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音を立てないよう気をつけながらドアを開き、部屋から出る。 辺りを見回してみる。 見渡す限り何も不審なところはない。何故なら見る限り普通の家だからだ。 土足なので海外様式なのだろう。 足音を極力立てないように気をつけながら廊下を歩く。いくら外見が普通だといっても用心しない理由にはならない。 これは過剰な反応だろうか?いや、そうは思わない。 ある日、突然自分の平穏が打ち砕かれるということを私は知っている。 ほんの些細な油断が崩壊への一歩だということを身をもって知っている。 だから、私はそれを基に成長しなければならない。同じ過ちを繰り返さないためにも。 人間は経験によって成長する。そして失敗をしても、それを基に成長できる生き物だ。 よく同じ間違いを繰り返す奴はそれを意識していないのだろう。 そしてかつての私はそうだった。 私の秘密を知った重ちーとかいう小僧を始末する際、油断してしまった。 しかし、私はその油断から生じた平穏の崩壊を川尻浩作に成り代わることで何とか食い止めた。……はずだった。 そう、本当ならそれで食い止められたはずだったのだ。 川尻浩作に成り代わり、平穏に川尻の家に馴染もうと思っていたのに、私は軽率な行動をしてしまった。 完全に馴染む前に自分の性を開放してしまった。我慢することができなった。 それはあまりに軽率な行動だった。自分は常に強運で守られていると油断していたのだ! その油断を、奴らの言っていた『正義の心』は見逃さなかった。自分の性の開放を早人の奴に目撃されたのだ。 しかもビデオカメラに撮影されて。 そんなもの早人を殺せば済む問題だった。現に私は早人の奴を始末した。しかし、時期が悪かった。 丁度その頃、『岸辺露伴』が『川尻浩作』のことを調べ始めたのだと親父から聞いた。 早人を始末したタイミングが悪すぎた。その一言に尽きるだろう。 そんな絶望の最中に立つ私に、再び平穏に暮らすための力が身についたのは偶然としかいいようがなかった。 『バイツァ・ダスト』、キラークイーンの第3の能力で絶対無敵の能力。 そんな能力を身につけたおかげで私は平穏な人生を歩めるはずだった。運命は私の見方のはずだった。 私は『バイツァ・ダスト』を過信しすぎていた。無敵だと浮かれていた。 『バイツァ・ダスト』は無敵なんじゃなかった。いや、この言葉には語弊がある。 能力だけなら『バイツァ・ダスト』は無敵だ。誰にも破ることはできない。 だが、問題は……欠点は自身の心構えだった。 『バイツァ・ダスト』は無敵だと思い込んでいた。無敵だと思い油断していた。 そして私は、なにもできるはずのない小僧である早人にその隙をつかれ、死んだ。 3度、私には3度も平穏を維持する機会があったというのに!その思い込みのせいで!過信しすぎるせいで!同じ過ちを繰り返してしまった! 自分が仗助に言ったのだ!『思い込む』という事が、何よりも『恐ろしい』ということを!過信しているときが一番始末が悪いと! 私自身が一番思いこんでいたんじゃないか!過信していたんじゃないか! だからこそ、だからこそ私は今細心の注意を払って行動する。 なぜなら、今自分は生きているからだ。確かに死んだはずなのに。 呼吸をし、心臓が鼓動して体に血液を送っている。 体中に伝わる確かな感触、死んでいるわけがない。 慌てず、ゆっくり廊下を歩く。 生きているということは、私はまた平穏な人生を歩む機会を手に入れたということだ。 今考えるべきことは、自分が何故生きているかではなく、何故このような事態になっているか?何故ここにいるか?ここはどこなのか?ということだ。 まずそれを知らなければ動きようがない。 それを知るまでは油断は一時もできない。同じ過ちは繰り返さない。 一瞬の気の緩みこそが崩壊への一歩。 それを深く自分の心に刻みつけながら廊下を歩いた。 廊下はそれほど長くはなく、すぐにまた別のドアにたどり着いた。 ドアの隙間からは光が漏れていない。つまりこの部屋には明かりがついていないということか。 念のため、ドアに耳をつけ中の音を聞き取ろうとする。 …………なにも聞こえない。 中には誰もいないようだな。 それでも気を配りながら慎重にドアを開ける。 入った部屋は確認したとおり明かりもなく、誰もいなかった。 明かりはないといったが、部屋の中は暗くはなかった。窓から差し込む月の光が部屋を満たしていたからだ。 窓に近づき、空を見上げてみる。 そこには今まで見た月のゆうに2倍はある月が浮かんでいた。それも二つ。 どれだけ見ても、月は変わらず二つそこにあった。 「本当にどうなってるんだ……」 呟いてはみるものの答えは出ない。 もう見るのはよそう。頭がおかしくなりそうだ。 窓から離れ、部屋を見渡す。大きなテーブルにそれに見合うだけの椅子の数。 テーブルには染みや汚れなどが付着しており、生活臭が感じられる。 椅子の数から見てそれなりの人数がこの家に住んでいるようだ。 そしてテーブルを見る限り、ここの住人はこの部屋で食事をとっているらしい。 この家の住人が私をここに連れてきた?それは考え難い。 この部屋を見る限り、随分と生活様式が古い感じがするが普通の住人が住んでいる感じだ。 普通の人間が人をどこかへ拉致するか?したとしてこんな簡単に逃げ出せるような真似をするか? するはずがない。 そう思いながらあるドアノブに手をかける。見る限り外へ出るためのドアだ。 このまま外へ出てみよう。 気を抜かずドアを開け、外へ出る。 あたりは月明かりに照らされていて、遠くのほうまで見渡せそうだ。 辺りを見回してみる。 ここに来る前に自分がいたと思われる城のような建築物はどこにもなかった。 その代わり、明らかに西洋のものと思われる家が幾つも建っていた。 それを確認して歩き出す。 家に自分が知りたい情報はない。この吉良吉影の『勘』がそう告げている。 ふと家のほうを振り返る。おかしいな?どうも明かりがついていた気がしたんだが……気のせいだったのだろうか? もしかするとこの月の光が自分が知っているものより明るいのでそう思ったのかもしれない。 そう思いながら私は足を前へと進めた。ジクジクと爪が伸びるのを感じながら…… ----

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