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DIOが使い魔!?-30 - (2007/06/12 (火) 23:59:18) の1つ前との変更点

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トリステインの城下町を、ルイズと、それに続いてDIOが歩いていた。 白い石造りの街は、それなりに綺麗ではあったが、魔法学院に比べると、質素ななりの人間の方が多い。 道端で声を張り上げて、様々なものを売る商人達の姿や、老若男女が取り混ぜ歩いている様子は、元の世界のエジプトを思わせ、DIOはほんの少しだけ感慨に耽った。 町の様子を見る限りでは、この世界の文化レベルは、DIOが若かった頃と同じか、それ以下らしい。 少なくとも車は走っていないようだ。 「『ブルドンネ街』。トリステインで一番大きな通りよ」 「…狭いな」 道幅は5メイルもなく、大勢の人が行き来しているので、歩くのも一苦労だ。 道行く人と時々肩をぶつからせ、DIOはもどかしそうに呟いた。 「狭いって…文句をいわれても困るわ。 そう言えば、あなたの世界はどうだったの?」 ルイズはトリステイン自慢の城下町に文句を付けられて、眉をひそめたが、ふと思いついたのか、尋ねてみた。 「道はここよりもだいぶ広いが、その分だけ人間が多い。 人口密度でいえば、寧ろ私の世界の方が高いかもな」 「は?でもあんたさっき狭いって……」 「別に…人が多いからといって、そんな事は通行には関係ない…」 「ふぅ~ん?」 含みを持たせたようなDIOの言葉に、ルイズは首を傾げたが、どうでもよかったので直ぐに再び前を向いた。 ルイズの話によると、この界隈には、魔法を使うスリが出るらしい。 魔法を使うのは貴族だけなのではないのかとDIOが聞くと、メイジの全てが貴族というわけではないらしい。 いろいろな事情で、勘当されたり家を捨てたりした貴族の次男や三男坊などが、身をやつして傭兵や犯罪者になる例は、少なくないのだそうだ。 つらつらと貴族のお家事情を話していたルイズだったが、曲がり角で立ち止まり、さらに狭い路地裏へと入っていった。 悪臭が漂い、ゴミや汚物が道端に転がっていて、どうみても貴族はお呼びではない所だ。 DIOは顔をしかめた。 「あっ、あったわ」 ルイズは四辻に出て、剣の形をした看板が下がっている店を見つけると、ルイズはうれしそうに呟いた。 そこがどうやら武器屋であるらしかった。 店にはいると、昼間だというのに薄暗く、ランプの明かりが灯っていた。 最近どうも日光が苦手になっているルイズには、かえって有り難かった。 壁や棚に、所狭しと剣や槍が並べられ、甲冑も飾ってあった。 店の奥でパイプを加えていたオヤジが、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめたが、紐タイに留めに描かれた貴族の印に気づくと、パイプをはなし、ドスの利いた声を出した。 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これっぽちもありませんや」 「客よ」 ルイズは腕を組んだ。 「こりゃおったまげた。貴族が剣を!おったまげた!」 からかうような口調でいうオヤジに、ルイズはムッとした。 「どうしてかしら?」 「いえ、お嬢様。坊主は聖具を振る。兵隊は剣を振る。貴族は杖を振る。そして陛下はバルコニーからお手をお振りになると、相場は決まっておりますんで…」 「あら、振って欲しいのかしら?」 ルイズは懐から杖をちらつかせた。 「め、滅相もございませんで…」 オヤジは取り繕うように言った。 ルイズは杖を仕舞って言った。 「使うのは私じゃなくて、使い魔よ」 「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も、剣を振るようで」 オヤジは商売っ気と、ルイズの顔色を伺うように、お愛想を言ってから、DIOをじろりと見た。 DIOがその赤い眼で見返すと、オヤジは怯えたように、慌てて目をそらした。 「け、剣をお使いになるのは…この方で?」 ルイズは首を振った。 「使うのは確かにそいつだけど、買うのは剣じゃなくて、ナイフよ。」 オヤジはばつが悪そうにうなった。 「はぁ…申し訳ありませんが、今ナイフは数があまりなくて…10本ばかりしかありませんで、へぇ」 「あら…そうなの? 困ったわね…どうしようかしら」 ルイズは予想外の返答に閉口した。 