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ゼロの兄貴-17 - (2007/06/20 (水) 03:18:22) の1つ前との変更点

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朝もやの中ルイズが一人で馬に鞍を付けていた。 そこに足音が聞こえルイズがその方向に振り向く。 プロシュートがデルフリンガーを手に持ち朝もやを掻き分けるようにしてこちらに向かってきている。 もやに隠れてよく見えないが視線が合った気がして思わず視線を下に反らす。 昨日見せたあの冷徹な殺意を持った目を思い出したからだ。 「出る準備をしてるって事は、あの姫さんの覚悟はできたようだな」 改めてプロシュートと視線を合わせるが、もうスデにあの目はしていなかった。 それを見てルイズが昨日の事を問いただす。 「昨日はなんであんなに怒ってたのよ…?組織とか反乱とか言ってたけどそれが関係あるの?」 答えるのに少し躊躇したがプロシュートが口を開いた。 「あの時も言ったがオレ達チームはある組織に属し任務をこなしていた。    だが命がけで任務を成しても何一つ信頼されずに『シマ』…まぁこっちでいう領地みてーなもんだ。      それすらも与えられず使い潰されるだけだった。それを不満に思ったオレ達の仲間のうち二人が組織のボスの事を探ったが二人とも殺された」 さすがに暗殺チームである事やホルマリン漬けにされた輪切りのソルベの事は話はしないが話を続けた。 「それからしばらくしてオレ達はある情報を掴みそれがきっかけで組織を離反し     その情報で掴んだあるものを奪取しようとして敵と戦い150キロの列車から突き落とされた時にオメーに召喚されたってわけだ」 「だからルイズ。オメーには命を救われたっつー借りがある」 それだけ言って話を打ち切り馬に鞍と荷物を付ける。 「…それでも、姫様の手を踏み付けるなんて下手したら処刑よ?」 「それでオレを処刑しようとするなら向かってくるヤツを全員始末するだけの事だ」 グレイトフル・デッドの射程なら魔法の射程外から老化させる事も可能の上、火を放てば氷も効かなくなり直触り並みの速度で老化もさせる事ができる やろうと思えばプロシュート一人でもこの国を滅ぼせれるだけの戦力は持っているのだ。 言いながらルイズを手で呼ぶ。 「……なに?」 スッパァーーz____ン ルイズの頭をプロシュートが叩きいい音が辺りに鳴り響いた 「~~~~~~痛ッ!痛いじゃない…!」 「人を『生き物』扱いしてくれた礼だ」 数秒沈黙が流れ―― 「なに…?気にしてたの?……意外とかわいいとこあるわね」 ルイズが痛がりつつ半笑いになりがら言い放つが、言われた方は2発目を繰り出すべく手を振り上げていた。 だがその手を振り下ろそうとした瞬間僅かだが自然に発生したものとは違う風を感じルイズを突くと同時にその反動で自らも後ろに飛び下がる。 さっきまで自分とルイズが居た場所に突風が吹き荒れた。 「敵かッ!」 「おお?やっと俺の出番か?兄貴ィ」 相手の素性が知れなくともこちらを攻撃してくるからには敵と判断し即座にグレイトフル・デッドを発現させデルフリンガーを抜く 敵の数、位置、そしてこの視界の悪さからして直触りを優先するより武器を持ち本体の強化を選んだ方が良策と判断した。 朝もやの中から一人の男が現れたがプロシュートはそいつに見覚えがある。 アンリエッタの出迎えの時に見た羽根帽子の男だ。 (王女の近くにいたからには親衛隊か…それに類する連中か。そいつが攻撃を仕掛けてくるって事は…やはりオレを始末するつもりか?) プロシュートの目が瞬時に昨日見せたあの目に切り替わりルイズが息を飲む。 (ヤバイ…!プロシュートのこの目はやると言ったら確実にやる目だわ…!それに間違いなく姫様が仕向けた刺客だと勘違いしてるし…!) この冷徹かつ殺意を持った目をしている時にこの国の王女であるアンリエッタの手を踏み付けたのだ。 