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DIOが使い魔!?-21 - (2007/05/31 (木) 23:02:31) の1つ前との変更点
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ルイズはニヤニヤしながら自分の使い魔の背中を見送った。
ルイズには考えがあった。
どうせ怒りのやり場を失っているギーシュは、DIOに決闘を申し込んで憂さを晴らそうとするに決まっている。
平民が貴族に勝てるわけがないという前提がその根拠だ。
しかし、ルイズにとっては、DIOがギーシュに勝とうが負けようがどうでもよかった。
DIOがギーシュに勝てば…それでいい。
自分は何もする必要がない。
ただ、DIOがギーシュを殺そうとしたなら、それを止めればいいだけだ。
万一DIOが逆らっても、強制執行してしまえばいい。
気絶してでも。
それは別にいい。
DIOがメイジに勝つほどの強さを秘めているのなら、それくらいの覚悟はしよう。
---DIOが負けたなら、ルイズはDIOを吹き飛ばすつもりだった。
所詮カリスマだけの使い魔なら、ルイズは用はなかった。
ルイズが求めるのは、真に力を持つ使い魔だ。
ギーシュ程度におくれをとるなら、問答無用で吹き飛ばして、改めてサモン・サーヴァントを行えばいい。
『ゼロ』と呼ばれることには変わりないけど、少なくとも安穏とした生活が戻ってくる。
『旧い使い魔を殺せば、新しい使い魔を召喚できる』
これはルールだった。
つまり、どう転ぼうがルイズに損はないのだ。
ルイズは、自分がDIOを吹き飛ばして、粉々の肉片にする様を想像して、ウットリした。
---正直に言うと、どちらかというとルイズはDIOに負けてほしかった。
だが、ルイズにとっての目下の問題は、これから起こる決闘の行く末ではなく、目の前に置かれているワインだった。
ルイズはDIOが飲み残した、アルビオン産のワインボトルに手を伸ばした。
一口飲む。
実に旨かった。
ギーシュは、突如後ろからメイドの両肩に手を乗せた男に、鋭い視線を向けた。
メイドが振り向いて一言「DIO様」と呟いた。
DIOはシエスタの肩に手を置いたまま、ギーシュに言った。
「『君が軽率に…香水の瓶なんか落としてくれたおかげで…二人のレディと、私のメイドの名誉が傷ついた。……どうしてくれるんだね?』」
DIOはクックッと笑った。
明らかに先ほどのギーシュの言葉に対する当てつけだった。
ギーシュの取り巻きが、どっと笑った。
「そのとおりだギーシュ!お前が悪い!」
ギーシュの顔が、屈辱で真っ赤に染まった。
「ふん…!お前は確か、平民だったな。あの『ゼロ』が呼び出したっていう」
ギーシュはルイズの方をチラと見た。
ルイズはワインを飲んでいた。
いい具合にほろ酔いなルイズは幸せそうだった。
こちらを全く気にした様子もないことが、ギーシュの癪に障った。
「そろいもそろって、貴族に対する礼儀を知らない奴らだ。
君たちのようなものを野放しにしたら、我々貴族の沽券に関わる!」
自分はともかく、己の主をこき下ろされて、シエスタの目が怒りに染まった。
ギロリと睨みつけてくるシエスタに、ギーシュは思わず気圧された。
「だとしたら、どうするかね…?」
DIOはシエスタを抱き寄せながら言った。
シエスタの顔が嬉しそうにほぅと和らいだ。
ギーシュはそんな二人にますます顔を赤くし、マントを翻して言い放った。
「よかろう。君に礼儀を教えてやろう。ちょうどいい腹ごなしだ」
DIOはギーシュに分からぬようにほくそ笑んだ。
「ヴェストリの広場で待っている。
いつでも来たまえ」
ギーシュの取り巻きが、わくわくした顔で立ち上がり、ギーシュを追った。
ギーシュの姿が見えなくなると、DIOはシエスタを放した。
シエスタはその場に畏まった。
「申し訳ありません、DIO様!