ここで100本ほどまとめ買いするつもりだったのだ。 早くも目的の一つが頓挫したことになる。 どうしよう…と悩むルイズに、オヤジが提案した。 「では、ナイフに加えて、剣も一本見繕うというのはどうでしょうか? 値段は勉強しておきますが…」 値段もまけてもらえると聞いて、ルイズはオヤジの提案を受け入れることにした。 「そうね、別に手持ち無沙汰って訳じゃないから、そうするわ。私は剣のことなんかわからないから、適当に選んでちょうだい。 値段はどうでもいいから」 オヤジはいそいそと奥の倉庫に消えた。 彼は2人に聞こえないように、小声で呟いた。 「やれやれ、どちらもどちらで、おっかねぇ。 こりゃ、早めにお帰り願った方が吉ってやつだ」 しかし、さっきの口振りからすると、随分と羽振りは良いようである。 オヤジは商売根性剥き出しに、ぼったくってみることにした。 立派な剣を、油布で拭きながら、オヤジは現れた。 「これなんか、いかがです?」 1・5メイルはあろうかという、見事な大剣だった。 所々に宝石が散りばめられていて、鏡のように諸刃の刀身が光っている。 頑丈そうだ。 「店一番の業物でさ。 貴族のお供をさせるなら、このぐらいは腰から下げて欲しいものですな。 やっこさんの体格なら、ピッタリですぜ」 DIOは興味がないのか、店の中を見ているだけなので、かわりにルイズが剣を見た。 ルイズはこれで良いだろうと思った。 店一番とオヤジが太鼓判を押したのも気に入った。 おそらくソレは本当だろう。 …後は、向こうがどれだけふっかけてくるかである。 (…気づいてるのよ、このスカタン!) ルイズは心の中で呟いた。 オヤジの愛想笑いの下にある、ドロドロした商売根性を、ルイズは敏感に感じていた。 ルイズはそんな事は全く臆面にも出さずに、値段を聞いた。 「おいくら?」 「何せこいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で。 魔法がかかっておりますから、鉄だって一刀両断でさ。 ごらんなさい、ここに名前が刻まれているでしょう? おやすかぁありませんぜ」 質問に質問で返してくるオヤジにいらつきながらも、ルイズはどうでもよさげに言い放った。 「お・い・く・ら?」 オヤジはムッとしつつも値段を告げた。 「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千」 (そらきた!) ルイズは心の中でペッと唾を吐いた。 エキュー金貨で二千? 庭付きの豪邸が買える額だ。 いくらゲルマニアのシュペー卿だかカペー朝だかが鍛えたといっても、そこまでするはずがない。 というか、そもそもこんなボロ店が、そんな額の剣を仕入れられる訳がない。 明らかにぼったくりだ。 ルイズはふぅとため息をつくと、姉のカトレアが言っていたことを思い返した。 ---カトレアから--- こういった庶民が利用する店では、貴族の常識はまったく通用しないわ……というのも、値段がすごくいい加減なの。 日常の値打ちを知らない貴族なんかは、いったいいくらなのか見当もつかいから、すごくカモられてしまうの。 …でもね、ルイズ。 その世界では、カモることは悪いことじゃないのよ。 だまされて、買ってしまう人がヌケサクなの。 ここで、買い物の仕方を解説するわ。 例えば---この場合、私はお見通しだよん!…という態度をとって 「エキュー金貨で二千?カッカッカッカバカにしちゃあいかんよ君ィー。 高い高いー!」 …と、大声で笑うの。 すると 「いくらなら買うね?」…と、客に決めさせようと探ってくるわ…。 「ナイフ込みで、五百エキュー金貨にしなさい!」 自分でもこんなに安く言っちやって悪いなぁ~~というくらいの値を言う。 --すると 「オッほっほっほっほっほ~っ」 本気(マジ)~~? 常識あんの~~?と、人を小バカにした態度で… 「そんな値で売ってたら、わたしの家族全員飢え死にだもんねーーっ!」 ギィーッと…首をカッ切る真似をしてくるの…。 でもね、ルイズ…ここで気負けしちゃダメよ。 「そ。じゃあ買うのやめたわ」 帰るマネをしてみましょう。 「O.K.フレンド。わたし貴族に親切ね。 ナイフ込みで、千七百エキューにするよ」 …といって引き止めてくるわ。 「七百エキューにしなさいよ」 ---値段交渉開始ーッ!---- 「千六百!」 「九百!」 「千四百!」 「九百五十!」 …… 「「千百五十!」」 「千百五十!買ったッ!」やったーっ! 四割以上まけてやったわ! ざまーみろ!モーケタモーケタ!(ニコニコ) ………と思っていると 「バイバイサンキューねっ!(いつもは千百で売ってるもんねベロベロベー)」 -------- 「……………………… ……やれやれだな」 DIOの呆れた呟きは、2人に届かないまま、虚空に響いた。 to be continued…… ----