次は躊躇無くこの刺客を殺し次に向かう目標がアンリエッタであろうことはルイズにも容易に想像できた。 だが羽帽子の男はその殺意の篭った視線に気付いたのか口を開いた。 「僕は敵じゃあない。姫殿下より君達に同行するように命じられた者で女王陛下直属魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルド子爵だ」 だがそれを聞いたプロシュートは視線を合わせたまま警戒体勢を解こうとはしない。 「攻撃までしておきながらテメーが敵じゃあないと信じるマヌケが居ると思うか?悪りーが杖をこっちに投げでもしない限り敵として扱わせてもらう」 微塵も油断する隙すら見せないプロシュートに対して『やれやれだぜ』と言わんばかりに男が首を振った。 「すまない。婚約者が殴られようとしてるのをしているのを見て見ぬ振りはできなくてね。しかし…その用心深さは賞賛に値するよ」 味方と判別できない以上どちらか分からない者は敵として扱う。暗殺者として当然の行動だ。 だがプロシュートの頭に「婚約者だと?」と疑問が浮かんだがその答えはすぐ理解できた。 「ワルド様…!」 プロシュートに突き飛ばれて倒れていたルイズが震える声でそう言った。 「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ!」 ワルドは人懐っこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、抱き上げる。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだ!」 「……お恥ずかしいですわ」 「彼を紹介してくれたまえ。どうやらまだ信用されてないみたいだ」 ワルドがルイズを地面に下ろし、苦笑しながら帽子を目深に被ってそう言った。 「あ、あの……使い魔のプロシュートです」 ルイズがプロシュートを指差して言ったが当の本人は未だ警戒態勢を解いてはいない。 「きみがルイズの使い魔かい?……そうか、グラモン元帥の息子を決闘で打ち滅ぼした平民というのはきみの事だったのか」 「その事もあるがな…ルイズがオメーを信頼しててもオレがそのまま信用したと思わないでもらいてーな」 「ワルド様なら大丈夫よ…わたしが保証するから武器を収めてちょうだい…」 「俺の出番これd……」 頼み込むような顔で懇願してくるルイズを見てデルフリンガーを鞘に収める。もちろんグレイトフル・デッドは控えさせたままだ。 頼み込むような顔で懇願してくるルイズを見てデルフリンガーを鞘に収める。もちろんグレイトフル・デッドは控えさせたままだ。 それを見たワルドが気さくな感じでプロシュートに近付いた。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「………フン」 武器こそ収めたもののプロシュートの目は油断なくワルドを見ている。 「なるほど…その油断と隙の無さ。君があの『土くれのフーケ』を捕まえたという話も納得がいったよ」 そう言い放ち口笛を吹くと朝もやの中からグリフォンが飛んできた。 「さて…時間が惜しい、そろそろ出発するとしよう」 が、その時上空から羽音が聞こえ全員が上を向きルイズが驚いたように声を上げた。 「シルフィード!ってことはキュルケとタバサ!?」 地面に着陸したシルフィードからキュルケが降り立った。 「お待たせ」 それを見たルイズがキュルケに怒鳴る。 「何しにきたのよ!」 「あたしも昨日あそこに居たから話を聞いちゃってね一緒に行かないわけにもいかないし助けにきてあげたのよ」 タバサは何も知らずに寝ていたところを叩き起こされたため未だパジャマ姿でシルフィードの上で本を読んでいる。 ルイズが腕を組みキュルケと睨み合いを開始する。 ルイズを半ば無視する形でキュルケがワルドに迫るがそちらもほぼ相手にされていないようだ。 