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わたしは落ちこぼれだった。 学院においても過去に類を見ないほどの落ちこぼれだった。 理由は魔法が必ず失敗するからだ。どんな魔法を使おうとも必ず爆発してしまう。 初めは自分が未熟だからだと思っていたし、周囲の人間もそう思っていただろう。 けれどもいくら学ぼうと、いくら練習しようと『フライ』はおろか『レビテーション』さえ使えなかった。 そんなわたしをいつしか周囲は嘲りはじめた。 そしていつしかわたしには『ゼロ』という不名誉極まりない二つ名が付けられてしまった。 悔しかった。ただ悔しかった。 優秀な姉たちの存在もさらにわたしの心に重荷を加えた。 嫌いではない。むしろ好きだと、自慢の姉だと胸を張っていえるだろう。だけど心の底では姉たちを妬んでいる自分がいる。 そんな自分に嫌悪した。そんな自分を払拭しようと努力もした。けれど結果は『ゼロ』だった。そしてその気持ちを拭うことが出来ない苛立ちが心を蝕んだ。 学び、練習し、そして失敗するたびに自分の中に重荷が、周りから『ゼロ』と呼ばれるたびに自分の中に疵が増えていくのがわかった。 胸が張り裂けそうだった。毎日毎日努力しても成果は現れない。 苛立ちが蝕み、重荷が増し、疵が増え、それにさらに苛立つ……、その悪循環を止める術は無かった。 学院や家に自分の居場所など無いのではと考え始めるようになった。 人間は何か縋りつくものが無ければ潰れてしまう。 わたしが縋ったのは貴族としての矜持だった。貴族であるということが自分と家族の絆を繋げている。 貴族であるということが自分がここにいてもいいということなのだと認識さしてくれる。 貴族であるということが何よりも優れている。 そう信じたのだ。貴族ということだけがわたしに残されたものだったからだ。 縋りつかなければおそらく、いやきっと潰れていただろう。周りから見放され、家族からも見放されていたかもしれない。 そして2年生の春、ついに使い魔の召喚、ならびに契約の儀式のときが来た。 周りは『ゼロ』に召喚なんて出来るわけないと嘲っていた。 それに耳を貸さず祝詞を唱える。そして始祖ブリミル祈った。 わたしに使い魔を召喚させてください、と。 万感の思いを込め杖を振るう。 爆発しない、そして初めて成功したと思える手応えがあった。これが成功の手応えかと思うと涙が出そうになった。 ついに努力が実を結んだのだと、これが周りを見返すきっかけになるのだとそう思った。 しかし召喚されたのは変わった服と帽子をした男だった。目を閉じてる。気絶しているようだ。 幻獣でもなく、動物でもなく、亜人でもなく、どう見てもただの人間だった。格好からして貴族でもない。つまり平民ということだ。 もし、何十年もの間捜し求めていたものを手に入れ狂喜したとき、それが求めていたものではなく実は犬のフン以下のものだとわかったときの気持ちというのは こういうものなのかもしれない。 それを理解したとき、恥も外見もなく喚き散らしたくなった。 それを留めたのは貴族の矜持だった。貴族たるもの優雅にあらねばならない。 それだけが自分を留めていた。貴族のしての矜持まで無くしてしまったら自分には何もかも無くなってしまうのだから。 そしてそういった感情を怒りへと変換させる。少しでも心への負担を軽くするためだ。自分を責めるよりも怒りを相手にぶつけるほうが楽だからだ。 自分は努力をしてきたのだ。失敗したのはこいつのせいだ!そう思うことで自分を慰める。とても惨めだった。 男が目を覚ます。 「あんた誰?」 怒りを出来るだけ表に出さないように気をつけながら、とりあえず話しかけてみた。 男は呆然としていて何も反応を返さない。 「聞き…「私が見えているのか!?」きゃっ!」 それだけで怒りが出てしまいさらに話しかけようとすると、突然大声を上げたので驚いてしまう。 なんなの、この平民は! 平民は慌てて立ち上がると驚いたような表情をして手を見て、さらに首を左右に振りあたりを見回している。 これがヨシカゲとの最初の出会いだった。 わたしが生きてきた歴史で最悪だった出来事ベスト3に入るであろう出来事だった。 ----
