っ!」
「おれ達さっきまで格好良かったよな?」
「ああ、間違いなくぶっちぎりで俺たち伝説だったぜ」
「じゃあ今はどうだ?」
「可愛い鞘付けて武器屋のバーゲンワゴンセール品以下だーな」
上半身まで再生したゴーレムが腕を振り上げる。
「あのゴーレムもワルキューレみたいに操っちまえよ。それでオッケーだ兄弟」
「どうやってェー。最初に触った時にバラバラ粉々だァー」
「使えねえなオメー」
「人の事言えるか!」
「「ははははははは……」」
二振りはお互い言い合うだけ言い合うと、渇いた笑いしか出てこなくなった。
シルフィードの上、ルイズがすくっと立ち上がる。
「タバサ!ゴーレムに『エア・ハンマー』を!
キュルケはわたしに『レビテーション』!」
そしてそう言うやいなや飛び出していた。中空に向って。
「あ、あんた何をっ!」
キュルケが慌てて『レビテーション』をルイズにかける。
それによる減速を確認してから、タバサが『エア・ハンマー』を再生したゴーレムに叩き付ける。
先程よりも幾分小さい再生中のゴーレムが、その衝撃で後によろめく。
地に降り立ったルイズが、決して早くない全力ダッシュで、アヌビス神とデルフリンガ―へと駆けより飛びついた。
「脳味噌がマヌケかっ!『危なくなったら躊躇わずに撤収しろ』っつっただろうがっ!」
「使い魔を見捨てるご主人さまはいないの!」
怒鳴りつけてくるアヌビス神にルイズが怒鳴り返す。
「けど、俺等所詮剣だ。お前等の人生の何倍も、もう充分にやってきた剣だ。生き物でもねえ!」
デルフリンガ―が横から怒鳴りつける。
「それでも、あんた達だって、喋って、考えて、喜んで、泣いて、ふざけて、喧嘩して、その他にも色々色々よ。
人と同じだったじゃない!」
ルイズは更に怒鳴って睨みつけて黙らせる。
そして、右の手でアヌビス神を。左の手でデルフリンガ―を精一杯力を振り絞って持ち上げる。
それらは少女の手には、余りにも似つかわしくなく、そして重たい。
「アヌビス!わたしはあんたに『許可』するわ!」
二振りの剣を構え吼える。
「とんだご主人さまだな。え?アヌ公」
「けっ、言っといてやる。こいつは俺だけのご主人さまだ!
デル公、貴様のご主人さまはこのおれだ。判ったか糞兄貴!」
「んじゃ行くぜ。おれに全部預けろ」
アヌビス神の柄のルーンが再び輝きを放つ。
「アヌビス神ッ!
デルフリンガ―ッ!
ルイズ 二 刀 流 !!」
そして『ガンダルーヴ』ルーンの輝きは今までよりも強く!強く!煌く!
振り下ろされたゴーレムの鋼の拳を、両の剣を交差させ受け止め、其の侭身体を浮かせ後ろへ飛ぶ。
「やつの材質はさっきより弱ってるぜ」
「だがよ兄弟、さっきのアレは、無理だろ?」
「ああ、この細腕でやっちゃ腕がぶっ壊れちまうね」
アヌビス神はルイズの身体を、流れる様に操る。先程のワルキューレなどと比べる事もできない軽やかなステップが踏まれ、桃色がかったブロンドの髪が、太陽とルーンの輝きの光にキラキラと煌く。
次々と繰り出される斬撃が右、左、右、左と順に繰り出されゴーレムの身体を少しづつ削ってゆく。
その舞いを捕らえる事が出来ずにゴーレムは無様に腕を振り回す。
ゴーレムの拳が先端から少しづつ少しづつ、斬って捨てられる。
決して負荷が掛らぬ様に、決して速くはなく、しかし鋭く。
これ以上削らせまいと、ゴーレムは左右の腕を同時に、蚊トンボでも叩き潰す様に振る。
しかしその右の腕をデルフリンガ―で受け止め、其の侭の勢いで左の腕をアヌビス神で斬りつけ、そのままその峰を更に勢いで蹴りつけ、その切れ味を持ってして一気に腕を斬り飛ばし切り抜ける。
宙で舞う様にくるくると身を翻し、大地へと降り立ちまたくるっと一回転し全ての力をその舞いの内に逃がす。
「おい、何でも良いから魔法の準備だッ!」
アヌビス神は素早くデルフリンガ―を鞘へと納め、杖を取り出させる。
「詠唱の時の動きは憶えてる、舌噛まない様にルーン唱えろ」
アヌビス神と杖の二刀流へと切り替え、ゴーレムの腕を捌いた後、軽やかにその懐へと入り込む。
そして腰へ一閃。返す刀で更に一閃。脚の付け根近くを斬り飛ばす。
「今だ!」
「う、うん!