「馬はまだ慣れてねーからな、助かる」 それを尻目にプロシュートがタバサに礼を言いながら荷物をシルフィードの背中に乗せている。 フーケの事もありキュルケとタバサはそれなりに信用していいとは思うようになっていた。 「おいで、ルイズ」 ワルドがルイズを呼び抱きかかえたままグリフォンに乗り 「では諸君、出撃だ!」 グリフォンが駆け出したのを確認すると上空から三人の乗ったシルフィードが後を追っていく。 その光景を学院長室の窓から見ているのは昨日プロシュートに説教食らったばかりのアンリエッタだった。 プロシュートに左手を踏まれながら言われた言葉が心の奥底に引っかかっていた。 『生まれた時から平民を支配して当然と思っている』 実際そう思っている貴族がほとんどなため何一つ反論できなかったのだ。 「オールド・オスマン…彼は一体何者なのですか?」 実権を枢機卿が掌握しほぼ形骸と化しているが一国の王女に対して本気で怒りと殺意をぶつけてきた者がただの平民であるはずがないと思っていた。 「彼が言うにはハルケギニアではない別の世界から召喚されたと言っておりました」 「そのような世界があるのですか……?」 アンリエッタが遠くを見るような目になる。 プロシュートに踏まれた痛みがまだ残っているがそれを右手で押さえると小さな声で呟いた。 「『責任』と『覚悟』…ルイズ無事で…」 「さて…どうしたものかなこれは」 グリフォンとシルフィートを飛ばしてきたおかげでその日の夜中にラ・ロシェールの入り口に着いたのだが 峡谷を進んでいる所に襲撃を受け松明を投げ入れらていた。 「メイジが居ねーのなら次に飛んでくるのは弾ってのが順当なとこだな」 「なんでそんなに冷静なんだか…」 それに答えるかのように無数の矢がシルフィード目掛け飛来してくる。 キュルケは慌て気味だがタバサとプロシュートは何時もと変わらず冷静だった。 タバサが風の魔法で小型の竜巻を作りだし矢を弾きプロシュートが抜けてきた矢をグレイトフル・デッドで受け止める。 矢を受けた衝撃はフィードバックされるが傷にはならない。 「夜盗か…山賊の類か?」 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも……」 「貴族なら弓なぞ使わんだろう」 ワルドの呟きにルイズがはっとした声でその可能性を上げるが魔法が飛んでこない以上メイジは居ない事は確実だった。 「連中銃も2~3丁持ってやがるな」 「シルフィードを低空飛行させてたのが仇になったわね…」 矢なら風で弾き飛ばせるが単発式の旧式銃とはいえ弾丸なら風を突破して上空に上がろうとするシルフィードに届く可能性があった。 「崖の上から狙ってるから魔法も届かないわね…!」 「一着しかねーからやりたくなかったが…そうも言ってられねーようだな…」 デルフリンガーを引っつかんだプロシュートが崖の下に向かいものスゴイ速度で登り始める。 ルーンの効果で体が羽の如く軽くなっているのもあるがそれに加えグレイトフル・デッドの手で崖を掴み登っているため手を使わず飛ぶようにして登っているように見える。 矢がプロシュートを狙い飛んでくるがそれはワルドとタバサが風の魔法で全て撃ち落し銃弾は的が小さい上に連射できないで当たらない。 そして崖の上へ飛び乗り数秒すると 「タコス!」 「おっぱァアアーッ」 「ドゲェーーッ」 などの面白い叫びをあげながら弓と銃で狙っていた男達が崖を転がるようにして全て叩き落とし 崖の上から飛び降りるようにして降りてくるプロシュートが下に転がっていた男をクッション代わりにして着地した。 もちろん、降りる時もスタンドの手で適度にブレーキを掛けながらのため怪我は無い。……踏まれた方はそうでもなさそうに悶えているが。 「驚いたな…彼は平民なのだろう?崖から飛んだ時に落ちる速度が普通より遅かった気がしたが」 「兄貴ィ…そろそろ俺使って攻撃してくr…」 デルフリンガーを鞘に戻し崖から落ちてきた男達を半分蹴り飛ばしながら一箇所に集めワルドが杖を向け尋問を開始する。 