トリステインの城下町を、ルイズと、それに続いてDIOが歩いていた。 白い石造りの街は、それなりに綺麗ではあったが、魔法学院に比べると、質素ななりの人間の方が多い。 道端で声を張り上げて、様々なものを売る商人達の姿や、老若男女が取り混ぜ歩いている様子は、元の世界のエジプトを思わせ、DIOはほんの少しだけ感慨に耽った。 町の様子を見る限りでは、この世界の文化レベルは、DIOが若かった頃と同じか、それ以下らしい。 少なくとも車は走っていないようだ。 「『ブルドンネ街』。トリステインで一番大きな通りよ」 「…狭いな」 道幅は5メイルもなく、大勢の人が行き来しているので、歩くのも一苦労だ。 道行く人と時々肩をぶつからせ、DIOはもどかしそうに呟いた。 「狭いって…文句をいわれても困るわ。 そう言えば、あなたの世界はどうだったの?」 ルイズはトリステイン自慢の城下町に文句を付けられて、眉をひそめたが、ふと思いついたのか、尋ねてみた。 「道はここよりもだいぶ広いが、その分だけ人間が多い。 人口密度でいえば、寧ろ私の世界の方が高いかもな」 「は?でもあんたさっき狭いって……」 「別に…人が多いからといって、そんな事は通行には関係ない…」 「ふぅ~ん?」 含みを持たせたようなDIOの言葉に、ルイズは首を傾げたが、どうでもよかったので直ぐに再び前を向いた。 ルイズの話によると、この界隈には、魔法を使うスリが出るらしい。 魔法を使うのは貴族だけなのではないのかとDIOが聞くと、メイジの全てが貴族というわけではないらしい。 いろいろな事情で、勘当されたり家を捨てたりした貴族の次男や三男坊などが、身をやつして傭兵や犯罪者になる例は、少なくないのだそうだ。 つらつらと貴族のお家事情を話していたルイズだったが、曲がり角で立ち止まり、さらに狭い路地裏へと入っていった。 悪臭が漂い、ゴミや汚物が道端に転がっていて、どうみても貴族はお呼びではない所だ。 DIOは顔をしかめた。 「あっ、あったわ」 ルイズは四辻に出て、剣の形をした看板が下がっている店を見つけると、ルイズはうれしそうに呟いた。 そこがどうやら武器屋であるらしかった。 店にはいると、昼間だというのに薄暗く、ランプの明かりが灯っていた。 最近どうも日光が苦手になっているルイズには、かえって有り難かった。 壁や棚に、所狭しと剣や槍が並べられ、甲冑も飾ってあった。 店の奥でパイプを加えていたオヤジが、入ってきたルイズを胡散臭げに見つめたが、紐タイに留めに描かれた貴族の印に気づくと、パイプをはなし、ドスの利いた声を出した。 「旦那。貴族の旦那。うちはまっとうな商売してまさあ。お上に目を付けられるようなことなんか、これっぽちもありませんや」 「客よ」 ルイズは腕を組んだ。 「こりゃおったまげた。貴族が剣を!おったまげた!」 からかうような口調でいうオヤジに、ルイズはムッとした。 「どうしてかしら?」 「いえ、お嬢様。坊主は聖具を振る。兵隊は剣を振る。貴族は杖を振る。そして陛下はバルコニーからお手をお振りになると、相場は決まっておりますんで…」 「あら、振って欲しいのかしら?」 ルイズは懐から杖をちらつかせた。 「め、滅相もございませんで…」 オヤジは取り繕うように言った。 ルイズは杖を仕舞って言った。 「使うのは私じゃなくて、使い魔よ」 「忘れておりました。昨今は貴族の使い魔も、剣を振るようで」 オヤジは商売っ気と、ルイズの顔色を伺うように、お愛想を言ってから、DIOをじろりと見た。 DIOがその赤い眼で見返すと、オヤジは怯えたように、慌てて目をそらした。 「け、剣をお使いになるのは…この方で?」 ルイズは首を振った。 「使うのは確かにそいつだけど、買うのは剣じゃなくて、ナイフよ。」 オヤジはばつが悪そうにうなった。 「はぁ…申し訳ありませんが、今ナイフは数があまりなくて…10本ばかりしかありませんで、へぇ」 「あら…そうなの? 困ったわね…どうしようかしら」 ルイズは予想外の返答に閉口した。 ここで100本ほどまとめ買いするつもりだったのだ。 早くも目的の一つが頓挫したことになる。 どうしよう…と悩むルイズに、オヤジが提案した。 「では、ナイフに加えて、剣も一本見繕うというのはどうでしょうか? 