『フライ』!」
至近距離で確実に、その斬り口へと、ゼロの『フライ』を撃ち込む。
そして爆風に乗る様にして、其の侭ゴーレムの懐から飛びのく。
片足の付け根だけ突然爆破されたゴーレムは、バランスを失い転倒する。
「押さえ込んでてくれ!」
アヌビス神が上空の仲間達へと向かい叫ぶ。
タバサによって起き上がろうとするゴーレムへ次々と『エア・ハンマー』が叩き込まれ、砕けた脚が直ぐに『練金』されない様にキュルケの『フレイム・ボール』よって脚が周辺の土ごと焼かれる。
しかしそれすらも、何する物ぞとゴーレムは両の腕を持って、走るルイズを追う為に動かんと足掻く。
だが一枚だけ風に乗り舞う薔薇の花びらがゴーレムの眼前へと舞い落ちる。
そして地より現れる『青銅』のゴーレム『ワルキューレ』……いや、その胸より上。それが首へと絡みつき動きを邪魔せんと、必死にぶら下る。
「ははは、なんとか上手くいったよ……」
シルフィードにしがみ付く様にして、下を見ながら杖を振るギーシュがいた。
「で、どうするの?小屋に向って」
頭だけが自由になるルイズが、突然の己の身体の動きが判らずに問う。
「おれとしちゃ、気にいらねえやり方なんだがよ。
さっきあの小屋に有った物の中に、一発逆転の物がな」
半壊した小屋へと走り込み、ゴミの様に積まれた物の山をあさる。
鞘に納められているデルフリンガーが、なんとか身を乗り出して覗き込んでくる。
「判ったぜ。この『鉄球』だな?見た目的に確実に強そうだぜ」
「違う、只のボールだ、そんなもん!」
ぽいっ
「この赤い石か!確かにこいつぁスゴイパワー秘めてそうだぜ。
魔法見てえに光線がでてゴーレムを焼き払えるんだな?」
「6000年生きてボケたかデル公!夢見るな!」
「わ、判ったぜ。この釣竿でゴーレムを操るフーケを釣……」
「あった!」
アヌビス神は先程投げ捨てたロケットランチャーを見つけた。
「何だこの筒は」
「こ、これって『破壊の杖』じゃないの!宝物庫見学した時見た事有るわ!」
「何揃って寝言言ってんだ。こいつは、ロケットランチャーだ。この型はM72Aか。杖なわきゃねえよ」
「なんだそりゃ」
「ありていに言えばな、あの程度のゴーレムは一撃で粉々にしちまう飛び道具だ。
威力はすげえぞ。昔ちょいと兵隊操ってぶっ放した事有るがよ、上手くやりゃ学院の塔も一発だぜ多分。
ま、おれが生まれた世界の兵器だ」
「それどういう事?」
「説明は後だ、両手で扱う物だからな。ちと、おれを咥えててくれ」
ルイズに己を咥えさせ黙らせると、ロケットランチャーを発射体勢にしながら、外に飛び出て押さえ込まれているゴーレムに向き直る。
扱い方は、既に昔『憶え』ている、考えるまでも無い。
「飛び道具ならあの中から撃ってもいいだろーに。急ぎだろ?」
「黙ってろデル公。こいつは屋根も無くて殆ど外な状態でも、屋内はあんまよくない」
ルイズは不思議な思いだった。己の手が知りもしない武器を自由自在に操るその様が。
「しっかり押さえてろよォー……」
言うと、発射トリガーを引く。
ルイズはその目で、筒から、白煙を吐く太く短い矢の様な何かが飛び出したのを見る。
それは吸い込まれる様にゴーレムの胴に減り込む。その数瞬後に大爆音が響き渡る。反射的に自由になる目を閉じる。
ゴーレムは粉々に砕け散り、土の塊が雨の様に辺りに降り注ぐ。
「な、なんだこりゃ。おでれーた」
一部始終を見ていたデルフリンガ―が声を振るわせ驚く。
「つまんねえ兵器って奴だ」
それに対しアヌビス神が心底くだらないと言った風に吐き捨てた。