わたしは落ちこぼれだった。 学院においても過去に類を見ないほどの落ちこぼれだった。 理由は魔法が必ず失敗するからだ。どんな魔法を使おうとも必ず爆発してしまう。 初めは自分が未熟だからだと思っていたし、周囲の人間もそう思っていただろう。 けれどもいくら学ぼうと、いくら練習しようと『フライ』はおろか『レビテーション』さえ使えなかった。 そんなわたしをいつしか周囲は嘲りはじめた。 そしていつしかわたしには『ゼロ』という不名誉極まりない二つ名が付けられてしまった。 悔しかった。ただ悔しかった。 優秀な姉たちの存在もさらにわたしの心に重荷を加えた。 嫌いではない。むしろ好きだと、自慢の姉だと胸を張っていえるだろう。だけど心の底では姉たちを妬んでいる自分がいる。 そんな自分に嫌悪した。そんな自分を払拭しようと努力もした。けれど結果は『ゼロ』だった。そしてその気持ちを拭うことが出来ない苛立ちが心を蝕んだ。 学び、練習し、そして失敗するたびに自分の中に重荷が、周りから『ゼロ』と呼ばれるたびに自分の中に疵が増えていくのがわかった。 胸が張り裂けそうだった。毎日毎日努力しても成果は現れない。 苛立ちが蝕み、重荷が増し、疵が増え、それにさらに苛立つ……、その悪循環を止める術は無かった。 そのうち学院や家に自分の居場所など無いのではと考え始めるようになった。 人間は何か縋りつくものが無ければ潰れてしまう。 わたしが縋ったのは貴族としての矜持だった。貴族であるということが自分と家族の絆を繋げている。 貴族であるということが自分がここにいてもいいということなのだと認識さしてくれる。 貴族であるということが何よりも優れている。 そう信じたのだ。貴族ということだけがわたしに残されたものだったからだ。 縋りつかなければおそらく、いやきっと潰れていただろう。周りから見放され、家族からも見放されていたかもしれない。 そして2年生の春、ついに使い魔の召喚、ならびに契約の儀式のときが来た。 周りは『ゼロ』に召喚なんて出来るわけないと嘲っていた。 それに耳を貸さず祝詞を唱える。そして始祖ブリミル祈った。 わたしに使い魔を召喚させてください、と。 万感の思いを込め杖を振るう。 爆発しない、そして初めて成功したと思える手応えがあった。これが成功の手応えかと思うと涙が出そうになった。 ついに努力が実を結んだのだと、これが周りを見返すきっかけになるのだとそう思った。 しかし召喚されたのは変わった服と帽子をした男だった。目を閉じてる。気絶しているようだ。 幻獣でもなく、動物でもなく、亜人でもなく、どう見てもただの人間だった。格好からして貴族でもない。つまり平民ということだ。 もし、何十年もの間捜し求めていたものを手に入れ狂喜したとき、それが求めていたものではなく実は犬のフン以下のものだとわかったときの気持ちというのはこういうものなのかもしれない。 それを理解したとき、恥も外見もなく喚き散らしたくなった。 それを留めたのは貴族の矜持だった。貴族たるもの優雅にあらねばならない。 それだけが自分を留めていた。貴族のしての矜持まで無くしてしまったら自分には何もかも無くなってしまうのだから。 そしてそういった感情を怒りへと変換させる。少しでも心への負担を軽くするためだ。自分を責めるよりも怒りを相手にぶつけるほうが楽だからだ。 自分は努力をしてきたのだ。失敗したのはこいつのせいだ!そう思うことで自分を慰める。とても惨めだった。 男が目を覚ます。 「あんた誰?」 怒りを出来るだけ表に出さないように気をつけながら、とりあえず話しかけてみた。 男は呆然としていて何も反応を返さない。 「聞き…「私が見えているのか!?」きゃっ!」 反応を返さなかっただけで怒りが出てしまいさらに話しかけようとすると、突然大声を上げたので驚いてしまう。 なんなの、この平民は! 平民は慌てて立ち上がると驚いたような表情をして手を見て、さらに首を左右に振りあたりを見回していた。 これがヨシカゲとの最初の出会いだった。 わたしが生きてきた歴史で最悪だった出来事ベスト3に入るであろう出来事だった。 ----

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