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ルイズを誘う理由は簡単だ。 私一人で行く許可を貰うよりルイズ自身が行くように仕向けるのが簡単だと思ったからだ。 ルイズが行くとなれば当然私もついていくことになる。私だけ行くのとルイズも一緒に行くのとなら大して変わりはないしな。 「もう一回言ってくれる?」 ルイズは私の言葉に暫らくしてからそう返した。 聞こえなかったのだろうか?声はちゃんと出していたと思うのだが。 しかし聞こえなかったというなら仕方が無い。今度は意識してはっきりと言おう。 「一緒に出かけないか、と聞いたんだ」 返事は返ってこない。 ルイズは口を完全に閉ざしこちらを見詰めている。 おかしいな?何らかの反応が返ってくると思っていたのに全くの無反応なんて。 「おいルイズ。聞いているのか?」 「え?え、ええ。聞いてるわよ」 「じゃあなんで何も反応を返さないんだ?」 「と、突然のことで驚いたのよ」 突然のことでねぇ。 たしかに突然だったな。それでも普通反応を返せないなんてことがあるだろうか? まあ現に反応を返せなかったんだ、考えても仕方ないだろう。 「場所はタルブの村というところだ。ラ・ロシェールの向こうで馬で3日程らしい」 こういうときは畳み掛けるの一番だな。 「素晴らしく綺麗な草原があるらしくてな。春には春の、夏には夏の、それぞれの花が咲き誇って、それが地平線の向こうまで続くらしいんだ。 ヨシェナヴェっていう、うまいシチューもあるらしい」 そういえばヨシェナヴェって寄鍋って言葉にすげえ似てるな。 ただの偶然だろうか? 「ちょ、ちょっと待って」 ルイズが私に話しかけてくる。 「行きたい場所もわかったし、そこにどんなものがあるのかもわかったけど。でも、なんでいきなり?い、一緒に出かけないかなんて」 もっともな質問だな。 「その村へこないかと誘われているんだ」 「は?誘われてる?」 「ああ」 ルイズ質問に肯定する。するとルイズの顔が変化する。 ……なんだその口にし難い微妙すぎる表情は。 無視だな。無視が一番いい。 「私は平民だから厨房の連中と仲がいい。彼らも平民だからな。そのうちの一人に誘われたんだ。自分の村へ来ないかって。 さっき話した草原やヨシェナヴェの話を聞かされて私は行きたいと思ったんだ」 嘘はついていない。 これからつくけどな。 「しかし、私は思ったんだ。自分一人で行っていいのか、ってな。最近ルイズは何をするでも上の空みたいな感じがあった。 だから何か悩み事があるんじゃないかって思ってた。そんなルイズを放っておいていいのかって思ってたんだ」 さっきの話を聞くまでそんなことを思ってはいなかったけどな。 「それでさっきその悩みはわかった。だから思いついたんだ。一緒にルイズも来ればいいんじゃないかってな」 「……なんでそこに行き着くわけ?」 ルイズは本当に不思議そうな顔をして聞いてくる。 「ルイズ、今お前は『始祖の祈祷書』に注意を向けすぎて頭が一杯になってるんだ。それは自分でもわかってるだろ?」 「たしかに。最近はちょっと考えすぎかもしれないと思ってるわ」 「そういう状態でいい詔が考えられるのか?考えられるわけが無い。だから何かいつもと違う刺激を受ける必要があるんだ」 「いつも違う刺激……」 「簡単に言ってしまえば、『始祖の祈祷書』だとか姫さまだとかそういったことを忘れて遊ぶってことさ」 ここが一番重要だな。 「いつもと違う刺激を受けて、一回頭の中を空っぽにして考えてみるんだ。そうすればいい詔を思いつけるかもしれないだろ。 少なくとも今よりは確実に頭が楽になる。それに……」 「それに?」 「そこは平民の村だ。つまり大勢の平民がいる。前に話してたよな、ウェールズ皇太子と平民について話したって」 それを聞くとルイズははっとした表情になる。 