「ま、その気持ち判らんでもねーな。
あんなのごろごろ有った日にゃ俺たちゃ用済みだ」
「って事だ。
やっぱ斬り合わねえとな!」
言うとアヌビス神はルイズへと、身体の主導権を自ら返した。
ルイズは未だ呆然とし、ゴーレムが吹き飛び消え去った場所を眺めている。
そこにふらふらとシルフィードが降りてきた。どうやら上空で先程の爆風をモロに受けてしまったらしい。
「わ、わりぃ。そっちへの被害の事、おれすっかり忘れてた」
アヌビス神がふらふらしながら降りてきたキュルケとタバサへと一応とばかりに詫びる。
ギーシュはシルフィードの上でぐたぁーと伸びている。シルフィードも地面にべたぁーっと伸びている。
「さ、流石『破壊の杖』凄まじいわね」
けほけほと咳をしながらキュルケが感嘆の声をあげる。
同じくけほけほしながらタバサが回りをきょろきょろして呟いた。
「フーケは?」
言われてみれば、この戦闘中一切フーケの姿を誰も見ていない。
全員一斉にはっとし辺りを見渡す。ギーシュ以外。
辺りを見渡していると、偵察にでていたミス・ロングビルが、茂みの中から現れた。
「ミス・ロングビル!フーケはどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」
キュルケがそう尋ねると、判らないという風に首を振った。
そのまま『M72LAW』を抱えて座り込んでいるルイズへ『ご苦労様』と言いつつ歩み寄る。
「ミス・ロングビル!」
キュルケが叫んだ。
なんとミス・ロングビルが後ろからルイズの首筋に杖を突き付けている。
「どういうことですか?」
冷汗を流しながらルイズが、ミス・ロングビルを見ようと首を捻る。
「さっきのゴーレムを操っていたのは、わたし」
彼女はルイズの腕を強引に引いて無理矢理立ち上がらせ、そのまま後ろから押さえ込んだ。
[[To Be Continued>アヌビス神-13]]
----
#center(){[[11<>アヌビス神-11]] [[戻る>アヌビス神・妖刀流舞]]}
ガキンッ
叩きつけられるゴーレムの鋼の拳を、デルフリンガ―で受け流し刀身が鈍い音を立てる。
「一応褒めておいてやるぜ、その頑丈さ」
「俺の偉大さが判ったかアヌ公」
「ケッ、褒めてんのはお前を作った刀鍛治だぜ」
軽口を叩きながらも、くるくると身を翻しその鋼鉄の腕を、アヌビス神で斬りつける。
キンッ
しかし高い音がして弾かれる。
「くくっ、鋼鉄のゴーレム……その硬さ憶えたぞッ!」
しかし二度目の斬撃は鋼鉄をバターの様にあっさりと斬り飛ばす。
動きが重たいゴーレムの周りを、女神が舞うかの様に華麗にワルキューレが跳び、そして跳ねる。
「お仲間が使い手だった時はおどれーたがよ。こうしてきちんと剣の癖して剣を操れるってんだから納得だ」
ゴーレムの後ろを取りながら、鋼鉄の部分をアヌビス神、そうで無い部分をデルフリンガーと器用に使い分けながら次々と斬りつけて回る。
身体から引き出せる力を最大限とし、人の目にも止まらぬ速度で、今までのゴーレムの再生速度を越える速さで四方から斬撃を加え続ける。
タバサ操る風竜のシルフィードが一瞬、アヌビス神らの背面を翔け抜ける。その一瞬タバサがこくりと頷くのが見えた。
大きく跳躍し、魔剣、妖刀、二振りを持ってして大上段から一気にゴーレムを上から下へと斬り裂き、其の侭跳ぶ様に後ろへ下がる。ワルキューレの青銅の身体が、その負荷に耐え切れずに罅割れを大きくし、肩が、背が、砕け崩れる。
自らの側を旋廻し飛翔する風竜に向ってアヌビス神が怒鳴るように叫ぶ。
