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馬小屋に着くとルイズは既に3匹の馬に鞍をつけていた。 ……おいおい。冗談だろ?ルイズが私たちの分の馬も準備しているなんて。しかしいくら目を凝らして見ても、ちゃんと3匹の馬の準備が整っている。 幻覚じゃないらしい。ルイズが自分の馬以外も用意しているなんて思わなかったな。 シエスタもそれに驚いたのか、呆然とその場に立っている。 「……なにボーっと突っ立てんのよ」 ルイズがこちらを見ながらそう言ってくる。 その言葉にようやく驚きから脱する。 驚くのも無理は無いだろう。まさか平民のために馬の準備までするほど変化しているなんて思わないじゃないか。 「す、すみません!貴族様にそのようなことをさせてしまって!」 シエスタも驚きから脱したのだろう、バスケットを地面に下ろしなかなかいい勢いで頭を下げ謝る。 頭の下げる角度が結構鋭さを感じる。いいセンスだ。 「別に。暇だったからやっただけよ。あんたに謝られる覚えはないわ」 「し、しかし……」 「わたしが謝る必要が無いっていってるんだから、謝らないで」 「……わかりました」 シエスタは本当に驚いたというような顔をしている。 安心しろ。私もだ。 「それであんたが一緒に行く平民でしょ。名前は?」 「シエスタといいます」 「そう。知ってるかもしれないけど、わたしはルイズ、ルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエールよ。 いつもわたしの使い魔がお世話になってるそうね」 「そ、そんな自己紹介されるなんて光栄です!そ、それに、ヨシカゲさんには私の方がお世話になっていて!」 シエスタは相当動揺しているようだ。 私にお世話になっているなんて言うぐらいだからな。 自慢じゃないが私はシエスタの世話なんて一度もしたことが無い。 いつも世話されているほうだ。 まあ、それぐらい動揺しているということなのだろう。 「そんなに恐縮されるとこっちがなんだか悪いことしてるみたいじゃない。」 「す、すみません」 「謝らなくていいっていってるでしょ。まったく。そのタルブの村ってところまで馬で3日かかるんでしょ。そんな調子じゃ息が詰まって大変よ。 だからもっと楽にしなさい」 「は、はい」 ……なんだかルイズがまともなことを言っているような気がする。 私の気のせいだろうか。 っというかいくら皇太子に何か言われたからってこんなにも変わるものだろうか? 本当にルイズはどうしちまったんだ? 「準備できてるわよね?」 「ああ」 「はい」 ルイズの言葉にシエスタと私は肯定する。 「じゃあ出発しましょう」 ルイズの号令の元、私たちは乗馬した。 学院を出発して既に数時間、道中何事もなく平和そのものだ。 ただ、私は馬に乗ることに慣れていないので少し疲れている。 シエスタもそうなのだろう、顔には少し疲労の色が見えている。 それに比べてルイズは随分と余裕な表情だ。乗馬は学院で習っているから慣れているのだろう、なかなか様になっている。 ……乗馬が様になっているだけだが、普段バカにしている奴が活躍していると少しムカつくな。 しかし、ラ・ロシェールに向かうときに比べればたいしたことはないな。 馬もゆったりとしているし、景色を楽しむ暇も十分ある。 空は青く澄んでいて見ていて気持ちがいいし、森の緑は清涼感を感じさせてくれてる。 降り注ぐ日差しは木の葉を明るく照らしたり葉の間をすり抜け見ているもの楽しませてくれる。 電車の窓から見る景色もいいもんだが、馬の方がより良く景色が感じられていいかもしれない。 一番はやっぱり自分の足で歩くことだがな。 それにしてもいい景色だ。元の世界じゃお目にかかれない景色だな。 こんなに自然が溢れたところなんて殆ど無かったからな。 「あ……」 そんなことを思っていると、ルイズの突然な間抜け声が聞こえた。 「どうしたんだ?」 「食事のことを全く考えてなかったわ」 「……バカだな」 「な!バカじゃないわよ!ちょっと忘れてただけだよ!」 小声で言ったのだがどうやら聞こえたらしい。結構耳はいいようだ。 まあ、バカとは言ったが私も食事のことは考えていなかったんだよな。 しかし、やはりルイズはこうだろう。 シャキシャキしたルイズは気持ち悪くていけない。 っと、それは置いといて、 「食事のことなら心配しなくてもいい。シエスタがちゃんと用意している」 らしい。 出発前にそう言っていたからな。嘘ではないだろう。 「ホントなの?」 「はい。このバスケットの中に入ってます」 「気が利くわね。たしか前に来たときに、もう少し先に景色のいいところがあったわ。そこでお昼にしましょう」 その言葉に従い、暫らく行くと少し開けた場所が見えてきた。 ルイズがそこに先に行き、馬から下りる。 そしてシエスタと私も後に続き馬から下りる。そこは綺麗な場所といっても過言ではなかった。 芝生が敷き詰められ、花が所々に咲いており、開けた場所の中央には木が一本生えており丁度いい日陰を作っている。 「すごいな。誰かが作ったのか?」 「わからないわ。でも前からあるわよ」 「私が前に通ったときもありました」 私の言葉にシエスタとルイズがそう言う。 そして誰も何も言わなかったが、3人とも日陰に入った。やはり日に当たりながらだと体が熱くなるからな。 そしてシエスタが持ってきたバスケットのふたを開ける。そして、 「きゃっ!?」 悲鳴を上げた。 「どうした!?」 「どうしたの!?」 「そ、それが……」 シエスタがバスケットを見ながら困ったような顔をする。 バスケットの中を見ようとすると、何かがバスケットの中から出てきた。 それは……子猫だった。小生意気なあの子猫だった。 「なんでここに。っというよりなんでバスケットから?」 「かわいい猫じゃない」 ルイズは猫に近寄ると頭を撫で始める。 猫は気持ちよさそうに咽喉を鳴らす。前に比べて随分と人間慣れしたじゃないか。 「バスケットの中は大丈夫です。荒らされてません」 「そうか」 そりゃよかった。もしあらされてたら尻尾持って振り回すところだった。 「ミス・ヴァリエール、これを」 「ありがと」 シエスタがバスケットから箱を取り出し、ルイズへ渡す。 おそらくその中に料理が入っているのだろう。ルイズが箱のふたを開ける。 「おいしそうじゃない」 中に入っていたのはオーソドックスなサンドイッチだった。 彩りも鮮やかで食欲をそそる。 「馬に乗るので少し軽めのものにしたんですけど、喜んでもらえてよかったです」 シエスタは笑みを浮かべながらそう言った。 そしてもう一つ取り出しそれを自分の前に置く。次に取り出す分がおそらく私のなのだろう。 しかしバスケットに手を突っ込んだまま一向に動こうとしない。どうしたのだろうか? シエスタが私の顔を見る。その顔は今にも泣きそうだ。本当にどうしたんだ?ルイズも気になったのか、小首をかしげてシエスタのほうを見る。 しばらくしてシエスタが恐る恐るといった感じでバスケットから手を出し始める。 そして出し切ったシエスタの手には荒らされた痕跡がはっきりと付いている箱が握られていた。 中身も絶望的だろう。 「すみません!私のと交換しますから!」 シエスタが朝見たときよりもさらに凄まじい勢いで頭を下げ謝ってくる。 「ああ、気にしなくていい」 「でも!」 「気にしなくてもいい。もちろん交換もしなくていい。別にシエスタの責任じゃないからな」 私はそう言うと手袋を外し、ルイズの近くにいた猫の尻尾を掴んだ。 ----

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