私が至らぬばかりに、DIO様にとんでもないご迷惑を…!」
「…シエスタは自分の仕事をしただけだ。
気にするなよ…」
「あぁ、DIO様。御慈悲に感謝いたします…!」
さっきのギーシュに対する謝罪とは全然違うシエスタの態度に、ルイズは笑いを堪えきれなかった。
クスクス笑っているルイズの席の方へ、DIOは戻っていった。
シエスタはしずしずと彼に従った。
ルイズは、決闘になることは分かっていたが、それをDIOの方からけしかけていたことが、不思議だった。
ルイズは笑いながらDIOに聞いた。
「どうしたのよ?自分からふっかけるなんて。
キャラじゃないわよ?」
ルイズの問いに答える前に、DIOは空になったグラスにワインを注ごうとボトルを傾けた。
---が、何もでてこなかった。
DIOははぁ、とため息をつき、ルイズを見た。
ルイズはチシャ猫のような、してやったりの表情を浮かべていた。
「…君の話と、さっきの授業で、この世界の魔法という技術体系は概ね把握したつもりだ。
今回は、それの確認と……」
ルイズは微笑みながら先を促した。
「………私の『スタンド』の回復具合のチェックだ」
聞き慣れない単語に、ルイズは首を捻ったが、ようは自分の実力試しをするつもりなのだろうと結論した。
「まぁ、別にアンタの意図はどうでもいいわ。
でも…………」
途端に、ルイズの笑顔がピタリと消えた。
さっきまでの微笑みが嘘のような無表情だ。
ルイズはDIOの目を覗き込んだ。
「でも…………、さっきアイツは私のことを『ゼロ』と呼んだわ」
DIOは何も言わない。ルイズは続ける。
「もし…アンタがギーシュに勝ったら、構わないわ……そのままギーシュを『殺しなさい』」
許可でも懇願でもない、冷徹な命令だった。
「だが…色々と問題があるんじゃないかね…?」そういうDIOに、ルイズは一転して笑顔になり、杖を取り出した。
「あら、大丈夫よ。粉々に吹っ飛ばすから。
それに、使い魔の責任は、御主人様の責任よ?」ルイズは笑顔で言った。
ルイズの杖が"ミシッ"と音を立てた。
DIOは一言「おぉ、コワい」と言った。
しかし、言葉とは裏腹に、DIOの顔には笑みが浮かんでいた。
「そう?これでも最初は死人沙汰は避けようと思って『いた』のよ?」
ルイズはDIOからちょろまかしたワインの最後を飲み干した。
どうやら彼女は、まだあの授業の時にからかわれたことを根に持っているようだった。
「で、これからどうするの?すぐにヴェストリ広場まで行く?」
そう聞いてくるルイズに、DIOはかぶりを振った。
「いや、これから少し厨房に寄る。色々と入り用のものがあるんだ」
ルイズはそれまで一度も 厨房に入ったことがなかったので、興味をそそられた。
ついて行くと言うルイズを、DIOは無言で承諾した。
「DIO様、ミス・ヴァリエール、どうぞこちらへ」
シエスタ案内で、厨房についたルイズは、予想外にごちゃごちゃしている様子に眉をひそめた。
こんな汚い場所に、何の用があるというのだろうか。
すると、奥で鍋をふるっていた男がこちらに気づき、ドスドスと音を立てて近づいてきた。
「おぅ、誰かと思ったら、DIOじゃねぇか!」そう叫んでDIOを歓迎したのは、料理長のマルトーであった。
DIOにワインを振る舞った人物である。
彼は平民なのだが、魔法学院の料理長ともなれば、その収入は身分の低い貴族なんかは及びもつかなく、羽振りはいい。
マルトーは、そんな裕福な平民の多分に漏れず、貴族と魔法を毛嫌いしていた。
シエスタは、二人の邪魔にならないように、少し離れた場所に控えた。