「ギィィーシュ!!」
叫びに応える様に花びらが舞い、ワルキューレの砕けた身体を次々と健常体へと『錬金』していく。
ギーシュのその動きに続けてタバサが杖を大きく振るう。それと共に巨大な竜巻が現れ、ゴーレムを包み込む。
「次は、あ・た・し」
キュルケが杖を振るい巨大な炎を放ち、竜巻を火炎竜巻へと変える。新鮮な酸素を次々と吸い込む竜巻が炎をより高熱とし、渦巻く高熱の風が、全身切裂かれたゴーレムの全身の構成をぼろぼろにしていく。
「次はあなた」
タバサが少し呆然とその様子を伺っていたルイズを振り向く。
「わ、わたし?」
「これ以上は打撃や衝撃を与えないと駄目。風では足りない。氷は炎で弱る」
タバサがこくりと頷く。
「あの火の中ではワルキューレは耐えられない」
つまり失敗魔法の爆発力で攻めよと彼女は言っている。
ぱしんっとキュルケがルイズの背を叩く。
「わ、わわ、判ったわよ!」
息もつかせぬ速度で次々と、もっとも詠唱が短いルーンを唱える。
火炎竜巻に翻弄されるゴーレムの巨体の彼方此方で、ボンッボンッと爆発が起こり。その脆くなった部分を崩していく。
竜巻が収まった後には、身体を白ませボロボロになったゴーレムが佇んでいる。しかしその身体は未だ動きを止めない。
ワルキューレの身体を持ち直したアヌビス神とデルフリンガ―が、大きく吼え、ゴーレムへと飛び掛る。
脆くなった肩を踏みつける。
半壊した片腕を斬り捨てる。
その頭部を叩く様に斬りつけ砕く。
「おれ的にイメージは良くねえけどよォー」
「あ、何だって?」
「気にするな、行くぜェー」
胴を、狂った様に両の手を振るい次々と斬りつけはじめる。
「斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る」
連撃の負荷に耐えかね、ワルキューレの肩が、腕が次々と皹を走らせ、ギシギシと疲労音で泣き声を上げる。
「か、勘弁してくれ……た…まえ…」
ギーシュが顔を真っ青にして、ふらふらしながら、シルフィードの上から薔薇の花びらを撒き散らす。
それはタバサが起こした小さなつむじ風と共に、花吹雪となってワルキューレを美しく彩る。
ゴーレムの上半身が細切れとなり風に散る。
花吹雪と共に力を取戻したワルキューレを酷使し、其の侭ゴーレムの、腹、腰へと斬撃を加える。
「もういっちょ行くぜデルフ!!」
「おうよ、いっちまえ兄弟!!」
「かァァァァァ――――――
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る斬る
斬る斬るKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILL
KILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLKILLキッルァァァァァァ―――!!!!」
足首を残しゴーレムがサイコロの様に切り刻まれ散る。
それは魂運ぶ戦乙女が齎す死の踊り。
「やっぱおれ、これはイメージ悪いな。オラオラ見てえだ」
「オラオラってなんだ?」
「気にすんな」
そしてワルキューレの身体がついに耐え切れず次々と崩れる。
肩が、腕が、肘が、掌が、首が、胸が罅を走らせ砕ける。
アヌビス神とデルフリンガ―が、崩れる手から取り落とされ、青銅と土の山の上に突き立つ。
「やったの?」
キュルケが下の様子を首を伸ばす様にして覗き込む。
「はは……これで終ってくれていないと僕はもう駄目」