皇太子が平民についてどうのこうの言っていたって話してたからな、たしか。 よく聞いてなかったからあんまり内容は覚えてないんだけど。 「皇太子と何を話したかは知らないが、お前は平民に貴族がどう思われているか知りたがっていたな。いいチャンスじゃないか? 直に大勢の平民と係われるんだからな」 私の話を聞くとルイズは顎に手をあて顔を伏せた。 おそらく行くかどうか考えているんだろう。これで行かないと言ってもそれはそれで構わない。 そんなことを言っても、考えてる時点で説得できる要因があるってことだからな。時間はあるしゆっくり説得すればいい。 「行くわ。たしかに根を詰めすぎてたかもしれないし」 暫らくしてルイズはそう言った。 計算どおり。 「別にヨシカゲに言われたから行くわけじゃないわよ。ただ行ってもいいかなって思っただけだから」 そんなことはどうでもいいさ。 しかし楽しみだ。一体どんな景色が見られるのだろうか。 それにしても皇太子に感謝しないといけないな。ルイズに平民に対する興味を持たせたことにだ。 そのおかげでこの作戦はうまくいったんだからな。 「ところでヨシカゲ。行くのは何時なの?」 「王女が結婚するときに休みが貰えるって言ってたから、来月あたりか?」 「それじゃダメよ。詔は結婚式のときに読まないといけないのよ。それじゃ遅いじゃない」 「あ……」 すっかり失念していた。 完璧な作戦にならんとは! もっとちゃんと調べてから説得するんだった!畜生! 「あさって、あさって行きましょう」 「は?」 「だからあさって行くのよ。そのタルブの村に。一緒に行く平民にも伝えときなさいよ。あさって行くからって」 「マジか?」 「こういうのは早いほうがいいじゃない。それに、行く気になったのに行けないなんていやよ」 何て傲慢な考えだ。でもそれで行けるなら傲慢でもいいな。 初めてルイズの身勝手に感謝した。 ----
ルイズを誘う理由は簡単だ。 私一人で行く許可を貰うよりルイズ自身が行くように仕向けるのが簡単だと思ったからだ。 ルイズが行くとなれば当然私もついていくことになる。私だけ行くのとルイズも一緒に行くのとなら大して変わりはないしな。 「もう一回言ってくれる?」 ルイズは私の言葉に暫らくしてからそう返した。 聞こえなかったのだろうか?声はちゃんと出していたと思うのだが。 しかし聞こえなかったというなら仕方が無い。今度は意識してはっきりと言おう。 「一緒に出かけないか、と聞いたんだ」 返事は返ってこない。 ルイズは口を完全に閉ざしこちらを見詰めている。 おかしいな?何らかの反応が返ってくると思っていたのに全くの無反応なんて。 「おいルイズ。聞いているのか?」 「え?え、ええ。聞いてるわよ」 「じゃあなんで何も反応を返さないんだ?」 「と、突然のことで驚いたのよ」 突然のことでねぇ。 たしかに突然だったな。それでも普通反応を返せないなんてことがあるだろうか? まあ現に反応を返せなかったんだ、考えても仕方ないだろう。 「場所はタルブの村というところだ。ラ・ロシェールの向こうで馬で3日程らしい」 こういうときは畳み掛けるの一番だな。 「素晴らしく綺麗な草原があるらしくてな。春には春の、夏には夏の、それぞれの花が咲き誇って、それが地平線の向こうまで続くらしいんだ。 ヨシェナヴェっていう、うまいシチューもあるらしい」 そういえばヨシェナヴェって寄鍋って言葉にすげえ似てるな。 ただの偶然だろうか? 「ちょ、ちょっと待って」 ルイズが私に話しかけてくる。 「行きたい場所もわかったし、そこにどんなものがあるのかもわかったけど。でも、なんでいきなり?い、一緒に出かけないかなんて」 もっともな質問だな。 「その村へこないかと誘われているんだ」 「は?誘われてる?」 「ああ」 ルイズ質問に肯定する。するとルイズの顔が変化する。 ……なんだその口にし難い微妙すぎる表情は。 無視だな。無視が一番いい。 「私は平民だから厨房の連中と仲がいい。彼らも平民だからな。そのうちの一人に誘われたんだ。自分の村へ来ないかって。 さっき話した草原やヨシェナヴェの話を聞かされて私は行きたいと思ったんだ」 嘘はついていない。 これからつくけどな。 「しかし、私は思ったんだ。自分一人で行っていいのか、ってな。最近ルイズは何をするでも上の空みたいな感じがあった。 だから何か悩み事があるんじゃないかって思ってた。そんなルイズを放っておいていいのかって思ってたんだ」 さっきの話を聞くまでそんなことを思ってはいなかったけどな。 「それでさっきその悩みはわかった。だから思いついたんだ。一緒にルイズも来ればいいんじゃないかってな」 「……なんでそこに行き着くわけ?」 ルイズは本当に不思議そうな顔をして聞いてくる。 「ルイズ、今お前は『始祖の祈祷書』に注意を向けすぎて頭が一杯になってるんだ。それは自分でもわかってるだろ?」 「たしかに。最近はちょっと考えすぎかもしれないと思ってるわ」 「そういう状態でいい詔が考えられるのか?考えられるわけが無い。だから何かいつもと違う刺激を受ける必要があるんだ」 「いつも違う刺激……」 「簡単に言ってしまえば、『始祖の祈祷書』だとか姫さまだとかそういったことを忘れて遊ぶってことさ」 ここが一番重要だな。 「いつもと違う刺激を受けて、一回頭の中を空っぽにして考えてみるんだ。そうすればいい詔を思いつけるかもしれないだろ。 少なくとも今よりは確実に頭が楽になる。それに……」 「それに?」 「そこは平民の村だ。つまり大勢の平民がいる。前に話してたよな、ウェールズ皇太子と平民について話したって」 それを聞くとルイズははっとした表情になる。 皇太子が平民についてどうのこうの言っていたって話してたからな、たしか。 よく聞いてなかったからあんまり内容は覚えてないんだけど。 「皇太子と何を話したかは知らないが、お前は平民に貴族がどう思われているか知りたがっていたな。いいチャンスじゃないか? 直に大勢の平民と係われるんだからな」 私の話を聞くとルイズは顎に手をあて顔を伏せた。 おそらく行くかどうか考えているんだろう。これで行かないと言ってもそれはそれで構わない。 そんなことを言っても、考えてる時点で説得できる要因があるってことだからな。時間はあるしゆっくり説得すればいい。 「行くわ。たしかに根を詰めすぎてたかもしれないし」 暫らくしてルイズはそう言った。 計算どおり。 「別にヨシカゲに言われたから行くわけじゃないわよ。ただ行ってもいいかなって思っただけだから」 そんなことはどうでもいいさ。 しかし楽しみだ。一体どんな景色が見られるのだろうか。 それにしても皇太子に感謝しないといけないな。ルイズに平民に対する興味を持たせたことにだ。 そのおかげでこの作戦はうまくいったんだからな。 「ところでヨシカゲ。行くのは何時なの?」 「王女が結婚するときに休みが貰えるって言ってたから、来月あたりか?」 「それじゃダメよ。詔は結婚式のときに読まないといけないのよ。それじゃ遅いじゃない」 「あ……」 すっかり失念していた。 完璧な作戦にならんとは! もっとちゃんと調べてから説得するんだった!畜生! 「あさって、あさって行きましょう」 「は?」 「だからあさって行くのよ。そのタルブの村に。一緒に行く平民にも伝えときなさいよ。あさって行くからって」 「マジか?」 「こういうのは早いほうがいいじゃない。それに、行く気になったのに行けないなんていやよ」 何て傲慢な考えだ。でもそれで行けるなら傲慢でもいいな。 初めてルイズの身勝手に感謝した。 ----

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