値段は勉強しておきますが…」 値段もまけてもらえると聞いて、ルイズはオヤジの提案を受け入れることにした。 「そうね、別に手持ち無沙汰って訳じゃないから、そうするわ。私は剣のことなんかわからないから、適当に選んでちょうだい。 値段はどうでもいいから」 オヤジはいそいそと奥の倉庫に消えた。 彼は2人に聞こえないように、小声で呟いた。 「やれやれ、どちらもどちらで、おっかねぇ。 こりゃ、早めにお帰り願った方が吉ってやつだ」 しかし、さっきの口振りからすると、随分と羽振りは良いようである。 オヤジは商売根性剥き出しに、ぼったくってみることにした。 立派な剣を、油布で拭きながら、オヤジは現れた。 「これなんか、いかがです?」 1・5メイルはあろうかという、見事な大剣だった。 所々に宝石が散りばめられていて、鏡のように諸刃の刀身が光っている。 頑丈そうだ。 「店一番の業物でさ。 貴族のお供をさせるなら、このぐらいは腰から下げて欲しいものですな。 やっこさんの体格なら、ピッタリですぜ」 DIOは興味がないのか、店の中を見ているだけなので、かわりにルイズが剣を見た。 ルイズはこれで良いだろうと思った。 店一番とオヤジが太鼓判を押したのも気に入った。 おそらくソレは本当だろう。 …後は、向こうがどれだけふっかけてくるかである。 (…気づいてるのよ、このスカタン!) ルイズは心の中で呟いた。 オヤジの愛想笑いの下にある、ドロドロした商売根性を、ルイズは敏感に感じていた。 ルイズはそんな事は全く臆面にも出さずに、値段を聞いた。 「おいくら?」 「何せこいつを鍛えたのは、かの高名なゲルマニアの錬金魔術師シュペー卿で。 魔法がかかっておりますから、鉄だって一刀両断でさ。 ごらんなさい、ここに名前が刻まれているでしょう? おやすかぁありませんぜ」 質問に質問で返してくるオヤジにいらつきながらも、ルイズはどうでもよさげに言い放った。 「お・い・く・ら?」 オヤジはムッとしつつも値段を告げた。 「エキュー金貨で二千。新金貨なら三千」 (そらきた!) ルイズは心の中でペッと唾を吐いた。 エキュー金貨で二千? 庭付きの豪邸が買える額だ。 いくらゲルマニアのシュペー卿だかカペー朝だかが鍛えたといっても、そこまでするはずがない。 というか、そもそもこんなボロ店が、そんな額の剣を仕入れられる訳がない。 明らかにぼったくりだ。 ルイズはふぅとため息をつくと、姉のカトレアが言っていたことを思い返した。 ---カトレアから--- こういった庶民が利用する店では、貴族の常識はまったく通用しないわ……というのも、値段がすごくいい加減なの。 日常の値打ちを知らない貴族なんかは、いったいいくらなのか見当もつかないから、すごくカモられてしまうの。 …でもね、ルイズ。 その世界では、カモることは悪いことじゃないのよ。 だまされて、買ってしまう人がヌケサクなの。 ここで、買い物の仕方を解説するわ。 例えば---この場合、私はお見通しだよん!…という態度をとって 「エキュー金貨で二千?カッカッカッカバカにしちゃあいかんよ君ィー。 高い高いー!」 …と、大声で笑うの。 すると 「いくらなら買うね?」…と、客に決めさせようと探ってくるわ…。 「ナイフ込みで、五百エキュー金貨にしなさい!」 自分でもこんなに安く言っちゃって悪いなぁ~~というくらいの値を言う。 --すると 「オッほっほっほっほっほ~っ」 本気(マジ)~~? 常識あんの~~?と、人を小バカにした態度で… 「そんな値で売ってたら、わたしの家族全員飢え死にだもんねーーっ!」 ギィーッと…首をカッ切る真似をしてくるの…。 でもね、ルイズ…ここで気負けしちゃダメよ。 「そ。じゃあ買うのやめたわ」 帰るマネをしてみましょう。 「O.K.フレンド。わたし貴族に親切ね。 ナイフ込みで、千七百エキューにするよ」 …といって引き止めてくるわ。 「七百エキューにしなさいよ」 ---値段交渉開始ーッ!---- 「千六百!」 「九百!」 「千四百!」 「九百五十!」 …… 「「千百五十!」」 「千百五十!買ったッ!」やったーっ! 四割以上まけてやったわ! ざまーみろ!モーケタモーケタ!(ニコニコ) ………と思っていると 「バイバイサンキューねっ!(いつもは千百で売ってるもんねベロベロベー)」 -------- 「……………………… ……やれやれだな」 DIOの呆れた呟きは、2人に届かないまま、虚空に響いた。 to be continued…… ----

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