「ただの物取りか…捨て置いてもいいだろう」 だが、その答えに納得いってないプロシュートが反論する。 「ただの物取りがグリフォンや竜に乗っていかにもメイジですって自己主張してるような      連中に仕掛けてくるわけねーだろうが。物を奪える相手を襲うから物取りって言うんだぜ?」 「だが彼らは物取りだとしか言わないが…何かいい手でもあるのかね?」 その言葉を後にして男達をルイズ達から見えない岩場に連れて行きしばらくすると… ズッタン!ズッズッタン! 「うんごおおおおおおおおおお!!!」 ズッタン!ズッズッタン! グイン!グイン! バッ!バッ! 「うんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 ズッタン!ズッズッタン…… 妙に軽快なリズム音と男達の悲痛な叫びがその場に流れてきた。 「白仮面とマントの男とナイフを土くれに変えた女に雇われただとよ」 言いながらプロシュートが岩陰から出てくる。 「その言葉信用していいのかい?適当な嘘でこちらを騙そうとしているかもしれないぞ?」 「人間死ぬよりヤバイ目にあった時は本当の事しか言えねーもんだ」 「ふむ…後ろにメイジが関わってくるとなるとこの先も襲撃されるかもしれないな。注意するとしよう。      とりあえず卿はラ・ロシェールに一泊して朝一番の便でアルビオンに向かうとしようじゃあないか」 ワルドがそう言いルイズを抱きかかえグリフォンに騎乗し街に向かう。 プロシュート達もシルフィードに乗りその後を追うが、その上でキュルケがどうやって男達を自白させたのか聞いてきた。 「なに、猿轡をして一人づつ順番にゆっくりと直に老化させていっただけだ     全力でやるとすぐに気絶しちまうが、加減しながらやれば自分がどうなっているか理解しながら老化していくからな」 ゆっくりとは言っても通常ありえない速度で自らが老化していくのである。 老化している物が若いのならなおさらだ。肉体にダメージを与える拷問より余程効果的といえる。 「敵には容赦しないのね……でもそこが素敵!」 「危険」 シルフィードの上でキュルケがプロシュートに抱き付こうとするがさすがに危ないと思ったのかタバサが突っ込んだ。 アンリエッタの手紙取り戻し隊 ― ヤバイ『ラ・ロシェールに』IN! ←To be continued ----
朝もやの中ルイズが一人で馬に鞍を付けていた。 そこに足音が聞こえルイズがその方向に振り向く。 プロシュートがデルフリンガーを手に持ち朝もやを掻き分けるようにしてこちらに向かってきている。 もやに隠れてよく見えないが視線が合った気がして思わず視線を下に反らす。 昨日見せたあの冷徹な殺意を持った目を思い出したからだ。 「出る準備をしてるって事は、あの姫さんの覚悟はできたようだな」 改めてプロシュートと視線を合わせるが、もうスデにあの目はしていなかった。 それを見てルイズが昨日の事を問いただす。 「昨日はなんであんなに怒ってたのよ…?組織とか反乱とか言ってたけどそれが関係あるの?」 答えるのに少し躊躇したがプロシュートが口を開いた。 「あの時も言ったがオレ達チームはある組織に属し任務をこなしていた。    だが命がけで任務を成しても何一つ信頼されずに『シマ』…まぁこっちでいう領地みてーなもんだ。      それすらも与えられず使い潰されるだけだった。それを不満に思ったオレ達の仲間のうち二人が組織のボスの事を探ったが二人とも殺された」 さすがに暗殺チームである事やホルマリン漬けにされた輪切りのソルベの事は話はしないが話を続けた。 「それからしばらくしてオレ達はある情報を掴みそれがきっかけで組織を離反し     その情報で掴んだあるものを奪取しようとして敵と戦い150キロの列車から突き落とされた時にオメーに召喚されたってわけだ」 「だからルイズ。オメーには命を救われたっつー借りがある」 それだけ言って話を打ち切り馬に鞍と荷物を付ける。 