ギーシュはついに力を使い果たし、気を失う一歩手前とばかりにシルフィードの上に突っ伏す。
ルイズは自分の手の平を見て、何かを握る様にぐっと力を入れる。
タバサは気をまだ抜かずにじぃーっと下の様子を伺い続ける。
「駄目……まだ」
残った足首からゴーレムが回りの土を取り込みながら再生を始める。
「うっそォーん」
「だ、だだだ、駄目じゃねえかァッ!」
「脚だ、脚残したからっ」
「ア、アホォッ、何で最後まで斬らなかったんだっ」
「ちょ、ちょっと地面に埋まってたから、てへっ」
「てへっじゃねえ、この若造ッ!」
「と、兎に角やり直しだ。ギィーッシュッ!!」
アヌビスの声に、上空からタバサが腕で×の字を書いて答える。
その僅かなやり取りの間にゴーレムは腰の辺りまで再生している。
「マジかマジかマジか」
「そりゃドットメイジにあそこまでやらせちゃ持たねえだろうよー!」
「嘘だろ嘘。だって修理の分考えてもワルキューレ七体行ってねえよォー」
「馬鹿でっけえ剣作らせてたじゃねえか馬鹿っ!それにあんな空の上から地上への『錬金』
普通にやるよりちょっと負担でかいって。馬鹿馬鹿馬鹿っ!」
「おれ達さっきまで格好良かったよな?」
「ああ、間違いなくぶっちぎりで俺たち伝説だったぜ」
「じゃあ今はどうだ?」
「可愛い鞘付けて武器屋のバーゲンワゴンセール品以下だーな」
上半身まで再生したゴーレムが腕を振り上げる。
「あのゴーレムもワルキューレみたいに操っちまえよ。それでオッケーだ兄弟」
「どうやってェー。最初に触った時にバラバラ粉々だァー」
「使えねえなオメー」
「人の事言えるか!」
「「ははははははは……」」
二振りはお互い言い合うだけ言い合うと、渇いた笑いしか出てこなくなった。
シルフィードの上、ルイズがすくっと立ち上がる。
「タバサ!ゴーレムに『エア・ハンマー』を!
キュルケはわたしに『レビテーション』!」
そしてそう言うやいなや飛び出していた。中空に向って。
「あ、あんた何をっ!」
キュルケが慌てて『レビテーション』をルイズにかける。
それによる減速を確認してから、タバサが『エア・ハンマー』を再生したゴーレムに叩き付ける。
先程よりも幾分小さい再生中のゴーレムが、その衝撃で後によろめく。
地に降り立ったルイズが、決して早くない全力ダッシュで、アヌビス神とデルフリンガ―へと駆けより飛びついた。
「脳味噌がマヌケかっ!『危なくなったら躊躇わずに撤収しろ』っつっただろうがっ!」
「使い魔を見捨てるご主人さまはいないの!」
怒鳴りつけてくるアヌビス神にルイズが怒鳴り返す。
「けど、俺等所詮剣だ。お前等の人生の何倍も、もう充分にやってきた剣だ。生き物でもねえ!」
デルフリンガ―が横から怒鳴りつける。
「それでも、あんた達だって、喋って、考えて、喜んで、泣いて、ふざけて、喧嘩して、その他にも色々色々よ。
人と同じだったじゃない!」
ルイズは更に怒鳴って睨みつけて黙らせる。
そして、右の手でアヌビス神を。左の手でデルフリンガ―を精一杯力を振り絞って持ち上げる。
それらは少女の手には、余りにも似つかわしくなく、そして重たい。
「アヌビス!わたしはあんたに『許可』するわ!」
二振りの剣を構え吼える。
「とんだご主人さまだな。え?アヌ公」
「けっ、言っといてやる。こいつは俺だけのご主人さまだ!
デル公、貴様のご主人さまはこのおれだ。判ったか糞兄貴!」
「んじゃ行くぜ。おれに全部預けろ」
アヌビス神の柄のルーンが再び輝きを放つ。
「アヌビス神ッ!
デルフリンガ―ッ!