豪快なマルトーの態度だが、意外にもDIOは気にせず答えた。
「やぁ、マルトー。君のイタズラは、どうやら大成功のようだったよ」
マルトーはそれを聞くと、喜びと苛つきが混ざったような顔をした。
ルイズはわけがわからず二人の顔を交互に見やった。
「ハンっ、それみたことか!貴族の連中め、威張り散らすくせに、味の違いもわからねぇときたもんだ。恐れ入るぜ」
そういうと同時に、マルトーがルイズに顔を向けた。
「誰でぇ?貴族様がこんなところに、何か用かい?」
「彼女は、私の『マスター』だよ、マルトー」
DIOがそういうと、マルトーはその大きな目をさらに大きく見開いて、ルイズを見た。
そして、大声で笑いだした。
「ブッハハハハ!『マスター』!?この小娘が?お前さんの?冗談きっついぜおい!」
ガハハと笑うマルトーに、DIOは低い声で言った。
「…『マスター』は、君のイタズラに気付いていたよ?」
マルトーの笑いがピタリと止まった。
そして、しげしげとルイズを眺め回した。
その視線を不快に感じて、ルイズは一歩退いた。
「何よ、さっぱり話が見えないんだけど!?説明しなさいよ!」
マルトーは頭にかぶっている大きな帽子をかぶりなおした。
「…俺は貴族が嫌えだ。奴らは口を開けばやれ魔法だの、やれ貴族の教養だのとぬかしやがるからな。
だから、俺はチョイと試してみたくなったのさ」
ルイズは未だに話が見えず、首をかしげた。
「俺は今日の生徒の昼食にだすワインを、普通の庶民が飲むような安物にすり替えてやったわけよ。お嬢ちゃんは気づいたみてえだがな」
ルイズはハッとした。
あのワインはそういうことだったのか。
貴族である自分を試されたと言う事実と、一口とはいえ、安物を飲まされたという事実に、ルイズは腹を立てた。
そんなルイズを見て、マルトーは反論した。
「お怒りのようだがよ、お嬢ちゃん。あんたの周りに、気づいた奴がいたか?怪しんだ奴がいたか?」
ルイズは言葉に窮した。誰も少しもおかしいと思っていなかったのは事実だ。
「おたくらが豪語する貴族の教養ってのは、そんなもんなんだよ。
その点、DIOは本物だ。こいつは違いが分かる奴だ。こいつに飲まれたあのアルビオンのワインは幸せものってやつよ」
「……………………」
「だが、あれに気づいたお嬢ちゃんも、てえしたもんだ。
次からは、お嬢ちゃんにも他の奴らよりチョイと良いヤツを出してやるよ」
ルイズは何だか納得がいかなかったが、相手が料理長ということもあり、その場は矛を収めた。
「ところで、マルトー。……頼みがあるんだが」話の区切りを見たDIOは、自分の用事に入った。
自分には関係ない話だと思い、ルイズはその場を離れた。
ふと横を見ると、シエスタがこちらをじーっと見つめていた。
「……何よ?何か用?」
「…いえ、何も、ミス・ヴァリエール」
それっきり、シエスタは視線を逸らした。
そんなシエスタの態度に、ルイズが居心地の悪さを感じていると、DIOがルイズの方に戻ってきた。
話は終わったようだ。
シエスタがDIOに深くお辞儀した。
「で、一体何の用だったわけ?」
とりあえずルイズは聞いた。
「…ちょっとした借り物だよ……」
DIOは答をはぐらかしたが、ルイズはそれ以上追及しなかった。
「では、ヴェストリ広場とやらに向かうとするか。
シエスタ、案内しろ」
シエスタはかしこまりましたと言った。
ルイズはマルトーの言葉の意味を深く考えていた。
to be continued……
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