「…それでも、姫様の手を踏み付けるなんて下手したら処刑よ?」 「それでオレを処刑しようとするなら向かってくるヤツを全員始末するだけの事だ」 グレイトフル・デッドの射程なら魔法の射程外から老化させる事も可能の上、火を放てば氷も効かなくなり直触り並みの速度で老化もさせる事ができる やろうと思えばプロシュート一人でもこの国を滅ぼせれるだけの戦力は持っているのだ。 言いながらルイズを手で呼ぶ。 「……なに?」 スッパァーーz____ン ルイズの頭をプロシュートが叩きいい音が辺りに鳴り響いた 「~~~~~~痛ッ!痛いじゃない…!」 「人を『生き物』扱いしてくれた礼だ」 数秒沈黙が流れ―― 「なに…?気にしてたの?……意外とかわいいとこあるわね」 ルイズが痛がりつつ半笑いになりがら言い放つが、言われた方は2発目を繰り出すべく手を振り上げていた。 だがその手を振り下ろそうとした瞬間僅かだが自然に発生したものとは違う風を感じルイズを突くと同時にその反動で自らも後ろに飛び下がる。 さっきまで自分とルイズが居た場所に突風が吹き荒れた。 「敵かッ!」 「おお?やっと俺の出番か?兄貴ィ」 相手の素性が知れなくともこちらを攻撃してくるからには敵と判断し即座にグレイトフル・デッドを発現させデルフリンガーを抜く 敵の数、位置、そしてこの視界の悪さからして直触りを優先するより武器を持ち本体の強化を選んだ方が良策と判断した。 朝もやの中から一人の男が現れたがプロシュートはそいつに見覚えがある。 アンリエッタの出迎えの時に見た羽根帽子の男だ。 (王女の近くにいたからには親衛隊か…それに類する連中か。そいつが攻撃を仕掛けてくるって事は…やはりオレを始末するつもりか?) プロシュートの目が瞬時に昨日見せたあの目に切り替わりルイズが息を飲む。 (ヤバイ…!プロシュートのこの目はやると言ったら確実にやる目だわ…!それに間違いなく姫様が仕向けた刺客だと勘違いしてるし…!) この冷徹かつ殺意を持った目をしている時にこの国の王女であるアンリエッタの手を踏み付けたのだ。 次は躊躇無くこの刺客を殺し次に向かう目標がアンリエッタであろうことはルイズにも容易に想像できた。 だが羽帽子の男はその殺意の篭った視線に気付いたのか口を開いた。 「僕は敵じゃあない。姫殿下より君達に同行するように命じられた者で女王陛下直属魔法衛士隊、グリフォン隊隊長ワルド子爵だ」 だがそれを聞いたプロシュートは視線を合わせたまま警戒体勢を解こうとはしない。 「攻撃までしておきながらテメーが敵じゃあないと信じるマヌケが居ると思うか?悪りーが杖をこっちに投げでもしない限り敵として扱わせてもらう」 微塵も油断する隙すら見せないプロシュートに対して『やれやれだぜ』と言わんばかりに男が首を振った。 「すまない。婚約者が殴られようとしてるのをしているのを見て見ぬ振りはできなくてね。しかし…その用心深さは賞賛に値するよ」 味方と判別できない以上どちらか分からない者は敵として扱う。暗殺者として当然の行動だ。 だがプロシュートの頭に「婚約者だと?」と疑問が浮かんだがその答えはすぐ理解できた。 「ワルド様…!」 プロシュートに突き飛ばれて倒れていたルイズが震える声でそう言った。 「久しぶりだな、ルイズ! 僕のルイズ!」 ワルドは人懐っこい笑みを浮かべると、ルイズに駆け寄り、抱き上げる。 「お久しぶりでございます」 「相変わらず軽いなきみは!まるで羽のようだ!」 「……お恥ずかしいですわ」 「彼を紹介してくれたまえ。どうやらまだ信用されてないみたいだ」 ワルドがルイズを地面に下ろし、苦笑しながら帽子を目深に被ってそう言った。 「あ、あの……使い魔のプロシュートです」 ルイズがプロシュートを指差して言ったが当の本人は未だ警戒態勢を解いてはいない。 「きみがルイズの使い魔かい?