ルイズ 二 刀 流 !!」
そして『ガンダルーヴ』ルーンの輝きは今までよりも強く!強く!煌く!
振り下ろされたゴーレムの鋼の拳を、両の剣を交差させ受け止め、其の侭身体を浮かせ後ろへ飛ぶ。
「やつの材質はさっきより弱ってるぜ」
「だがよ兄弟、さっきのアレは、無理だろ?」
「ああ、この細腕でやっちゃ腕がぶっ壊れちまうね」
アヌビス神はルイズの身体を、流れる様に操る。先程のワルキューレなどと比べる事もできない軽やかなステップが踏まれ、桃色がかったブロンドの髪が、太陽とルーンの輝きの光にキラキラと煌く。
次々と繰り出される斬撃が右、左、右、左と順に繰り出されゴーレムの身体を少しづつ削ってゆく。
その舞いを捕らえる事が出来ずにゴーレムは無様に腕を振り回す。
ゴーレムの拳が先端から少しづつ少しづつ、斬って捨てられる。
決して負荷が掛らぬ様に、決して速くはなく、しかし鋭く。
これ以上削らせまいと、ゴーレムは左右の腕を同時に、蚊トンボでも叩き潰す様に振る。
しかしその右の腕をデルフリンガ―で受け止め、其の侭の勢いで左の腕をアヌビス神で斬りつけ、そのままその峰を更に勢いで蹴りつけ、その切れ味を持ってして一気に腕を斬り飛ばし切り抜ける。
宙で舞う様にくるくると身を翻し、大地へと降り立ちまたくるっと一回転し全ての力をその舞いの内に逃がす。
「おい、何でも良いから魔法の準備だッ!」
アヌビス神は素早くデルフリンガ―を鞘へと納め、杖を取り出させる。
「詠唱の時の動きは憶えてる、舌噛まない様にルーン唱えろ」
アヌビス神と杖の二刀流へと切り替え、ゴーレムの腕を捌いた後、軽やかにその懐へと入り込む。
そして腰へ一閃。返す刀で更に一閃。脚の付け根近くを斬り飛ばす。
「今だ!」
「う、うん!
『フライ』!」
至近距離で確実に、その斬り口へと、ゼロの『フライ』を撃ち込む。
そして爆風に乗る様にして、其の侭ゴーレムの懐から飛びのく。
片足の付け根だけ突然爆破されたゴーレムは、バランスを失い転倒する。
「押さえ込んでてくれ!」
アヌビス神が上空の仲間達へと向かい叫ぶ。
タバサによって起き上がろうとするゴーレムへ次々と『エア・ハンマー』が叩き込まれ、砕けた脚が直ぐに『練金』されない様にキュルケの『フレイム・ボール』よって脚が周辺の土ごと焼かれる。
しかしそれすらも、何する物ぞとゴーレムは両の腕を持って、走るルイズを追う為に動かんと足掻く。
だが一枚だけ風に乗り舞う薔薇の花びらがゴーレムの眼前へと舞い落ちる。
そして地より現れる『青銅』のゴーレム『ワルキューレ』……いや、その胸より上。それが首へと絡みつき動きを邪魔せんと、必死にぶら下る。
「ははは、なんとか上手くいったよ……」
シルフィードにしがみ付く様にして、下を見ながら杖を振るギーシュがいた。
「で、どうするの?小屋に向って」
頭だけが自由になるルイズが、突然の己の身体の動きが判らずに問う。
「おれとしちゃ、気にいらねえやり方なんだがよ。
さっきあの小屋に有った物の中に、一発逆転の物がな」
半壊した小屋へと走り込み、ゴミの様に積まれた物の山をあさる。
鞘に納められているデルフリンガーが、なんとか身を乗り出して覗き込んでくる。
「判ったぜ。この『鉄球』だな?見た目的に確実に強そうだぜ」
「違う、只のボールだ、そんなもん!」
ぽいっ
「この赤い石か!確かにこいつぁスゴイパワー秘めてそうだぜ。
魔法見てえに光線がでてゴーレムを焼き払えるんだな?」
「6000年生きてボケたかデル公!夢見るな!」
「わ、判ったぜ。この釣竿でゴーレムを操るフーケを釣……」
「あった!」
アヌビス神は先程投げ捨てたロケットランチャーを見つけた。
「何だこの筒は」
「こ、これって『破壊の杖』じゃないの!宝物庫見学した時見た事有るわ!」
「何揃って寝言言ってんだ。こいつは、ロケットランチャーだ。この型はM72Aか。杖なわきゃねえよ」
「なんだそりゃ」
「ありていに言えばな、あの程度のゴーレムは一撃で粉々にしちまう飛び道具だ。
威力はすげえぞ。昔ちょいと兵隊操ってぶっ放した事有るがよ、上手くやりゃ学院の塔も一発だぜ多分。
ま、おれが生まれた世界の兵器だ」
「それどういう事?」
「説明は後だ、両手で扱う物だからな。ちと、おれを咥えててくれ」
ルイズに己を咥えさせ黙らせると、ロケットランチャーを発射体勢にしながら、外に飛び出て押さえ込まれているゴーレムに向き直る。
扱い方は、既に昔『憶え』ている、考えるまでも無い。
「飛び道具ならあの中から撃ってもいいだろーに。急ぎだろ?」
「黙ってろデル公。こいつは屋根も無くて殆ど外な状態でも、屋内はあんまよくない」
ルイズは不思議な思いだった。己の手が知りもしない武器を自由自在に操るその様が。
「しっかり押さえてろよォー……」
言うと、発射トリガーを引く。
ルイズはその目で、筒から、白煙を吐く太く短い矢の様な何かが飛び出したのを見る。
それは吸い込まれる様にゴーレムの胴に減り込む。その数瞬後に大爆音が響き渡る。反射的に自由になる目を閉じる。
ゴーレムは粉々に砕け散り、土の塊が雨の様に辺りに降り注ぐ。
「な、なんだこりゃ。おでれーた」
一部始終を見ていたデルフリンガ―が声を振るわせ驚く。
「つまんねえ兵器って奴だ」
それに対しアヌビス神が心底くだらないと言った風に吐き捨てた。
「ま、その気持ち判らんでもねーな。
あんなのごろごろ有った日にゃ俺たちゃ用済みだ」
「って事だ。
やっぱ斬り合わねえとな!」
言うとアヌビス神はルイズへと、身体の主導権を自ら返した。
ルイズは未だ呆然とし、ゴーレムが吹き飛び消え去った場所を眺めている。
そこにふらふらとシルフィードが降りてきた。どうやら上空で先程の爆風をモロに受けてしまったらしい。
「わ、わりぃ。そっちへの被害の事、おれすっかり忘れてた」
アヌビス神がふらふらしながら降りてきたキュルケとタバサへと一応とばかりに詫びる。
ギーシュはシルフィードの上でぐたぁーと伸びている。シルフィードも地面にべたぁーっと伸びている。
「さ、流石『破壊の杖』凄まじいわね」
けほけほと咳をしながらキュルケが感嘆の声をあげる。
同じくけほけほしながらタバサが回りをきょろきょろして呟いた。
「フーケは?」
言われてみれば、この戦闘中一切フーケの姿を誰も見ていない。
全員一斉にはっとし辺りを見渡す。ギーシュ以外。
辺りを見渡していると、偵察にでていたミス・ロングビルが、茂みの中から現れた。
「ミス・ロングビル!フーケはどこからあのゴーレムを操っていたのかしら」
キュルケがそう尋ねると、判らないという風に首を振った。
そのまま『M72LAW』を抱えて座り込んでいるルイズへ『ご苦労様』と言いつつ歩み寄る。
「ミス・ロングビル!」
キュルケが叫んだ。
なんとミス・ロングビルが後ろからルイズの首筋に杖を突き付けている。
「どういうことですか?」
冷汗を流しながらルイズが、ミス・ロングビルを見ようと首を捻る。
「さっきのゴーレムを操っていたのは、わたし」
彼女はルイズの腕を強引に引いて無理矢理立ち上がらせ、そのまま後ろから押さえ込んだ。
[[To Be Continued>アヌビス神・妖刀流舞-13]]
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