……そうか、グラモン元帥の息子を決闘で打ち滅ぼした平民というのはきみの事だったのか」 「その事もあるがな…ルイズがオメーを信頼しててもオレがそのまま信用したと思わないでもらいてーな」 「ワルド様なら大丈夫よ…わたしが保証するから武器を収めてちょうだい…」 「俺の出番これd……」 頼み込むような顔で懇願してくるルイズを見てデルフリンガーを鞘に収める。もちろんグレイトフル・デッドは控えさせたままだ。 それを見たワルドが気さくな感じでプロシュートに近付いた。 「僕の婚約者がお世話になっているよ」 「………フン」 武器こそ収めたもののプロシュートの目は油断なくワルドを見ている。 「なるほど…その油断と隙の無さ。君があの『土くれのフーケ』を捕まえたという話も納得がいったよ」 そう言い放ち口笛を吹くと朝もやの中からグリフォンが飛んできた。 「さて…時間が惜しい、そろそろ出発するとしよう」 が、その時上空から羽音が聞こえ全員が上を向きルイズが驚いたように声を上げた。 「シルフィード!ってことはキュルケとタバサ!?」 地面に着陸したシルフィードからキュルケが降り立った。 「お待たせ」 それを見たルイズがキュルケに怒鳴る。 「何しにきたのよ!」 「あたしも昨日あそこに居たから話を聞いちゃってね一緒に行かないわけにもいかないし助けにきてあげたのよ」 タバサは何も知らずに寝ていたところを叩き起こされたため未だパジャマ姿でシルフィードの上で本を読んでいる。 ルイズが腕を組みキュルケと睨み合いを開始する。 ルイズを半ば無視する形でキュルケがワルドに迫るがそちらもほぼ相手にされていないようだ。 「馬はまだ慣れてねーからな、助かる」 それを尻目にプロシュートがタバサに礼を言いながら荷物をシルフィードの背中に乗せている。 フーケの事もありキュルケとタバサはそれなりに信用していいとは思うようになっていた。 「おいで、ルイズ」 ワルドがルイズを呼び抱きかかえたままグリフォンに乗り 「では諸君、出撃だ!」 グリフォンが駆け出したのを確認すると上空から三人の乗ったシルフィードが後を追っていく。 その光景を学院長室の窓から見ているのは昨日プロシュートに説教食らったばかりのアンリエッタだった。 プロシュートに左手を踏まれながら言われた言葉が心の奥底に引っかかっていた。 『生まれた時から平民を支配して当然と思っている』 実際そう思っている貴族がほとんどなため何一つ反論できなかったのだ。 「オールド・オスマン…彼は一体何者なのですか?」 実権を枢機卿が掌握しほぼ形骸と化しているが一国の王女に対して本気で怒りと殺意をぶつけてきた者がただの平民であるはずがないと思っていた。 「彼が言うにはハルケギニアではない別の世界から召喚されたと言っておりました」 「そのような世界があるのですか……?」 アンリエッタが遠くを見るような目になる。 プロシュートに踏まれた痛みがまだ残っているがそれを右手で押さえると小さな声で呟いた。 「『責任』と『覚悟』…ルイズ無事で…」 「さて…どうしたものかなこれは」 グリフォンとシルフィートを飛ばしてきたおかげでその日の夜中にラ・ロシェールの入り口に着いたのだが 峡谷を進んでいる所に襲撃を受け松明を投げ入れらていた。 「メイジが居ねーのなら次に飛んでくるのは弾ってのが順当なとこだな」 「なんでそんなに冷静なんだか…」 それに答えるかのように無数の矢がシルフィード目掛け飛来してくる。 キュルケは慌て気味だがタバサとプロシュートは何時もと変わらず冷静だった。 タバサが風の魔法で小型の竜巻を作りだし矢を弾きプロシュートが抜けてきた矢をグレイトフル・デッドで受け止める。 矢を受けた衝撃はフィードバックされるが傷にはならない。 「夜盗か…山賊の類か?」 「もしかしたら、アルビオン貴族の仕業かも……」 「貴族なら弓なぞ使わんだろう」 ワルドの呟きにルイズがはっとした声でその可能性を上げるが魔法が飛んでこない以上メイジは居ない事は確実だった。 「連中銃も2~3丁持ってやがるな」 「シルフィードを低空飛行させてたのが仇になったわね…」 矢なら風で弾き飛ばせるが単発式の旧式銃とはいえ弾丸なら風を突破して上空に上がろうとするシルフィードに届く可能性があった。 「崖の上から狙ってるから魔法も届かないわね…!」 「一着しかねーからやりたくなかったが…そうも言ってられねーようだな…」 デルフリンガーを引っつかんだプロシュートが崖の下に向かいものスゴイ速度で登り始める。 ルーンの効果で体が羽の如く軽くなっているのもあるがそれに加えグレイトフル・デッドの手で崖を掴み登っているため手を使わず飛ぶようにして登っているように見える。 矢がプロシュートを狙い飛んでくるがそれはワルドとタバサが風の魔法で全て撃ち落し銃弾は的が小さい上に連射できないで当たらない。 そして崖の上へ飛び乗り数秒すると 「タコス!」 「おっぱァアアーッ」 「ドゲェーーッ」 などの面白い叫びをあげながら弓と銃で狙っていた男達が崖を転がるようにして全て叩き落とし 崖の上から飛び降りるようにして降りてくるプロシュートが下に転がっていた男をクッション代わりにして着地した。 もちろん、降りる時もスタンドの手で適度にブレーキを掛けながらのため怪我は無い。……踏まれた方はそうでもなさそうに悶えているが。 「驚いたな…彼は平民なのだろう?崖から飛んだ時に落ちる速度が普通より遅かった気がしたが」 「兄貴ィ…そろそろ俺使って攻撃してくr…」 デルフリンガーを鞘に戻し崖から落ちてきた男達を半分蹴り飛ばしながら一箇所に集めワルドが杖を向け尋問を開始する。 「ただの物取りか…捨て置いてもいいだろう」 だが、その答えに納得いってないプロシュートが反論する。 「ただの物取りがグリフォンや竜に乗っていかにもメイジですって自己主張してるような      連中に仕掛けてくるわけねーだろうが。物を奪える相手を襲うから物取りって言うんだぜ?」 「だが彼らは物取りだとしか言わないが…何かいい手でもあるのかね?」 その言葉を後にして男達をルイズ達から見えない岩場に連れて行きしばらくすると… ズッタン!ズッズッタン! 「うんごおおおおおおおおおお!!!」 ズッタン!ズッズッタン! グイン!グイン! バッ!バッ! 「うんがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……」 ズッタン!ズッズッタン…… 妙に軽快なリズム音と男達の悲痛な叫びがその場に流れてきた。 「白仮面とマントの男とナイフを土くれに変えた女に雇われただとよ」 言いながらプロシュートが岩陰から出てくる。 「その言葉信用していいのかい?適当な嘘でこちらを騙そうとしているかもしれないぞ?」 「人間死ぬよりヤバイ目にあった時は本当の事しか言えねーもんだ」 「ふむ…後ろにメイジが関わってくるとなるとこの先も襲撃されるかもしれないな。注意するとしよう。      とりあえず卿はラ・ロシェールに一泊して朝一番の便でアルビオンに向かうとしようじゃあないか」 ワルドがそう言いルイズを抱きかかえグリフォンに騎乗し街に向かう。 プロシュート達もシルフィードに乗りその後を追うが、その上でキュルケがどうやって男達を自白させたのか聞いてきた。 「なに、猿轡をして一人づつ順番にゆっくりと直に老化させていっただけだ     全力でやるとすぐに気絶しちまうが、加減しながらやれば自分がどうなっているか理解しながら老化していくからな」 ゆっくりとは言っても通常ありえない速度で自らが老化していくのである。 老化している物が若いのならなおさらだ。肉体にダメージを与える拷問より余程効果的といえる。 「敵には容赦しないのね……でもそこが素敵!」 「危険」 シルフィードの上でキュルケがプロシュートに抱き付こうとするがさすがに危ないと思ったのかタバサが突っ込んだ。 アンリエッタの手紙取り戻し隊 ― ヤバイ『ラ・ロシェールに』IN! ←To be continued ----

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